アシュトン米大統領(ウィリアム・ハート)は、国際テロ対策の首脳会談に出席するためにスペインを訪れていた。 シークレットサービスのトーマス・バーンズ(デニス・クエイド)は、同僚のケント・テイラー(マシュー・フォックス)らとともに、スペイン・サマランカ、マヨール広場での演説を予定していたアシュトン大統領を警護する任務についていた。 演説を行うためにマヨール広場に到着したアシュトン大統領が、集まった群衆に挨拶をしようとした瞬間、何者かによって狙撃されてしまった。 突然起こった狙撃事件に広場全体が騒然となった。その様子は、テレビカメラによって全世界に中継されていた。 すると、さらなる大事件が広場を襲った 多数の人々が、発生した事件を目撃していたが、トーマスやケントを含めた8人の人物それぞれには、それぞれに別の視点から認識されていた様々な事実があった。 この作品について、以下に3つのポイントから綴りたいと思います。 ピート・トラヴィス監督はイギリス生まれ。 代表作に、16世紀の英国国王ヘンリー8世を描いたTV映画『キング・オブ・ファイアー』(2003年)、 北アイルランドのオマーで1998年に起こった爆破テロ事件を題材にしたTV映画『オマー』(2004年) があります。 『オマー』は、爆弾テロで息子を亡くした父親が他の遺族とともに被害者の会を作り、爆破犯の逮捕と、 きれいごとばかりの政治家や警察の責任を追及していくといったストーリー。 (2008年2月、日本で開催された北アイルランド映画祭上映作品) この作品の場面設定とドキュメンタリータッチの映像には、『オマー』に共通する要素があるように 思います。 実際、トラヴィス監督は、デニス・クエイドにトーマス・バーンズ役をオファーする際、『オマー』 のDVDを渡して、「『バンテージ・ポイント』にも同じようなスタイルを持ち込むつもりだ」と語って いたそうです。 個性的な主要キャストが豪華で、それぞれに演技力に定評がある俳優が揃っていましたね。 また、国際色が豊かな顔ぶれでもありました。 シークレットサービス、トーマス・バーンズ役の主演デニス・クエイドは、大統領を守るひたむきな 姿が印象的でしたね。 実際のシークレットサービスに話を聞いて撮影に臨んだだけあって、物腰や、色々な方角へ視線を 向ける様子にはリアリティがありました。 彼の姿には、『ザ・デイ・アフター・トゥモロー』の息子を救うために孤軍奮闘していた父親役の イメージがオーバーラップしました。 バーンズの同僚、テイラー役のマシュー・フォックスは、TVドラマシリーズ『LOST』に主演していて、 主にTVドラマでの活躍で、現在、注目されている俳優です。 ハワード・ルイス役のフォレスト・ウィッテカーは、今年(2008年)、アカデミー賞主演男優賞を 受賞した『ラスト・キング・オブ・スコットランド』での独裁的な大統領の役柄とは全く違うタイプで、 一般市民の役柄でした。 過去、一連の各出演作品からも分かるように、実に幅広い役柄を、それぞれにしっかりと演じられる 俳優ですね。 テレビプロデューサー レックス・ブルックス役のシガニー・ウィーヴァー、アシュトン米大統領役の ウィリアム・ハート、それぞれの好演も光っています。 スアレス役のサイード・タグマウイは、両親がモロッコ人のフランスの俳優。 ムービーカメラで大統領を撮影するハワードに、サムという偽名を使って話しかけた男でした。 スペインの刑事 エンリケ役のエドゥアルド・ノリエガは、スペインの人気映画俳優。 エンリケの恋人、ベロニカ役のアイェレット・ゾラーは、イスラエルの女優。 広場の中で、ベロニカと親しそうに話をしていて、エンリケが目にした男、ハビエル役のエドガー・ ラミレスは、ベネズエラの俳優。 最近では、『ドミノ』(2005年)、『ボーン・アルティメイタム』(2007年)にも出演しています。 この作品は、それぞれのキャスティングの良さはもちろんのこと、トラヴィス監督の演出手腕により、 実力のある各キャストによる迫真の演技が引き出され、あたかもドキュメンタリーを観ているかのような 雰囲気のある作品に仕上がったといえます。 事件の目撃者ごとに、リワインド手法の繰り返しによって提示される一連の各場面には、それぞれに 特徴があり、全く目を離すことができませんでした。 ひとりの人物の視点から捕らえた一連の場面が、あっという間に提示されたかと思えば、続いてすぐに、 同じ時間帯、同じ場所に居合わせた別の人物の視点から捕らえた一連の場面が提示されます。 異なる視点からの場面によって、新たに明らかにされていく事実の数々。 