伊藤哲司の「日々一歩一歩」

茨城大学で社会心理学を担当している伊藤哲司のページです。日々の生活および研究活動で、見て聞いて身体で感じたことを綴っていきます。

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台湾の旅(5)

イメージ 1  今日は実質的な最終日。台中から新幹線に乗り高雄へ移動しました。そこで待ち合わせたのは、御年85歳という陳徳松さん(日本名・陳東さん)。かつて日本語での教育を受けたいわゆる「日本語世代」の方です。留学中の本田さんがすでに一度会っていて、今回ぜひあらためてお会いしたいとお願いをしてくれました。年齢を感じさせないかくしゃくとした陳さんについて、たまたま今日開かれているというグランドゴルフ大会の会場へ向かいました。
 すでに大会は終了していたのですが、多くの年長者が集まっていました。何人かの方は日本語が話せるようでした。私に話しかけてくれた孫さんという男性は、自ら生まれは「昭和3年」とあえて「昭和」で教えてくれました。そして、こちらがとくに質問するわけでもないのに、日本語で日本人に話せるのが嬉しいというかんじで、快活にあれこれ話をしてくれました。曰く、日本人はきっちり働き過ぎで定年退職したときに友人もいないとか、グランドゴルフは1人でも何人でも楽しめて、ゆっくり冗談を飛ばしながら楽しめるとか。そこに集まっている人たちの大半は、かつて日本海軍に関連していた中国石油会社のOBたちのようで、すごくいい仲間であることが、人々の表情などからうかがえました。あれこれ立て続けに話た孫さんは最後に、「それでなんであなたはここに来たの?」と私に聞いたのでした。
 グランドゴルフ大会のあとは、年末ということで昼食会が開かれ、私たちもご相伴にあずかることになりました。そしてそのあとは陳さんの自宅に移動し、そこでゆっくり陳さんの話を聞ききました。陳さんは、世界中を旅した写真をたくさん見てくれながら、日本で行われたグランドゴルフの大会にも「台湾チーム」で参加したことを教えてくれました。韓国での大会では、やはり日本語がわかる年長の韓国人がいて、最初は日本語を話そうとしてくれず、しかし自分が日本人ではなく台湾人だと明かすと、そのあとは日本語を話してくれたのだそうです。なるほど、そういうことかと、とても印象に残る話でした。
 子ども時代は、台湾人と日本人の差別もあったといいます。しかし仲の良い日本の友達もいて、美味しいものが手に入ると分けあっていたのだとか。そして日本人の先生を敬い、日本人たちが敗戦で引き上げていったあとも、そうした日本人の元教師との交流は続いていったようです。よく叩かれたりしたものの、できないところはできるまで教えてくれたとのことです。そして日本人が引き上げていったときは「悲しかった」と言います。
 本田さんや私が2・28事件のこと、そして蒋介石のことについて質問したのですが、それらについては多くは語ってくれませんでした。親戚のなかにも殺された人がいたそうで、国民党による「略奪や強姦が酷かった」ということだけは少しだけ話してくれました。しかしなかなか話しづらいことなのでしょう。本田さんにはあとで、時間をかけて聞いてみるしかないねと話しておきました。
 陳さんはそのあと、私たちを街中に連れ出して、上からの眺望が素晴らしい高層の高雄85ビルや、龍と寅の巨大なオブジェが印象的な左営蓮池潭などを案内してくれました。そして美味しいワンタンの店にも連れていってくれました。私たちが関心を持って陳さんい接したことが、とても嬉しかったのだろうと思います。私たちもすっかりご厚意に甘えてしまいました。それにしてもスタスタと歩く85歳の陳さん、自分がその歳になったとしたときに、こんなふうに歩いているだろうかと思うと、単純にすごいなと思います。
 陳さんは、新幹線の発着する左営駅まで、私たちを送ってくれました。その後、本田さんは台中で降り、私たちは桃園で降りて、空港近くのホテルにチェックイン。高雄にいた時間はあっという間でしたが、大事なことがギュッと詰まった時間になりました。
 台湾でのいろいろな思いを旨に、明日朝の便で帰国の途につきます。

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いとうてつじ
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