新聞特殊指定

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 ついに、公正取引委員会も、自身のHPにおいて、新聞特殊指定の見直しを行わないことを明言しました。
「…新聞業界の主張は,公正取引委員会が指摘する…問題点を解消することのできるものではないと考える。しかしながら,これまで公正取引委員会と新聞業界との間で議論を繰り返してきたものの,議論が噛み合っておらず,これ以上の議論を続けても特段の進展は望めない状況にある。また,各政党においても,新聞特殊指定を存続させるべきとの議論がなされているところである。これらの状況を踏まえ,公正取引委員会は,新聞特殊指定については,今回の見直しでは結論を出すことを見合わせることとした。」

 納得はしていないものの、あきらめざるを得ない無念さがにじみ出ています(これほど感情を表に出した政府の文書も珍しい・・・)。

 本当はあまり取り上げたくないのですが、いかにおかしなことを言っているかを明らかにするためにも、業界の声明文を取り上げてみたいと思います。

 日本新聞協会の談話では、高らかな勝利宣言がなされています。以下、全文の引用です。
新聞特殊指定に関する公取委決定について
北村正任・日本新聞協会会長の談話
平成18年6月2日
 公正取引委員会が新聞特殊指定見直しの結論を見合わせたことは、特殊指定堅持を強く求めてきたわれわれ新聞界の主張や超党派の国会議員、多くの有識者や国民の方々の意見を適切に判断したものと受け止める。
 新聞は国民の「知る権利」に応え、民主主義の根幹を支える使命を担った商品である。新聞特殊指定は半世紀にわたり再販制度と一体となって、国民の購読の機会均等を可能にしている戸別配達制度を支えてきた。
 特殊指定の見直しは、公取委の行政判断のみに委ねられるという構造になっているが、このことは法改正にも匹敵する重大な問題である。公取委には今後とも新聞の憲法的位置づけ、文化性、公共性に十分配慮して対応していただくことを切に期待したい。
 新聞特殊指定が堅持されたいま、新聞各社は改めて自らの使命を十分認識し、よりよい新聞づくりに励むとともに、世界に類例を見ない戸別配達網の維持、発展と正常販売に一層努力していく所存である。

 なぜ、新聞業界だけが、わずかな値引きすら許されないのか?この声明文だけでは明らかに説明不足です。

 もっと滑稽なのが、日本新聞販売協会の声明です。
特殊指定維持を歓迎・新聞販売協会が声明
 全国約2万2000の新聞販売店でつくる「日本新聞販売協会」(東京)は1日、公正取引委員会が決めた新聞業の特殊指定維持の方針を歓迎する声明を発表した。声明は公取委の方針を「英断」と評価。「今後とも著作物の再販制度、新聞の特殊指定を危うくする一切の動きに対決する構えを崩すことなく、厳格に注意を払う」などとしている。同協会は特殊指定堅持を訴え、5月末までに58万人を超える署名を全国の新聞配達員らから集めていた。〔共同〕 (07:00)

 「今後とも著作物の再販制度、新聞の特殊指定を危うくする一切の動きに対決する構えを崩すことなく、厳格に注意を払う」のだそうです。他のいかなる「抵抗勢力」でさえ、こんな露骨で醜い声明を出しているのは見たことがありません。

 これ以上、何も付け加えるべき点はありませんが、新聞業界も「新聞の憲法的位置づけ」とか言うくらいなら、自分の業界と他の業界を同列に報じてもらいたいものです。他の業界が抵抗するときだけ「抵抗勢力」呼ばわりし、自分たちの業界の場合には、恥を知らずに自己防衛に走る。マスメディアは確かに言論の自由を保障するためには必要な媒体だと思いますが、そのこととわずかな値引きすら一切認められないこととはやはり因果関係はありません。

 新聞業界こそ「最後の聖域」なのです。
 公正取引委員会が新聞の特殊指定を見直さないこととした旨の記事が、今朝の各紙に掲載されています。
【日経新聞】公取委、新聞の特殊指定見直さず・自民党に伝える
 自民党の中川秀直政調会長は31日午後、同一価格での新聞販売を定めることで宅配制度を支える「特殊指定」について、公正取引委員会(竹島一彦委員長)が今回の見直しでは廃止を見送る方針を伝えてきたことを明らかにした。記者団に語った。中川氏は特殊指定の維持に向け、同党の「新聞特殊指定に関する議員立法検討チーム」がまとめた独禁法改正案に関しても、提出を見合わせる考えを示した。

