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やしこ

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ロンのトコトコに乗って到着したのはプノンペンのこの通りにあるお店、去年三度もお邪魔したのにとうとう買うことのできなかった『あるもの』を売っています。
店内はもちろん撮影禁止、外観だけでもと許可を求めても去年と同じく拒否されてしまいました。

通りの右手にあるとだけしておきましょう。

いきなり帰宅してからの画像に変わります。



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こんな状態で持ち帰ってきました。
とても気を使いました。

「いちばん安いのは、いくらぐらいでありますか?」
「20ドルから」
英語版の名刺もあるし、何度か欧米人の姿も見たことがありますから観光客のあしらいもできるはずなのに、相変わらず客に寄り添ってくるわけでもなく放ったらかしの店主です。
私の問いには最低限の単語で答えるだけ。
だから何度も寄り道をして、店内を見て回れたのかもしれません。
今回は特に浪費もしなかったし、あとは帰るだけだし、交通費の心配もしないでいいから少々の余裕はあります。



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本当はここに竜頭のあるものが欲しかったんです。
ちゃんと手入れがされて、弦はスチール。
スチール弦で音を鳴らせば、よさが聞き分けられるといいます。

「ここ(の白い部分)は、象牙ですか?プラスチックじゃないですよね?」
「アイボリー」
「これは、いくらですか?」
「150ドル」



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共鳴部分です。
お寺に行って急に欲しくなったからといって、木魚ではありません。
最初に見た『150ドル』には、ここにも竿の背にも豪華な羅伝細工が施されていました。

値段交渉はかなり難しい相手です。
口数の多い相手には、性格上対抗できます。
寡黙な人との交渉になると、こちらが先を読んで対応しないといけなくなります。
これは苦手です。
あっさり「別のアイボリーはありますか」と白旗を揚げてしまいました。

持ってきてくれたのが、彫刻されただけのもの。
竿との接続部にも、象牙の使われたこれでした。



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竿や糸巻きは紅木、張られている皮が水牛なのは珍しいと思います。
ベトナムでは『ダン・ガオ』と呼ばれる椰子の実を胴に使った『やしこ(椰子胡)』です。
ずっと欲しかったんです。
家内には「二胡さえ猫の泣き声しかできないのに」と言われますが、お寺の民族音楽を聴いてからたまらなく欲しくなったんです。

「いくらですか?」
「100ドル」
「10ドルだけ、ディスカウントしてください」
「……」
新聞紙で丁寧に包んでくれたあと、『やしこ』と一緒に10ドル札が返ってきました。
古楽器店のおじさん、ありがとう。

どこに行っても、ほとんど自分へのみやげは買いません。
買ったとしても実際に使う『実用品』レベルで、『記念品』的なものはまず買わないんです。
『やしこ』が実用品か記念品から脱皮できないままで終わるのか、これからの練習にかかっていると思います。



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二胡に関しては、『女子十二楽坊』の出現で有名になりました。
『やしこ』はもっと乾いた高音が魅力。

ハーモニカを使って初チューニングを終えると、待ち構えていたチビ姪っ子がためし弾きをしてくれました。
あなたには竹笛を買ってあるんですから、そちらを練習してください。
合奏できる日は、遠そうです。

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