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アラカン(アラウンド還暦)人生で初めて、相撲を見物に行った。
戦前に死んでしまった爺さんの思い出話には必ず贔屓にしていた相撲取りの「綾川関」の話が出て来るほど相撲とは縁のある家だったのに、落ちぶれるというのはこういうことか、アタシの代になってこの年まで見物に行ったことはなかった。
学生のころ、まだお元気だった綾川関をお招きして、四つに組んだポーズで記念写真を撮った覚えがあるのだが、そのとき80歳にもなっていたか綾川関のアタシのマワシならぬベルトをつかんだ手の指の力強さを覚えている。
とまれ、弁当である。
江戸からの興行である芝居と相撲には共通点も多く、そのうちの一つが長時間の興行であることだ。
日の出かそれ以前から始まって、だらだらと日暮れまで行う。
それは照明の問題との関連もあるのだろう。
芝居では基本的に真っ暗に陽を遮っておいて、天窓の開閉によってその場面にふさわしい明るさとしたとのこと。
相撲は屋外型の興行なのでそんな心配はないが、日が暮れてはいくら大男の格闘でも見えなくなるし、なにしろお客様の帰りの道が心配になる。
ということで、長時間興行であるがゆえに、どうしても食事が必要となる。
となれば、弁当の出番である。
ので、施設の近所には料理屋や弁当屋が発達することになるのだが、相撲に関しては相撲部屋別のちゃんこ鍋に発達がみられたものの、どうも弁当の方向へは発展が見られなかったような気がする。
ので、今回食べた弁当二種にもどうにも満足感が得られなかった。
箱のデザイン
稀勢の里の監修だとか、幕の内弁当(芝居系)の相撲版だとかなのだが、どうもいただけないレベルであった。
せっかく沢山食べることのできる方が監修をするのなら、多少はウマイ・マズイの見識もお持ちだろうし、同じ江戸時代からの興行ライバルなんだから、もっと芝居者の弁当などは上手投げだというようなものに仕上げてほしかった。
軍配は、芝居方に上がっているようだ。
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弁当しつつ
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駅弁って楽しいよね〜なにしろ弁当も走っているから
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日経新聞の土曜日オマケ版に「旅の達人おすすめの駅弁」というのが大きく載っていた。
日本中に行くことはなかなかできないのでありますが、せめてここに記録しておけば万が一の旅行の際に出先でも確認できるかと思い、メモのつもりで記事にします。
この記事をご覧になった方の中には、この駅弁は私の近くの駅だという方もいらっしゃるだろうし、それで自慢したくなることだってあるだろう。
こんなことでの郷土愛は大変に健全で楽しいものである。
食べたことがあるものも少しくベストテン入りしていて、それで鉄飯碗もウレシクなっているのだから、それが郷土の駅弁ならなおさらだろう。
さて、ベストテン。
正確には東西にわかれているので、20種の駅弁が紹介されていた。
東日本
1位 うに弁当 久慈駅(岩手、三陸鉄道北リアス線) 三陸リアス亭
2位 牛肉どまん中 米沢駅(山形、山形新幹線) 新杵屋
3位 かきめし 厚岸駅(北海道、根室本線) 氏家待合所
4位 鶏めし 大館駅(秋田、奥羽本線) 花善
5位 武士(たけし)のあじ寿司 修善寺駅(静岡、伊豆箱根鉄道駿豆線) 舞寿し
6位 峠の釜めし 横川駅(群馬、信越本線) おぎのや
6位 シウマイ弁当 横浜駅(神奈川、東海道本線) 崎陽軒
8位 鱈めし 直江津駅(信越本線) ホテルハイマート
9位 母恋めし 母恋(ぼこい)駅(北海道、室蘭本線) 母恋めし本舗
10位 うなぎ弁当(赤ワイン仕込み) 浜松駅(静岡、東海道本線) 自笑亭
西日本
1位 あなごめし弁当 宮島口駅(広島、山陽本線) うえの
2位 百年の旅物語「かれい川」 嘉例川駅(鹿児島、肥薩線) 森の弁当やまだ屋
3位 かしわめし 折尾駅(福岡、鹿児島本線) 東筑軒
4位 ますのすし 富山駅(富山、北陸本線) 源
5位 しゃもじかきめし 広島駅(広島、山陽新幹線) 広島駅弁当
