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『ヒトラーの贋札』

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『ヒトラーの贋札』は、今年2008年、第80回米アカデミー賞外国語映画賞を受賞した作品です。

この作品では、第二次大戦中のヨーロッパにおいて、ホロコーストにより迫害の対象となったユダヤ人
の中でも、ナチス政権で立案されたある計画によって生き残り、数奇な運命を辿った印刷職人だった
人々の姿にスポットを当てていました。

第二次世界大戦が終結した直後、カジノで有名なモナコ、モンテカルロの一流ホテルにひとりのスーツ姿の男がやってきた。彼は大量の札束が入ったスーツケースを持っており、彼の腕には強制収容所の囚人番号の刺青があった…。

第二次世界大戦中のドイツ。
ユダヤ人強制収容所の一画に、偽造紙幣や、偽造パスポートを作る秘密工場があった。
サリー(カール・マルコヴィクス)は、パスポートや紙幣の偽造によりベルリンで逮捕された。彼は、ロシアの美術学校出身の世界的な贋作師だった。
彼は、印刷技師のアドルフ・ブルガー(アウグスト・ディール)ら、各地から集められたユダヤ人職人たちとともに、強制収容所の中でも隔離された、快適な居住空間となっていた棟に送られた。彼らは異例な待遇を受けながら、そこにある工房で贋札作りに従事することになった。

そこでは、かつて彼を逮捕した、ドイツ軍の親衛隊に属している将校、フリードリッヒ・ヘルツォーク(デーヴィト・シュトリーゾフ)が「ベルンハイト作戦」と呼ばれた贋札作りの指揮を務めていた。

彼らユダヤ人職人にとっては、彼らが作った大量の贋ポンド紙幣をばら撒くことでイギリス経済を混乱させることを目的とした「ベルンハイト作戦」の成功は、家族や同胞に対する裏切りだった。
しかし、もし贋ポンド紙幣を完成することができなければ、彼らに命の保障がなかった。

この作品について、以下に3つのポイントから綴りたいと思います。

原作者と原作、監督について

原作は、アドルフ・ブルガー著『ヒトラーの贋作 悪魔の仕事場』。

映画のベースとなったこの手記を書いた彼は、1917年スロバキア生まれ、何と今年で90歳。
戦後は、戦争中の体験を手記として出版し、ジャーナリストとして活動をしています。
この映画の日本公開直前(2007年11月)には、来日も果たしています。

実際、映画に留まらず、原作である手記を執筆したジャーナリストとして、現在の彼の活動にも、
彼自身がホロコーストから生き延びた者としてドイツの若者へと伝えようとする強いメッセージが
感じられます。

彼は、来日時に、記者会見でのインタビューで、映画で取り上げられた史実以前、彼が辿っていた
人生についても明らかにしています。

彼が生まれたスロバキアは、カトリックのファシズム政党が政権を握っていた為に、ヒットラー
から侵略されることはありませんでしたが、ドイツ国内同様にユダヤ人は迫害を受けていました。

14歳から印刷の職業訓練を受けてきた方です。23歳の頃、地下活動が何かさえ知らないうちに、
「ニュルンベルグ法という人種差別政策の基になった法律では1938年以前にカトリックの洗礼を受けた
という証明があればユダヤの人々も助かる」という共産主義の地下活動家からの話に従い、3年間洗礼
証明書などを偽造していたといいます。

1942年8月11日、彼は自分の25歳の誕生日を夫婦で祝おうとしていた前日に、ゲシュタポに逮捕されます。

取調べらしきことは行われず、6週間、アウシュビッツ強制収容所で過ごし、その後、ビルケナフの
強制収容所に送られ、ビルケナフでは、彼の22歳の妻がガス室に送られ、帰らぬ人となりました。

何十万の人々が収容されていたビルケナフ収容所で、彼は1年半を過ごすことになりました。そして、
6人の印刷工だけが「専門職を必要としている」ということで、ビルケナフを出ることができました。
彼は、各地から集められた人々とともに、ザクセンハウデンへと贋札作りをするために送られました。

