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感染ペース最悪「1000万人に迫る勢い」 (日本経済新聞 2006/12/15(金))
注意を呼び掛け
ノロウイルスによる感染性胃腸炎が全国で猛威を振るっている。国立感染症研究所の最新の定点調査によると、1医療機関当たりの1週間の患者数は21人を超える勢いで過去最悪ぺース。流行はなお拡大傾向にあり、大半の都道府県が「ノロウイルス警報」を発令し、手洗いの励行など注意を呼び掛ける異例の事態になっている。
国立感染症研が全国約3000の小児科から集めている定点調査では、11月20−26日の1週間に感染性胃腸炎と診断された患者が1医療機関当たり19.8人。大半はノロウイルスが原因だ。翌週の調査では21人を上回る見込みで、1981年の調査開始以来、最悪の水準が続く。ノロウイルスが最も流行したのは96年で500万−700万人が発症したとされるが、「今年は1000千万人に迫る勢い」との見方もある。
同研究所は1機関当たりの患者が20人以上になった場合を「警報レベル」と規定。厚生労働省によると、12月上旬で全国の保健所の過半数が警報レベルに達し、東京都など大半の都道府県が警報を発令した。
今年の流行は9月末ごろ九州で始まり、例年より2週ほど早いぺース。10−11月にかけ、中国、近畿、関東地方へ広がった。
通常は乳幼児が中心だが、成人に感染が広がったのも今年の特徴だ。各地の老人ホームや医療機関で集団感染が発生し、肺炎などで死亡する高齢者も出ている。14日も大阪府高槻市の病院で入院患者と職員計66人に集団感染が起きていたことがわかった。
流行のピークは12月中旬ごろで、学校や企業が冬休みに入る12月下旬には沈静化することが多い。同研究所は注意を喚起している。
▼ノロウイルス 冬に多発する感染性胃腸炎の主な病原体。1968年に集団発生した米オハイオ州のノーウォークが語源で、2002年に学会で命名された。感染力が強く、100個程度のウイルスが入っただけで急速に増殖する。腸内で増え、吐き気や激しい下痢を起こす。治療薬はなく水分補給など対症療法しかない。通常2−3日で治まるが、高鶴者や小児は重症になることがある。
感染防ぐには 手洗い徹底、調理時注意
Q 感染経路は。
A これまでは主にウイルスが蓄積されたカキなどの二枚貝を食べた人が感染した。ここ数年は貝以外の食品を食べてうつる場合や、感染者や回復した人からうつる二次感染が増えている。感染者の便や嘔吐(おうと)物の中のウイルスが世話をする人の手に付着し、食品などに付いて体内に取り込むことが多いと考えられている。
Q なぜ感染者が急増したのか。
A 原因は不明。そもそも回復しても便の中にはウイルスが1−2週間程度排出され続ける。共立薬科大学の中村明子特任教授は「回復した人は油断して手洗いが不十分になり、感染を広げている可能性がある」と指摘。
国立感染症研究所の松野重夫主任研究官は「今年は流行の立ち上がりが早く、感染が加速したのかもしれない」とみる。ノロウイルスは下水処理でも死滅しにくく、河川や海に流れ再び貝などを通じて人に感染することもあるようだ。
Q 感染防止で心がけるべきことは。
A せっけんを泡立てて手をしっかり洗い、ウイルスを落とすこと。松野主任研究官は「消毒用アルコールだけでは死滅しにくい」と話す。中村特任教授は「野菜や加熱後の食品などそのまま口に入れる食材の場合、調理する人は素手で直接触れずに使い捨てのゴム製手袋やハシを使ってほしい」と呼びかける。
Q 感染者の嘔吐物はどう処理するのか。
A 松野主任研究官は「次亜塩素酸ナトリウム(身近なものでは漂白剤)液を薄めてペ-パータオルなどに梁み込ませ嘔吐物を覆う。その後、袋などにまとめて燃えるゴミとして処分する」とアドバイスする。じゅうたんなどで漂白剤が使いにくい場合は、取り除いた後でセ氏71.3度以上のアイロンや蒸気が出る掃除用員などで1分程度加熱すればいい。
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