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TPP交渉が大詰めの閣僚会合の段階となって、にわかに交渉内容の具体定内容に関する報道が増えています。

その中で、著作権関係の、

 保護期間

 戦時加算

非親告罪化

損害賠償額

の各重要論点についても、具体的な報道が出てくるようになってきました。

 気がついた報道をもとに、少し分析を試みたいと思います。

 
1 保護期間について

 

「保護期間は70年へ延長で固まる」という報道が多いですが、その中で日経新聞が、「例外を設ける」方向である旨報じています。

 
「日本の著作権法では、著作権の保護期間は作者の死後50年間になっている(映画は公開から70年)。ほかのTPP参加国でもカナダやニュージーランド、ベトナム、マレーシアなどは日本と同様に死後50年だ。

 TPPの閣僚会合では、これを原則70年とする案で最終調整するが、例外も設ける。著作物の種類、権利の中身や各国制度を踏まえて、保護期間に幅を持たせる方向で検討する見通しだ。(日経新聞 2015/7/30 2:00

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF29H0H_Z20C15A7MM8000/ 

 

 かなり断定的な記事なので、ニュースソースが信頼できる筋なのかもしれません。「著作物の種類、権利の中身や各国制度を踏まえて」というのは具体的にどういう内容になるのか、非常に注目されるところです。

 「著作物」と一概に言いますが、中にはソフトウェア(コンピュータープログラム等)など、むしろ工業所有権に近いものもあります。それ以外は、言語、音楽、舞踊、美術、図形、映画、写真といったものです。「著作物の種類」という場合には、こういう分け方以外に、「二次著作物」「編集著作物」「データベース著作物」などの分類もあります。

 ソフトウェアは、工業所有権が出願後20年というのとのバランスを考慮して延長はしないというのはあるのかもしれませんし、映画は既に2003年に米国の要求を容れて、公開後70年となっていますから関係ないと思われます(カナダ、ニュージーランドが公表後50年のまま)。二次著作物や編集著作物等だけ50年据え置きというのは、バランス的に考えにくい気もします。そうするろ、「著作物の種類」で保護期間に幅を持たせるというのは、具体的にどういうことになるのか、ちょっとピンときません。

 

 「権利の中身」というのも、いろいろな切り口がありますが、財産権と人格権という切り口、許諾権、公衆送信権とかの切り口、譲渡権、貸与権等の切り口、或いは、許諾権と報酬請求権という切り口があるかと思います。

http://www.tyosakunavi.com/learn/%E8%91%97%E4%BD%9C%E6%A8%A9%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E.html 

 

(1)報酬請求権化の可能性は?

 以前、日本で保護期間の延長について審議会で検討がなされた際、50年超の場合には、報酬請求権化することも選択肢の一つ、という指摘もなされていました。レコードやCD1年経ったら報酬請求権化するという例もありますから、そういったことも含みとしてあるのかもしれません。

ただ、それにしても、権利者の所在が不明では、選択肢として意味がありませんから、権利者が所在をきちんと登録することや、簡易で低廉な権利者探知の仕組みを構築することが前提となってきます。それも海外の著作権者の探索も含めて、国際連携で容易なものにすることが必要となるでしょう。

 

(2)権利維持要件としての登録制は?

 あと「各国制度を踏まえて」という点は、よくわかりませんが、何か裁量の余地がありうるということでしょうか・・・?

 本当は、50年超の場合には登録制+課金制度にして、登録した権利者のみが延長でき、権利維持するためには維持料を支払わなくてはならないというような特許制度、商標制度と同様の仕組みにするのが望ましいところです。そうすれば、延長する権利者は、維持料に見合うだけの利用が実際になされている者だけに限定されるでしょうから、死蔵化の問題の拡大は回避できます(もっとも、特許のように出願単位での課金とは異なるので、実務上難しいかもしれませんが・・・)。

ベルヌ条約では、権利発生については無方式主義(登録不要)を義務づけていて、最低50年の保護期間としていますが、そのベルヌ条約を超える部分については、登録主義にしてもいいのではないのでしょうか? 権利発生は登録不要で最低50年はそのまま保護されるけれども、50年を超えて権利維持するのであれば登録を要するというのは、別にベルヌ条約とは関係のない任意の世界ですし、ディズニーのように権利を維持したいと思うのであれば、登録してくることでしょう。

 米国にしても、福井健策先生が紹介しているように、1920年代に延長するときには、登録制にしたものの、多くは登録しなくて消滅したといいます。日本でも50年超の場合には登録制にしたら、大半は登録されずに消滅することでしょう。権利者の相続人にしても、おそらく、抱える負債等の状況を考えると、著作権も含めて相続放棄してしまっている例も少なからずあると思います。

 

(3)権利者名と所在の登録義務付けは?