アメリカ軍に救助され、スロバキアの両親の家に戻った彼は、両親も連行され、処刑されていた事実を
知ることになったのでした。

1972年以降、彼は、作家、ジャーナリストとして活動を始め、1988年以降、自ら体験した史実を語る
講演活動を行っています。

具体的には、今迄、ドイツで8万5千人を超える25歳以下の若者に講演を行い、「3時間の内、1時間を
アウシュビッツ、1時間をビルケナウ、1時間をザクセンハウデンの内容に当てている」といいます。

彼は、今のドイツの若者に対して、史実に対して罪悪感を持つ必要はないが、戦争中にナチスが一体
何を行ってきたかを語り、ネオナチに参加することは殺人者になることだと伝え続けているのです。

彼の腕には、今もなお、自分が生き証人として伝えたいことがあるという意志を示しているかのように
アウシュビッツに送られたときに刻まれた「64401」という番号が刻まれているそうです。

映画の中では、贋ドル札作りが上手くいかない様子も描かれていました。
彼らは、贋作計画の責任者であったドイツ人将校クリューガーに、ドル紙幣を完成させなければ、
ブルガーを含め5人を射殺すると宣告されるまで、ドルの贋造が引き延ばし続けました。

アメリカで催されるアカデミー賞で、この作品が高く評価を受けることになった一因には、あるいは
そういった史実がアカデミーの会員であるアメリカ国民に支持を受けたことも、いくらかはあるのか
もしれませんね。

実際には、原作者のアドルフ・ブルガーと一緒に働いていたオランダ人が、ドル札の贋造は、戦争を
長引かせることに寄与すると主張していたといいます。

ドル札を作るゼラチンをあえて良質なものを使わず、ドルの贋造が完成しなかったのは、彼と一緒に
働いていた、そのオランダ人が考え、行なっていたことだったようです。

ブルガーは、それに感づいている人物がいたとしたら、彼と二人以外にナチスの警備する側の人間しか
いなかったと語っています。

彼の言葉には、もしかしたら、ナチスの警備をする側の人間にも、戦争を早く終わらせたいという人物
がいたのではないかと思わせるものがありますね。

監督は、1961年、オーストリア、ウィーン出身のステファン・ルツォヴィツキー。

代表作に『アナトミー』(2000年)、『アナトミー2』(2002年)の他、『エニグマ奪還』(2001年)と
いうやはり第二次世界大戦中の出来事をテーマにした作品があります。

戦争映画ではありますが、4人の英国軍兵士の男が女装をして、戦時中なので女性しかいない工場に
侵入し、エニグマというタイプライター式暗号機を盗み出そうとするコミカルな映画のようです。

タイプの違う作品ながら、エンターテイメント性は、監督の作品に共通しているのかもしれません。

主要キャストとモデルについて

主要なキャストが演じた二人の役柄には、それぞれモデルとなった人物がいました。

サロモン・ソロヴィッチ

サロモン役のカール・マルコヴィックスは、監督の『エニグマ奪還』にも出演している俳優だそうで、
オーストリアの人気俳優の一人です。美男子タイプの俳優ではありませんが、個性的な魅力のある方
ですね。現実的なひとりの人間を好演していました。

収容所の外でのサロモンのキャラクターには、享楽的なところがありました。

彼は、自分の置かれた立場に葛藤することもありましたが、妥協することで生き抜こうとします。
極限の状況においては、そうすることが、彼にとって、生きる上での処世術だったということかも
しれませんね。

彼の台詞でもあった「今日の銃殺より、明日のガス室だ」という言葉に象徴されるように、贋札作りに
関わった多くのユダヤ人技師にとっては、実際、抵抗することよりも従うことが命を長引かせること
につながることだったのでしょう。

彼のモデルとなったのがサロモン・スモリアノフという実在の人物でした。

1887年、ロシア生まれのユダヤ人だった彼は、旅券や贋札の「ニセ作師」として国際的にも暗躍。
1927年に、50ポンド紙幣贋造の罪で、アムステルダムで捕まり入獄。その後出獄し贋造の仕事を
続けます。
1936年、ベルリンで逮捕され、収容所に送られ、「ベルンハルト作戦」の中心人物にされました。
戦後解放されてからも、贋造を続け、国際手配されましたが、ブラジルに移住、1978年に亡くなって
います。

