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 TPP交渉が大きな山場を迎えているようで、知的財産権の問題が議題になるようなことが報じられていました。薬の特許の話が大きな対立点でしたので、著作権の保護期間や親告罪の話がどうなっているのか、よくわかりません。交渉の初期の頃に、70年延長で決まったような話が報じられて、甘利大臣が打ち消していましたが、その後はほとんどまったくといいほど、情報が流れてこないのはどういう意味なのか、気になるところです。
 5月の朝日新聞に出た、戦時加算の撤廃要求を持ち出しているようですが、それを取引条件にしているようでは、もしかすると、70年への延長受け入れを前提として交渉しているのかもしれません。それは由々しき問題ではありますが・・・。
 
 それで、青空文庫を覗いていたら、次のステートメントが出されていました。
2014915
「TPPによる著作権保護期間延長が行われた場合の青空文庫の対応」
 
 これを読むと、その記事のほとんどが、70年延長された場合の遡及適用があった場合の問題点に費やされています。
 その懸念がおそらく2つの理由があって、一つは、EUの中での制度調和の一環で、遡及適用をした国があったこと(「欧州連合域内における著作権保護期間の調和に関する指令」)
。もう一つは、朝日新聞が、保護期間が延長となれば、「(吉川英治などの)こうした作品は、いったんは切れた著作権が「復活」することになり、新たに著作権料の支払いや使用の許可が必要になって、無料で読めなくなる可能性がある。」(2014517日付)というような記事を載せたことではないかと想像しています。
 この記事をめぐっては、次のサイトを拝見すると、いろいろ出ています。
 
 そういう国民全般の権利を侵すことになる(国民にとっての)不利益措置の遡及などあり得るはずがないというのは、関係者にとっては一般常識だと思うのですが、その点を、東大の玉井克哉教授がコメントしていました(2014518日付けのツイッター)。
 
「遡及なんて入りっこないと思っているので、何かの誤解だと思っています。EUは「加盟国間でバラバラなのは困る。統一しよう」という趣旨で決めたので、70年の国でまだ権利のあるものは従前50年だった国でも復活させる必要があった。対外通商交渉とは、状況が違います。」
「「著作権の保護期間を延長すると、既に権利の切れた作品の権利が復活して、大混乱になる」って、「相手を黒く描いて、その黒さを批判する」手法の典型ではないですかね。当たり前だけど、そんな延長には小生も反対。でも、そんなもん、USTRですら想像してもいないよ。」
 
 私も同感で、EU域内の制度調和の話とは次元が違いますし、そういう遡及適用などは、法の不遡及の大原則に違反しますから、交渉関係者の誰の念頭にもないと思っています。
 そんなことをやったら、公共財産になっているものを国民から取り上げるということですから、それこそ国家賠償請求が怒涛の如く起きて、収拾がつかなくなるでしょう。
 
 著作権が切れたものを遡及適用して権利を復活させることはできないという点は、国会で文科省からの答弁で確認されています。これは写真家の権利について、以前からある要請ですが、平成11年の審議会での検討結果を踏まえて、難しい旨を答弁しています。
 
- 文部科学委員会 
平成260404
 
○宮本委員 先ほどのワーキンググループがつくられていたときには、映画監督の権利に関する法制、契約システムの整備のための協議の場というものも置かれておったわけです。これもとまったままになっています。しっかりそういう場を設けるように求めておきたいというふうに思うんです。
 今回の法改正とは直接関係ないんですが、先日の参考人質疑で、写真家の瀬尾参考人と写真の著作権の問題を取り上げてやりとりがあったので質問しておきたいと思います。
 写真の著作権をめぐっては、保護期間が文芸作品に比して短くなっております。特に、現存者の一九五六年以前の著作権が消滅する事態が生じているという問題があります。一昨日の参考人質疑でも、私が我が党の山原健二郎議員のかつての質問を紹介して、日本写真家協会の田沼武能会長が、この作品は著作権が切れているので使用料は払いませんと言われ、私はまだ生きているんだよ、ただで使われちゃたまらないとおっしゃったというエピソードを紹介してお聞きしたら、瀬尾太一参考人も、これは引き続き強い要望だと答えておられました。
 写真の著作権の保護期間、特に、現存者の著作権が消滅する問題について権利として確立することが必要だと思いますが、これは文化庁次長、これについてはどういうことになっておりますか。
 
○河村政府参考人 写真の著作物の保護期間については、平成八年の著作権法改正によって公表後五十年から著作者の死後五十年に延長されましたが、旧著作権法下、旧著作権のもとで創作された写真の著作物であって、現行法施行前、これはつまり、昭和四十六年一月一日施行日ですので昭和四十六年一月の施行前ということですが、このときに既に著作権が消滅していたものについては現在の法律による保護は与えられないという整理となりました。
 この、一旦消滅した写真の著作権を復活させるべきかどうかという問題については、平成十一年の当時の著作権審議会において検討が行われましたが、一度権利が消滅したものについて保護を復活させるということについては、既存の定着した利用関係に重大な影響を与えることなどの理由から、著作権の保護を復活させるという結論には至らなかったものでございます。
 この結論は今も尊重されることになろうかと存じます。
 
