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近年の日本における犯罪が社会に与えた影響を、統計に基づいて分析した本です。
今年から法学部で刑法を勉強することもあり、興味をそそられて読んでみました。
犯罪への社会の対応の仕方や、刑務所の実態などが載っていて面白かったです。
本書は2人の共著ですが、特に浜井浩一氏の担当された部分が面白かったので紹介してみます。
本書では冒頭で、
「日本の治安は悪化している」
という、広く信じられている誤解を否定し、全体としては昨今の厳罰化を求める風潮に疑問を投げかけています。
本書によると、
「厳罰化に犯罪抑止効果のないことは、最先端の犯罪学では常識になりつつある」
(73P)
そうです。
確かに、今まさに人を殺そうとしている人が、
「殺人罪は3年以上の懲役だったかな、5年以上だったかな?」
と考えることはあまりないでしょう。
厳罰化よりもむしろ、
「取り締まり強化による効果のほうが影響は大きい」
(同)
そうです。
これも犯罪を犯そうとする人の立場で考えてみると、罪の重さよりも摘発されることの怖さの方がより強く感じられます。
犯罪に伴うリスクということで考えても、
「リスクの大きさ=損害の大きさ×損害の発生確率」
の式に当てはめると、いくら罪が重くて損害が大きくても、摘発されて有罪判決が出る可能性がごくわずかなら、犯罪をやめようとは思わないでしょう。
それでは犯罪を減らすには監視を強化すればいいかというと、著者はそれにも同意するわけではなさそうです。
なぜなら、著者は第4章で障害者や失業者、外国人などの社会的弱者でいっぱいになっている刑務所の現状を憂い、
そのことの原因を厳罰化とともに監視強化にも求めているからです。
では、どうすれば犯罪を減らすことができるか?
同じく第4章で、著者はフィンランドの研究者の発表を紹介しています。
「所得格差が少なく、社会保障費の割合が高く、人や社会に信頼感を持っている国ほど、刑務所人口が少ない」
(222P)
この例が、フィンランドなどの北欧諸国だそうです。
しかし、どこか性善説めいた結論で、私はにわかには信じられません。
所得格差に関しては、国全体が豊かで、その国の最低水準の生活でも一応は食べたり娯楽を楽しんだりできるという国があるとすると、
どんなに所得格差が大きくてもその国では犯罪が頻発するということはないような気がします。
そのような国では、人のものを盗まなくても生きていけますし、人を傷つけるほどにストレスも溜まらないからです。
逆に、所得格差が少なくても国全体が貧しければ、わずかな富を奪い合って犯罪が起こるのではないでしょうか。
また、人や社会への信頼感というのもどういう基準で測っているのかわかりません。
最後に、面白いトリビアが載っていたので紹介しておきます。
『Always 三丁目の夕日』という映画が一昨年ヒットし、私も見たのですが、この映画の舞台となった昭和30年代の日本は、
「戦後、少年非行が最も凶悪かつ増加した時代でもある。
理由とも言えない理由で子どもが短絡的に子どもを殺す事件や、幼い少女をわいせつ目的で誘拐し殺害する事件、
家族同士で殺し合う事件が現在の何倍も発生していた」
(235P)
そうです。
「喉もと過ぎれば……」と言いますが、何十年後かには、現代を『古き良き時代』として振り返るときがくるのかもしれません(笑)
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