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TPPとと著作権

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  【注】 末尾に、続報を載せていますので、ご覧ください。 

 昨日(6月28日) に、TPP11の関連法案が参院の委員会で可決され、今日にも本会議で可決・成立する見込みとのことです。


「TPP11関連法案 参院内閣委で可決
日経新聞 2018/6/28 17:30
 参院内閣委員会は28日、環太平洋経済連携協定(TPP)参加11カ国の新協定「TPP11」の関連法案を与党などの賛成多数で可決した。与党は29日にも参院本会議で可決・成立させる構えだ。すでにTPP11の協定は可決・承認しており、関連法案が成立すれば日本の国会手続きが完了する。政府は各国にも手続きを促し、早期の発効を目指す。」


●それで、問題は、この法案に中に、TPP11合意では米国復帰まで凍結したはずの、著作権保護期間の死後70年への延長が、米国復帰を待たずに、TPP11の発効とともに施行されるようになっていることです。
 確認してみると、たしかに、法案ではそのようになっていました。内閣官房が提出した法案内容が以下に掲載されています。

 著作権だけでなく特許権等の関係規定も、米国復帰までの凍結合意に関わらず、日本独自の判断として、TPP11発効のタイミングで施行するということのようです。

 5月時点での新聞報道では、次のように書かれていました。

「関連法案の一つとして政府が提案した著作権法の改正は、新協定の発効と同時に、音楽や書籍などの著作権の保護期間を作者の死後五十年から七十年へと二十年延長する内容だ。新協定が発効すれば、古い作品を自由に楽しむことができる時期が二十年先に延びる。
 
 著作権の保護延長は、米国も加わっていた以前のTPPの交渉でメディア産業が強い米国の主張が通り、盛り込まれた。米国を除く十一カ国での新協定では、離脱した米国が戻るまでは実施しない「凍結」扱いとなっているが、政府は「著作権は欧米の七十年に合わせることがグローバルスタンダードだ」(交渉関係者)とし、旧協定の取り決め通り延長する。
 
 TPPの新協定は、六カ国以上が国内手続きを終えると発効する。日本は関連法案が参院で可決されれば、メキシコに次いで手続きが終わる。残る参加国での承認が滞らなければ、早ければ年内にも発効する見通しだ。」
 2018525 東京新聞朝刊 )

●どのみち、日欧EPAが来年には発効するのですから、あえてTPP11で独自に施行させる必要などなかったはずです。
 これで、もしかすると、日欧EPAだけであれば、来年1月1日にパブリックドメインになる可能性が高かった作品群が、そうはならず20年先まで延びてしまう可能性が出てきました。
 この辺のどさくさ紛れの決定可能性については、早稲田大学の中山一郎氏が詳述している内容が興味深いです。 
 
 ◎コラム:保護期間延長問題と著作権法改正プロセス(中山一郎)
   RCLIP2018227


●それはさておき、それでは、TPP11の発効時期がいつになりそうか? ということが今後の焦点になってきます。
 すでに、メキシコが国内手続きを完了させていますので、日本は2番目ということだそうです。そうすると、あと4カ国が必要ですが、どうなるでしょうか?

 TPP11の参加国は、次の11カ国です。

シンガポール・チリ・ニュージーランド・ブルネイ・オーストラリア・ベトナム・ペルー・マレーシア・カナダ・メキシコ・日本

 これらの国々の国内手続き状況がどうなのか、Googleで検索しても、なかなか情報が見つかりません。
 5月時点で、ニュージーランドが審議に入っていると報じられています。

 他の国々も、米国からの2国間交渉の圧力がありますので、このTPP11で防波堤にしたいという思惑があると思われますので、早期に批准国が揃う可能性もあるかもしれません。他方で、農産品等の国内問題はどこも政治問題化しやすいですから、そうトントン拍子にいくとも思えません(半分期待を込めてですが・・・)
 継続してフォローしたいと思います。