 もし、登録を権利維持要件とすることがどうしても難しいのであれば、権利維持要件にはしないけれども、権利者名と所在とを登録することを義務づけるのは構わないのではないでしょうか。それを前提に、簡便かつ低廉なコストでできる権利者探索の仕組みを整備し、死後50年経過していて、その探索により権利承継者が見つからないのであれば、承継者(相続人)はいないものとみなして(または推定して)、権利を消滅させるとか、死亡年がわからない場合には、生年から100年経過していれば、上記と同様の探査手続きを経て、権利を消滅させるというような制度は、あくまで、「死後●年の保護」ということと相容れないことはないはずです。「これこれの場合には、死亡したものとみなす(承継者不存在とみなす)」という制度は、「死後●年保護」という制度にも整合的な現実的な選択肢としてあり得るのではないでしょうか?

 上記の探査手続きは、近代デジタルライブラリー等のデータベース化、電子図書館化など、収蔵図書の活用にも直結する話ですから、国立国会図書館が国民全体の代行的にも行えるようにすれば、格段に活用対象が増えると思います。

 

 いずれにしても、特許権、実用新案権のような工業所有権と比べても長期間過ぎ、また、独占的利益を保証することにより創作意欲を高め、ひいては文化の充実に資するとの知的財産権制度の趣旨に照らしても説明できないような著作権の保護期間の異常な長さです。

にもかかわらず、無方式主義で権利を発生させる一方で、権利者としての義務を何も課していないというのは、どう考えてもアンバランス過ぎます。権利行使をしたいならば、権利者として果たすべき義務があるわけであり、著作権以外では、出願登録とか維持費支払いとか、あるいは財産の登記とかいろいろと、権利享受の条件となる履行義務があるわけです。

 著作権の権利行使の意思があるのならば、そのために、権利者氏名や所在を登録し、使用したい者からのアクセスを容易にするようにしておくということは、当然の、そしてささやかな負担として甘受せらるべきことではないでしょうか? 

 

 銀行や郵便局の預金だって、10年出し入れなく連絡先不明のまま放置すれば、国庫に入ってしまうわけです。法律上の建前としては、銀行の預金は商法上の消滅時効が適用され、5年間権利行使がなかった場合には時効消滅するのです。

墓地にしても、連絡先をきちんと届けておかずに放置すると、いつの間にか撤去され権利は消滅してしまいます。転居したまま2030年振りに墓参りに行ったら、他人の墓が建っていた、という事例が一時よく取り上げられました。

このように、お金とか有形の財産権にしても、連絡先の登録は、権利享受のための基本的義務なわけです。それと同じことを、著作権者やその承継者に求めることがなぜいけないのか?と強く感じます。


 あとは、一時本格検討されたフェアユース条項の採用ですね。

 

 以上のような措置が講じられれば、保護期間が70年に延長になったとしても、かなり悪影響を緩和できるように思います。

 

2 戦時加算の廃止について
 

 戦時加算の廃止については、次のような記事がありました。

 
「日本はまた、第二次大戦の敗戦国に課せられた「戦時加算」と呼ばれる著作権保護期間の上乗せ(約10年)の撤廃をTPPで実現することを目指す。加算対象の米、カナダ、豪州で保護期間が「80年」と長くなる事態は避けたい考えだ。」(毎日新聞20150727日 2035分(最終更新 0728日 0753分))

http://mainichi.jp/select/news/20150728k0000m020060000c.html   

 

 ということであれば、やはり、70年になると戦時加算分を合わせて80年になるから、それを緩和するために、加算分の約10年分を差し引くということが目的だったのか・・・ということですね。

 しかし、それでは70年に延長するバーターとしては小さすぎると思います。やはり、まず、戦時加算を廃止する措置をとって、すでに50年が経過しているものはパブリックドメイン化し、まだ50年が経過していないものについてはそのまま70年にするということにしないと、実質的なバーターにはならないのではないでしょうか?

 日本は20年延長するというのは、大きな痛みを伴いますし、もともと戦時加算という措置自体が不合理だったわけですから、米国側にも一定の痛みを伴うものでなければ、不公平です。

                                                      続く

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