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3 著作権侵害の非親告罪化について
 
 パロディーや同人誌などへの影響が懸念されている著作権侵害についての非親告罪化の件については、次のような記事がありました。
 
「環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で、参加12カ国が著作権侵害に対する刑事手続きについて、著作権者の告訴がなくても捜査当局が起訴できる「非親告罪」に統一する方向で最終調整していることがわかった。親告罪の日本では、著作権者が黙認してきたアニメや漫画のパロディーなどが摘発されかねないとの懸念も根強く、政府は一定の歯止め策を検討する考えだ」(朝日新聞デジタル 20157250839分)
 
「米国が自国と同様の非親告罪化を要求する理由について玉井克哉・東京大教授(知的財産法)は「海賊版がテロリストや反社会勢力の資金源になっていると考えている」と説明する。」(毎日新聞 20150725日 2119分)
 
 海賊版が反社会的勢力の資金源になっているという趣旨での非親告罪化であれば、パロディーや同人誌などへの影響を回避するような一定の歯止め策はあり得るのではないかという気がします。要するに、非親告罪の対象を、著しく反社会的性格を帯びるような、
 
不正利益を得る目的での、デッドコピーの大量頒布に限定する
 
 といった縛りをかけるということです。この点は、著作権の世界ではもともと整備が遅れていた感があります。工業所有権の世界では、特許法、商標法、意匠法が非親告罪化する前に、不正競争防止法で、
 
・他人の商品をそっくりそのまま模倣するデッドコピーを配布したり、
・他人の著名商標を無断で使ったり、
・他人の広く周知されている商標無断で使って誤認混同を惹き起こしたり
 
といった行為を、刑事罰の対象としていました。これらは、告訴を要しない非親告罪です。
 最近では、営業秘密の漏洩が非親告罪に改正されています。これらはいずれも、社会の秩序を大きく乱す反社会的性格を帯びた行為ですから、告訴を要せずに摘発ができるようにするということは、理にかなっています。
 最近、強姦罪を非親告罪化する方向での検討が政府で行われていますが、これも個人の権利が侵害されたということだけではなく、著しく反社会的行為であり再発を抑止し社会秩序を維持するためにも、被害者の意思に関わりなくこれを処罰する必要があるという考え方によります。
 
 3年前に批准した海賊版拡散防止条約(批准はしているが未発効。正式名称は、「偽造品の取引の防止に関する協定(ACTA)」では、商標はデッドコピーを取締り対象としています。
 
「「不正商標商品」とは、ある商品について有効に登録されている商標と同一であり、又はその基本的側面において当該商標と識別することができない商標を許諾なしに付した、当該商品と同一の商品」
 
 この条約では、著作権侵害品についても取締り対象としていますが、商品の模倣、商標のデッドコピーのような、そっくりそのままの複製物だけではないような印象です(ただ、もしかすると、これがデッドコピーの海賊版を意味する法令的表現なのかもしれませんが・・・)。
 
「著作権侵害物品」とは、ある国において、権利者又は権利者から正当に許諾を受けた者の承諾を得ないである物品から直接又は間接に作成された複製物」
 
 ただし、この条約では、非親告罪にはしていません。
 
 
 したがって、著作物についても、「海賊版」と聞いて我々がイメージするような、全部又は一部をそっくりそのままコピー(複写)したようなものを大量頒布するような行為に限定して非親告罪化すれば、反社会的勢力への資金源となることを阻止するとの目的も達成できますし、パロディーや同人誌、社内での少部数のコピーなどが、告発対象となって混乱、萎縮するというような事態も避けることができるのではないでしょうか?
 規定振りとしては、例えば、
 
