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13日に政府がとりまとめた2005年度に各府省庁が結んだ随意契約に関する実態調査が出ています。 「国の随意契約、総額の53%…うち6割が不適切」
「政府は13日、中央省庁など国の機関が2005年度に民間企業や公益法人などと結んだ物品購入や事業発注などの契約総額のうち、緊急の場合などに限定される随意契約は約3兆9000億円、53%に上るとする調査結果を発表した。随意契約全体のうち、約2兆2820億円は公益法人や天下り先の民間企業と結んだものだ。政府は、このうちの1兆4584億円分(64%)は会計法から逸脱した不適切な契約と判断し、今後、更新を迎える契約から競争入札などに切り替える。」
(2006年6月13日12時37分 読売新聞) 今後は随意契約はやむを得ない場合に限るということのようです。 こうした方針について、6月14日付けの東京新聞2面の「省庁に残る裁量の余地」と題する記事では、さらに次のような指摘がなされています。 「しかし、省庁と特定の法人との癒着が完全になくなると考えるのは早計だ。随意契約から移行する一般競争入札や、企画書段階で競争原理を取り入れる「企画競争」は、なお各省庁の裁量の余地を残しているからだ。例えば、一般競争入札では、質の低下を防ぐため、入札価格だけでなく品質も点数で評価する「総合評価方式」を導入するが、品質には価格ほど客観的な採点基準はない。特定の法人に落札させるため、その法人の品質を故意に高く評価することも可能。企画競争も「最も優れた企画書」を選ぶことにしており、その基準はあいまいだ。」
この記事を書いた記者からすれば、官公庁の調達に担当者の裁量の余地があってはならないということになるのでしょう。この記者の主張によれば、「品質」ですら「価格ほど客観的な採点基準はない」のだから、否定すべきものということになってしまいます。 しかし、最近大いに報じられているエレベーターによる死亡事故の問題と重ね合わせて考えると、果たしてどういうことになるでしょうか。このエレベーターの事故原因はいまだ特定には至っていないので、はっきりしたことはもちろん言えないわけですが、朝日HPの記事によれば、このエレベーターの製造メーカーであるシンドラー社は、官公庁の入札で同業他社に比べて安値を提示して実績を伸ばしてきたようです。 「シ社、入札「より安く」で浸透 自治体は困惑」
東京都港区で高校生が挟まれて死亡したエレベーターの製造元・シンドラー社は、官公庁の入札で同業他社に比べて安値を提示して実績を伸ばしてきた。国内シェアは1%程度とされるが、官公庁に限ればその割合を大きく上回る。「税金を使う以上、より安い方を選ぶのは当然」としてきた自治体は、今回の事故に戸惑いを隠せない。
都営住宅にあるエレベーターは2942基。うち、シンドラー社製は344基と約11.7%を占める。全体のシェアからすれば突出した数字だ。都担当者は「(同社が)都営地下鉄大江戸線のエスカレーター設置工事を97年に受注した後から、積極的に参入してくるようになった」と話す。 シンドラー社参入は、それまで高止まり傾向にあったエレベーターの入札に競争をもたらした。 都によると、同社は04〜05年度に、都営住宅や都立学校のエレベーター設置工事6件を落札した。落札額は、いずれも予定価格の80%。これを下回ると受注できなくなる「最低制限価格」と一致する。
愛知県では05年度、県営住宅や県立高校のエレベーター工事17件のうちシンドラー社が4件を落札、業界トップの受注数となった。4件のうち3件は、発注側が業者から安値の理由を聴き取りする低入札価格調査の対象となった。 調査に対しシンドラー社は「資材のストックや、据え付け工事をする業者の協力で安くできる」と説明。結局、問題なしとして契約が結ばれた。
また、大阪府が04〜05年度に発注した府営住宅や府立専門学校など23件のエレベーター工事の入札で、シンドラー社は4件を落札した。 「発注する役所にすれば、1円でも安くやってくれるところに工事を任せるのは当然だ」。自治体担当者たちはそう主張する。
しかし、安全への信頼を根底から覆す死亡事故と、説明責任を果たさなかった対応で同社への批判は収まりそうもない。エレベーターを止めての再点検を余儀なくされるなど、自治体への影響は広がりを見せる。 東京都の要綱では、刑事事件として起訴されれば指名停止などの措置を取れるが、現段階ではできない。ほかの自治体も同様だ。 「日本企業なら入札自粛もあり得るだろうが、シンドラー社の場合、どうなのか。かといって、こちらから『辞退してください』とも言えない」と、東京都の担当者は困惑気味だ。
競争入札によって契約を締結すれば、結局、コストが安いところに落札されてしまう。しかも、東京新聞の記事のように、総合評価方式や企画競争でさえ「裁量の余地」が残るので心配だなどと言い出したら、明確な基準が設定できる「価格」以外の要素は官公庁は一切見るなということに等しくなってしまうでしょう。 より良い品質の製品を調達することで国民の安全や利益を確保することは、契約業務に携わる官公庁の担当者の最大の使命であるはずです。東京新聞の記事のように、官公庁の裁量を否定することにあまり躍起になってしまえば、逆に、いざ同様の事故が起こった場合に、その製品を調達した官公庁の責任を一切問えないことにもつながってしまうでしょう。 確かに、官公庁の事業を多く受注している企業に役人が天下ることは避けるべきでしょう。しかし、それと官公庁の裁量の善し悪しの問題とは全く別問題です。国民は、官公庁と企業の不明朗な癒着に対しては厳しい目を向けるべきですが、それだけではなく、併せて、「官公庁が国民の安全を確保するためにより良い製品をきちんと調達しているかどうか」についても厳しい目を向けるべきです。
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