●以前の日欧EPAに関連した記事で書いたように、来年1月1日からパブリックドメインになるはずだった作家群がいますが、それがどうなるのか、不透明になってきました。

●現在、所有者不明の土地の扱いが社会問題になっていて、その利用促進のために登録義務付けとか所有権放棄制度とかの検討が行われるようなことが報じられています。
 それと同様の発想で、著作権があるとしても利用されていないものについては、利用促進が図れるような仕組み作りの検討をしてもらいたいものです。
 銀行預金だって、10年預けっぱなしで「放置」しておくと、権利がなくなるという法律の仕組みになっているのですから(銀行や郵便局は運用で払い戻しに応じているというものです)、著作権も智恵を出してほしいところです。


【続報】
 6月30日付の各紙では、他国の国内手続き状況が紹介されていました。
 それで、「早ければ年内にも発効へ」と書く新聞(日経、読売)と、「来年年明け早々にも発効する見通し」(東京)とに分かれます。
 ただ、6カ国揃っても、発効日はその60日後ですので、10月末までの4か月間に、あと4カ国の批准が揃うかどうかが、年内発効か年明け発効かの分かれ道になります。

 それは、昭和43年(1968)死去の、村岡花子、子母沢寛、広津和郎、奥野信太郎、若山喜志子、木山捷平、丸岡明、沢瀉久孝、大原總一郎らの各氏の著作権が切れるかどうかの分かれ道でもあります。

「TPP116カ国以上が国内手続きを終えれば、60日後に発効する。日本はメキシコに続き2カ国目の批准を目指す。カナダとニュージーランド、オーストラリアも批准の国内手続きを進め、シンガポールやチリも年内批准を目指している。」「日本は他国に国内手続きを急ぐよう働きかけ、年内の発効を目指す。」(日経新聞)
 
「他国の作業が順調に進めば、来年の年明け早々にも発効する見通しだ。
TPP11の発効には六カ国以上の国内手続きを終えることが必要。既にメキシコが完了しオーストラリアとニュージーランドでも手続きが進む。ベトナム、シンガポールも意欲的で来年初頭にも発効の見込みだ。」(東京新聞)

【補足注】 
 以下の記事で、 「TPPでは米国が復帰するまで凍結された」と書きましたが、実際に出された米国抜きのTPP11の実施法案では、凍結合意に関わらず、TPP11発効と同時に施行となる規定となっていました。したがって、もしTPP11が年内発効となると、来年1月1日からパブリックドメインになるはずだった作品群はそうはならず、20年先まで延びるということになります。後は焦点は、TPP11の発効時期ということになってきます。6カ国が国内手続き完了すれば、発効する仕組みです。
*******************************

 著作権保護期間の70年への延長が、来年春にもなされる見通しとなってきました。
 70年への延長については、TPPでは米国が復帰するまで凍結されましたが、それとは別に、日欧経済連携協定(EPA)で盛り込まれています。この日欧EPAが、今年末までに批准され、来年3月までに発効との見通しとなったと、一斉に報じられています。
 EUは、28カ国の政府全ての承認が必要なので、もっと時間がかかるとかと思っていましたが、それが必要な分野を切り離したことにより、早期批准、発効の目途が立ったのだそうです。
 
◎日欧EPA、英離脱前の発効にメド 
欧州委が協定案採択、議会承認「年末まで」
日経新聞 2018/4/18 19:44
  
 【ブリュッセル=森本学】日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が2019年3月の英国のEU離脱前に発効するメドがたってきた。EUの欧州委員会が18日採択した協定の最終文案で、加盟国ごとの議会承認が必要で批准に時間を要する投資分野を正式に分離したためだ。早期発効で日欧は自由貿易の堅持を訴える狙い。日英が検討中の自由貿易協定(FTA)にとっても、離脱後の速やかな交渉入りへ追い風になる。
 
 欧州委は6月下旬のEU首脳会議でのEPAの正式承認を目指す。日本側もほぼ同時期に閣議決定する見通しで、7月中旬に日欧首脳が署名する。安倍晋三首相は仏政府から7月14日のフランス革命記念日恒例の軍事パレードへの出席を求められており、それにあわせてブリュッセルで日欧首脳会合を開き、署名する方向で調整している。
     (中略)
 日欧は秋にも議会へEPA案を提出する方針。EUで通商政策を担うマルムストローム欧州委員は18日、仏ストラスブールの欧州議会で記者会見し、「すべてが順調に進めば年末までに批准される」との見通しを示した。交渉筋によると、日欧の議会が年末までに批准できれば英国のEU離脱前の発効が確実になる。
 