●そこで、平成11年の著作権審議会の取りまとめを見てみると、次のように書かれています。
 
「著作権審議会 第1小委員会審議のまとめ」
平成1112月 著作権審議会
2)写真の著作物の保護の復活について
 
 写真の保護期間については、旧著作権法において「発行後10年(未公表の場合は創作後10年)とされていたが、その後の昭和42年の暫定延長措置により発行後13年又は創作後13年となっていた。
 また、昭和45年の新著作権法においては、制定当初は、写真の著作物の保護期間は「著作物の公表後50年(その著作物がその創作後50年以内に公表されなかったときは、その創作後50年)」とされていたが、平成8年の著作権法改正により「公表後50年」から「著作者の死後50年」とされた。
 これらの改正の際には、一度権利が消滅したものについて再度保護を復活させることは既存の利用関係に重大な影響を与えることを考慮し、一度保護期間が経過した写真の著作物については遡及保護しないこととされたが、その結果、一般的に昭和31年までに発行された写真については現在著作権は消滅している。しかしながら、これに関し、現在活動中の写真家であっても昭和31年以前の作品については著作権が保護されないのは問題であるとして、遡及保護を求める要望があることから、本小委員会において再度検討が行われた。
 この問題については、他の著作物との保護上の均衡を欠くとして、遡及保護に積極的な意見もあるが、他方、一度保護期間が経過した著作物について著作権を復活させることは法的安定性を害し、著作物の利用関係に混乱を招くことや、写真についてのみ遡及保護を行うことは、旧法から新法への改正時に他の著作物の保護を不遡及としたこととのバランスを欠き、著作権法全体の均衡を失すること、一度保護期間が経過した著作物の保護を復活させることが著作者の創作意欲を増進させ、文化の発展に寄与するとは考えられないこと等の理由から消極的な意見が大勢を占めており、現時点において著作権法の原則を覆して保護を復活させるべき理由が見出しがたい。従って、写真の著作物の遡及保護の問題については、一度保護期間が経過した著作物の遡及保護をしないことにより著作者が被る不利益を放置することが著しく正義に反するような事情があるか否かを見きわめた上で、さらに検討を行うことが適当であると考えられる。
 
 ごくごく常識的な考え方であり、それを今の時点で、著作権全般について遡及適用を認めることの積極的根拠は見出しがたいと思います。
 そういう考え方であることを、今年の4月時点での国会答弁で、文化庁次長が再確認しているわけですから、もっぱら遡及された場合の問題を中心に保護期間延長反対を主張するのは、エネルギーのロスになってしまう恐れがあります。むしろ、保護期間が延長された場合に、そのマイナスを極小のものにする方策の検討に精力を費やしたほうが、はるかに建設的だと思います。
 保護期間延長にはもちろん反対ですが、多数の分野を一括した「包括交渉」ですし、日本の保護期間50年のほうが圧倒的少数ですから、延長になってしまう可能性は念頭に置いておく必要があります。
 
●その場合のマイナスを抑える方策については、たとえば、平成20年に審議会で、保護期間延長の是非の問題と合わせて、かなり突っ込んで議論がなされています。
以下の中間整理に詳しいです。
 
○文化審議会著作権分科会
過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会 中間整理(平成20年10月1日)
 
 そこでは、次のような議論の紹介がなされています。
 
「また、保護期間延長による著作物利用等の弊害を最小限にする方策として、次のような提案もなされた。
保護期間の死後 50 年から 70 年までの間は、許諾権ではなく報酬請求権にすること、又は再創造、非営利利用は自由、営利利用の場合も収入の数%の支払いで利用できるとの緩い報酬請求権としてはどうか。
延長希望者が、更新料を支払って登録する制度(opt-in 方式)としてはどうか。
延長した 20 年で得られた使用料について、国家が徴収し、芸術教育や若手芸術家支援、途上国の文化振興基金など公的資金に充ててはどうか。
翻案権、二次著作物を利用する権利のみは延長しないということも、検討の選択肢の一つになりうるのではないか。」
 
 どれも有効な方策だろうと思います。
 ただ、まさかとは思いますが、現行のベルヌ条約と全く同一の仕組みで延長することが合意されてしまっては、このような方策を取ることができなくなってしまいますので、それは心配ではあります。そこまで譲ってしまうようでは、日本政府の交渉能力がよほど低かった、という評価になってしまいます。
 上記の審議会の中間とりまとめをみると、国によって様々な制度のバリエーションがあるようですし、フェアユース規定とバーターにした国もあるようですから、画一的な制度を迫られるようなことはまずないとは思いますが・・・。
 もし万一、保護期間延長となった場合には、それを契機に、流通促進策を目一杯盛り込むチャンスにしてしまおう、と考え、そのための腹案を諸々練っておく・・・というのが必要だと思います。
 
 なお、孤児作品問題は、この保護期間延長とは無関係ですから、それは別途、解決策を見出す必要があることは、既に繰り返し述べた通りです。



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