サロモンよりも年若く、対照的な人物と描かれていたのが、この映画の原作となった手記を書いた
アドルフ・ブルガーをモデルとし、彼と同じ名前の人物でした。

ドイツでとても人気のある若手俳優、アウグスト・ディールが、偽造を行うユダヤ人の中でも異色な
存在の人物を演じていました。

正義感が強い人物として描かれていましたが、原作者でもあるブルガー自身が語るところによれば、
そうした彼の言動は、映画化におけるストーリー上でのことでもあるようです。
きっと、この映画の中で、「正義」の尊さについて、観客に対して問いかけるために特に演出された
役柄だったのかもしれません。

意見が相違する二人の確執には、監視するナチス側と偽造組織のユダヤ人たちの関係とはまた別に、
偽造組織の中での緊張感がありました。

キャストとして、チャーリー・チャプリンの孫娘が出演しているのにも注目ですね。

作品の特徴

映画には、ナチによるホロコーストを扱った作品がいくつもあります。

扱うテーマがテーマだけに、かなり重苦しいストーリーに終始するのかとも想像していましたが、
実際のところ、そういう訳でもなく、微笑みを誘うようなシーンがあったり、作品中に流れる
コンチネンタル・タンゴの調べもあって、ストーリーには、重厚さと軽快さが絶妙なバランスで
保たれているように思いました。

フランス人のアラン・ルネ監督が撮影したドキュメンタリー映画『夜と霧』のように言葉を失う
絶望感が伝わってくる、生きることへの選択肢がなかった人々の姿を描いた作品とは、タイプが
明らかに異なっていましたね。この作品は、史実を手記にした原作をベースにしてフィクション
が加えられ、製作されています。

ハンディカメラによる撮影により、ドキュメンタリーを思わせる映像表現ではありますが、本作を
紹介するプログラムや多くのメディアによって指摘しているように、エンターテイメント性も
持ち合わせている作品です。

明るいシーンもあるからか、観終わっても、暗い気持ちを引きずることはありませんでしたね。
ラストの展開には、色々な解釈ができそうな印象がありました。

映像や音楽の扱い方にセンスの良さが感じられる映画でもありました。工場には常にイタリア音楽が
流され、各シーンで流れるコンチネンタル・タンゴの調べ…。
謝肉祭にはパーティーまで開かれ、そこではプッチーニのオペラ「アリア」の楽曲迄もが歌われます。


戦争中の出来事には、全く知られていない史実の他、埋もれてしまいそうな史実が数多くあるのも
確かです。

エンターテイメントの要素がある作品であるからこそ、そうした史実に対して、より多くの人々の
関心を向けさせるきっかけともなる作品といえるでしょう。

忌まわしい世界大戦の歴史で、当時を知る人々が存命中に、あるいは今は亡き人々が残してきた
ものから、現代を生きる人々が、風化させてはならない過去の人々の記憶を、後世に伝えることの
大切さをも感じさせる作品になっていたと思います。

閉じる コメント(17)

すごく観たかったのですが、時間が合わず断念した作品です。
実話がベースの作品は、やはり説得力がありますね!
奇しくもこの記事を読ませていただいた今日は、東京大空襲の日。
未曾有の空襲についても、知られざる事実がたくさんあるようです。
自国のことでさえこの有様ですから、世界には一体どれぐらいの真実が埋もれているのでしょうね…。

2008/3/10(月) 午前 11:30 Angel

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これ、DVD待ちになりそうです。

2008/3/11(火) 午前 9:40 mossan

話題作ですね〜!見たいんだけど、公開は結構前でやってるところ少ない・・・。

2008/3/11(火) 午後 0:20 MINA

劇場で観て、その週にアカデミーとった感慨深い作品です(笑)。
意外に、ポピュラーで、わかりやすく出来上がっている印象があって、
こりゃ、アカデミー取れないぞって思ってました(笑)。

去年も、ドイツ作品の『善き人のためのソナタ』でしたよね?
ドイツから、こうした作品が出てくる時代になった事を、嬉しく思います。

2008/3/11(火) 午後 7:54 god*lo*es_*b*l

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シアターにドイツ人の人がいて「ドイツの人が観たらどう思うの?」と思ったのですが、いろいろ見てみると「ドイツとナチは別」であり「ナチのことは観ておくべき」という国民感情があるようですね。
最近、第二次世界大戦の映画が多いですが、やっと白日のもとにさらすことが出来る事実もあるんだろうなぁ、という気もしています
トラバくださいませ〜 (ヒツジ)