提示される順序が後になる視点からの場面ほど、事件の核心に迫る新たな事実を、観客に知らせるもの になっていましたね。 観客は、提示され続けられる場面によって、次々と意外な出来事が明らかになっていくことに驚かされます。 各カメラワークには、様々な工夫がみられていて見事でした。 同じ場面を捕らえた目撃者各人の視点は、それぞれに同じ時間、空間を共有していながらも、各人が ダイナミックな移動を繰り返していたことによって様々なアングルから捕らえた場面があり、視覚的 に観客を飽きさせることがない映像になっています。 いくつかの地点から、テレビカメラによって捕らえられた、比較的安定感のある映像。 その映像は、テレビカメラが切り替えられることで多角的なアングルから場面を捕らえているものに なっています。 一人の人物が持つハンディムービーカメラが捕らえた動きのある映像。 逃走シーンでのダイナミック動きとそれを追いかけるカメラワークには、『ボーン・スプレマシー』や 『ボーン・アイデンティティ』の追跡シーンを彷彿とさせる印象がありました。 着想の面白さと脚本の巧みさは、おそらく、この作品を鑑賞した多くの方々が指摘していることでは ないかと思います。 確かに、製作者サイドが、本作品を黒澤明監督作品『羅生門』(1950年)のオマージュとして、意識 していると分かるようなストーリー展開でした。 映画『羅生門』では、4人の目撃者が同じ事件について、それぞれに証言していますが、同じ事件で あっても、各人で記憶されることによって、あいまいで違ったものとして受けとめられる(記憶の) 様子が描かれていました。そのことは、芥川龍之介による原作小説の『藪の中』という題名にも、 よく言い表されていましたね。 一方、『バンテージ・ポイント』は、同じ事件であっても、8人の目撃者各人で見えたもの、認識 していたことが違っている(事実の)様子が描かれています。 観客に示されたものは、『羅生門』のように、各人のあいまいで不確かな記憶を頼りにした証言を、 映像に置き換えたものではなく、あくまで、各人が目撃した場面、あるいは第三者的な視点から各人 が置かれた場面を(客観的に)捕らえた映像そのもので、言わば各人が体験した真実の映像でした。 90分という短時間に集約されたストーリーは、メリハリの効いたサスペンスとアクション、それぞれ の要素がベースになっていて、さらにヒューマンストーリーの要素も盛り込まれていました。 セットによって再現されたサマランカ、マヨール広場を舞台に撮影されたシーンは実に壮観でしたね。 そこで発生する事件や、メキシコ・シテイで撮影されたカーチェイスシーンも迫力充分。 緊迫感あふれたストーリーの締めくくりには安堵感がありました。
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これはテンポよく、スペインの町並みも美しく、そして同じ時間を、それぞれの登場人物の視点で繰り返し観ることによって、新発見があって、とても楽しかったです。TBさせてくださいね〜。
2008/4/23(水) 午後 11:21 [ - ]
ほんとですね。『羅生門』に共通するものがありますね。
『羅生門』は名作でいしたね!
あいまいな記憶。これは日常でもよくあることですね。
なるべくちゃんと記憶しておきたいものです。
TBさせて下さいね!
2008/4/24(木) 午前 7:19
この映画のレビューで『羅生門』の名前をよく見ますね〜。見たことないのでとても興味があります!90分でひとりのエピソードが10分くらい。どんどん先に進めば進むほど確信に迫っていくので同じ出来事、映像でも飽きることなく最後まで見ることができました!
TBさせてください!
2008/4/24(木) 午前 11:28
これは儲けものの映画でした。地味だけど、斬新的な映像でなおかつスリルがあった映画でしたね。
2008/4/24(木) 午後 11:30
事件の起こった時間と場所に繰り返し戻るにしたがって、事件の真相が分ってくるストーリーは自分もその場に居合わせたような感じを受けましたね。後半のカーチェイスはスピード感溢れる迫力のあるものでした。90分という短い上映時間の映画でしたが濃度の濃いものでしたね。
TBさせてくださいね。
2008/4/25(金) 午後 3:02
いっちーさん☆コメントありがとう!この作品の作り方は本当に面白かったですよね!
同じ場面でも人によってずいぶんと違ったものが見えることに感心してしまいました。
確かに凝ったストーリーということもあって、分かりにくい部分もあったでしょうね。
TBありがとう!
