伊藤哲司の「日々一歩一歩」

茨城大学で社会心理学を担当している伊藤哲司のページです。日々の生活および研究活動で、見て聞いて身体で感じたことを綴っていきます。

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東北への旅(5)

イメージ 1  今回の東北の旅の5日目、早いもので最終日になりました。飯坂温泉を少しゆっくり目に出発し、飯舘村の農家を訪ねていきました。そこはすでに同僚が関わりをもっているところで、お会いした農家の方は、NPO法人ふくしま再生の会の福島県代表である菅野宗夫さん(写真左端)でした。試験的に栽培されている水田の様子を見て、稲の高さや分蘖数などを測る調査の一部を体験させてもらいました。学生たちも、お借りした長靴と麦わら帽子をかぶり、おずおずと田んぼに足を踏み入れ、慣れない手つきで稲に触れていました。
 震災後の原発事故で、安全で避難しなくてもいいと説く専門家を一時は信用し、しかしそのあと専門家も信じることができなくなったという菅野さんは、「地球全体が被災地だ」と語ります。まだ寝泊まりが基本的に許されていない自分の自宅に、避難先から通ってきて、それで決して出荷できない米を作るという心境やいかばかりか。大家族があるとき強制的に別れて避難せざるを得なくなったことの辛さ――、それも放射能汚染のデータ公表の遅延もあって原発事故から1ヶ月も経ってからの避難になってしまいました。今日90歳の年齢になったという菅野さんのお父さんを避難生活ままでは終わらせたくないとも話してくれました。
 多くの人が奮闘しているわけですが、震災から2年以上が経過し、やはり精神的に参ってくる人も少なくないようです。精力的に歩き回っている菅野さんご自身も、相当大きな負荷がかかっているのでしょう。そんななかで安易に「心のケア」など、できようはずもないわけですが、私も心理学者の端くれですから、そこには重大な関心を抱かないではいられません。問題を解決していくのは当事者の方々ですが、むしろ何かお役に立てることはないだろうかと思います。ふくしま再生の会には、さまざまな専門の研究者も含めいろいろな立場の人が関わっているようです。今後、自分に何ができるか考えてみたいと思います。
 菅野さんは、とにかくここに来て見てほしい、とくに若い人たちに見てほしいと言います。福島の現実をしっかりと見て知ること、それはこの時代に震災・津波・原発事故に立ち会ってしまった私たちすべての責務なのではないかと思えてきます。
 飯舘村を離れる前に、菅野さんは村内の役場や除染作業をしているところなどを熱心に案内してくれました。学生たちにも何かしっかりと伝えようという気持ちが、私にも伝わってきました。まずは9月にまたここに足を運ぼうと思います。またひとつここにも縁ができました。
 今回の東北への旅は、とりあえずここまででおしまいです。大震災から2年半近く、変わりゆく被災地の現状の一端と、何人も方々のお話に耳を傾けることができました。同行した学生たちにも、大きな体験、特別な旅になったのではないかと確信します。これで私の東北への旅は終わりではなく、まだまだこれからも続きます。

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いとうてつじ
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