■そうすると、来年=201911日は、現行のままですから、1968年死去した作家は、著作権切れとなりますが、それ以降に死去した作家は、あと20年近く待たないとパブリックドメインにならないということになります。
 以下の「死せる作家の会」というサイトに、主な作家の死去年が書かれています。
 著作権が切れる作家で、比較的名前が知られているのは、以下でしょうか。
 
昭和四十三年(1968
奥野信太郎(18991968.1.15
子母沢寛(1892.2.11968.7.19
若山喜志子(〜1968.8.19
木山捷平(1904.3.261968.8.23
丸岡明(1907.6.291968.8.24
広津和郎(1891.12.51968.9.21
村岡花子(〜1968.10.25
沢瀉久孝(18901968
大原總一郎(19091968
 
 残念ながら、次のような作家は、わずかな差で、著作権保護期間延長の対象となってしまうようです。


松岡譲(1891.9.281969.7.22
中山義秀(1900.10.51969.8.19
安藤鶴夫(1908.11.161969.9.9
長谷川如是閑(18751969.11.11
伊藤整(1905.1.161969.11.15
石田波郷(1913.3.181969.11.21
獅子文六(1893.7.11969.12.13
大宅壮一(1900.9.131970.11.22
三島由紀夫(1925.1.141970.11.25
内田百間(1889.5.291971.4.20
高橋和巳(1931.8.311971.5.3
平塚らいてう(18861971.5.24
志賀直哉(1883.2.201971.10.21
川端康成(1899.6.141972.4.16


■次回記事で、著作権のある作家の作品について、どうすれば利用できるかについて、少しまとめてみたいと思います。


 著名作家であっても、死後50年や70年も経っていると、場合によっては、承継人が相続放棄している場合もあります。借金を抱えていると、相続するとかえって負担になってしまうので相続放棄をする例もあるようです。そうすると、著作権も放棄されたことになりますから、使える可能性も出てきます。
 また、文化庁がいろいろ工夫して改正した現行の裁定利用の制度は、かなり使いやすくなっていると思いますので、うまく使えば、低コストで利用が可能になる道もあるような気がします。


  TPP11の正式合意が発表されました。
 著作権保護期間の延長は正式に凍結となりました。
 ・・・が、欧州との経済連携協定で、70年延長が大筋合意として含まれているとは、初めてしりました。
 タイミングがいつになるかですね・・・。

◎新たなTPP11協定の合意を正式発表
2017年11月11日 16:20
                                    日本テレビ

「TPP(=環太平洋経済連携協定)をめぐり、アメリカを除く11か国が新たなTPP11協定の合意を正式に発表した。
 交渉をめぐっては、10日にカナダが突然異論を唱え首脳会合が中止になったが、11日、正式に合意が発表された。
 従来の協定約1000項目のうち著作権の保護期間の延長などアメリカが主張した項目の一部・20についてアメリカが復帰するまで凍結する。それ以外の、オーストラリア産牛肉の関税引き下げなどは維持される。」


**********************************************
【以下は、発表前の11日の記事です】

 本日、米国抜きの新協定であるTPP11の大筋合意内容の発表があります。

 著作権の保護聞延長の扱いが気になるところですが、読売新聞とテレビ朝日が、延長凍結と報じています!

