|
それらはもう秘密でもなんでもなく、知る人には知られてしまっていることだとも付け加えていた。彼は恐らくその話を誰かにしたかったのではないだろうか。そしてもう実際にはたいした秘密でもなくなっていることなのかも知れないが、一応政府内部では口外禁止となっている事項なのだろう。だからそんな言い訳を付け加えてからその話を聞かせてくれたのだ、と河島は思った。 |
全体表示
[ リスト | 詳細 ]
|
実際、この事実について被害者たちに黙っていろと言うほうが無理というものだと思った。相当額の保障はされたとも書いてはあるが、それは支払う側にとっての相当額なのではないだろうか。一家の働き手を失った農家のその後の困窮は誰の目にも見える。一家の大黒柱が生きていてすら貧しい生活を強いられているのが現今の中国の農村だ。そして農業立国中国ではそういう農家が今でも人口の大半を占めているのだ。 |
|
河村は北京語も広東語も話すがどちらも片言の域を出ない。いつも、もっと練習しておけばよかった、もう少し習っておけばよかった、と思うのだが、その時はその時でなかなか忙しく、日常必要とする言葉をその都度口にするだけでそれ以上特に辞書や学習用具を使って習うということをして来なかった。こうして定年後まで中国とかかわりつづけるならば、絶対にもっと言葉を練習しておくべきだった、というのはもう後の祭りでしかないのだが、未だにあきらめきれないでそんな風に考えたりもする。きっと、一生これで後悔するのではないかと思ったりもすることがある。 |
|
黒龍江省ハルビンには以前、重慶に駐在していた時にも上海に駐在していた時にも行ったことはある。昔の日本の影響が強く残っているのを河村は知っているので、親近感を覚えたりするが、現地の今の人々はそういうことを認めたがらない。ましてや若い人々はこの国の新しい政策である反日教育を受けている。日本が占領して、良好な関係を持っていたのも、もう今は昔の物語になってしまっていた。 |
|
中国人ビジネスマンに悪意がないこと、これは明々白々の事実だと河村は理解している。中国という国、あるいは中国人が全く異質な文化をもっているのみならず、文明としてでも異質なものであることは明白なのだが、それと同じくらいに彼等の心の中に商取引における悪意というものが存在しないことも明らかなのだ。 |



