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2010年4月6日。シンガポールに2日ほど滞在した僕は隣国マレーシアに降り立った。
シンガポールは大体回ったし、物価が高いから旅行する場所としては大して興味はない。
幸いジョホ−ルバルはシンガポール市街からバスで1時間ほどであり
日帰りで全く趣の違うイスラムの国を見て帰れる場所である。
国境での入国審査はズムーズに進みジョホールバルに到着。
国境近くのホテルに宿泊し、翌日昼から市内散策に出かける。
ジョホールバル、といえば昔サッカー日本代表が初めてワールドカップ出場を決めた場所として有名である。
中田が蹴ってキーパーに当たって岡野が押し込んだあの試合。
イスタナ・ガーデンという緑の広がる公園を一人歩く。
平日ということもあってあまり他の観光客を見かけない。
公園自体はなんということもない公園だった。天気は良いが赤道直下で蒸し暑い。気温は35度くらいはある。
と、公園の裏手にある門が閉まっていた。
正門から歩いてきたのでまた引き返すと40分くらいかかる。これは相当面倒くさい。
当然のように門を乗り越えて一般道に出ようとを考えた。
門、と言っても校門程度のものだし、さほど問題でもあるまい。
まずリュックを外に下ろし、門のてっぺんに足をかけて向こう側に思いきり飛び込んだ。
まあ、こんなこと長い旅でよくある経験だ。
瞬間、後ろから声をかけられた。バイクに乗ったイスラム教徒風のマレー人だった。
「おい、お前今何したんだ?」「ちょっとこっち来い!」かなり高慢そうなモノ言いである。
この男制服も何も着てなかったし、最初は無視して反対方向に歩き出した。
しかししつこく追いかけてくる。「俺はセキュリティだ、なぜ逃げた?来いと言ってるだろ!
お前、ゲート飛び越えただろう」
自分の中で「ルールを犯した」という負い目があるのでかなり戸惑う。
ここは大人しく従ったほうが厄介事にならなくて済むのではないか。
とりあえず男の話を聞くことにした。
「おまえ誰だ、本当にセキュリティなのか」と聞くと一応写真つきの証明書を見せられる。
でもこれだけでは彼が本当のセキュリティなのか分からない。
「パスポートを見せろ」と言われる。
パスポートを見せると取り上げられ「オフィスまで来い」と言われバイクに乗せられる。
いよいよ事態は怪しくなってきた。。
バイクに乗せらされてる間パスポート取り返して逃げるタイミングも度々あったのだが
もしも本当にこの男が警察とつながっていたら、
逃走するという行為が後々どんなに状況を面倒にするかを想像してしまい、少しひるんだ。
そして翌日に控える香港行きのチケットもラオスへの旅行計画もすべてが台無しになってしまう。
バイクはイスラムのモスクにある全く人影のない場所に止まる。
そこに座らされ遂に「荷物の中身と財布を全部見せろ」と言われる。
事態は非常に深刻だ。
男が財布の中身をチェックし札を数え始める。
自分のお金がさっき会ったばかりの知りもしない、くそったれマレー人の手に触れられていると思うと
急に悪寒と言いようのない怒りがこみ上げる。
「おまえ何してるんだ、バカ!盗んなよ!!」思わず叫んだ。
その瞬間この男の表情が変わり、「じゃあ警察に全部話しに行く、お前牢屋に入る」と言われる。
バイクに乗せられ15分ほど走ったあと古びたスラム街にある建物の前に止まった。
「ここはおれのオフィスだ、手続きするからおまえここに座れ。座っとけよ。」
パスポートと財布を持ったまま、男は建物の一室に入る。
数分後彼は外に出てきて「後ろに乗れ、警察に連れてく」と言う。
言葉も何も通じない、マレーシアの牢獄ですべてを剥ぎ取られ一人たたずむ自分を想像する。
何てこった、、、
