キリン、サントリーの統合交渉が決裂
2月8日12時6分配信 産経新聞
キリンホールディングスは8日、サントリーホールディグスとの経営統合が決裂したと発表した。最大の懸案である統合比率をめぐり両社の溝が最後まで埋まらなかった。統合が実現していれば売上高3兆8000億円、世界5位となる食品会社の誕生は、交渉が表面化した昨年7月から半年で、まぼろしに終わった。
キリンの加藤壹康社長と、サントリーの佐治信忠社長が同日、都内で会談し、交渉を打ち切ることで合意した。キリンの発表によると、「統合会社は、公開会社として経営していくことを前提に、経営の独立性・透明性が十分に担保されるべきと考えていたが、サントリーとの間で認識の相違がった」としている。キリンが、サントリーの創業家の持ち株比率が高くなることに反対したことが、決裂の最大の理由とみられる。
統合比率をめぐる交渉では、昨年11月下旬にキリンが、キリン1対サントリー0・5程度の案を提示。一方、サントリーは、キリン1に対しサントリー0・9を要求。その後、キリンは1対0.6程度に引き上げたが、サントリーは1対0・9を主張し続け、最後まで妥協点を見つけられなかった。
また、サントリーはキリンの医薬品子会社「協和発酵キリン」の売却を求めており、医薬事業をめぐる認識の違いも決裂の一因となったとみられる。サントリーは売上高4000億円の協和発酵キリンの規模では、世界の医薬品大手との競争で生き残るのは困難として、統合後数年以内の売却の確約を要求。これに対し、キリンは、2008年に協和発酵工業を買収し、自社の医薬事業を統合し、成長戦略の柱の一つに位置づけており、反発していた。
キリン・サントリー、泡と消えた「大統合」
2月9日12時16分配信 読売新聞
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読売新聞
世界最大級の酒類・飲料会社を目指したキリンホールディングスとサントリーホールディングスの経営統合交渉が8日、決裂した。
創業家が支配する非上場企業のサントリーと、東京証券取引所1部などに上場し、株主の目を意識して短期的な収益や経営の透明性に気を配らざるを得ないキリンは、両社の間にある「企業風土の違い」という溝を最後まで埋めることができなかった。
◆持ち株比率で暗礁◆
「上場会社として経営の独立や透明性に、お客様などから賛同いただくことが出来ないと考えた」(キリンの加藤壹康(かずやす)社長)
「我々が考えているオーナー会社の良さは、なかなかパブリックカンパニー(公開会社)には理解できない」(サントリーの佐治信忠社長)
両社の経営トップは8日の会談で交渉決裂が決まると、それぞれ別に記者会見し、破談となった理由を打ち明けた。
サントリーは創業家一族が運営する「寿不動産」が発行済み株式の90%近くを保有するオーナー会社で、株式を証券取引所に上場していない非公開企業だ。
交渉の当初から、佐治社長は「統合するからには対等合併。統合後も創業家が筆頭株主になる」と強く主張し、創業家が統合新会社の株式の「3分の1超」を持つことは交渉の大前提とも考えていた。
昨年7月に本格化した交渉が暗礁に乗り上げたのは昨年11月下旬。キリンが示した統合比率が「キリン1に対しサントリー0・5」と、サントリーにとって受け入れ難い内容だったからだ。統合比率は、新会社の株式を両社の現在の株主に割り当てる比率を示す。キリンの提案だと、サントリー創業家の持ち株比率は3分の1に届かない。サントリー側はキリンへの不信感を募らせた。
◆創業家の壁厚く◆
今年に入ってキリン側が歩み寄り、サントリー創業家が新会社の株式の3分の1超を保有することを容認した局面もあった。
そのキリンが、最後まで譲れなかったのは、上場企業の経営の独立性や透明性の確保ということに関しての考え方の違いだった。
キリンの加藤社長は8日の会見で「3分の1がどうのこうのよりも、新会社の経営をどうしていくかという点について合意できなかった」と述べている。
仮に、サントリー創業家が、株主総会で合併・買収(M&A)などの経営の重要事項に対し拒否権を持つ3分の1超の株式を保有しても、「君臨すれども統治せず」という姿勢を貫くのであれば、妥協の余地はあったかもしれない。
だが、サントリー側は創業家が新会社でも経営に大きな影響力を持ち続けることを望んだ。例えば、サントリーは、取締役会に参加していない創業家に、役員人事や営業店の統廃合、新株発行による資金調達などの重要事項について事前の承認を求めているとされ、新会社もこの手続きを継承するよう求めたという。
キリンは多くの株主の中でサントリー創業家だけを優遇する提案は最後までのめず、交渉を打ち切った。
ウイスキーから飲料事業中心の企業へ華麗な転身を遂げるなど佐治・鳥井家の歴代社長がトップダウンで会社を発展させてきたサントリーと、三菱グループの一員としてビールを中心に着実に業績を拡大してきたキリン。「世界最大級の食品会社」という壮大な目標は企業風土の違いという深い溝に落ち、泡と消えた。(経済部 戸田雄) 最終更新:2月9日12時16分
「強者連合」不信で自滅 キリン・サントリー 統合決裂
