尖閣諸島沖の
中国漁船衝突事件を受け、政府の情報統制がジワジワと進んでいる。かつて「政権の基本
コンセプトは公開と説明だ」と明言していた仙谷由人官房長官が主導しており、国会中に「厳秘」資料を“盗撮”されたとして写真取材への規制強化にも言及した。そして統制の矛先は民間人にも向けられる。政権は「秘密国家」への道を歩み始めたのか−。(加納宏幸、半沢尚久)
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記事本文の続き 防衛省は10日付で「隊員の政治的中立性の確保について」と題する中江公人
事務次官名の通達を出し、自衛隊施設での民間人による政権批判の封じ込めを求めた。
きっかけは3日に航空自衛隊入間基地(埼玉県狭山市)が開いた航空祭。自衛隊を後援する民間団体「航友会」の会長が招待客約3千人を前に衝突事件での政府の対応を挙げ、「
民主党政権は早くつぶれてほしい。皆さんも心の中でそう思っているのではないでしょうか」とあいさつした。
これを伝え聞いた北沢俊美防衛相が激怒し、
事務次官通達を指示したとされる。
通達は、発言は自衛隊法などの「政治的行為の制限」違反との誤解を招く「極めて不適切な発言」と断じた上で(1)政治的行為と誤解されることを行わないよう参加団体に要請(2)誤解を招く恐れがある場合は参加を控えさせる−などの対応策を指示した。
憲法19条(思想信条の自由)の精神に反する疑いがあるだけに自衛隊幹部も「民間人への言論統制は前代未聞だ」と反発。内局幹部も「国民の率直な声を抑圧する姿勢はファシズムに近い」と批判する。
自民党など野党は17日の参院
予算委員会集中審議で北沢氏らを徹底追及する構えだ。
一方、日本の在ジュネーブ国際機関代表部が、
中国によるレアアース(希土類)対日輸出停滞問題を10月の
世界貿易機関(
WTO)会合で取り上げる準備をしていたところ、
外務省が「待った」をかけたことも判明した。13日の菅直人首相と中国の
胡錦濤国家主席の首脳会談に向け、波風を立てないように「配慮」したとみられる。
日中首脳会談では福山哲郎官房副長官がやりとりを一切明らかにせず、日露首脳会談でも
ロシア側の説明の方が正確で詳しかった。
メディアへの情報統制を主導するのは仙谷氏だとされる。16日も映像流出を認めた海上保安官を「捜査機関の一員が捜査関係書類を他に流出させることは驚天動地だ。考えられない」と語気を強めて批判した。
仙谷氏は、検察当局と警視庁が国家公務員法(
守秘義務)違反容疑で逮捕しない方針を決めたにもかかわらず、重ねて
守秘義務違反に当たると強調。映像内容は国民周知の事実となり、すでに秘匿性はなくなったが、今もかたくなに公開を拒み続ける。
「私たちの目標は国民に『ありがとう』といわれる公務員、国民から感謝される行政府づくり。基本
コンセプトは公開と説明だ」
仙谷氏は今年2月、国家戦略担当相として国会でこう答弁した。
民主党も参院選
マニフェスト(
政権公約)に「行政情報の公開に積極的に取り組みます」と明記しており、情報開示には前向きだとみられていた。
ところが、現実には政権に都合の悪いことは隠蔽(いんぺい)し、首相の記者会見などでも政権に批判的なメディアに質問させない。情報が漏れると「犯人捜し」ばかりに躍起となる。「
民主党」の看板とは真逆の方向に進みつつある。