 新聞の特殊指定を見直そうという公正取引委員会の主張に対しては、マスコミが総力を挙げて反対運動を繰り広げていましたし、与野党こぞって反対していました。そして、自民党の議連は議員立法によって、公正取引委員会が独断で特殊指定を見直すことができないよう措置しようという独占禁止法の改正案を国会で審議しようという姿勢まで見せていたので、この問題は半ば、竹島公取委員長の孤独な戦いともいえる様相を呈していました。

 この件は、以前の記事でも御紹介しましたが、理屈からすれば、明らかに竹島公取委員長の方の言い分が正しく、新聞業界が主張するように、特殊指定がなくなれば宅配制度が崩壊するという因果関係は全く認められないわけです。にもかかわらず、新聞業界の理不尽な主張が政治の大多数の賛同を得るわけで、マスコミの権力性を改めて見せつけられる結果となったわけです。今回のマスコミの理不尽な理屈に比べれば、これまでの規制改革の議論における他業種の反対意見はよっぽど「かわいい」と思えてしまいます。

 そもそも、この問題は、公正な競争を促すことを目的とするはずの独占禁止法という法律において「競争をするな」という規制を設けているところに根本的な矛盾があります。つまり、現在の新聞業の特殊指定というのは「(価格)競争をすることが公正な競争を妨げる」という何とも不可解な理屈に基づいてできているものなのです。

 竹島公取委員長がこうした従来の特殊指定の在り方に大いに違和感を持つのは当然のことです。仮に新聞の価格競争を禁止する必要性があるのであれば、何も公正な競争を促す法律である独占禁止法の枠内でやるのではなく、別途「新聞業の競争を禁止する法律(仮称)」なるものを作って、その中で規制すればよいわけです(そんな法律の必要性がこのご時世において説明つくとは思えませんが・・・)。

 今回の決着で、当面の間は、新聞の再販制度や特殊指定の見直しの議論はタブーとなるでしょう。竹島公取委員長のように政治の反対にもめげずに主張を貫こうという官僚もなかなか現れないでしょう。

 新聞業界の完全な勝利です・・・。
 最近、新聞業の特殊指定見直しの議論が、政治やマスコミを大きく賑わせていますが、この問題、マスコミがなぜこれだけ大反対キャンペーンを繰り広げているのか、いまいちピンと来ません。

 この問題の詳細を知るには、公取委のHPを見ると詳しいのですが、論点を明らかにするために、国会における論戦を見てみましょう。

第164回国会 参議院予算委員会(平成十八年三月二十四日(金曜日))
□末松信介君 ・・・新聞の全国統一価格での販売を定めた特殊指定の見直しを公正取引委員会が今検討を進めておられます。六月ごろ結論を得たいとされているわけであります。・・・特殊指定が見直されますと、販売店との間で過度の競争が起こって価格に影響が与えられることが予想をされます。そうなると、配達コストなどに問題が起きまして、住宅がまばらな地域には基本的に宅配が困難になってくるという可能性が出てまいります。・・・
□政府特別補佐人(竹島一彦君) ・・・その新聞の特殊指定というのは何を定めているかと。三つ定めてございます。この一つは、新聞の発行本社が地域又は売る相手によって定価を変えてはいけませんよと。要するに、値引きしてはいけませんよと。値引きをすれば独禁法違反になりますということが第一項に書いてございます。今度は、第二項は、今度は販売店の問題でございますが、販売店が値引きをしたら、これは独禁法違反になりますよと、ことを書いてある。・・・私どもが特に問題にするのは第一項、第二項。およそ新聞に関しては、価格競争をすれば独禁法違反になるという規定なわけでございます。それは、そもそも、そういう規定というものが法律的に正当化できるのかと。独禁法というものは正当な公正な競争をしなさいという法律でございます。価格競争というのは、その公正な競争をする場合の競争手段として極めて重要な手段でございます。その手段を使ったら事もあろうに独禁法違反になるという、そういうことがどうして言えるのかというのが私が今言っていることでございまして、・・・。

 つまり、私なりにまとめてみると、新聞業の特殊指定というのは、新聞社や販売店が値引きすると独禁法違反になることを定めており、この特殊指定の廃止に反対する者は、この特殊指定がなければ、販売店間の過当競争が起こって新聞の宅配制度が維持できなくなると主張し、他方、特殊指定の廃止を進める公取委は、値引きを禁止する新聞業の特殊指定というのはそもそも独禁法の趣旨・目的からして正当化できないと主張するわけです。

 この問題を考える上で、新聞等の「再販制度」と「特殊指定」の問題を分けて考えなくてはなりません。再販制度というのは、供給者(または生産者)がある商品を流通させる際、流通段階において卸・小売業者などに対し、その商品を再販売するときに販売価格を維持させる制度をいうわけですが、これは独禁法上原則として禁止されているものの、新聞などの著作物については、例外的に認められています(書籍やCDなどの価格を生産者が決定しているのも同様です。)。

