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【注】 2015年10月10日に、以下の内の赤字部分を追記しています。非親告罪化の悪影響を最小限に抑えるために、「著しい営業上の経済的利益の侵害」がある場合との限定に加えて、「デッドコピー(=海賊版)」による侵害という限定を加えています。また、その後、我が国の法に反映させる具体案の修正もしました。
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 まず、非親告罪化についてですが、これは以前の記事でも書きました。そこでは、著作権者以外の利益侵害も含んだものという前提で書いているので、記述の修正の必要があります。改めて書いてみたいと思います。
 
 非親告罪化は、コミケ、同人誌などに対する安易な告発の濫用で、萎縮してしまい、漫画等の文化の発展を阻害する、クールジャパン戦略の支障になる、等の強い懸念が関係者の間では言われています。
 たしかに、韓米FTAにより、2006年から非親告罪化した韓国では、懸念を裏付けるような事態も生まれているようにレポートされています。
 
◎「著作権非親告罪化にした韓国がどうなったか話します。」
 
 今回の協定概要をみると、非親告罪化するものの、一定の歯止めが規定されています。
もともとの狙いは、「海賊版がテロリストや反社会勢力の資金源になっているので、それを遮断する」というものですから、そういうものではなく、著作権者も黙認しているような形式的侵害について、趣味的な告発で振り回されるのは、警察にとってもたまったものではありませんから、当局側としても歯止めを規定したいという思惑はあることでしょう。
 その歯止めの規定は、次のようになっています。
 
「故意による商業的規模の著作物の違法な複製等を非親告罪とする。ただし、市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与えない場合はこの限りではない。」
 
 これは、それなりに実効的な歯止め措置になり得るのではないかと感じます。
 実際に、法律に書き込む場合には、この通りの表現ではなく、その趣旨をくみ取って、日本の法令に則した表現の仕方にすると思われます。それをどう表現するかというと、例えば次のようなイメージになるでしょう。
  ※ 第1案、第2案は、非親告罪の趣旨と少しずれるので取り消します。同趣旨ですが、修正案をご覧ください(2015.10.10)

【第1案】
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第○条 △条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2 前項の罪に係る著作権侵害行為により、著作権者の営業上の経済的利益を著しく侵害していると思料する者は、当該罪について告訴をすることができる。ただし、当該告訴が著作権者の明示した意思に反する場合は、この限りでない。
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【第2案】 ←デッドコピー(=海賊版)に限定をかける場合(赤字部分)
*********************************
第○条 △条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2 前項の罪に係る著作権侵害行為であって、著作物の全部若しくは一部と同一のももの(翻訳したものを含む)又は模倣したものを譲渡、展示、輸出入、公衆送信をしたものにより、著作権者の営業上の経済的利益を著しく侵害していると思料する者は、当該罪について告訴をすることができる。ただし、当該告訴が著作権者の明示した意思に反する場合は、この限りでない。
*********************************

【修正案】2015.10.10 
*********************************
第○条 △条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
ただし、著作権侵害行為であって、著作物の全部若しくは一部と同一のもの(翻訳したものを含む)又は模倣したものを譲渡、展示、輸出入、公衆送信をしたものにより、著作権者の営業上の経済的利益を著しく侵害している場合はこの限りではない。
2 前項ただし書きは、著作権者の明示した意思に反する場合には適用しない。
********************************

 これらの条文を見れば、安易に告発が乱発されてしまうようなことにはならないという印象を受けるのではないでしょうか。
 この規定素案は、TPPの合意文を裏返して書いたものです。
 
【協定案】「故意による商業的規模の著作物の違法な複製等」
  →【規定素案】「著作権侵害により、営業上の経済的利益を侵害している」場合

【協定案】「市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与えない場合
  →【規定素案】「著しく営業上の経済的利益を侵害している場合」に限る。
 
【協定案】「原著作物等の収益性に大きな影響を与えない場合はこの限りではない。」
  →【規定素案】「著作権者の営業上の経済的利益を著しく侵害している場合」に限る。
 