6位 鮎屋三代 新八代駅(熊本、九州新幹線) みなみの風
7位 ひっぱりだこ飯 西明石駅(兵庫、山陽本線) 淡路屋
8位 湖北のおはなし 米原駅(滋賀、東海道新幹線) 井筒屋
9位 有田焼カレー 有田駅(佐賀、佐世保線) 創ギャラリーおおた
10位 かつおたたき弁当 高知駅(高知、土讃線) 安藤商店
こう見てきますと、さあ、年明けの駅弁大会が楽しみですね〜。
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「かべす」とは芝居用語で菓子・弁当・寿司の略語であります。
つまり、芝居見物の脇三役といいますか、お楽しみ三兄弟といいますか、舞台を観るだけでなくて、こうしてポリポリ・パクパクするのも含めて芝居を観る楽しみなわけです。
なにしろ最近の芝居は「鑑賞」したりするようになってしまい、楽しいのだか苦しいのだかわからなくなりましたが、それこそ江戸時代には今で云えばヘルスセンターの大衆演劇をみるような気軽さであったようで、みんな食べながら、退屈になれば寝ながら見ていたようです。
仮名手本忠臣蔵という芝居(といっても最初は人形浄瑠璃でしたが)の最初、まだ大序が始まる前に、定式幕(じょうしきまく)=写真参照
の前に人形がでてきまして口上を述べるのですが(この人形を口上人形といいます)、その口上の中にも「お茶、お菓子など召し上がりつつゆるゆると・・・」なんていう科白(せりふ)がある位。
ですので、「かべす」は芝居見物の正統派のお楽しみです。
ですので、今回の芝居見物にも張り切って弁当を買い込んで出かけました。
木挽町(こびきちょう)といえば現在の歌舞伎座建て替え中のあのあたり。
歌舞伎座の晴海通りを挟んだ向かいにある 木挽町辦松(べんまつ)で仕込みました。
このベンマツといえば、日本橋に同じ名前の弁当屋さんがありますが、こちらは日本橋弁松。
「べん」の字が違うのですが、いずれも江戸からの弁当を守っているお店です。
木挽町辦松は創業140年、日本橋弁松は160年とホームページで云ってますので、永い歴史であります。
現在では東西の人的交流も盛んになり、その結果東京の味も関西の味に近づき、関西の鰻屋のほとんどが江戸前の焼きようになってしまっておりますが、この両店の弁当のお味はまさしく江戸・東京のお味であります。
なんて口上はこの位にして、いよいよご対面
久しぶりの芝居見物に気合をいれて、赤飯の二段弁当にしましたが、これで950円位だったと思いますので、これまたウレシクなってしまいますね。
おかずの内容はこれぞTHE幕の内弁当といった内容です。
焼き魚・かまぼこ・野菜の含め煮・豆きんとん・玉子焼きなど、幕の内弁当の王道を歩んでいます。
そして、fなにより今回ご紹介したいのはこの味付け。
甘辛さ(これを「あまっからい」と発音していました)がキリリといたしておりまして、まさにこれこそ懐かしい江戸・東京のお味です。
煮物の色もぐっと濃くて、こんな黒い煮しめをご覧になった関西の方は腰を抜かすのではないかと心配になりますが、心配ご無用。
砂糖が効いているせいでしょうか、色のわりには辛くなく、こってりと煮てあります。
てなことで、どうも芝居よりもこっちの方がウレシクなってしまいました。
一体なにをしに新橋演舞場までやってきたかということなんですが、今度はこの折詰だけ買って帰って、これで一杯やるというのも、オツでござんしょうなあ。
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梅雨が明ければ夏本番。
関西では夏本番といえば鱧(はも)ですが、関東ではチト馴染みがない。
ウツボのような形から想像できるとおりかなり獰猛な魚ですので、きっと日本中の海にいるとは思うのですが、骨が多くてそのままでは煮ても焼いても食べづらい。
京都でその骨を処理する「骨切り」の技法が開発されたとのことなんですが、その技法が関東になかなか波及しなかったせいなのか、それとも姿からは想像できない白身で淡泊な味わいが関東人の好みにフィットしなかったのか、鉄飯碗も関西生活を経てやっと馴染んだ魚であります。
師匠の大阪西梅田にある「天丼かえん」の大将に云わせると「梅雨の泥水が海に流れて、その海水を一浴びした鱧がウマイのや」とのことであります。
瀬戸内海は明石あたりの激流育ちで、気性もかなり暴力的なヤツが、梅雨の泥水を呑んでパワーアップしたような時期がいいようです。
