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【再上映です】
よう似た状況になってきたなぁ思うてます。
そう言えば、よくワーキング・プアってのを本人努力とか学歴とかそんなもんで理解する人もいるようだ
けど、必要な数とそうでない数の線引きには人格も能力も関係ない。
外に植民地が作れなければ、国内に作るだけのことでしかない。
ずっ〜と上のポジションにいる人間の言う事はいつも同じだ。
こんなの
・・・お前のかわりはいくらでもいる。(2008.6.9)
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東家楽燕の『召集令』は大正元年。軍事浪曲としてヒットしたそうです。
では、・・・ベンベン。
♪妻は病の床に伏し 頑是なき子は飢えになく 親子夫婦の愛別離苦、涙を包む袖袂、ただ一枚の紙切れ
も、我が大君のすべ給う、戦士の庭に召さるると、思えば嬉し召集令、ここは芸州矢の村の、みるもいぶ
せき賎(シズ)が家、門出に帰る松岡幸三氏♪・・・こんな出だしです。
病身の妻を抱えた極貧農松岡幸三に召集令。妻のお種には「赤いタスキは流行り病よけ、書付は一年前の
税金の催促じゃ」とごまかし、留守中の妻子の面倒を頼みに組頭の所へ行くが断られ重い家路に。
♪お父っあん、何をそんなに泣くんだい、お母っさんが心配するから、泣かずに早く帰ろうよ♪
我が子に慰められながら、親子は暗い田舎道を家路に・・・風が吹いてるなあ。
家に帰ってみると、あっぱれ名誉な召集令を、税金通知とごまかされた切なさ辛さ、私の病があなたの忠
義の妨げになろうとは…の遺書を遺し、妻のお種は、喉をかき切って既にあの世。
♪生きて凱旋あそばすな、残る私と二人の子供足手まといにならぬよう私はお先にまいりまする、子供は
あなたの手にかけて♪
錯乱状態で子供を殺そうとする松岡。間一髪、通りかかった金子巡査にとめられ、葬儀は引き受けた子供
も責任持って育てるから、お前は心おきなく出征せよと。
ああ尊しの大和魂(ヤマトダマ)、夫婦親子の恩愛も、捨てて甲斐ある君の為、出征美談は召集令の一席な
り・・・ベンベン。
この浪花節は愛国浪曲としてもてはやされたという。
なんじゃ?こんな、現世を呪うような愛国心はありか?
お種は「生きて凱旋あそばすな」と言う。あなた、私は一足先にあの世に行ってます。あなたは、この世
の義理を果たしてから、こちらに来て下さいね。そんな話やないか。
この気持ちの在り様は、欣求浄土厭離穢土とムシロに大書した百姓一揆と同じやないか。
浪花節。明治中〜後期にかけて成立。都市に、全国から集まってきた農村出身の工場労働者、そこから堕
ちたヤクザ、女工、娼婦、職人、土方、車夫馬方、乞食、盗賊、没落武士、町内のハナつまみ…社会の下
層に押し込められた者たちが必要としたジャンルとされます。
明治半ば、国内生産力と不釣合いな紙幣の乱発は、物価高騰、インフレを生み国庫の正貨準備金をはるか
に上回る不換紙幣、ようするに不渡り手形を抱え込み国家の倒産必至となる。
国は不換紙幣を政府に回収する事を企てる。当然だがチリ紙と交換というわけには行かない、増税。
それも、この危機回避だけでなく、通貨の信用を回復して通貨を資本に転用しやすい環境を目指した。
当然、将来資本に転化しそうな金持ちからは少ししか取らず、もっぱら農民から搾り取った。
日本は、明治維新の翌日から資本主義国家になったわけでもない。維新から十数年、国内の植民地である
農村からの収奪によって、その産業資本を蓄積する事が出来たわけだ。
農民は、紙幣の国庫引き上げによるデフレで米価が下がり、そこに増税。たちまちの借金地獄。明治18
年、破産し路頭に迷う農民40万人(推定)。秩父困民党が生まれるも、あっけなく潰される。国も持っ
ているすべての暴力装置を駆使する。
全国の農村を「飢饉」が襲う。飢饉といっても不作によってもたらされた、諦めのつきやすいものではな
く、金の力だとか、時代の流れだとか、目に見えない力が引き起こした飢饉。農民にとっては見たことも
聞いた事もないカタストロフィ。
明治18、19年。全国の自殺者数、7000人強。一人悩んで自殺するという近代的なものでなく、精神錯
乱が最も多かったという。子を殺し、親をあやめ、自分も浄土へパターンが多かったような気がする。
浪花節『召集令』の発生源、それはこうした国内植民地であった農村、農民ではなかったか。
身を粉にして働けば働くほど、新しい貧乏が生まれてくる。この貧乏が日々作られるという事態こそ農民
にとっての近代であり、精神を錯乱に追い込んだものだ。
働くことが、何で貧乏を作ったりするのか、働いても貧乏なら話はわかるが、働くと貧乏が生まれるとは
どういうことやねん?
ドヤと呼ばれるところに住んでいた事がある。
そこはいまだに、働くことが新しい貧乏を生むシステムが機能している。
得られる収入は現状の維持(年とともに縮小)でしかない。抜け出ることはまず難しい。
この「働くほど貧乏システム」が再びドヤを抜け出て、広がってきている気がするのは気のせいか?
やや長いもんになりました。これにて失礼。
よぉ〜、ベンベン。
そうそう、直立猿人まで遡るまでもないです。ほんの少し時代を遡れば今の成り立ちが見えます。
◎宮本常一、山本周五郎他監修『日本残酷物語』平凡社
◎色川大吉『日本の歴史・近代国家の出発』(中央公論社)
◎正岡容『日本浪曲史』 (南北社)
・・・これによると、明治を騒がせた怪盗・五寸釘寅吉とか情痴殺人犯の松平紀義なんて人の本物が
浪花節の演台に立って一席唸ってたらしい。
「わたしが殺したその男ぉ〜」なんて唸ってたらしい。
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