2月9日8時15分配信 フジサンケイ ビジネスアイ
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キリン、サントリーの交渉の経緯(写真:フジサンケイビジネスアイ)
国内食品首位のキリンホールディングスと同2位のサントリーホールディグスは8日、経営統合交渉が決裂したと発表した。最大の懸案である統合比率をめぐる両社間の“溝”が、最後まで埋まらなかった。売上高3兆8000億円と、世界5位の食品メーカーの誕生は、両社の交渉が表面化した昨年7月から半年で“まぼろし”に終わった。
◆比率めぐり溝
キリンの加藤壹康社長と、サントリーの佐治信忠社長が同日、都内で会談し、交渉を打ち切ることで合意した。これを受け、同日、会見したキリンの加藤社長は「統合新会社は上場公開会社を前提に、どのような経営をするか、両社間の認識が一致しなかった」と述べ、経営方針の考え方に隔たりがあったことを明らかにした。一方、サントリーの佐治社長は同日の会見で「統合比率で開きがあり過ぎた」と述べた。
両社の統合比率をめぐる交渉では、昨年11月下旬にキリンが、キリン1対サントリー0.5程度の案を提示。一方、サントリーはキリン1に対しサントリー0.9を要求した。その後、キリンは1対0.6程度に引き上げたとみられるが、サントリーは1対0.9を主張し、最後まで妥協点を見つけられなかった。またサントリーがキリンの医薬品子会社「協和発酵キリン」の売却を求めたことも交渉決裂の一因になった。
国内市場が縮小する中、国際的な競争力の強化を目指すという“理想論”が先行したキリンとサントリーの交渉は、統合比率に加え、サントリー創業家の権利など、「初歩的」な課題すら克服できずに、“決裂”を迎えた。
◆「ばかにしている」
「サントリーをばかにしているのか。もう会わん。交渉はやめや。これで、やめや」
統合交渉が本格化した昨年11月下旬。キリンの加藤社長と都内で会談したサントリーの佐治社長は、キリンが提示した統合比率の提案に激怒した。キリンが、この時、提示した統合比率はキリン1に対しサントリー0.5強だった。
「統合比率が半分とはサントリーと社員をばかにしている。サントリーはそんな軽い会社ではない」。佐治社長は、会談の席を立ち、この時を境に、破談への“歯車”が動き出す。
◆議決権掌握を警戒
キリンの統合比率案は、サントリーに約90%を出資する創業家一族の反発も買った。佐治社長によれば、統合交渉前に、サントリー創業一族の資産管理会社が統合新会社に3分の1以上を出資するという条件が加藤社長との間で事前了解されていたという。
だが、キリンの出した案では、サントリー創業家の統合新会社への出資比率が3割を下回ってしまう。キリン側が、株主総会で買収などの重要事項を否決できる「3分の1超」をサントリー創業家に握られることを警戒したためだ。
これにサントリー創業家一族は「キリンに裏切られた。一緒になる必要はない」と、不信感を強めた。
一方、非上場会社のサントリーとは違い、上場会社のキリンは、サントリー創業家を、他の株主より優遇しすぎるのは「公平性の観点において株主や従業員など利害関係者から理解が得られない」(加藤社長)と判断。また、キリンの医薬事業の切り離しを、サントリーが統合の条件として求めたことで、交渉は完全に停止した。
統合が実現していれば、ビール類の国内シェアで5割超、清涼飲料で3割を握り、世界の食品業界で5位になるはずだった両社の交渉は難航を極め、8日午前のトップ会談に決着が委ねられた。
しかし、無理に譲り合い、居心地が悪くなってまで一緒になるよりも「最終的に交渉を終了することで合意した」(加藤社長)。
■次の相手模索 再編機運さらに
破談になったとはいえ、両社の09年12月期の連結経常利益は、ともに過去最高を更新するなど、両社は国内食品業界で“勝ち組”だ。「キリンと一緒にならなくても単独で十分にやっていけだけの規模がある」とサントリーの佐治社長はいい、キリンの加藤社長も、「単独で成長できる体制は整えてきた」と胸を張る。
だが、国内の勝ち組という“内弁慶”では、世界的に巻き起こる再編の渦の中で生き残るのは難しい。08年12月期の最終利益はキリンが801億円、サントリーは321億円。米ペプシコの約5400億円、米コカ・コーラの約5300億円に比べれば“蟻と象”もの開きがある。
内外の有力なパートナーと組まなければ海外勢に取り残されるのは必至だが、両社を含めた国内勢は単独でのM&A(企業の合併・買収)には資金に制約がある。このため、食品業界の再編機運は今回の破談で下火になるどころか、むしろ強まる可能性すらある。
「キリンとしてはM&A、アライアンスが重要な成長戦略と考える」(加藤社長)、「海外の有力食品会社との連携を考えたい」(佐治社長)。両社トップの視線は早くも次のM&Aに向く。独自の成長戦略で、国際競争の舞台の中で両社は生き残れるのか。交渉時には見えなかった、正念場が両社を待ち受ける。(今井裕治)
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