そこで、寝屋川から京都乗り換えで東京に戻る際、新幹線の駅弁横丁で八角弁当の復活版を買おうとしたのですが、ついに見つからなかったので、季節の弁当「はも寿司」を購入。
駅弁はおおよそ1000円までと決めているのですが、今回は奮発してしまいました。
だいたい「京の」ですとか自分で「名物寿司屋」なんて名乗るところはちとアヤシイ。
それに最近流行りのこの字体(なんて云うのでしょうねこの「らしい」字体は)ですからね。
箱の裏にも
能書きが書いてありますが、思い込みたっぷりで決して美味しさを保証するものではありませんね。
そもそも「名物寿司屋」とは名乗っているけれど「寿しのむさし」なんて、初めて聞いた今聞いた。
知る人ぞ知る「名物寿司屋」なのでしょうか。
ひょっとして「むさし」というからには東京・埼玉あたりのお鮨屋さんだったりして。
なんて思いながら開封いたしました。
鯖寿司の鯖の部分が鱧の照り焼きになっていまして、そこに山椒の実の煮たものが乗っております。
またハジカミも添えてありまして、ビジュアル面でよくできております。
照り焼きのタレのかかり具合なども程よくて、なかなか美味しそうな雰囲気。
そうそう、先日テレビでこのハジカミの語源について、愛知県の生産者が云ってましたよ。
これを食べる姿が「恥じらう様子」なので「恥噛み」だとか。
鉄飯碗は端っこしか齧るものでないので「端噛み」だと思うのですが…。
さて一切れ。
結構肉厚の鱧でありましたが、どうも香りがしませんな。
また期待しておりましたプリリとした歯ごたえが今一つ。
酢飯の真ん中に入った海苔のほうが良い香りがしたりしてね。
ただしこの海苔で、この一切れを二口で食べようとしますと、湿気のせいで噛みきりづらい。
おっとっと…てなことになりまして車中ではいささかキケンでありますよ。
左スミに写っている「香味ゆずドレッシング」をかけて別の一切れも食べたのですが、こちらはゆずだらけになってしまった感じで、余計に鱧から遠ざかってしまいました。
ということで、結局は予算以上を奮発することもなかったかな。
ジャーナリストの大宅壮一先生の仰ったとおり「名物に旨いものなし」といったところなのでしょうか。
だから「京」ブランドはキケンがいっぱいと云われるのですね。
そこのオトーサン、気をつけましょうネ。 |
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静岡に行ったので、駅弁の名門 東海軒の「鯛めし」、それも「元祖 鯛めし」を買った。
なにしろこの東海軒といえば駅弁事始めに出てくるような由緒ある駅弁屋さんの一軒だそうで、その上、この「鯛めし」の開発物語が、なかなかふるっていた。
駅弁学講座(林順信・小林しのぶ 集英社新書)によれば、明治25年1月の静岡に大火があって、その大火の後日談的にこの駅弁が誕生したとのことである。
今や弁当の掛け紙は紙蓋と一体化するといった改良はあったものの、この元祖 鯛めしは当時の姿を残しているものだと思う。
というのは、もっとオカズが充実した鯛めし弁当もあって、お代は200円ほど高かったように記憶している。
新幹線の前席の後ろ利用したテーブルと比べて欲しいのだが、現在主流の弁当と比較するとかなり小ぶりな弁当である。
鯛(はなんの鯛かはわからねど)のそぼろが茶飯にかかったご飯にたくあん二きれというこの弁当は、明治の素朴さというか質実剛健さが伝わってくる。
これでなにか文句があるのか!といった歴史と伝統に裏付けされた力強よさすら感じられるのは、さすがである。
小田原の東華軒にもこの東海軒の鯛めしにインスパイアされたと思われる鯛めしの弁当があるが、東海軒の方が甘味が少なくてさっぱりしている印象である。
なので、一気に食べてしまったのだが、付け合せに東華軒に入っていたと記憶している、静岡名物「わさび漬け」が入っていたらもっと嬉しかったようにも感じる。
しかし、本家・元祖の風格があるので、いたずらに変化を加える必要もないのかな。
このあたり、変化・進化のさせ方というのは難しいのだろうなと思う。
駅弁が生まれてからもはや100年は過ぎていると思われるが、このような懐かしさを停滞とみるか伝統と感じるか、なかなか複雑であります。
そんなことを考えるに、オカズの多い「上級の鯛めし」と食べ比べてみるもの次の機会のお楽しみであります。 |






