|
シンガポールでの研修初日。
昨晩というか、超早朝の到着なので、
すぐに研修と言うことでちょっとハードです。
本日、訪問したのは、
PATHLIGHT SCHOOL(新光学校)という名前の学校。
小学校と中学校の2つがくっついている。
学校の概観は、いわゆる普通の学校の校舎で、4階建てで、
コの字型の建物。中庭があって体育館(屋根だけ壁無し)があって、
日本でもそこそこ大きめの小学校と同じくらいの感じ。だが、しかし
この学校、なんと全校生徒およそ400人が全員ASD のお子さんなのだ!
それについての良し悪しは、そこは、後述の様々な国の事情等があるので、
一概にどうこうは言えませんが、
とりあえず、この規模には驚きです。
まずは、この学校の成り立ちから、Lind Koh さんという方が解説してくれました。
学校が出来たのは、3年前。
それまで、シンガポールの障害児教育は、養護学校はあったが、
生活スキルの指導や作業的な内容の教育のみで、アカデミックな教育は
なされていなかったとのこと。
で、それに対し、自閉症の親の会は、
もっと彼らの可能性を生かすことのできる教育の必要を訴え、
政府に要望を出し、そしてこの学校を作ったとのこと。
なので、この学校はパブリックではあるが、基本的な運営は親の会が行っているようである。
学校が出来るまでの政府との長い長いやり取りの中で、
親の会の中心メンバーの一人が、政府とのコネクションを持っていたことが、
ラッキーだったと話していた。
一般の養護学校に対する不満から、立ち上がり、
そのため、学校のカリキュラムなどは、普通教育と同じにしているとのこと、だが、
やや形式的というか、なんというか、
自閉症に合わせた特別なカリキュラムが必要だと言うなら、それは分かるが、
だからメインストリームスクール(普通学校)と同じにした、となると???な感じがする。
解説の中で、自閉症だからということで、人くくりにして、
そして、特性を彼らの困難さ、短所、欠点としてフォーカスされることに対し、
彼らの可能性、特性を長所として捉え、生かすことがこの学校のフィロソフィーだとのこと。
確かにそうだが、
そのフィロソフィーに則った結果として、
他の普通学校との交流や、アカデミックな教育に重点を置くことや、
カリキュラム等を普通学級と同じにする、というのはやや偏っている気がした。
この辺については、養護学校でのこれまでの現状がよっぽどひどかったのか?
とも考えていました。
だが、実際のカリキュラムは、アカデミックないわゆる教科学習も行われつつも、
ソーシャルスキルに関すること等も盛り込まれており、
さらには、スターバックスに協力を得て、
学校内にカフェを作り、生徒がそこで買い物をすることはもちろん、
職業スキルの練習をしたり、
また、スタジオ・アパートメントという教室があり、
いわゆる生活訓練ができるように寝室やキッチン、居間などがある。
他にもオフィススキルの練習、パンフレットなどのデザインの仕事の練習、
等が出来る仮想職場エリアがいくつもある。
さらに、OTの部屋として、ハンモックやでっかいクッション等がある専用部屋もある。
クラス分けは、基本は年齢別で、それに社会性・コミュニケーションの能力別を考慮している。
これは、カレンの学校(香港)でもそうだったが、必要だなと思った。
先生の数は、子ども4〜6人に対し、1人で、1クラスは、2先生の12生徒が基本。
ただこれも、個々に応じて、増減する。
特にシビアだとの解説のあったクラスは、
年齢もバラバラ、先生2人で4人の子どもがいた。
また、先生のトレーニング、フィロソフィーに対する共通認識を持つこと、等についても、
かなり力を入れている様子。
各教室には、全てワンウェイミラーでの観察部屋が付いており、
アセスメントはもちろん、保護者との話し合いで使用したり、
そして、教師のトレーニングのためにも使われるとのこと。
もう一つ、各教室にはカームダウンのための小部屋も完備されていた。
これだけの学校規模、システムを作るにあたり、
どこか他の国の学校や、サービスシステム等をモデルにしたりしたのかどうかを聞くと、
それについては特に無いとのことで、
やはり、シンガポールの普通学校のシステムをベースに、
