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5月23日

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義母は28歳の時、夫に先立たれた。主人が2歳、義姉が4歳の時だ。それからひとりで二人の子を育て、50歳、私がりんを身ごもってた時に再婚した。
再婚相手は小学校の同窓生。同窓会で再会、「初恋の人」と言われ、即プロポーズされたそうだ。
再婚相手は子どもを持たなかったので、「50歳で、苦労もしないで可愛い孫を授かった」と喜び、
りんが生まれた時には、たくさんの綺麗な子ども服を、大きなデパートの箱で贈ってくれた。

子どもたちがものごこころついてからは、むやみに金品を与えるようなことはしなかった。
一年間の「昼食手当」を、義母にお弁当を作ってもらって使わずに貯め、
毎年三月に、「進学祝い」と書いた封筒に入れ、ワインとケーキと一緒に持って来てくれた。
「これで勉強に必要なものを買ってもらいなさい」と言って。

12万円余りのそのお祝いは、実際物入りの新学期にすごく助かったし、
何より子どもたちには「無駄遣いをしないこと」「小さな積み重ねの大切さ」を、言葉ではなく教えてくれた、と本当に感謝している。

そして、義父の来る日は、「おかあさんが作ってくれないからね」といつもイタリアンのおもてなしをすることになっていた。「今年は何にしようか」と数日前からみんなで献立を考え、みんなで作るのが、春休みの家族行事だった。
イタリアンといっても子ども参加なのでけして本格的ではなく、ニンジンを星型に抜いたり、チキンを煮るためのトマト缶を開けるのに苦労したりと、せまいキッチンをそれぞれが右往左往して用意する。
「りんはグラタンに溶けるチーズのせてくれる?たっぷりだよ」
「のんはベランダからイタリアンパセリ摘んできて洗って」

「さあ、あとは焼くだけ」とオーブンの扉を閉めると、今度は主人も加わって、きれいなテーブルクロスを広げ、みんなでカトラリーを並べ、お皿とグラスを運ぶ。

独身が長かった義父はけっこう美食家で、持参のワインとケーキが我が家の定番よりずっと上等なのも贅沢な気分で嬉しかったし、その義父がトマトだのチーズだのポテトだの…というようなファミレスメニューを、すごく喜んでたくさん食べてくれたのも嬉しかった。

飲むと義父は「りんは18歳になったらおじいちゃんに車の免許取るお金出させてね。いいでしょ千秋さん」
「のんも18歳になったらおじいちゃんにそれくらいはさせてよね」と言った。
「大皿で食べるご飯は美味しいねえ」と、「ガーリックパンをもうひと切れちょうだい」と言って
義母に「おとうさんったら、いくらなんでも食べ過ぎ!」と怒られていた。

18歳の時、りんは血のつながらない「おじいちゃん」に援助してもらって免許を取った。

のんは、間に合わなかった。

義父が亡くなって一年。昨日は一周忌だった。
集ったのは義父の二人のお兄さんとその奥さんたち。義母と、我が家の四人。
一年前は気がつかなかったのだけれど、
義母と義父が「小学校の同級生」ということは、お兄さんたちもみな「ご近所」なのだった。
だから義母は「可愛い近所のお嬢ちゃん」で、
一周忌の会食は、「あの頃の下北沢」の話で、静かに、穏やかに盛り上がった。

そしてこのところなんとなく「五月病」っぽかったのんは、
義父の思い出を皆で語る一日を過ごすうちに、やはり静かに、穏やかに、笑顔に変わっていった。

死んでもなお、人は、人を癒せるのだな。

墓参の時、皆が義父に合掌したその時、
公園墓地の上空を、雲雀が一羽、のどかに一声鳴いて飛んで行った。

閉じる コメント(9)

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素敵なお義父さまですね。

私の妻の父も、母との再婚で血がつながっていませんが、
妻を「娘」として嫁に出し、「孫」を誰よりも愛しています。
「飲めるようになったら、ビアガーデンに行こうな!」
が孫への呑んだ時の口癖。
同じ男として「かぎりない優しさ」と「懐の深さ」・・・
大尊敬している義父です。
ビアガーデンにいけるまで13年!これからも、その先も。
わが子にも尊敬する「義父・義母」の生き様をたくさん見せてやりたいと。
そう、思いました!

2009/5/24(日) 午後 0:28 キムラ〜

いいお話ですね。当然ながら義父も義母もいない自分、おそらくその立場にもなれないと思いますが、こんないい関係を築いている義父さん、男性として見習いたいです。

2009/5/24(日) 午後 0:51 bs

千秋さんの話からはいつも家族というか身近な人間の絆を強く感じます。
いいお話です。ポチ☆

2009/5/24(日) 午後 10:11 ※

もうあれから一年経つのですね。
昨年、ご自身が人工呼吸器をつけるほど大変なのに、まだ人を気遣っておられた様子を思い出しました。
お義父様のお人柄が感じられます。

2009/5/24(日) 午後 11:25 [ kin**uro_*aj*ro ]

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亡くなった方のために法事をする。それは表面的なこと。ほんとうは亡くなった人が生きている人たちをその絆になって集めている。どちらが主体でどちらが客体なのか。生きることも生かされていることであるならば、後者が真実に近い表現なのかもしれません。

2009/5/25(月) 午前 5:13 冬樹

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>死んでもなお、人は、人を癒せるのだな。

すごい文章だなと思いました。
でも死んだあとにも他人を癒すには、どれだけの事を生前しなければならないのでしょう。大変なことです。

2009/5/25(月) 午後 8:07 そのはし のきたろう

お義父様とお義母様は同窓生♪しかも50歳で「初恋でした・・・」てプロポーズされたなんて少女に戻っちゃいますね^^
そこからしてお義父様素敵です〜^^
そのお義父様が・・・あれから1年経ったんですね〜早い・・・。
こういう記事にされてお義父様の優しいお人柄が手に取るようにわかります
読ませて貰った私達まで癒されます
素敵なお義父様と素敵なご一家にたくさんのポチ☆

2009/5/26(火) 午前 8:04 まはろ〜まりりん

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なあるほど、、、。短編小説を読み終えた気分です
。私もそんなお爺様になりたいなあ、、、。
今度同窓会があれば、いい人を探そうかなあ、、、。

2009/5/26(火) 午後 10:00 [ ろっぺい ]

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ろっぺいさん、是非いい人を見つけてください。人生は最後まで奇蹟です。

2009/5/30(土) 午前 7:14 冬樹


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