2008/3/11(火) 午後 8:12 ひつこじ

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アカデミーを受賞した作品だったので気になっていましたが、ヒトラーの話なのでどうかなっと思っていました。でもレビュー読ませて頂いたら面白そうですね。観たいと思いますが、きっとミニシアター系でDVDになってしまいそうです。

2008/3/13(木) 午後 11:04 lukagekkai

こちらの作品は、教科書では学べない歴史ですね。国家として偽札を作っていたとは・・・。死を覚悟しての生活が、とても伝わってきました。また、壁の向こうの音(銃声)も、音だけなのに、胸に響きました・・・。TBさせてくださいね。

2008/3/14(金) 午後 11:55 [ - ]

この監督って『アナトミー』の監督でしたか〜
正義を全うするか、自分の命を守るかの苦悩でしたね。ナチスものにしてはそれほどな残虐なシーンもなかったですが、いつ殺されるかわからない怖さは感じました。TBしますね

2008/3/18(火) 午後 10:39 LAGUNA

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Angelさん☆コメントありがとう!そうでしたね…3月10日は東京大空襲の日。
一体どれだけ、知られざる事実はあったのだろうかという思いが巡る日でした。
この作品の原作のように、存命の方々によって証言されることで明らかになる
実話には、説得力があり、重みを感じます。数多くの事実は埋もれてしまっている
のですよね。時間の関係で、映画館鑑賞は断念されたようですが、いつか、DVDで
ご覧になれたらいいですね!

2008/3/20(木) 午前 0:35 swing(スウィング)

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もっさんさん☆コメントありがとう!おそらく、もっさんさんのようにDVD待ちの方が
多いような気がしますね。

2008/3/20(木) 午前 1:26 swing(スウィング)

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MINAさん☆コメントありがとう!おっしゃる通り、上映館はあまり多くなかったですし、
気がついたら上映終了だったという感じですよね?アカデミー賞を受賞したことで、
いっそう話題になった作品でもありますから、DVDでご覧になれたらいいですね!

2008/3/20(木) 午前 1:38 swing(スウィング)

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たかちさん☆コメントありがとう!アカデミー賞受賞前に観ることができると、やはり
感慨深いですね。ストーリーの描き方については、想像していたよりも明るく、意外に
わかりやすいなあという印象を私も持ちました。
『善き人のためのソナタ』の場合、登場人物は空想の人物でしたが、やはり、ストーリー
は史実を参考にしていた作品でしたね。最近のドイツ映画には、歴史を改めて
見直すような見応えのある作品がありますね。『白バラの祈り…』などもそうでした。

2008/3/20(木) 午前 1:51 swing(スウィング)

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ひつこじさんのひつじさん☆コメント&TBありがとう!そうですね。ドイツの人々は、
ナチス時代のことについてなどを自国の歴史として、しっかりと受けとめようと
いう国民感情があるように思います。事実の中には、まだ隠れていて、きっと、
これから広く知られるようになるものも、まだまだいくつもあるのでしょうね。

2008/3/20(木) 午前 2:41 swing(スウィング)

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流風月海さん☆コメントありがとう!確かに、内容的には重い部分もありますが、
全般を通じては、つねに暗い気持ちに落ち込んでしまう程ではなかったです。
やはり、上映館が少なかったですよね。DVD鑑賞、楽しみになりますね♪

2008/3/20(木) 午前 9:43 swing(スウィング)

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SHIMAさん☆コメント&TBありがとう!そうでしたね。教科書では学べない
歴史でしたね。生きるために行う贋札作りが自分たちの家族や同胞にとっては
裏切り行為になるということは残酷なことでした。壁の向こう側の銃声には、
何とも胸が痛みましたね…。

2008/3/22(土) 午前 11:56 swing(スウィング)

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らぐなさん☆コメント&TBありがとう!そうそう、『アナトミー』の監督でした。
彼らの置かれた境遇は、どちらを選択するにしても本当に辛いことでしたね。
もちろん一部にフィクションもあるのでしょうが、こうした史実があったという
ことには驚かされましたね。

2008/3/22(土) 午前 11:59 swing(スウィング)

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観たかったのですが、地味な映画館での上映となって、見逃しました。ということで、DVD待ちです。(^^)

2008/3/27(木) 午後 8:19 ■Doobie■

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