●テレビ朝日は、内部資料を入手したそうで、それをもとに報じています。

アメリカを除く11カ国のTPP(環太平洋経済連携協定)閣僚会合は、ベトナム・ダナンで最終日を迎えます。解決すべき凍結項目が絞り込まれ、大筋合意目前まできています。

 (経済部・進優子記者報告)
 各国で解決すべき課題は9項目まで絞り込まれたということです。大筋合意に向けて大きく前進しました。11カ国はアメリカの強い意向で決められた項目をアメリカが復帰するまで当面、凍結することで何とか合意の枠組みを守ろうとしています。これまで各国の利害の差が大きい医薬品のデータ保護期間や著作権は各国、凍結する方針でまとまりました。入手した資料によりますと、最終的に9項目にまで絞られました。最後まで残ったのが新興国への投資リスクを抑えるために訴訟できる権利と労働者の権利問題です。訴訟の権利はTPPの骨格ですが、日本が最後、譲る可能性もあるということです。また、労働者の権利はベトナムが労働組合を認めていないため凍結を求めていて、カナダが強く反発していますが日本が説得を続けています。関係者によりますと、日本が両国の説得を行い、ベトナムには他の項目を譲ることで認める方針だということです。この後の閣僚会合で大筋合意を目指すものの、10日の首脳会合ぎりぎりまで最終調整が行われる模様です。」

●読売新聞は、ネット記事ではヒットしないのですが、今日(11月11日)の朝刊の解説記事の中に、

米国が強みを持つ映画や音楽などの著作権の保護期間(70年以上)や、バイオ医薬品を開発した製薬会社の独占販売権を守る「データ保護期間」(実質8年)などの項目を凍結する方向で調整している。

●本日11日に、大筋合意内容を正式発表とのことですが、来年1月に署名・正式合意に至れば、これで当分は、著作権保護期間は、現行の50年のままということになりそうです。

 これによって、おそらく、1970年死去の作家の作品くらいまでは、自由に利用できるようになり、青空文庫等の文藝関係者にとっても、朗読関係者にとっても、大幅に選択肢が広がるものと期待されます。

 以下の記事をご覧いただくと、様々な分野の様々な著作者が該当することがおわかりいただけます。
 これらの著作者が再発見、再発掘されて、青空文庫やそれ以外の形で紹介されることによって、文芸の世界は、豊かなものになることでしょう♪






 【注】
 この記事は、その後、日欧EPAに死後70年への保護期間延長が盛り込まれれ、2019年春には発効、施行される見込みとなったため、状況が違ってきています。以下の記事をご覧ください(2018.6.16)。
******************************** 

著作権の保護期間の70年への延長問題について、少し見通してみたいと思います。
この件は、TPP合意からの米国離脱により、宙に浮いた形になっています。ただ、その後の動きとしては、2つあって、
  1. 一つ目は、米国抜きの環太平洋経済連携協定(TPP11)です。今年11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合で方向性を固めることになるそうですが、「米国抜き」に難色を示すベトナム、マレーシアなどのメンバー国を日本が主導して説得することができるかどうかがカギだと言われています。
     つまり、日本政府は、TPPで合意した70年への延長を前提としているということになります。
  2. 二つ目は、米国から2国間での自由貿易協定の締結を求められており、これに対してあくまで多国間での協定の必要性を唱える日本との間での交渉に関する動きが、今秋のトランプ大統領訪日を契機に活発になると思われます。
  3. なお、日EU経済連携協定が大筋合意とされていますが、その中では知財権関係は、地理的表示の問題が中心のようで(ワイン等の産地表示等)、著作権保護期間の延長はテーマとはなっていないようです。
 
 こういう情勢下で、それらの合意がなされるとして、いつなされるのかが大いに気になるところです。そのタイミングまで、現行の保護期間50年間でいくわけですので、期待を込めて、いろいろ考えてみました。
 1970年(昭和45年)に死去した三島由紀夫、大宅壮一などの保護期間が、50年でいくのか、70年でいくのかで、大きく変わってきます。
 死せる作家の会のサイトを睨みながら見ていきます。
 
■まず、1967年死去の著作権者は、現行の保護期間のまま、来年の201811日に著作権切れとなり、パブリックドメインになることは確実です。
 時代小説の大作家である山本周五郎が公開されるのは、大きいですね。児童文学の壺井栄、詩人の窪田空穂、吉野秀雄、評論家の笠信太郎、その他にも森鴎外の娘の森於菟、あるいは法制学者、言語学者らで著名な人々が公開となります。
 
