日々平安

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一億ドン

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私が来た前年の2004年に発行されたベトナムの硬貨、今はもう通用していません。
2011年にベトナム中央銀行が発行を停止したのは、支払い時に受け取りを断られることが多いなどの不評が多かったからとされています。

私はそれ以外の理由を知っています。
それは錆などですぐに変色してしまうことだと思います。
200ドン・500ドンは銀色、1000ドン・2000ドン・5000ドンは真鍮色をしていて、5000ドン硬貨は特にきれいでした。
ところが美しい金色をしていた5000ドン硬貨も数ヶ月もすれば変色、ちょうど5円玉の色が10円玉の色に変わってしまう感じかな。
それでこのおばさんのように『硬貨の洗濯』をしないといけないのです。

ベトナムドンの『ドン』は『銅』の意味、つまり昔の銅銭一枚が基準だったと言われています。
私が初めて来た1979年は1米ドルが公定レートで3.3ドン、闇の…と言ってもホテルのフロントでも堂々と(あくまで個人的に)10〜13ドンで交換してくれたものでした。
ブラックマーケットだと15ドンはするらしいと聞いたけど、やっぱり『政府招請』の立場でしたから手は出せずにホテルで『ご厚意』に甘えるしかありません。
補助単位にあたる0.1ドンのハオ(毫)と、0.01ドンであるスゥ(樞)といった硬貨もまだあった時代です。

現在では1米ドルが22,300ドン、公定レートで比較すれば約7400倍のインフレだったことになります。
日本などは戦争に負けてのインフレ、これはよく聞くところ。
しかし戦勝国だったベトナムがこれだけのインフレを起こしたのは、年に三度も米の収穫できる農業国だった国土が戦火に疲弊してしまったことによるとされています。

もうひとつ、あまり知られていないことを書いておきましょう。
事実上南北ベトナムの戦争で勝利を収めたのはご存知北ベトナムです。
紙幣は全く違えども、両国通貨の単位は全く同じドン。
統一された『ベトナムドン』はもちろん『北ベトナムドン』で、南ベトナムで暮らしていた人たちは当然北の通貨に変えなければいけません。
その時に統一政府が出した交換レートが『北1ドン』が『南500ドン』と設定されました。
これが『ボートピープル』と呼ばれた難民を続出させた遠因の一つともされています、海外にはほとんど伝えられることもありません。



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よく私が『数百万ドン』などと書いて、単位が掴めないとの反応が来ることがあります。

それでは、これが一億ドンだ!

もっとも、日本円に直すと50万円そこそこなんです。
これが今回のバンメトートと中部への旅に準備した資金。
50万ドン札が200枚、百枚で帯封されることもなく輪ゴムで止められただけ。
結果的には航空運賃や統一鉄道などの移動費は家内持ち、私は食事や宿泊費を負担するだけでずいぶん予算からは安く上がりました。

銀行でも高額を扱う家電量販店でも紙幣のカウンター(計数機)が置いてあるのは、インフレ国家の象徴だと日本人は言います。
日本では、銀行内ではもちろんあるでしょうが、客用に置いているのは見たことがありません。
それは百枚ごとに帯封をしてあるからだし、都度「お確かめください」と言われても相互信頼があるからだと思います。

5000万円がバッグに入るやら入らないやらの話が某議会でありましたが、5000万ドンなら内ポケットに入って知らんぷり。
私が来た当時に戻って1億ドンなら…3000万ドル、時代は流れけりです。

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