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 先日書いたTPP大筋合意に関するコメントのうち、非親告罪に関するもの


について、若干の補足をしたいと思います。
 
 まず、合意文の中の、「商業的規模で」の意味合いについてです。
これは、調べると、2010年に大筋合意し、我が国も批准した「偽造品の取引の防止に関する協定」(ACTAあるいは模倣品・海賊版拡散防止条約と一般には呼ばれます)でも、同じ文言が使われていました。
 
 ウィキリークスが、TPP合意全文をリークしていますので、それと比較してみます。
 
【偽造品防止協定(ACTA)】
ARTICLE 2.14: CRIMINAL OFFENSES
 
1. Each Party shall provide for criminalprocedures and penalties to be applied at least in cases of willful trademark counterfeiting or copyright orrelated rights piracy on a commercial scale.
For the purposes of this section, actscarried out on a commercial scale include at least those carried out as commercial activities for direct orindirect economic or commercialadvantage.
 
 TPP大筋合意】P4445
Article QQ.H.7: {Criminal Procedures andPenalties}
 
1. Each Party shall provide for criminalprocedures and penalties to be applied at least
in cases of willful trademarkcounterfeiting or copyright or related rights piracy on a
commercial scale. In respect of willful copyright or related rights piracy, “on acommercial scale” includesat least:
(a) acts carried out for commercialadvantage or financial gain; and 
(b) significant acts, not carried out forcommercial advantage or financial gain,that have a substantial prejudicialimpact on the interests of the copyright or related rights owner in relation to the marketplace
 
 刑事罰の関係条文ですが、全体の文言は少し違いますが、規定しようとしていることはほぼ同じではないかと感じますが、TPPのほうが、より具体的に書いてあります(TPPの方が、非商業的活動についても明示的に規定しているので、少し広いかもしれません)。
 少なくとも、著作権、著作隣接権に対する「商業的規模」の故意による侵害行為に対して、刑事手続き、刑事罰を整備せよ、ということです。
 
その「商業的規模」の侵害については、ACTAでは、
「直接的又は間接的な経済的・商業的利益のための商業的行為」
を少なくとも含むとあります。TPPでは、
「(a)商業的利益又は金銭的収益のための行為 
  (b)商業的、金銭的利益のためではなくても、市場における収益の上で相当に大きな不利な影響を与える行為」
 を少なくと含むとあります。
 
 それで、その「商業的規模」の定義ですが、これは定められていないようです。この点は、偽造品防止協定(ACTA)の場合にも指摘があり、国会で外務省は次のように答えています。結局、「定義は協定上は不明で、各国の国内法による」ということでした。
 
******************************:
- 外務委員会 (平成240831日)

○大泉委員 もう一つ、二十三条の刑事罰の規定でございますが、ここには、少なくとも故意により商業的規模で行われる云々という規定がございます。商業的規模、英文ではコマーシャルスケールということでございますけれども、この定義が不明ではないかという御指摘があるわけでございます。
 例えば、著作物を個人的に楽しむための場合が除外されているかどうかよくわからないという指摘があるわけでございますが、これについてはいかがでございましょうか。

○八木政府参考人 ACTAの第二十三条は、御指摘のとおり、著作権を侵害する複製等であって故意により商業的規模で行われるものについて適用される刑事上の手続及び罰則を定めることを規定しておりますが、商業的規模については、その具体的かつ詳細の内容までは定義されておりません。したがいまして、実際にいかなる規模の行為が刑事罰の対象となるかについては、各締約国の国内法によるものと考えられるところでございます。
 一般的には、商業的規模とは、商業的という質的な要件と規模という量的な要件の両方を指すというふうに解されるところでございます。御指摘のような、単に著作物を個人的に楽しむ場合、これは商業的規模には当たらないというふうに考えているところでございます。
 なお、我が国の著作権法第三十条では、私的使用目的であれば、基本的に、一定の場合を除き、複製できるとされているところでございます。
********************************
 
 この答弁は、TPP合意でも定義がない以上、TPP合意の解釈上も適用されるということになります。
 そして、この「商業的規模」という用語が、非親告罪化の規定でも、キーワードのひとつになっているという構図です。
 それで、TPPでの非親告罪化の点は、次のように規定されています。
 
(g) that its competent authorities may actupon their own initiative to initiate a legal action without the need for a formal complaint by a privateparty or right holder.
 
