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本日8月16日(水)より、ケータイ公式サイト『どこでも読書』にて、共同テレビプロデュース☆ケータイオリジナル小説の新作小島康志氏の『預かり屋松の湯』が配信開始されました! そこで今回は、小説作りの裏話を作家である小島氏に語っていただくことにします。 _________________________________________ 「ハードボイルドだど〜」 小島 康志 内藤珍の名台詞である。この言葉こそ、ハードボイルドの本質をついている。どのへんがついているかと言うと、だど〜のところだ。このだど〜を受け継いで言うと「総てのハードボイルドは、坊っちゃんである」と言う新しいキャッチフレーズが産まれる。何の事だかさっぱり分からない。それで良いのだ……バカボンのパパのこの台詞も、見事にハードボイルドの本質をついている。何のこっちゃ! さて預かり屋の話しだ。そもそも三文役者が物語を書こうとしたのはどういう訳が有ったのか?……暇だったからだ。 貧乏暇無しという言葉に、俺は素直にうなずけない。役者は仕事が無いと只の暇人だ。でもって仕事が無い人は大概貧乏だ。貧乏暇人は何をして日々を過ごすのか?役者なんてヤクザな家業の人間の暇つぶしと言えば、飲む打つ買うの三拍子で、酒博打女か?……ところがこちとら飲む売る買うの三拍子だ。売り買いは主に古本ですがね……要するに文科系暇人役者は、ゴロゴロ寝っ転がっちゃあ、駄本を読むか、妄想にふけるしかないってえ生活でやして、終日ハードボイルドの一つもひねり出そうって趣向だい。 これがいけませんでした。ひねり出したら引き出しにしまって鍵掛けとけって話しです。どういう伝手だか知らねえが、きょーどーてれびの人が読んでしまいました。それでもって呼び出されました。ここでシカトしてりゃあ良かったんです。でもね、貧乏役者ってのは、御座敷がかかるとホイホイ出掛けて行くもんです。 「これを元に、作品を書いてみませんか?」 うっひょー!……反省しています。ここで逃げ出すべきでした。 「こちとら河原乞食でい!裸は見せても、脳味噌のオナラを人様に嗅がせる様な真似は金輪際しねいんでい!」 これくらいの啖呵は切った方が良かったかもしれません。でもね、文科系暇人役者としては、人に誉められる事に慣れていないんでやすよ。つまりは愛に飢えているんでやす。ホイホイどころじゃ有りません。ホイホイホイ、ホイホイホホイホイホホイと引き受けた……ああ、それが三ヶ月以上に及ぶ苦闘の始まりだったとは、誰に想像出来ましょう。 ハードボイルドは何時しか、ヘナチョコになり、カッチョ良い主人公は引きこもりになり、何時もブツブツ文句を言っては止むに止まれぬ事情に流されて行く。情に棹させば流される……ってこれは漱石だ。と言う訳で(どういう訳だ?)坊っちゃんに戻って来る。 「総てのハードボイルドは、坊っちゃんである」 まあこれは俺の勝手な決めつけです。でもね、坊っちゃんって実にハードボイルドだと思いませんか?俺的には元祖ハードボイルドです。かと言って、あんな大文豪と同じ棚に並ぶつもりなんぞ有りません。お天道様に申し開きが出来ないってもんです。 多分、松の湯はコメディです。でも本人達は本気です。でもって真剣です。 話し手も本気でした。パソコンが壊れ、USBメモリを片手に、マンガ喫茶をさすらった日々を誰が忘れましょう。マックブックを持って、友人の事務所、ファミレス、図書館。ああ、なんで自分家で書かないのか? あげくの果てはロケで行ったバンコクでも書いていました。38℃の猛暑の中です(これは嘘、ホテルには冷房が入っている)。 そんなこんなで……どんなこんなか分かりませんが……愛しいバカ達が誕生しました。 こいつ等が一人でも多くの方達に愛していただければ、これ以上の幸せは有りません。 _________________________________________ 『預かり屋松の湯』作品紹介 松の湯に入って来て番台を見上げたのはピエロだった。 番台に座っていた義経はビビった。昔、ピエロの扮装をした殺し屋がマシンガンを乱射して大量虐殺をする映画を見た事があったからだ。 『地獄のピエロ』だったか何だったか題名は思い出せない。 何も言えずに強張っているが、ピエロも何も言わない。もっともおしゃべりなピエロという者に義経は出会った事がない。 地獄のピエロはただ義経を見上げている。義経は人と視線を合わせるのが苦手だ。視線をそらそうとするが、義経の中の意地の様なものがフンバレとささやいている。 せめて挨拶くらいすべきだろうか。紙ヤスリの様になった咽をこじ開けようとしていると、目の前に一枚の紙を突き出された。 仰け反りそうになるのを堪えて紙面を見れば、預かり屋松の湯のチラシだった。つい先日、必死の思いで配ったものだ。 かすれた声でピエロが聞いた。 「何でも預かってくれるって本当ですか?」 ピエロは客だった。義経が緊張した様にピエロの方も緊張していたのだ。(本文より) 秋葉原のはずれにある銭湯・松の湯。 つぶれた銭湯を復活させるために、ぐうたらで小心者、しかも人見知りな30男の長男・義経がついに立ち上がる。 何を思ったか、ある日突然ロッカーを銭湯に運び込み、預かり屋を始める義経。 銭湯のボイラー室を改造したバーのバーテン・ジゴマ、エキセントリックな母親・トキワ、長年の家出から突然帰ってきた派手好きの妹・静香、そして怪しげなものを次々預けに来る近所の住人たち・・・・・・。 名脇役としても名高い、作家・小島康志が書き下ろす、今までに無いタッチのコメディー小説。 濃いキャラクターが繰り広げる、ドタバタ下町人情コメディーの名作です。 小島 康志(こじま やすし)プロフィール 俳優・作家・脚本家。 1959年生まれ 岩手県出身。 1985年故松田優作氏と出会い舞台の脚本を書き始める。 舞台・テレビ・映画・CMなど出演多数。 詳しくは所属事務所Webサイトをご覧ください。 『預かり屋松の湯』はこちらで読めます! NTT Docomo「どこでも読書」 【iMENU】→【メニューリスト】→【TV/ラジオ/雑誌/小説】→【小説】→【どこでも読書】 au「どこでも読書」(WIN)
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