 嬉しいことです。
少々、話がそれますが、嬉しいというのは、別に著名な作家らが公開になって、自由に使えるようになるということだけが嬉しいという趣旨ではありません。忘却されかけていた、あるいは忘却されていた著作者とその作品が蘇り、陽の目を見ることが可能になる、存在の再認識の契機になるという趣旨によるものです。
 青空文庫の「そらもよう」欄をたまたま覗いてみたら、「ある年を当たり年と言う風潮が生まれてきた」とありました。これはおそらく、このブログで「当たり年」という言葉を複数回使ったことも影響しているものと想像されます。
 しかし、当ブログが、著作権保護期間の延長に反対し、その理由として、僅か1%の著名作家のみがメリット受けるかもしれないだけで、圧倒的多数の著作者は忘却の彼方に行ってしまい、文芸文化の発展という観点から決して望ましいことではない、という点を繰り返し力説してきたことを、読者の方であれば、ご理解いただけると思います。たとえば、
 
「今から20年先の時点を想像して、作家のなかで、絶対に単行本なり文庫本が発行され続け、長く読み継がれるだろうと思われるのは何人いるでしょうか・・・・。
ごくごく一握りの作家だけでしょう。朝日新聞記事の調査の数字が飛躍的にあがる(=保護期間を60年、70年に延長したとしてその恩恵を受けるであろう作品の割合が上がる)ことはまず考えられないところです。
 では、まだ没後、日が浅い、あるいはご存命の作家のうちで、死後(!)50年の風雪に耐えて、有償であっても読み継がれる作品がどれだけあるでしょう・・・。最近の長寿の動向をみれば、平均余命を30〜40年として、+50年先=ほとんど1世紀先のことになります。
ほとんど、保護期間延長の対象として念頭におかれるべき作家、作品群は見当たらないのではないでしょうか。
 それを幻想を追って、保護期間70年に延長してしまえば、99%の作品が、その存在は忘却の彼方に行き、誰も見ることも味わうこともできなくなってしまう・・・・
 後世に名を残すつもりで保護期間を延長してみたら、それが逆に仇となって、忘却の彼方に去ることになってしまった・・・というのが実際の展開シナリオになることは確実でしょう。
 
 「そらもよう」の筆者の方と思いは同じだということを、ご理解いただければ幸いです。
 
■さて次に、1968年死去の著作権者についてです。
 仮に、今秋以降、米国抜きの環太平洋経済連携協定(TPP11)の交渉が行われるとしても、そうそう簡単に、米国参加の前提で妥結したつもりの諸国がすんなりと合意に至るとはとても思えません。
米国との自由貿易協定交渉は、日本政府の方針とは違いますから、麻生総理とペンス副大統領との間の日米経済対話においては、難航必至です。米国政府内においても、ティラーソン国務長官などは、「個人的にはTPPに賛成だ」といっている始末ですし、中国に対する高関税などの制裁を見据えて、通商法301条に基づく調査を、トランプ大統領がこの816日に指示したとありますから、そちらが優先されるのではないでしょうか。
それに、米国は多くの行政高官ポストが政治任命されますが、未だに多くのポストが任命されておらず(駐日大使もやっと着任したくらいです)、実務的な詰めた交渉をしようにもできないのが実態ではないかと思います。
 こういう状況を考えると、TPP11にせよ、2国間交渉にせよ、来年(2018年)中に合意に至る可能性はほとんどないのではないかという気がします。仮に合意に至っても、日本では、国会審議が必要ですから、そこでの審議の難航も必至です。提出するとしても、再来年(2019年)の通常国会になるでしょう。
 したがって、1968年死去の作家らは、201911日に公開されることになると思います。子母沢寛、木山捷平、広津和郎、村岡花子といった面々です。
 