 不正の利益を得る目的で、著作物の全部又は一部を、許諾を得ずに直接又は間接に複写したものを、不特定多数の者に頒布した者
 
 に対して、非親告罪にするというイメージかと思います。
 
 もともと、もっと早い段階で、不正競争防止法の中で規定すればよかったと思いますが、著作権法の中で規定するということでいいかと思います。
 
 しばらく前に、「出版者の権利」の議論があったときに、こういう規定を不正競争防止法の中で規定していたら、だいぶ議論の内容も違ってきたかと思います。海賊版に対して著作権者だけでなく、出版社においても法的に対応できるようにしてほしい、そのためには著作物を伝達する役割を果たす出版社にも出版者固有の権利(著作隣接権)を与えてほしい・・・という主張でしたが、それでは、著作権や著作権者の権利が損なわれる場合が出てきてしまい、出版社が海賊版対応をするのが義務でもない中で、また出版の態様は千差万別の中で、一律の法的権利だけはできてしまうという、とんでもないものでした。出版社がオールマイティの地位を得ることが元々の狙いだったと思われ、危ういところでしたが、結局は、電子出版権というところに落ち着きました。

 出版社も、海賊版によって利益を侵害されるわけですから、不正競争防止法においてこれを阻止することすれば、同法では、「不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者」に差止請求を認めていますから、出版社の建前の目的を通すのであれば、同法の改正で対処できたはずです。
 海賊版に対しては、民事的に差止め請求をするよりも、告発して警察が立件したほうがよほど効率的で確実ですから、今回のTPP合意を機に、著作権法において、上記のような海賊版の大量頒布行為に対して、誰でも告発できるようにしておけば、出版社の目的は達することができるでしょう。
 
 以上のように、反社会性が高い侵害行為に関する、限定的な非親告罪化であれば、決して悪くない話だと思います。
 警察にしても、同人誌やパロディのような反社会性がほとんどないような行為について、告発マニアによって告発されてもかなわないですし、本当の悪である組織的かつ大量に海賊版を作り不正な利益を得ているような集団に対する捜査に精力を注ぎたいでしょうから、こういう限定は、捜査当局にとっても歓迎だと思います。

【補足】
 日経新聞7月31日付朝刊に、「TPP 12カ国ルール案要旨」というものが載っていました。
 そこでは、著作権の非親告罪化については、次のように書かれています。

「故意に商業的規模で著作物を違法に複製した場合などは非親告罪とする。ただし、市場における原著作物の収益性に大きな影響を与えない場合はこの限りではない。」

  但し書きの「市場における原著作物の収益性に大きな影響を与えない場合」というのは、米国のフェアユース的発想に基づく書きぶりだと感じますしが、これをフェアユース条項がない日本の著作権法で書きこむとするとどういう内容になるのでしょうか?非親告罪化されて刑事罰がかかる以上、その行為内容を外形的に明確にし、予測可能性を高めなくてはいけませんが、具体的な規定ぶりはもう少し違ったものになるのかもしれません。
 本文の「故意に商業的規模で著作物を違法に複製した場合」という中の「商業的規模で」というのも、そのままでは日本の法律にはなじみにくい印象があります。
 そう考えると、おそらくこの合意文案に書かれているものは、考え方であって、あとはこれをもとにして、各国の法令の中で、実質的に実現できるようにせよ、ということなのではないか、と思います。
 そうなると、結局は、このブログ記事で書いたように、

 「不正の利益を得る目的で(=故意に+商業的規模で)、複写物を(=原著作物と同じものを)不特定多数に頒布する

 という規定となるような気がします。原著作物(の全部又は一部)と同じものを頒布して、不正な利益を得るということは、その利益分を、原著作物としては得る機会が失われたということになりますから、この合意文を実質的に担保しているかと思います。
 そして、そのように規定したほうが、同人誌やパロディ、社内での少部数コピーなどは、ほぼ除外されることが明確になりますから、より望ましいと感じます。

 

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【補足】日経新聞7月31日付朝刊に、「TPP 12カ国ルール案要旨」というものが載っており、その中に、著作権の非親告罪化の対象についても書かれていました。これについては、本ブログ記事本文末尾に補足としてコメントしましたので、御参照ください。

2015/8/1(土) 午後 3:34 [ teabreak ] 返信する

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