2008/4/26(土) 午後 0:51
Dingdongさん☆コメントありがとう!ストーリーで、発生する事件の規模こそ違いますが、
実際に鑑賞してみると、やはり、『羅生門』などの作品の影響を受けているなあという印象
を受けましたね。『七人の侍』、『用心棒』をはじめ、黒澤監督作品は、私も割と観ています。
作品がリメイクされるなど、監督のハリウッドへの影響力は大きいですよね(^^)。ポチありがとう!
2008/4/26(土) 午後 0:57
Angelさん☆コメントありがとう!アメリカではあまり評価されなかったのですね。
興味深いアイディアをベースに、うまく練られた作品だなあという印象を受けました。
どちらかというとエンターテイメント性が高い、スピーディーな展開でしたよね!
2008/4/26(土) 午後 2:01
じゅりさん☆コメントありがとう!扱い方によっては、重苦しくなりそうなストーリーを
思いのほか、サラッと撮っている作品になっていましたね。あっ、『羅生門』、BSで
やっていましたか…!私も同じく観そびれてしまいしたよ(^^)。何回か観ているので、
結構、内容を覚えていますが、また観たいと思っていたところでした。TBありがとう!
2008/4/26(土) 午後 2:04
夢bbさん☆コメントありがとう!同じ時間帯に起こった出来事を繰り返すシーンの
連続ですが、それぞれの人によって、様々な視点から見えるものがあって、とても
興味深い作品でしたよ。『羅生門』は、モノクロ映画ですが、ヴェネチア国際映画祭
のグランプリ作品で、海外でも高い評価を受けました。どちらの作品も鑑賞されるのが
楽しみになりますね♪
2008/4/26(土) 午後 8:28
nz_rrさん☆コメントありがとう!デニス・クエイドは熱演でしたよ!
展開がスピーディな脚本で、カメラワークも凝っていました。鑑賞されるのが楽しみですね♪
2008/4/26(土) 午後 8:32
SHIMAさん☆コメントありがとう!登場人物ごとの視点の違いによって、観客が新たに
発見する事実があって、興味が尽きることがなかったですよね♪私も、とても楽しめました♪
TBありがとう!
2008/4/26(土) 午後 9:35
irukaさん☆コメントありがとう!やはり『羅生門』の影響を受けていると感じられる
作品でしたね。カースタントのシーンなど、迫力充分なシーンが沢山ありました。
TBありがとう!
2008/4/26(土) 午後 9:38
MINAさん☆コメントありがとう!同じ出来事でありながら、決して観客を飽きさせない
展開は見事でした!『羅生門』の方も、機会があったら、ご覧になってくださいね。
事件は大掛かりなものではありませんが、見応えがあります。TBありがとう!
2008/4/26(土) 午後 10:02
もっさんさん☆コメントありがとう!儲けものの映画ということ、私も同様に思いました。
スピーディな展開で、スリル感がたっぷりの作品でしたね!TBありがとう!
2008/4/26(土) 午後 10:04
つららさん☆コメントありがとう!その場に居合わせたような感じは私も受けました。
後半のカーチェイスのシーンなども、とても迫力があったりと、見応え充分でしたね!
TBありがとう!
2008/4/26(土) 午後 10:14
やっぱりあのカーチェイスはサマランカじゃなかったですか。広場もセットだなんて全然思いませんでした。さすがに、世界遺産であんなシーンは撮れないですよね(笑。
特別華のある俳優さんはいなかったけど、みな実力派で、仰るように国際的でしたね。発想も脚本もよかった上に、俳優陣もよかったと思います。ピリッと楽しめました(^^♪。
2008/4/29(火) 午後 0:00
うまい描き方でしたよね〜!何度も同じ映像が使われるわけですが、少しずつ謎が解けていく!見ていて次はどうなるのかワクワクでした!そして最後のカーチェス!すごかった〜!俳優さんたちも国際色豊かでいいチョイスでした!TBお返しします!
2008/4/29(火) 午後 8:32
Shinchanさん☆コメントありがとう!カーチェイスシーンは迫力ありましたよね〜。
確かに世界遺産では撮影できないと思います(^^;。国際色豊かな俳優も個性的な
顔ぶれで、スピーディなストーリー展開とともに楽しめましたよね(^^)。
TBありがとう!(コメント遅くなってごめんなさいね)
2008/5/5(月) 午後 3:13
MINAさん☆コメントありがとう!そうそう、次の人物の映像になるにしたがって
謎が解けていく展開になっていて、観ていて本当にワクワクする作品でしたよね!
様々なタイプの登場人物がいたことも、飽きなかったことにつながったような気がします(^^)。
カーチェイスも迫力充分!TBありがとう!(コメント遅くなってごめんなさいね)
2008/5/5(月) 午後 3:17