■そして次に、1969年死去の著作権者についてです。この辺になってくると、内外の政治情勢に変動要素が多くなり、見通すのが難しいところです。
著作権切れが、50年の保護期間であれば、202011日になりますので、逆算すると、どんなに遅くても、2019年の通常国会に提出し、審議の上可決しなければならないはずです。ということは、仮に交渉が進んだとしても、2018年の秋までには合意に至らないといけません。それは、今から僅か1年先です。政府ベースで合意に至っても、国会ですんなり通るかというと疑問が残ります。衆院の任期満了に伴う総選挙は、(それ以前の解散がなければ)2018年の秋ですから、議論が大きく分かれるであろう法案が、それ以前に出せるのか政治的にも微妙なところでしょう。
そういった事情から、私は、おそらく、1969年死去の著作権者は、2020年、つまりオリンピックの年の20201月元旦に著作権切れとなって、公開に至るものと推測しています。
 高野悦子、獅子文六、松岡譲、長谷川如是閑、中山義秀、安藤鶴夫、伊藤整・・・等等、錚々たる面々が揃っています。
 
■最後に、1970年死去の著作権者・・・。
この辺になってくると、今の時点で何か推測しても、不確実要素が多すぎて、意味がないですね。「来年の事を言えば鬼が笑う」のに、3年先のことを言えば、お腹をよじって笑うことでしょう。来年、再来年に突然トランプが辞任して、急転直下、TPPに米国が復帰するということだって、あり得ないことではないですし・・・。
ただ、先ほど書いたように、仮に合意に至ったとして、その国内反映のための国会審議は、早くて再来年(2019年)の通常国会になるでしょうから、1970年死去の著作権者の権利切れになるかどうか、微妙なところで、もしかすると、これも現行の50年で切れる可能性もあるのではないかと思われます。

1970年と言えば、昭和45年。万博の年ですね。あれからもう半世紀近くが経とうとしているんですね・・・。私は当時まだ、(紅顔の美?)少年でした。万博会場に向かうタクシーの中で、よど号のハイジャック事件が発生したニュースがラジオから流れていたことを、子供心にも覚えています。
 三島由紀夫が自衛隊の市ヶ谷駐屯地(防衛庁はまだ六本木〜乃木坂辺にありました)に立てこもってアジ演説を行ったのち割腹し、介錯で、首が転がっている場面のニュース写真も、また強烈な記憶です。
 
 ちなみに、三島由紀夫の著作権は、海外もカバーする大手の著作権事務所が管理しているかと思います。「個人は相手にせず、大手出版社だけと付き合う」と言って憚らないところのようです。そうやって、一般人の利用から隔離されてしまっている現状を知るにつけ、何とか早期に、著作権切れの時期が到来し、自由利用が可能になってほしいものだと感じます。
  
 ****************************
 
 昭和四十二年(1967
武島羽衣(1872.11.21967.2.3
  「国歌評釈」共著「美文韻文花紅葉」
山本周五郎(1903.6.221967.2.14
  「日本婦道記」「樅ノ木は残った」「赤ひげ診療譚」「青べか物語」「さぶ」
柳原白蓮(1885.10.151967.2.22
  「踏絵」「幻の華」「紫の梅」「荊棘の実」
窪田空穂(1877.6.81967.4.12
  「まひる野」「老槻の下」
壺井栄(1900.8.51967.6.23
  「暦」「柿の木のある家」「二十四の瞳」
吉野秀雄(1902.7.31967.7.13
  「寒蝉集」「苔径集」「天上凝視」「やはらかな心」
菱山修三(19091967.8.7
新村出(18761967.8.17
  「東方言語史考」「南蛮更紗」
富田常雄(1904.1.21967.10.16
  「姿三四郎」「武蔵坊弁慶」
時枝誠記(19001967.10.27
  「国語学史」「国語学原論」「日本文法」
恒藤恭(18881967.11.2
  「法の基本問題」「法的人格者の理論」
河竹繁俊(18891967.11.15
  「歌舞伎史の研究」「日本演劇全史」
笠信太郎(19001967.12.4
  「ものの見方について」
金沢庄三郎(18721967
  「日韓両国語同系論」「広辞林」
中田薫(18771967
  「法制史論集」
中村清太郎(18881967
  「ある偃松の独白」
薄田太郎(19021967
森於菟(18901967
  「父親としての森鴎外」「屍室断想」
 
