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  TPP交渉の首席交渉官会合が始まり、来年第一四半期には妥結見込みと報じられています。これに関連して、著作権関係の交渉がどういう内容で決着するのか、注視されるところです。
 
 この関連で、今年の7月に、いろいろ動きがあったそうです。
 
 米国著作権局や議会の動きとして、
 
「米国著作権法の包括的な見直しの一環として、米国議会のヒアリングでも、著作権の保護期間の見直しが議題となり、複数の有力な参考人が部分短縮に前向きな意見を述べました。言うまでもなく、昨年3月、米国著作権行政のトップであるマリア・パランテ著作権局長が、「登録作品に限り死後70年まで保護し、非登録作品は死後50年の経過をもってパブリック・ドメインとする」という保護期間の部分短縮を米国議会で提案したことを受けての動きです。」
 
 との、著作権の短縮を含めた見直しの動きのほか、各国の関係民間団体が連名で
 
TPPによる著作権保護期間の延長に反対する国際共同声明」
 
 が発せられたとのこと。
 その提言内容は、実に正鵠を射たもので、これらの動きが、米国政府や議会のTPP交渉でのスタンスに影響を及ぼしてくれていることを期待したいところです。
 なお、米国著作権局の昨年3月の提言については、弁護士の福井健策先生の骨董通り法律事務所のサイトで、以下の通り、全訳と解説が掲載されています。
 
 
●それで、そのTPP交渉のほうですが、冒頭に述べた通り、最終的妥結に向けた首席交渉官会合が始まりましたが、マスコミの報道では、来年(2015年)の第一四半期には妥結する見通しである旨が一斉に報じられています。
 
 知的所有権関連は、医薬品の特許保護期間の話ばかりがクローズアップされており、著作権の保護期間延長や非親告罪化は、論点とはなっていない雰囲気です。日本の50年という保護期間が圧倒的少数派だとはいえ、米国内の動きをにらんで、仮に70年に延長する場合でも、登録制度(特許並みの課金付きの)にする等の「条件闘争」を、日本政府が最大限しているのかどうか、非常に気になるところです。
 非親告罪化のほうは、そうしなければならない理由も筋もありませんし、濫用による混乱のほうがよほど懸念されますので、断固阻止されるべきだと思いますが、そちらがどうなっているのかも気になります。
 
 【保護期間が70年になったとしても、その影響を最小限にするための制度設計】
 
 保護期間については、50年の現状維持でまとまればそれに越したことはありませんが、仮に70年に延長される場合でも、
 
 ① 最低限でも、50年経過後は、登録制にすること。
 ②  できれば、特許、商標のように毎年課金すること。
 ③  かつ、許諾権ではなく、報酬請求権にすること。
 
が必要と思います。これは、米国著作権局長が述べたように、諸々の負担のバランスをどこで取るか? ということからしても適切です。
 
 <現行制度は、権利保護と利用促進のバランスが著しく不均衡>
 
 現行の50年の保護期間の制度下では、
・死後50年までの独占権を著作権者側に与える。
・著作権者を探索し利用する経済的、手続き的コストを、利用者側が全面的に負担する。
 
ということになっています。しかし、もともと著作権というのは、独占権を与え利益を権利者に独占させることにより、創作のインセンティブを向上させ、創作を増やす、ということが目的です。ところが、死んでしまえば、その創作インセンティブは生じようがないわけですから、死後50年の長きにわたって独占権を与える続ける合理的理由があるのか?といえば、あるとは思えません。政治的理由で決まったに過ぎません。特許の保護期間は、出願後20年であることとの比較からしても、著しく長い期間となっています(むしろ、特許権の主体となる発明家のほうが、多額の創作コストを負担しており、その割に保護期間が短いです)。
「保護」期間が長くなることにより、かえって死蔵化と忘却が進み、ごくごくわずかな遺族の利益と社会の不利益とを比較すれば、著しくバランスを欠いているということは、誰しも実感として感じていることですし、データとしても裏付けられています。
 
そういう中で、50年を経過したら、著作権者側と利用者側の諸々の負担のバランスを変えるということは、きわめて合理的な方策といえます。
権利者を探索する手続き的、経済的コストは膨大ですし、探索が困難なために孤児作品が増えるという多大なマイナスが生じていますから、権利者側に登録を求めるという負担増があるとしても、それはバランス的に微少な話です。
また、特許、商標のように、毎年課金することが望まれます。これは、年が経過するにつれて増えていく仕組みです。特許等で課金しているのは、独占権を維持するのであれば、一定の対価を払うべきだという考え方に立つものですが、それは著作権においても適用されるべき考え方だと思います。課金を負担するコストとのバランスで、権利保護期間を維持するかどうか判断されることになりますから、合理的な仕組みです。
その仕組みがうまく機能するためには、課金の額はかなり高い水準に設定する必要があります。年間数十万円から徐々に逓増させていき、最後は数百万円となるくらいがいいのではないかと思います。
 
課金付きの登録制度にした上で、更にまた、許諾権ではなく、報酬請求権にすることも、選択肢として検討されてもいいのではないでしょうか。
身近な事例としては、「貸与権」があります。レンタルCDでおなじみの貸与権ですが、これは、発売後1年間は、レンタルするに当たって許諾権を認めていますが、1年経過した後は、報酬請求権に変わります。レンタル利用を拒否することはできず、利用した報酬を請求できるだけになります。
死後50年も経って、遺族が利用を利用の可否を留保する権利を残しておく積極的理由はないはずであり、利用に伴う利益が得られれば目的は達せられるはずです。
 