障害特性に合わせて必要なことを盛り込んだとのことである。
カフェ等の職業スキルのエリア等に関しては、
イギリスで観た自閉症学校にもあった。
ノースカロライナでの研修中にビデオで紹介されたところでもかなり具体的で、
実際的な職業スキルの指導が行われていた。重要ですね。
取り入れているメソッドとしては、
TEACCH や ABA のアイデアを採用しているとのことで、
どれか一つと言うのは効果的でなく、良いところをミクスチャーするのがいいと思うとのこと。
僕もそう思います。
ただ、ざっと見学した限りでは、ストラクチャーに関しては、さほど個別化されておらず、
全体の印象としては、少ない(あまり使っていない)、と感じました。
見た目だけですけどね。
あと、全体の印象として、知的に重い方が少ないように感じた。
これも、ざっと見ての印象ですが、
IQ 70前後か、やや低いか、くらいのお子さんが殆どだったような印象を受けました。
これについては、明日、確認します。
あと、IEP を個別にきちんと立てているとのこと。教育前後、移行を含んだモノではなく、
学校内での個別の教育計画のようですが、
それでも、個々のゴール、誰がどのような手立てで取り組むか、いつまで取り組むか、
合格の基準、さらには、計画を立てた人、実行する人、そして親のサインが入るようになっている。
これもまた、他国の国でも見られたことだが、
非常に具体的で、一歩一歩着実に積みあげていくために、
チームでの共通理解を図り、日々の成果を確認しながら進めていく、ということを、
きちんと実施している、その大切さをきちんと理解している、というのがよく分かる。
最後に、シンガポールの全般的な自閉症支援の状況について。
学校については、これまでの養護学校での教育から、
この学校で初めて、自閉症にスポットをあてた教育が行われるようになった。
そして、3年が経過した今、同様の学校がさらに2つ増え、
その必要性と効果が認められてきているとのこと。
さらに、この学校も2009年には、増築する予定があり、
今後、高等学校等についても実施していけることを考えているようである。
そして、何よりも現状として課題なのは、
学齢期以降の支援についてだとのこと。
僕のこれまでの旅で得た、欧米の進んだ制度と、
それに比べて、日本のガバメントが金を十分に出さない話等をしていたら、
シンガポールでは、成人のサービスに対しては、国は全く金を出さないとのことである。全く。
国が関与するのは、教育のみだとのこと。
これは驚き。そしたら成人の人たちは、今、
どこでどのような生活をしているのかを訪ねたら、
親と一緒に暮らしているか、メンタルホスピタルにいるとのことである。
なんてこった。
この学校を見る限りでは、すごく先進的で、それなりに充実していると感じていたが、
国全体としては、まだまだ非常に大きな課題を抱えているようだ。
学校が頑張っているだけにそのギャップに驚いてしまった。
そう言えば、香港でも成人の支援に関しては、皆無に等しい、と話していたが、
同じような酷な状況なのだろうか。
これに比べれば、日本は、まだ良い方なのかもしれないが、
だからと言って、そんなら現状で仕方が無いか、というような問題では、もちろんない。
と言うわけで、今日の3枚。
写真(上):校舎概観、でかいでしょ。中庭の植物がシンガポールでしょ。見学中、スコールが降りました。
あと、妙にトカゲ(ヤモリ?)が多い。
写真(中):カフェで見かけた視覚的な手掛かり。
写真(下):教室概観、机の並びなど、教室環境も普通学校と同じにしてあるとのことだが、
やっぱり、それは別にどうでもええんじゃないの?ってちょっと思ってしまった。
けど、もしかしたら、これまでの教育がひどかったという思いが故に、
普通に、同じように、教育を受けることへの願いが、すごく強いのかもしれない。
中央にあるドアがカームダウンエリアへの扉。同じ壁の仕切りで、左隣に観察室のミラーがある。
明日は、同じ敷地内にある。ARC (Autism Resource Centre)への訪問。
チラッと聞いたところでは、
母体がこのARC で、その一部門として、この学校があるらしい。
これも香港のSTEP と似ている。
それでは、また明日。
|