 
解説しますと、
「商業的規模」の著作権侵害に限られるという趣旨ですから、「営業上(=商業上)の利益」の侵害に限られるという解釈です。
 ②「収益性」に影響する場合を対象にするという趣旨ですから、「経済上の利益」の侵害に限られ、それ以外の人格的利益等は対象外という解釈です。
 ③「市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与えない場合はこの限りではない。」
ということは、「収益性に影響する度合いが大きい場合に限られる」という趣旨ですから、経済的利益が、「著しく」侵害された場合に限られるという解釈です。
「原著作物等の収益性に影響」ということは、あくまで著作権者の経済的利益が侵害される場合に限られ、告訴する者の利益が侵害される場合ではありません。
⑤したがって、著作権者がその告訴に反対したり、利用継続を認める場合には、経済的利益を侵害されているという被害者意識はないのだから、罰するまでもなく、告訴は認められない。
   漫画家の赤松氏が検討しているようなコミケOKの同人マークなどは、著作権者の意思を示すものとして機能しますから、より安心して使うことができることになります。
 ⑥なお、そもそもの定義として、著作権侵害は、「公衆」に供することによって成立しますが、この場合の「公衆」は、「不特定者又は特定多数」という意味です。
  特定の仲間内だけでコピー等をシェアする場合などは、はじめから侵害になりません。
  「なお、何人をもって多数というかですが、特に人数が定められているわけではなく、著作物の種類や利用の態様などを総合的に勘案して判断されることになります。」(文化庁著作権質問箱)
 
(注)現行の著作権法でも、著作権者以外の者による告訴が可能な場合が規定されていますが、著作権者の意思に反する場合は告訴できない、とされています。
**********************************
第百二十三条 第百十九条、第百二十条の二第三号及び第四号、第百二十一条の二並びに前条第一項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2 無名又は変名の著作物の発行者は、その著作物に係る前項の罪について告訴をすることができる。ただし、第百十八条第一項ただし書に規定する場合及び当該告訴が著作者の明示した意思に反する場合は、この限りでない。
**********************************

 なお、第2案の、デッドコピーに限定することが、TPPの大筋合意の内容から可能かどうかは微妙かもしれませんが、趣旨は海賊版による反社会的勢力の資金源となることを遮断するということでしょうから、限定の可能性はあると思います。 
 その場合、「デッドコピー」という概念を現わす表現としては、不正競争防止法があります。
 商標のデッドコピーは、「同一又は類似のもの」と表現され、商品の形態のデッドコピーは、「模倣したもの」と表現されています。
 上記第2案では、書籍、絵画、音楽等を念頭に、「全部又は一部が同一のもの」とし、それに翻訳を含めることにしています。立体的な彫刻、建築等については「模倣」という表現にしてあります。

第二条  この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
  他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為
  自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為
  他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為


こうやって考えていくと、今回の協定案での非親告罪化における歯止め規定は、それなりによくできているような気がします。
 もし、上記のような規定案で歯止めをかけることができれば、当局は、「著作権侵害があること」だけではなく、「著しく著作権者の営業上の経済的利益を侵害していること」を証明する責任を負うことになりますかし、第三者が告発する場合でも、安易にはできなくなるでしょう。下手に告訴をしたら、誣告罪や名誉毀損で逆に訴えられるリスクを抱えることになります。
 
 この非親告罪規定の導入で狙っているのは、たとえば、村上春樹の新刊が出ると同時に大量にコピーして海賊版(翻訳も含む)を作って、売り捌くようなケースでしょう。中国でよく見られるような、CDDVDの大量コピー工場のような場合もそうでしょう。そのような場合には、「著しく著作権者の営業上の経済的利益を侵害していること」は明らかですから、警察が著作権者の告訴を待つまでもなく捜査し立件することは可能です(実際には、その著作権者に照会して、その告訴を受けると思いますが)。それによって、反社会的勢力が海賊版を資金源とすることを阻止するという目的は十分達することができるでしょう。
 警察としても、愉快犯的な告発が乱発されて余計な手間暇を割かなければならないような事態を回避できますから、歓迎だと思います。
 
