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TFM-110Dはソニーが、僕が生まれる前に作ったラジオで。
1966年発売、定価14,490円。
誇らしげに「ソリッド・ステート11」と刻んである、
当時の開発ジジイ連中のセンスが良すぎて琴線にビンビン当たる。
そのセンスの良さに敬意を表し、
「てーえふえむ、わんてんでー。」
という発音で呼びたい。
とにかく、デザインが良い。
これに赤の差し色を入れたセンスには、「う〜ん、」と何度もうなってしまう。
デザイン優先で作ったニセモノとは、確実に一線を隔てている。
日本の工業製品が、ことにソニーのラジオが世界一に成り得た、まさに本物のかっこ良さがある。
この美しさは、昭和レトロなどというレベルではない。
当時、大学初任給が3万円くらいだったらしいから、
だいたい初任給の半分、今の価値で言うと10万円くらいかな。
見た目から想像するより、重い。
プラスチッキーなICF-EX5MK2と持ち比べると、その差は歴然だ。
ぎゅうぎゅうに詰めた育ち盛りの弁当箱か、というくらいのずっしり感がある。
現代のようにSMT面実装基板で作ると、ここまで重くはならない。
電池は、単2が3本。
電池なんてだいたい4本セットで買うから、1本余る。
1本ずつ余るから、3回買えば4回分の電池がある計算だが、こういうのはけっこう面倒だ。
TFM-110Dは普段聴きに使わない。
特にリラックスしたい時とか、好きな番組の時にしか使わないから、電池は長く持つはず。
と最初は思ったけれど、嬉しいのでしょっちゅう電源を入れている。
MWの音楽番組は、ついついコイツで聴きたくなる。
というのも、音が良い。
この音質の良さがどこからくるのか分からない。
トランジスタを12個実装しているからなのか?
筐体によるもの、重量、スピーカーの違い、
単に発音域やクリアさというよりは、音の丸み、厚み、味、そういうファクターだ。
どことなく真空管アンプを彷彿させる音質は、聞く番組を選ぶ。
MWでジャズやオールディーズ、シスターズ系アメリカンコーラスが流れると、
僕はもうメロメロになってしまう。
そうか、考えてみると、1966年発売のラジオで60年代オールディーズを聴いて、
それで音質がしっくりくるのは、当然といえば当然。
ソニーの技術者は、当時流行の音楽を流しながらトラッキング調整をしたのだろう。
それにしても、44年前のラジオが現役で鳴るというのが感慨深い。
この製品のソニータイマーは、けっこう長く設定してあるんだ。
いま70歳のジイさんが居たとしたら、彼が26歳の時に聞いていたラジオという事になる。
その頃は、どんな番組が流れていたんだろう。
パソコンを数年で使い捨てる時代に、何をか言わんやである。
同じ番組でも、ハードが変われば雰囲気や空気感がガラリと変わる。
この感じは、どんなに最新で高価なラジオを持って来たとしても絶対に出せない。
世の中にこんな楽しみがあるなんて、実は誰にも言いたくない。
でもまあ、どこまで行っても希少な趣味か。
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