伊藤哲司の「日々一歩一歩」

茨城大学で社会心理学を担当している伊藤哲司のページです。日々の生活および研究活動で、見て聞いて身体で感じたことを綴っていきます。

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東北への旅(3)

イメージ 1  今回泊まった奥松島の月浜には、「えんずのわり」という行事が残っています。これは、集落にある五十鈴神社に正月11日〜15日に少年たちが集まり、おこもりをして一緒にすごし、精進料理を食べて鳥追いの行事を行うというものだそうで、宮城県無形文化財にも指定されています。今朝早く、近所を散歩した際に、この「えんずのわり」が行われる五十鈴神社の石屋も見ることができました。その神社まで津波は到達し、目の前から浜に向かって広がっていた集落は、いまほとんど更地になってしましました。住居の高台への移転が予定されているとのことで、ここに以前と同じように家々が建つことはもうないのかもしれません。でもそれが、後生の人たちから見ても、ひとつの知恵として受けとめてもらえるならばよいのかもと思います。
 今朝は、東松島市のJR仙石線・東名駅があった近くのセンターで、そのあたりの区長である齋藤さんからお話しを伺うことができました。そのあたりは、茨城大学の学生たちを含む水戸の石塚観光の災害ボランティアバスが頻繁に来ているところで、7月に私もここへ来させてもらったのでした。石塚観光の綿引社長から紹介してもらって齋藤さんに繋がることができました。今年74歳という齋藤さんは、1960年(昭和35年)のチリ地震津波も覚えており、しかしそのときはこのあたりは30センチぐらいの浸水ですみ、家屋も大丈夫で、亡くなった人もいなかったとのことです。しかし今回は、この東名地区で183名もの犠牲者を出していました。2012年2月のチリ地震のときの津波警報には、多くの人が反応して遠くまで逃げた人が多かったようなのですが、そのときも被害はなく、それが今回逆効果になってしまったのかもしれません。三陸の大地震は十分予想されハザードマップもできていたにもかかわらず、屋外の防災放送は機能せず、各家庭にあった防災無線の受信機には電池が入っていなかった人が多かったそうです。
 石塚観光のバスによるボランティアがしょっちゅう来てくれていることからは、大きな力をもらっていると齋藤さんは教えてくれました。近くの野蒜海岸には、ボランティアたちの清掃のおかげで、ハマヒルガオが復活したと、そんな話も聞かせてくれました。学生たちがまた来たときには、ぜひ少し今回のようなお話をしてもらえませんかと依頼すると、それはもちろん喜んでと応じてくれる様子でした。私も7月に一度ここへボランティアバスで来たのですが、地元の方との交流は実質的にはほとんどなく、それはそれでもいいのかもしれませんが、少しこの地域のことを知るきっかけがあるといいなと思った次第です。
 東松島を出発して、多くの児童らが犠牲になった石巻市立大川小学校に立ち寄り手を合わせました。何度来ても、本当に胸が痛くなる場所です。そこから比較的近い雄勝小学校や吉浜小学校は、今年3月に来たときにはまだ校舎が残っていたのですが、すっかり更地になっていました。どこも、あの日でこの学校、この校舎が使えるのが最後だと、誰も予想はしなかったことでしょう。犠牲になった子どもたちの碑には、やはり手を合わせるほか術がありません。
 国道45号線を北上し、気仙沼市に入り、巨大な漁船・共徳丸という船が打ち上げられている鹿折唐桑駅近辺に立ち寄りました。つい最近の市民アンケートで「保存の必要はない」という回答が7割近くにのぼって、解体されることが決まったとのこと。しかし、大震災の津波の記憶の象徴ともいえるこれを何とか残す手だてはないのかと、個人的には思ってしまいます。これは、地元・気仙沼だけの問題ではなく、私たちの震災・津波の記憶をどうとどめるかという問題でもあるからと思うがゆえです。
 今回、いろいろな場所が徐々にきれいになっていく様子を見ました。それはもちろん、街が復興していくために必要なことではあるわけですが、傷跡すら失ってしまう寂寥感と言ったらよいでしょうか。何とかむしろ痕跡を後生に残すことをと思うのですが、なかなか現実には難しいことなのかもしれません。

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いとうてつじ
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