 強姦罪を非親告罪化するのは、犯罪行為自体が著しく反社会性を帯びているからです。ですから、被害者の意思は別として、処罰できるようにしようという発想です。
 他方、著作権はあくまで私的財産ですから、その私的財産の侵害行為をどう受け止めるかは、著作権者次第のはずです。それでも、告訴を待つまでもなく罰しようとするのは、それが著しい反社会性を持つ場合に限られるはずです。そういう大局をよく踏まえて、規定に反映されるようにしてほしいものです。


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一部追記しました。非親告罪化の悪影響を最小限に抑えるために、「著しい営業上の経済的利益の侵害」がある場合との限定に加えて、「デッドコピー(=海賊版)による侵害」という限定を加えています。

2015/10/10(土) 午前 10:33 [ teabreak ] 返信する

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teabreak様。初めてコメント致します。

今回のTPPの妥結により、文面を素直に読む限り。
図書館の本をコンビニでコピーしたり、
TV番組をレコーダーで録画しCM等を編集でカットしたり、
自分で遊ぶ為だけに映画や漫画を題材にしたゲームを製作したり、
飲み会で歌謡曲の替え歌を歌ったり、
しても処罰の対象になる様な気がするのですが。

2015/10/10(土) 午後 0:03 [ nnshn_gnhye ] 返信する

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コメントをいただき有難うございます。後で補足的に記事にするつもりですが、合意文の中に少なくとも「商業的規模」のものを権利保護すべき旨書いてありますが、これは、外務省によれば定義は不明確だそうで、各国の国内法で決まるようで。ただ、少なくとも、私的利用の場合は除かれるとされています。また、この合意は著作権の国際協定であるベルヌ条約やWIPO,TRIPS等の著作権保護の関係規定に言及しています。ですので、権利保護の基本的枠組みは従来と変わらないものと思います。
ご指摘のうちの、自分や家族が、図書館の本をコピーしたり、録画編集したり、ゲームを製作したりということは、私的使用の範囲ですので、侵害にはならないということかと思います。なお、著作権は「公衆」に対して提供等をする権利ですが、「公衆」とは「不特定又は特定多数」とされています(文化庁の質問箱に書いてあります)。このため、特定範囲の友人、仲間(=「特定少数」)との飲み会で歌謡曲の替え歌を歌ったとしても、権利対象外で侵害にはならないということかと思います。
※ 一度アップしたコメントを修正しました。本文も一度修正したものを再修正してありま

2015/10/10(土) 午後 3:02 [ teabreak ] 返信する

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teabreak様。迅速なご回答、本当に有り難うございます。

以前のそちら様の記事によれば、日米間で日本における著作物の私的利用については別途協議と附則にあるようですので、
将来的には、こうした「私的利用」も全て侵害に当たるようになるのでしょうか。

また、先日流し見したHPでは、統計資料本などをコピーし会社の会議で配布することが著作権侵害になる危険性がある、と指摘されていましたが、可能性は有るのでしょうか。

大筋合意の条項の文面は、私にはどちらかと言うと所謂海賊ソフトと違法UP(ダウン)ロードを指しているように見えますが、正直現在の政府の方々は、法律の文面を拡大解釈(で良いんですか)することが多いような気がするので、心配です。

2015/10/10(土) 午後 8:01 [ nnshn_gnhye ] 返信する

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日米間協議の件は、別途記事にしましたので、お読みいただければと思います。
なお、会社内での書籍等のコピー配布は、文化庁の質問箱での回答では、「企業内の会議資料や参考資料として、新聞・雑誌の記事等を複写して配布することは、著作権者の了解なしにはできません。」とあります。
http://chosakuken.bunka.go.jp/naruhodo/answer.asp?Q_ID=0000284

ただ、日本複製権センターに委託されている出版物であれば、一定の手続きで可能です。
http://www.jrrc.or.jp/

2015/10/11(日) 午前 5:13 [ teabreak ] 返信する

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