 今回問題となっている「新聞業の特殊指定」というのは、この再販制度を前提として、「地域又は相手方により、異なる定価を付し、又は定価を割り引いて新聞を販売すること」を禁止しているわけです。
 今回公取委が目指しているのは、あくまで「新聞業の特殊指定」の廃止であって、「再販制度」の廃止ではありません。したがって、仮に「新聞業の特殊指定」を廃止したとしても、新聞会社は販売価格を決定し続けることが可能であり、変わる点は、地域や相手方によって異なる価格を設定することが可能になるだけのことなのです。

 ところが、新聞協会は、この「再販制度」と「特殊指定」は「一対のもの」であり、「特殊指定の見直しは、その内容によっては、再販制度を骨抜きにする。その結果、経営体力の劣る新聞販売店は撤退を強いられ、全国に張り巡らされた戸別配達網は崩壊へ向かう。」との主張を展開します。つまり、新聞協会は、「新聞の価格競争→戸別配達網の崩壊」と位置付けているのです。

 しかし、なぜわずかな価格競争が生ずるだけで戸別配達網が崩壊するのでしょうか。これは全く不可解と言わざるを得ません。この点については、
「戸別配達という宅配サービスというのは、再販制度とか特殊指定があるから宅配サービスが行われているというふうには私どもは考えておりません。これは、その証拠に、こういうものがないその前の時代から宅配サービスは行われているわけでございまして、宅配サービスというのは、購読者、消費者にそのニーズがあるからこそ行われているものであると。その証拠に、再販も特殊指定もないアメリカにおいても七〇%の宅配率がある。逆に、再販制度を持っている極めて例外的な国である日本とドイツ、ドイツにおいては六〇%しか宅配率がないということに見られるように、宅配というのは、こういう特殊指定があるからこそ存在しているのではなくて、ニーズがあるから存在していると私は思っております。」
と公取委の竹島委員長が述べている主張には説得力があります。

 一方、新聞協会は、
「経営体力の劣る新聞販売店は撤退を強いられ、全国に張り巡らされた戸別配達網は崩壊へ向かう。」
と主張しているのみであり、明らかに説明不足です。なぜ再販制度に加えて特殊指定がなければ販売店の経営体力が維持できないのかが説明されていません。

 そもそも公取委と新聞協会との間の対立は、再販制度の見直しを巡って、ずっと繰り広げられてきたものです。この点は、東京大学経済学部の三輪芳朗教授のHPにて詳しく述べられています。

 私は規制緩和一辺倒の論調には反対でありますし、三輪教授のこれまでの過激な規制緩和の主張にも根本的な不快感を持っていますが、今回の新聞協会のエゴ丸出しの姿勢には、もっと不快感を覚えます。
 他の業界の規制緩和であれば、それに反対する人々を抵抗勢力呼ばわりしてきた張本人がマスコミです。それが、自らの業界になると、途端に業界挙げて反対運動を繰り広げるわけです。他の業界にだって、経済合理性では説明できない社会的使命があるにもかかわらず、そうした反論を封印してきたのはマスコミだったにもかかわらず、自らが攻撃の対象になると「知る権利」という社会的使命を振りかざすのでは全く一貫性がありません。

 私は、新聞販売ネットワークを維持するためには、新聞業界が過当競争に置かれることは避けなくてはならないと考えており、そのためには再販制度を存続させることはある程度やむを得ないと思いますが、他の業界がマスコミの後押しもあって過当競争に投げ出されている状況下にあって、新聞業界においてのみ一切の価格競争を否定する「新聞業の特殊指定」を残すことには反対です。
 新聞業会は、競争によって自らの経営体力が劣ることを危惧しているのでしょう。しかし、だからといって、新聞だけは価格競争がなくてもよいというのでは、マスコミが後押しした規制緩和の嵐によって競争を強いられてコスト削減に泣く泣く取り組んでいる他の業界の人たちからしてみれば納得いくものではありません。特殊指定に守られて「高給取り」の状態が続いているマスコミ人が安穏としている状況は全く不当だと思います。

 現在、公取委はマスコミからも与野党の政治家からも反対を受けて、苦境に立たされています。マスコミの身勝手な主張にもかかわらず、政治においても見直しの機運が全く盛り上がってこないところに、第4の権力としてのマスコミの力がいかに巨大であるかを痛感せざるを得ません。こういうマスメディアが機能しない問題こそ、Blogを始めとするネットの力が試されるのだと思います。

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