<パロディ、改変への対処は、著作者人格権で対応する話>
 
保護期間延長を主張する権利者の中には、しばしば、パロディや脚色等を拒否したいから、という理由を挙げている人がいますが、それは経済的権利としての著作権とは異なる次元の話であって、著作者人格権に属する話です。同一性保持権や氏名公表権、名誉声望保持権などの著作者人格権は、著作者の一身専属の権利ですが、著作権保護期間が過ぎても、その侵害になるような行為に対しては、遺族が孫の代までは、差止請求や損害賠償請求、更には刑事的責任を問うこともできますから、そちらで対処すべき筋の話です。
 
以上のように、仮に保護期間を70年に延長した場合でも、上記のような仕組みにすれば、懸念されているようなことは、最小限で済むような気がします。
死後50年経過しても、年間数十万円、数百万円の課金を負担できるような印税収入のある作品群を持つ作家は、あまりないでしょうから、ほとんどは50年経過後は登録せず、権利切れとなることが期待されます。
 
【孤児作品問題は、保護期間の長短とは関係なく解決が必要】 
 
なお、孤児作品問題は、保護期間延長とは直接関係がないことは、これまで繰り返し述べてきた通りです。
50年の現状維持であっても、著作権者の所在を探索できないことと、探索コストが手続き的にも経済的にも高いことが問題なわけですから、これが解決されない限り、問題は残り続けます。
登録制度にしたとしても、未登録の状態が、死後50年経っているにもかかわらず登録されていないのか、それとも、死後50年経っていないから登録されていないのかがわかりませんから、未登録だから使えるというわけにはいきません。
 
<現行裁定制度では機能しない―手続き的、経済的コスト負担が大き過ぎる>
 
米国著作権局が2006年に提案した孤児著作物法は、きちんと調査しても著作権者の分からない作品については、ユーザーが利用しても損害賠償責任を負わないとする(損害賠償による救済を制限する)ものだそうですが、これは日本の現行制度のままでは機能しないでしょう。
現行の文化庁長官による裁定制度では、日刊紙又は文科省傘下の財団法人に公告を出さなければならず、そのコストは、財団への登録でも3万円と高額です。しかも、期限付きですから、ほとんどその財団に貢ぐための制度としか思えない仕組みです。
更に、使用料は供託する仕組みですが、供託したものが戻ってくるわけではなく、最後は国庫に入るわけですから、相当に「あこぎ」な話です。
 
これを米国の孤児著作権法案のように実際に機能させるとすれば、以前述べたように、
 国立国会図書館による調査結果を、全国民に効力を及ぼす(代表訴訟的仕組み)。
コストがかからない簡易な調査の仕組みを構築する。
 等の制度的工夫が必須です。
 
これによって探索できなければ、無償で使うことができるようにする、ということであれば、合理的かもしれません。事後に権利者から申し出があったとしても、その時点から権利が発生する仕組みにすれば、利用者側の利用安定性は確保できます。
 
<孤児作品問題の究極的解決には、死亡年の確定が必須>
 
孤児作品問題の最終的解決のためには、あくまで、死亡年を確定させる必要があります。
上記のような探索のためのコストを下げても、権利の存続状況が不明確というのは、制度として不健全です。江戸時代の著作者の死亡年がわからないからといって、今後も未来永劫、権利者としてあり続けるというのは常識的ではない、ということを想像すれば、理解されることだと思います。
そこで、公表から一定期限後(たとえば、公表後90年)に、死亡したものと推定し、その後も申し出がなければ、一定期間後に権利を消滅させるという仕組みにする必要があります。
この辺は、銀行や郵便局の休眠口座が、10年経てば、預金が国庫のものに実質的になることを考えれば、上記の「一定期限」というのは、もっと短くてもいいいのかもしれません。
 
もう、そう遠くない時点で、TPP妥結ということになり、著作権の保護期間や親告罪についての交渉結果も判明するでしょうから、一斉に具体的検討に入ることができるように、準備してもいい時期になってきたかと思います。
50年の現状維持であっても、孤児問題の解決が必要ですし、70年に延びたら更に真剣に制度設計を検討する必要があります。
 
もし万一・・・単純に現行制度のまま(登録制もなしで)、70年に延長+非親告罪化ということが、交渉結果だったとすれば・・・文化庁長官以下は腹切りものです。
 
昭和41年(1966没の作家の著作権の帰趨は?
 
なお、来年2015年春に交渉妥結として、70年という交渉結果となった場合、そこから審議会がスタートし、2016年の通常国会にTPP関連法案が出されるでしょうから、現行であれば、201711日にパブリックドメインになるはずの、1966年(昭和41年)死去の作家たちは、延長となってしまうかどうか微妙なところです。
以下のように、錚々たる顔ぶれですから、何としても合理的に使えるように仕組みの構築をしてもらいたいところです。
 
昭和四十一年(1966
山中峯太郎(1885.12.151966.4.28
「敵中横断三百里」「亜細亜の曙」
小宮豊隆(1884.3.71966.5.3
「夏目漱石」「芭蕉の俳句」「中村吉右衛門」
鈴木大拙(1870.10.181966.7.12
「禅思想史研究」「浄土系思想論」
亀井勝一郎(1907.2.61966.11.14
「大和古寺風物誌」「我が精神の遍歴」
 

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