「おまえ今日シンガポールに帰るんだな?」
そうだ、と答えるとジョホールバルの街中までそのまま連れて行かれる。
市内に着くと急にパスポートと財布を投げるように返される、男は静かにバイクで立ち去った。
予想通り財布には一銭の金も残されていなかった―
猛暑の中、気を失いそうになる、、、
あとがき
今まで十数回一人で世界を旅行してきた中で
一切の盗難や事件に巻き込まれたことのない自分にとって
この時はショックと衝撃でしばらくどうしていいのかさっぱり分からなかった。
何より20日ほど計画した旅行の、たった3日目で全財産を失ったのだ。
もう今すぐ豪州に帰りたい、と思った。
幸いパスポートとクレジットカードは戻ってきたから
シンガポールに戻って現金を引き出し、不屈の闘志でラオスの旅行まで乗り切った。
ジョホールバルでは日本領事館に行って話は聞いてもらったがマレーシアの警察には行っていない。
時間もなかったし現金だけ盗られたと報告しても金が返ってくるはずもない。
そして一国も早くあの忌まわしきジョホールバルという街を出たかった。
考察
・なぜ抵抗できなかったのか、逃げなかったのか。
これは今でも正直思い出して自分でも苦々しい思いになる。
戦う意思を見せれなかった自分に恥ずかしささえ感じる。
普通の警官やセキュリティならお金に手を触れることはないだろう。
ただ「ルールを犯した」という思いが「言いつけられる」という恐怖感を引き起こし
実力行使の行動を取ることを抑制してしまった。
・ニセ警官・セキュリティについて
後からネットでも調べたがこういう事件は世界各地で多発している。
殺人とか傷害まで発展している事件もある。
外国を旅行する者にとってこういう人と接触してしまった場合
非常に判断が難しい。中には本物そっくりの制服、身分証まで用意しているというのだから。
僕だって未だにあいつが本当のセキュリティなのかどうか分からないのだ。
・対策・対応
人どおりの少ない場所(観光客の少ない場所)を歩くは極力避ける。
相手に弱みを握られない(交通ルールや宗教上の規範を無視するなど)。
そういうことで付け込まれると、こちらとしてはとても立場が悪くなる。
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世界が狂い始めていますね。マレーシアはここ数年危ないと聞いていましたがまさかです。ギリシャもスリが多くなっているようです。
安全な国はやはり日本なのかしら
2010/4/25(日) 午後 8:35 [ EITAI ]
こんばんは。
私は上海人ですが、皆さんのブログを通じて、この日本の事や、皆さんの
考えかた、それに他国に関する印象について、勉強できればと思っています。
沢山あって、何年かかるのか解りませんが、すこしずつ読んでいきたいと思っています。
今日も、素敵な一日でありますように。
2010/4/25(日) 午後 9:51 [ Shelly ]
EITAIさん、
ジョホールバルはマレーシアの中でも治安は悪いと言われてますね。ひったくりとかそういうシンプルなものだけでなく旅行者を騙そうと企んでる奴が多い気がします。この他にも実はいろいろあったんです。
2010/4/25(日) 午後 11:21
これは腹立たしいですね。パスポート持っていかれてるのが心配です。パスポートのナンバーなどを控えられたり偽造されたりしている可能性もあるので、パスポートが日本のものだったのなら日本大使館あたりに相談して現在あるパスポートを書き換えてもらったほうがいいのでは・・・
2010/4/27(火) 午前 1:00 [ hiromi21cen ]
それは大変な目に遭いましたね。。。
旅慣れしているさざんくろすさんが・・・ってちょっとびっくり
なんですが。。。
ご無事でなによりです!