 これは、当局は告訴なく立件できるということですが、これに注釈の「144」で、
 
 144With regard to copyright and related rights piracy provided for by QQ.H.7.1 (CommercialScale), a Party may limitapplication of subparagraph (h) to the cases where there is an impact on theright holder’s ability to exploit the work in the market
 
 商業的規模の侵害行為については、政府の公表した合意概要では、「市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与えない場合はこの限りではない」とされています。合意文を逐語的に読むと、「権利者の市場開拓能力に大きな影響を与えない場合には、適用を制限してもよい」といったところでしょうか(妙な日本語ですが・・・)。
 
impact」の語のニュアンスですが、研究者の新英和中辞典をみると、「突き刺さる」「強い衝撃を与える」とあります。
 ということは、我が国の法令用語に置き直すのであれば、
「著しい悪影響を及ぼす」
「著しく侵害する」
ということになるのではないでしょうか。いずれも、法令用語として、いくつか例があります。
 
 
●このTPPの大筋合意の著作権侵害に対する刑事的対応の考え方を、構図的に示すと、
 
ベルヌ条約等や著作権法では、
「経済的損害の有無を問わない侵害」を対象としていて、形式的侵害も含みますし、営利・非営利を問わず、侵害行為は原則として罰せられる仕組みです(もちろん故意が必要)。
 ただし、侵害にならない範囲があって、次の二つです。
    特定少数の利用に留まる侵害(公衆の定義による)
    私的利用に留まる侵害(権利制限規定による)
 
 それで、偽造品防止協定(ACTA)や、今回のTPPでは、
 
「少なくとも、経済的損害を伴う侵害を刑事罰の対象とせよ」
 
 とし、非親告罪化せよとしていますが、裁量として、非親告罪化の対象を、
 
「著しい経済的損害を伴う侵害」
 
に限定してもいい、としているという構図です。
 
「少なくとも、経済的損害を伴う侵害を刑事罰の対象とせよ」ということは、裏を返せば、「経済的損害を伴わない侵害は刑事罰の対象にする必要はない」ということです。
これは、まさに、「フェアユース」の考え方でしょう。どこまでの範囲が経済的損害をもたらす行為かは、ケースバイケースで個別に判断するというのが、米国式のフェアユース規定だろうと思います。
 
こうやって考えてくると、TPP合意文は、二つの裁量的要素があることがわかると思います。
第一は、刑事罰の対象とすべき「商業的規模」での経済的悪影響を及ぼす侵害行為をどういう対象とするかという点です。米国のように、抽象的に定めておいてあとは訴訟で個別判断というとも一つのパターンです。
第二は、非親告罪化する場合として、「著しい経済的悪影響」を及ぼすケースをどういう対象とするかという点です。
 
●これらの各国裁量があるのであれば、先日書いたブログ記事で提案した第1案か第2案でいけるのではないか・・・と改めて思いました。「著しい経済的損害」の考え方として、デッドコピーに限るといような、漫画家の赤松さんが主張しておられるような限定の仕方も十分にあると思いますので、その考え方を反映した第2案がいいと思いました。


 が、それはともかく、考えてみると、非親告罪というのは、「当局が告訴を待たずに訴追できること」ということであって、別に第三者が告発ができるかどうかは関係ないわけで、
 
「親告罪においても、第三者による告発や警察独自の判断による捜査、あるいは現行犯逮捕などは非親告罪と同様」(ウィキペディア)
 
ということであれば、第三者の告発のことに言及する必要はないわけですね。第三者が告発できるようになり、その濫訴による弊害をいかに防ぐか、いかに要件を限定するかというところに頭が行っていたことと、「無名・変名の著作物については、発行者が告訴できる」という規定に引っ張られて、ちょっとピントはずれの案になっていました。
 以下のように修正します。
 
*********************************
第○条 △条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
ただし、著作権侵害行為であって、著作物の全部若しくは一部と同一のもの(翻訳したものを含む)又は模倣したものを譲渡、展示、輸出入、公衆送信をしたものにより、著作権者の営業上の経済的利益を著しく侵害している場合はこの限りではない。
2 前項ただし書きは、著作権者の明示した意思に反する場合には適用しない。
*********************************
 
こういうハードルの高い要件にしておけば、第三者による告発、濫訴の恐れは相当程度減ることでしょうし、それでも告発しようとすれば、名誉棄損や誣告の罪で訴えられるリスクが生じます。


以下、上記を踏まえて、理論武装を試みます。


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