昭和四十三年(1968
奥野信太郎(18991968.1.15
西田天香(〜1968.2.29
吉尾なつ子(1899.6.101968.4.4
子母沢寛(1892.2.11968.7.19
  「新選組遺聞」「国定忠治」「父子鷹」
日沼倫太郎(1925.7.31968.7.14
  「横光利一論」「文学の転換」「偏見の美学」
若山喜志子(〜1968.8.19
木山捷平(1904.3.261968.8.23
  「耳学問」「河骨」「春雨」
丸岡明(1907.6.291968.8.24
広津和郎(1891.12.51968.9.21
  「神経病時代」「風雨強かるべし」「巷の歴史」「松川裁判」
村岡花子(〜1968.10.25
石田英一郎(19031968
  「河童駒引考」「文化人類学序説」
沢瀉久孝(18901968
  「万葉集注釈」
橘瑞超(18901968
  「中亜探検」
内山順(18901968
  「富岡の家」
足立勇(19011968
  「日本食物史概説」共「日本食物史」
大原總一郎(19091968
 
昭和四十四年(1969
鑓田研一(1892.8.161969.1.28
森谷均(〜1969.3.29
横関愛造(松平英明?)(1887.8.21969.5.4
柳田泉(1894.4.271969.6.7
阪本越郎(19061969.6.10
 「雲の衣裳」「貝殻の墓」「果樹園」坂本?
高野悦子 (1949.1.21969.6.24)
 「二十歳の原点」
富永次郎(1909.4.231969.7.14
大場正史(〜1969.7.17
松岡譲(1891.9.281969.7.22
 「罪の彼方」「九官鳥」「法城を護る人々」
中山義秀(1900.10.51969.8.19
 「厚物咲」「テニヤンの末日」「咲庵」
安藤鶴夫(1908.11.161969.9.9
 「巷談本牧亭」「舞台人」
長谷川かな女(1887.10.221969.9.22
 「龍胆」「雨月」「川の灯」「小雪」
木々高太郎(1897.5.61969.10.31
 「網膜脈視症」「文学少女」「人生の阿呆」「新月」
長谷川如是閑(18751969.11.11
 「現代国家批判」「ある心の自叙伝」
伊藤整(1905.1.161969.11.15
 「小説の方法」「日本文壇史」「鳴海仙吉」「火の鳥」
石田波郷(1913.3.181969.11.21
 「鶴の眼」「惜命」「清瀬村」
獅子文六(1893.7.11969.12.13
 「てんやわんや」「自由学校」「娘と私」
由紀しげ子(1900.12.21969.12.30
鍋井克之(18881969
 「富貴の人」「寧楽雑帖」「閑中忙人」
井上政次(19021969
 
昭和四十五年(1970
富沢有為男(1902.3.291970.1.15
野見山朱鳥(〜1970.2.26
鈴木信太郎(〜1970.3.4
西條八十(1892.1.151970.8.12
 「一握の玻璃」「砂金」「アルチュール=ランボオ研究」
佐賀潜(1914.3.211970.8.31
森田たま(1894.12.191970.10.31
 「もめん随筆」「ぎゐん随筆」「石狩少女」
大宅壮一(1900.9.131970.11.22
 「文学的戦術論」「一億総囚人」「炎は流れる」
三島由紀夫(1925.1.141970.11.25
 「仮面の告白」「潮騒」「金閣寺」「豊饒の海」
市河三喜(18861970
 「英文法研究」「聖書の英語」
藤木九三(18871970
 「雪・岩・アルプス」
牧野英一(18781970
 「日本刑法」「刑法研究」
矢野仁一(18721970
 「支那近代外国関係研究」「近世支那外交史」
山内清男(19021970
 「日本遠古の文化」「日本先史土器図譜」
冠松次郎(18831970
 「渓からの山旅」「山渓記」「黒部渓谷」
北川桃雄(18991970
 「斑鳩〓[衣集]記」「秘仏開扉」
北尾鐐之助(18841970
 「日本山岳巡礼」「国立公園紀行」

