さて何処へ行かう風が吹く

キチガイ博士の極論・暴言・妄語――自分の「修行」用の覚え書きです。関係者以外はお引き取りください。

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大惨事囲い込み

 
米国の医療倫理学者ハリエット・A・ワシントンの最近著Deadly Monopolies: The Shocking Corporate Takeover of Life Itself ――And the Consequences for Your Health and Our Medical Future (2011年10月刊)を入手した。ハードカバーで448頁の力作である。
http://www.amazon.co.jp/Deadly-Monopolies-Corporate-Itself---Consequences/dp/0385528922/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1321103828&sr=8-1

ハリエット・A・ワシントンは2007年にMedical Apartheid: The Dark History of Medical Experimentation on Black Americans from Colonial Times to the Present (医学アパルトヘイト――植民地時代から現代までのブラック・アメリカン[米国黒人――アフリカ系アメリカ人]に対する医学実験の暗黒の歴史)という本を出している。この本は「全米批評家協会賞」「2007年オークランドペンクラブ賞」「2007年米国図書館協会黒人コーカスノンフィクション賞」などを受賞している。彼女は米国ハーバード大学医学部(Harvard Medical School)等で医療倫理学などを教えている。

彼女の最近著Deadly Monopolies(仮訳「大惨事囲い込み」)は、うまく訳せないのだが、直訳すれば、『致命的な命の独占:大企業が人びとの生命そのものを乗っ取っているというショッキングな事実――そして、あなたの健康とわたしたちの医療の未来にとっての諸帰結』。副題は「大企業による生命そのものの独占があなた(がた)の健康とわたしたちの国の医療の未来に対してもたらす諸帰結」と訳すべきかもしれない。いずれにしても、長い題名の本ばかり出す人だ。笑

米国のアマゾンを見ると、結構売れているようだ。発売から約一ヶ月だが、ブックレビューもぼちぼち出てきている。
http://www.amazon.com/Deadly-Monopolies-Corporate-Itself---Consequences/dp/0385528922/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1321104923&sr=8-1

目次の概要は、例によって「仮訳」だが、

INTRODUCTION: PATENTS, PROFITS, AND THE HIGH COST OF LIVING(序論:特許権、金儲け、生きることの高いコスト)
CHAPTER 1 A NEW LEASE ON LIFE(新しい生命の賃貸借)
CHAPTER 2 THE HIGH COST OF LIVING(生きることの高いコスト)
CHAPTER 3 HITTING THE BRAKES(急ブレーキをかける)
CHAPTER 4 POISON PILLS(毒薬)
CHAPTER 5 GENE PATENTS(遺伝子の特許権)
CHAPTER 6 LIQUID ASSETS, LETHAL RISKS(流動する資産、致命的リスク)
CHAPTER 7 A TRAFFIC IN TISSUES(身体細胞組織の取引)
CHAPTER 8 BIOCOLONIALISM(バイオ植民地主義)
CHAPTER 9 THE LABORATORY OF THE WEST(西部の実験室)
EPILOGUE: BACK TO THE FUTURE?(バック・トゥー・ザ・フューチャー?)


「デモクラシー・ナウ」(ニューヨークにある非営利の独立放送局)では、以下のような紹介があった。

――「命を奪う独占」:企業による人の命の支配、医療倫理学者が語る

占拠運動が提起した大きなテーマの1つは、大企業が私たちの暮らしのますます多くの側面で、その力をいっそう強めていることです。本日の番組では、企業による生命そのものの管理について取り上げます。ゲストには医療倫理学者のハリエット・ワシントンをお呼びしました。ワシントンは、彼女の言う「医療―産業の複合体(medical-industrial complex)」が、どの程度人の命を管理しているかを調査した著作を出版したばかりです。過去30年で、4万を越える特許が遺伝子に関わる分野で与えられており、それ以上の数の特許が現在申請中です。著者は、バイオテクノロジー会社と製薬会社は、患者の健康や医療的な必要性よりも利益に関心を持って、遺伝子特許を取得していると述べます。彼女の新刊タイトルはDeadly Monopolies: The Shocking Corporate Takeover of Life Itself―And the Consequences for Your Health and Our Medical Future(『命を奪う独占:健康と医療の未来にもたらす影響』)です
http://democracynow.jp/dailynews/11/10/31/1

