緑水の森支援活動ブログ

〜震災支援として心のケア活動を行っています〜

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届いた年賀状

世の中が浮き足立って、せわしない風景に彩られる年末。
年明け、たった数時間の違いの中にあるのにも関わらず、何かがすべて変わり果てたかのように、
空も、空気も、ココロも澄み渡る世界を目の当たりにする。
新年の風に煽られ、己が変わりつつあることを知らされるこの日々の中にあって、
自身を見出せず、その風をみることの出来ない深淵にしゃがみこんでいる人たちがいる。
 
その心の闇には、まだ光さえ届かない。
光は、その頭上からも、実は、その窓からも射し込んでいるのだけど、
それを光と認識する心さえ持てずにいるのだ。
 
 
「年越しそばは食べた?」と聞くと、
「ああ、そうでしたね。大晦日ですもんね。でも、今、冬休みなんで、こども達は実家にやってますから、大丈夫。」
 
こども達には、ご実家のお父さんやお母さんが食べさせてくれるから大丈夫ということなのだろう。
本人は、なにも食べていないようだ。
 
「数日前に、お医者さんに行ってお薬をもらってきてるので、大丈夫。」
大丈夫という言葉が並ぶ。
わかってる。大丈夫と言ってる時ほど、大丈夫なんかじゃないってこと。
 
「大丈夫じゃないよね〜。Mちゃん、大丈夫じゃない時ほど、大丈夫って言うもんね。私と同じだ。」
「あはは〜。先生もそうなんだ〜〜。」力ない空笑い。
「そうだよ。昔っからそうなんだ。大丈夫って言ってる後に倒れたりする。。。それじゃ、余計にみんなに心配かけるし、迷惑かけるから、最近は、大丈夫?って聞かれたら、ダメ〜って答えることにしてるんだ(笑)」
「あはは〜〜。そっか〜。先生もそうなんだ〜。」
ちょっと安心した様子。そう、誰だって問題は抱えているし、足りないこと、出来ないことだらけなんだ。
だから、独りでは生きていけない。
 
本当は、先生と呼ばれるのは好きじゃない。私は別に偉い人じゃない。
それでも、先生と呼びたい人には呼ばせておく。
でもね、たいがい心を痛めている人は、先生が欲しいんじゃない。
心を許せる友達が欲しいんだ。
 
だから、私は、自分の話も伝える。
先生と思っている相手が、実は、全然ダメダメなところを持っているということ、
それでも、前に向かって歩いてきたら、こんな世界が広がっていたということを知ってもらうことで、
自分の可能性を信じてもらうことができるから。
 
カウンセラーとしてどうなのか・・・と言われれば、そのやり方は違うと言われるかもしれない。
けれど、長年たくさんの人と関わってきて、本当に心を救うことが出来たと感じる人たちがなぜ回復できたのかを見つめてみると、結局はただ関わりきったという、それだけの事実でしかなかったからなんだ。
 
(もちろん、カウンセラーとしての知識、傾聴の仕方、心構えや、フォローしきれない場合の連携先の確保、
そういったものは、ちゃんと理解しているし、作ってきているけれど。)
 
 
回復した彼らは、私への依存もまったくなく、人としての充実感を身に纏い、
社会貢献をしながら日々を生きている。
 
『幸せ』だと言ってくれる。その言葉を聞くことが出来ただけで幸せと感じる。
 
 
そんなクライアントのMさんから、2013年・元旦に年賀状が届いた。
『家族みんなで笑顔で暮らすことができるようになりました。
今は、犬の散歩と、野球チームに入った息子の応援と、チームのお世話で、日々忙しく楽しく暮らしています。』
 
彼女は今、福島を出て、暖かな土地で、新しい人生を送っている。
 
 
 
*事実に即した内容ですが、プライバシーに関わる記述になるため、意図的に日時や時系列、細部の描写などを訂正、加筆した内容にしてあります。
 

△月○日の日記  

いがみ合う2つの団体の関係調整を依頼される。
 
両者とも、いや誰もが「今、困っている人達のために」という純粋な思いから出発してここにいる。
それなのに、いつの間にか仲間同士で、足の引っ張り合いだ。
それはまるで、どこかの国の政治の縮図のようだね。
 
 
家族という共同体だってそうだ。
愛という絆。そこから生み出されるものは「未来」という名の子ども達。
それなのに、いつの間にか思いはすれ違いはじめ「個の思い」だけを大切な存在にしていってしまう。
それはまるで、無間の苦海に生きる未進化の生き物のようだね。
 
「ヒト」という名の発展途上の霊的存在。
 
修復不可の「痛みから学ぶ」ために、
「一定方向にしか流れぬ時間」は、厳しく、あたたかかく、我々を包み込んでくれている。
 
なあ、こんな世界に一緒に生まれたんだ。
もう少し楽にやっていこうよ。
 
 
 
*事実に即した内容ですが、プライバシーに関わる記述になるため、意図的に日時や時系列、細部の描写などを
訂正、加筆した内容にしてあります。
「突破口を開いてほしい。」
「誰が訪ねても居留守で出てきやしない。」
「住所は○○○、中年男性、家族は亡くなって独り暮らし、孤独死の可能性あり。」
 
これだけの乱暴な依頼で、僕等は車を飛ばして行った。
 
壊滅した集落、残ったのは、たった一軒。
入り組んだ地形の影響で、津波は激烈だったのだろう。
三階建てのコンクリート製の建物の窓も戸口も、黒い断末魔の開口部から、無作為の呼吸を非情な自然の風に委ねている。ボロボロのカーテンが生き物のように踊っていた。
 
木造の民家は、当然跡形もなく、基礎が残るだけだ。
重機に潰されたぬいぐるみが、官製のガレキ撤去完了への無言の抗議を続けている。
 
空は澄みとおるように青いのに、日陰にはまだ霜が光っている。
 
 
白い息を吐きながら、かじかんだ手で玄関の戸を叩いた。
電気のメーターも、庭に停めた軽トラも、彼の在宅を証明している。
僕等は彼の名を呼び、ドアを叩き続けた。
まるで、昭和の時代の借金取りのように、20分くらいかな。
ドアの向こうでよろめくような気配がし、鍵を開ける音に僕等は寒さを忘れた。
 
多くの言葉なんて必要じゃじゃない。どのみち、彼は朝から泥酔しているし、こちらは「気」を届けるためにここまで来ているんだ。
伝えるべきことだけ伝え、僕等は別れた。。
 
 
 
先日、「彼」が、行政による巡回訪問を受け入れたという報らせが入った。

名もなき多くの想いが少しだけ結実した。
きっと彼は僕等のことなど覚えていないだろうけど、そんな事はどうだっていいんだ。
彼が孤独の酩酊の底からドアを開けてくれた。
僕は与えてもらった今日の役割に充分満足だし、感謝している。
 
*事実に即した内容ですが、プライバシーに関わる記述になるため、意図的に日時や時系列、細部の描写などを
訂正、加筆した内容にしてあります。

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