2010/4/27(火) 午前 8:58
ひろみさん、
ありがとう。偽造するならパスポートぱくって逃げてるだろうけど機会があれば相談してみます。
2010/4/27(火) 午後 0:13
ままデえりすさん、
まあどんなに経験積んだ人でも落とし穴あるんでしょうね。いい勉強どころか命の危険まで感じたのですごい経験をさせてもらいました。
2010/4/27(火) 午後 0:15
は〜、とんだ災難に遭われましたね、しかし人事とはいえ読んでいて何か悔しい思いに苛まれましたよ。言葉が出来ないと全くされるがままという事になりますよね。旅慣れた貴方でさえこんな目にあうんですからね。他にも色々と体験談をお持ちでしょうから、まず私が行く機会は無いと思いますがその節はアドバイス願いたいですね。
2010/4/27(火) 午後 0:18
めぐる会さん、
もうあれから2週間以上たって旅行もしてきたので大分収まってますが事件のあった直後は悔しい思いを払拭するのが大変でした。
2010/4/27(火) 午後 1:15
これは・・・かなりの災難・・・怖いですね。
ジョホールは以前、観光で行った事があってその時は危ないなんていうイメージは無かったけれど、現地シンガポール人に言わせると「絶対行かない」所らしいです。それはちょっと大げさだなと思っていたけれど、こんな事がジョホールであるなんて意外でした。でも怪我が無かったのは不幸中の幸いですかね。
2010/4/28(水) 午前 0:27
Danzarinaさん、
勿論もろもろ自分にも落ち度はあるけど大半は運の悪さ・災難ということで落ち着けたから、その後もなんとか旅行できました。ガイドブックにも「治安が悪い」と書いてましたが今までもそういう所にたくさん行ってきたしね。実は変なトラブルがその前日にもあって、そういう悪だくみを試みようとする人はどうやら多いのかなと。後は平日になると極端に観光客の数がいないので狙われやすいというのはあるかもしれません。
2010/4/28(水) 午前 10:55
そんなことがあったなんて、さぞ悔しい思いをされたことでしょう。
でも、さざんくろすさんが無事だったのが本当によかったです。こういうことがあるとその町やその国に嫌悪感を抱いて一気に嫌になってしまいますね。後から考えると、あの時ああしていればという思いが色々と巡りますが、やはり良い方に取れば、現金だけで済んでよかった。それに確か襲われた時は変に抵抗して危害を加えられるよりも、財布をあげた方がよいというような教訓?を過去に聞きました。
2010/4/29(木) 午前 6:08 [ ソフィー ]
ソフィーさん、
でもね。ちょっとお人好しすぎるというかね、言われるがままに財布を出してしまった自分が少し情けない感じがしてそれが尾を引きましたね。日本人としてなめられないような行動をもう少し取れなかったと。
2010/4/29(木) 午前 9:51
実に大変な経験をしたんですね。しかもさざんくろすさんが言うように今までにこんな経験をしたことが無かったならなお更ショックは大きかったと思います。でも真っ最中にとても冷静な判断を下せていたさざんくろすさん凄いと思います。逃げなかったのか〜と後から後悔するのは結果がこうであったから、そのときの判断は正しかったようにも思えるし・・・・でもこんなやつらが居るこの世の中どうにかして欲しいですね。
でも最後まで計画を前倒しにせずにラオスまで敢行させたのは凄い精神力!天晴れです。
2010/4/30(金) 午後 3:05
大変な経験でしたね。
そういう時自分だったらどうするだろうかと考えてしまいました。
やっぱり同じようにしてたんじゃないかしら・・・
どこへ行ってもそうですが、危険は隣り合わせですよね。
私の場合もたまたまラッキーだったと思います。
何事もないことが大前提ですが、何かあったときの落ち着いた行動は大切ですね。
私もタクシーに乗ったときは、一応の事を考えてタクシーの運転手の写真を内緒で撮りました。
でも、無事でよかった。ほかの旅もされたようだし、よかったですね。
2010/4/30(金) 午後 8:53
むさこさん、
今まで何も起きないのが不思議なくらいでしたからね。過信していた部分もあるかもしれません。結局それから香港、タイ、ラオスまで行く飛行機も予約していたので、それを全部捨てるってのも悔しかったですしね。ラオスはなかなか味のある楽しい旅だったのでまたアップしていきます。
2010/4/30(金) 午後 9:11
LILYさん、
こういうことがあると次もし何かあったときまた対応は変わるでしょうね。ちょっと不用心に現金を持って行きすぎたんでそこも反省です。今はどこ行ってもキャッシュカードでこまめにおろせますからね。
2010/4/30(金) 午後 9:15