「デモクラシー・ナウ」のインタビュー映像によれば、

ジョン・ムーアという男性が「hairy cell leukemia(ヘアリー細胞白血病、有毛細胞白血病HCL)にかかって、ディビット・ゴールデという医者(ロサンゼルスの血液専門家)から手術が必要だと宣告された。手術によって22ポンドの脾臓が摘出され、その後ムーアは定期的に、はるばるアラスカからロサンゼルスまで呼び出され、「検査のために」たびたび血液と精液を採取された。「ガンの再発を防ぐための検査」だと告げられていたのだが、実際にはムーアの身体細胞組織と精液に対してゴールデはこっそり特許権をとっており、その特許権を使って、Sandoz Corporationという医薬品会社の後援のもと、巨大な実験室(研究所)の設立をもくろんでいた。そして、ムーアの身体からつくられた製品をマーケットに売りに出す計画を立てていたのだ。

ゴールデとロサンゼルスの大学は共にムーアの身体細胞に対する特許権をとっていた。そして医薬品会社のSandozと300万ドルの契約を結んでいた。ムーアはそのことをまったく知らされていなかった。大学は一般に、特許権保有者であり、患者の身体から採取した細胞組織をもとに莫大な金を稼いでいる。大学は医薬品企業と結託して、利潤追求機関に成り下がっている。原子力ムラと同様の医学ムラが形成されているというわけだ。

語呂合わせだが、

Now it is the patent, not the patient, that’s at the center of medical research.

医学研究の中心にあるのは、いまや患者ペイシャントではなく、特許権パテントなのだ。

そして、金儲けと特許権が、企業の場合と同様に、大学のおこなう決定のモチベーションとなっているという。いま大学病院で手術を受けると、身体組織を私企業に手渡す同意書にサインするように求められる。企業の中心はArdais Corporationである。多くの患者は同意書の内容を認識していないし、自分の身体組織が高額で取引されていることも知らない。

このような事態は、米国では1980年のBayh-Dole法からはじまった。この法律は大学がライセンスを取って「製品」(研究成果)を企業に売ることを初めて認めたのである(それまでは禁止されていた)。1980年にはChakrabarty事件の判決で、生命(生物組織)に対する特許権も認められた。これらのネオリベラル的なパラダイムシフトによって、医学研究の在り方がそれまでと根本的に変化したのである。

本書には「有名な」ヘンリエッタ・ラックスの話も載っている。ヘンリエッタは当時31歳の女性で、アフリカ系アメリカ人の主婦だったが、子宮ガンにかかってジョン・ホプキンス大学で治療を受けた。ジョージ・ゲイという医者が担当したが、彼は自分の研究のために長寿命の細胞株を探していた。ゲイはヘンリエッタの身体組織から理想的な細胞株を発見し、それを採取し実験に利用した。彼女はそのことを知らずに死んだ。

他にもバイオパイラシー(注参照)など、いろいろなエピソードが載っている。本書は、知識の私物化と企業化(the privatization, the corporatization of knowledge)に対する警告の書である。知識はいかなる意味におてもコモンズ(人類の共有財産)である。「知的財産権」や「知的所有権」の個人や企業による独占と私物化、「第三次(大惨事deadly)囲い込みmonopolies」を許してはならない。

http://www.nationofchange.org/deadly-monopolies-medical-ethicist-harriet-washington-how-firms-are-taking-over-life-1320082171

(注)バイオパイラシーとは、生物資源を巡る盗賊行為のこと。
インドの女性科学者バンダナ・シバなどが主張しているような先進国による途上国(生物資源の原産国)に対する新たな侵略行為をさす。つまり、先進国の多国籍企業などは、途上国住民の永年の伝統的生活により保全・利用されてきた豊かな生物資源(生物多様性)を利用し、バイオテクノロジーにより食料や医薬品など商品開発をして莫大な利益を上げている。それにもかかわらず、途上国にはその利益の公平な配分・還元や技術移転などがなく、生物資源の盗賊行為に等しいというもの。このような先進国などの姿勢を生物帝国主義と呼ぶこともある。生物多様性条約策定の段階でも、南北対立問題の一つとなり、成立した条約では、遺伝子資源へのアクセスとその利用から生じる利益の公正・衡平な配分(ABS)が条約の目的の一つとして位置づけられた。また条文にも途上国など「原産国」の権利や先進国から途上国への資金援助、技術移転などの項目が盛り込まれた。なお、アメリカ合衆国はこれら資金援助や技術移転が無制限になる可能性があり、その歯止めとしての知的所有権の保護も十分ではないとして、生物多様性条約を未だ(2005年2月現在)批准していない。(2011年11月12日現在も批准していない。引用者)
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=2148
 
以下の記事(バイオ帝国主義)も参照。
http://blogs.yahoo.co.jp/tessai2005/21966136.html

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