 久々の記事になります。
 近々、いくつか最近の気づきの点を書いてみたいと思っています。

 第一は「非営利無償無報酬」の朗読会における使用料についてです。
 著作権法では、使用許諾が不要の場合を列挙していますが、その中で非営利目的+無償+無報酬の場合の実演が挙げられています。多くの朗読団体や朗読者の方々は、この条項に基づき、著作権のある作品でも、自由に朗読会等で朗読しておられると思います。
 これは、著作権法の権利例外規定の基本的条項のひとつですが、最近、著作権者や委託団体側が、その場合でも使用料を請求するような動きもみられるらしい・・・という話を耳にしました。

 これまでの裁判所の判例では、例えば、営利企業がその宣伝のために無償無報酬でコンサートで使用する場合には、「営利目的」と判断されて、この権利例外条項の適用はできないとされています。
 この考え方を拡張?して、非営利団体や個人の無償無報酬の朗読会についても、使用料が請求されることが本当にあるとすれば、それはこの権利例外規定の存在を実質的に否定するものであり、決して許されることではありません。
 もしそうやって使用料を徴収しているのだとすれが、訴訟で争われれば、著作権者側は確実に負けることでしょう。民法上の「不当利得」になって、法定金利以上で融資をする悪徳サラ金業者と同様、数%の利子を付けて返還しなければならなくなります。文化を担うはずの作家、著作権者が、文化の普及、継承を阻害することになってしまいます。

 最近は、非営利法人にもいくつかのバリエーションがあるようになってきていますので、話が単純ではないのですが、しかし、非営利法人や朗読者の宣伝になるから、という理由で使用料を安易に請求するような実態があるのだとすれば、極めて由々しきことです。
 その辺の実例等、経験されたことがある方をおられれば、コメント欄にお寄せいただけれれば幸いです。
 本ブログ記事で、まとまった解説記事を書いてみたいと思います。

 第二はTPPの発効が、米国トランプ次期政権の方針により、困難となったことです。
それが国益にとってどうなのかはいろいろな見方があると思いますが、少なくとも、著作権保護期間の死後70年への延長は、当面はなくなりました。
 来年、再来年と、従来通りの50年の保護期間満了で、利用できる作家、作品の選択肢が大きく増えるものと思われます。来年、再来年とも、著名作家、評論家が揃う「当たり年」ですので、いろいろな作品が再認識、評価がなされることでしょう

 第三は文化庁の裁定利用制度の使い勝手が格段に向上しているようであることです。
 著作権者が不明な「孤児作品」について、いちいち出版社等に著作権者の所在等の照会をして、捜索努力をしなくても、文化庁に照会して裁定実績のあるデータベースに掲載されているかどうかを確認したり、外郭団体で財団のHPに探している旨の広告を載せるなどの手続きを経れば、文化庁が裁定で使用許諾を出すようになってきているようです。
 外郭団体の財団のHPに掲載する費用が13000円かかるので、依然として高いのでは?としばらく前までは思っていたのですが、これは、一度に広告を載せる料金だそうで、その中に、何十人、何百人の著作権者の捜索広告を載せてもいい仕組みになっています。
 しかも、結構、便利な?使われ方をしているなあ・・・と思ったのが、入試問題集などで出る著者をこの制度により「捜索」して、裁定許諾につなげているらしいことです。それであれば、1回の広告で大量に「捜索」が出来てしまいますから、13000円払っても安いものでしょう。

 他人に使わせる場合でもOK、利用作品の価格設定も自由、ということであれば、たとえば朗読団体がまとめて裁定許諾をとって、その構成メンバーの人たちが朗読する、ということもできるのではないかと思います。
 青空文庫的に、価格無償で提供する場合の扱いはどうなるのか、文化庁に照会したのですが、返事がありませんでしたが・・・。
 しかし、ソフトのシェアウェアのような低廉な料金で朗読し、それをサイトに公開することとし、その使用料を広告料でまかなうなどのやり方も可能になってくることでしょう。アイデア次第で、さまざまな利用の仕方が広がるような気がします。


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