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この辺りの椰子の木は、リゾート海岸のシンボルみたいなシルエットの美しさはありません。 椰子の木は住居に日陰を作ってくれるだけでなく、ココナツジュースは『南国のおもてなし』とされるだけでなく、喉が渇けば手軽な飲料となるし、材木としての価値は低くても燃料にはなります。 もっと重要な役目があることは、中部を旅行している時に聞いて感心したことでした。 住居の周囲に好んで植えられるのは、防風にくわえて避雷針代わりになること。 確かに雨季のスコールには想像を絶する頻度の落雷がありますから、先人の知恵には感服の思いをしたものです。 椰子には年輪がないこともお伝えしました。 地中の根は細くて、しっかり土壌を掴みます。 だから、海岸でかなりの角度で成長を続けている椰子が見られることも知りました。 年輪がないため、寿命が来るとこんな状態でいきなり倒れます。 これは数年前に倒れたそうです。 椰子の実が落ちてくるよりも、こちらの方が恐いと言います。 寿命は土地柄や土質によっても違いがあって、この辺りではおよそ30年とか。 子供たちと蛍見物に行った帰り、こんな光景がありました。 椰子の実のジュースと内側のミルク部分をとった、椰子ガラです。 乾燥させると、繊維が取れるのです。 長兄さんの『倉庫』に積まれていたのが椰子の実繊維、こんなきれいにするまでにはかなりの手間がかかります。 「今は雨の日だけの仕事だよ、出荷はいつのことかわからない」 化学繊維に押されて、天然繊維が年々売れなくなってきました。 完成品が、左の隅に巻いておいてあります。 お店や事務所の入り口に、こんな茶色のマットが置いてあった記憶、ありませんか。 今は『いらっしゃいませ』など文字が書かれたマットになってしまいました。 この『やしのこ』がまた実をつける頃、まだこの辺りの特産品として君臨しているでしょうか。 |
椰子のある風景
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変化はメコンデルタの過疎地でも確実に起きています。 初めて訪問した時には椰子の木に直接碍子を打ち付けたりして電話線を張っていたのに、もう今では痕跡しか見当たりませんでした。 これは電話線が巻かれていた痕でしょう。 椰子の木の成長で線が切れたのか、その前に外されたのかは不明。 垂れてきた電話線を、椰子の葉で結わえてあります。 たった1本だけ、現役が残っていました。 この線の太さは、もしかしたら電話線ではなく電灯線かも知れません。 竹ちゃん電柱なら、まだまだ見ることができます。 これは各家でそれぞれ作業されたものだそうです。 時々、こんな素人工法も眼にします。 コンクリート製のこんな電柱より、椰子の木の方がずっと丈夫みたい。 |
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これがベトナムで一般的に見られるココナッツ椰子です。 逆光ですが、違った種類の椰子が左に2本あります。 これがカンボジアでよく見られるパルミラヤシ(ウチワヤシ、オオギヤシ)で、当時は名前も知らずに『(逆さ)線香花火椰子』と名づけていたものです。 勢いのある時の、線香花火に見えませんか? これがパルミラヤシの幹。 ほぼ真っ直ぐに伸びます。 こちらはココ椰子の幹。 よく『リゾート海岸』の象徴として、真っ直ぐではなく海にせり出して成長した画像を見かけます。 子供が登ったりできる角度まで傾いても倒れない根の強さがあります。 パルミラヤシは、こんな実をつけます。 シロップ漬けにされることが多いそうですが、生でも食べることができます。 発酵させると酒もできます、まだ飲んだことがありません。 やっぱりカンボジア国境に接する街。 計画とはかなり乖離した停電なのに、みんなおとなしい。 慣れているとはいえ、久しぶりに長時間の停電でした。 昨日ご訪問のできなかった言い訳…。 |
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海岸の椰子はよくお伝えしてきましたから、今回は陸の、それもジャングルでもない『椰子並木』をご紹介しましょう。 いつもなら葉の茂る下に椰子の実が見えるはずなのに、それらしきものはまったく見当たらないし幹もずっと細いでしょう。 これはビンロウ椰子という種類なのです。 この道を挟んだ反対側も…。 やっぱりビンロウ椰子、収穫は終わったあとだそうです。 これが植えられてまだ2ヶ月も経たない幼木。 メコンデルタのベンチェー省はココナッツの生産でも有名、木成りのココナッツを切り落としてウエルカムドリンクとしてもてなす習慣があることもお伝えしました。 そのわけは、3年生でもこんな収穫ができるからだそうです。 wikipediaで調べてみると、『女神散(にょしんさん)、九味檳榔湯(くみびんろうとう)』などに配合されるとありました、効用までの記述はありません。 ただし、日本では嗜好品として使用することが禁止されているともありました。 今も山岳地帯に住む少数民族のお年寄りが『鉄漿(おはぐろ)』のような歯をされているのは、この習慣からだということも。 こちらが訪問したお宅の母屋、今ではテレビアンテナよりずっと高く育っています。 ビンロウ椰子は成長が止まっても4〜50年はこうして家に日陰を作り、強い風からや落雷からも守ってくれるのです。 これがもうすぐ完成するお宅、ご案内した玄関の並木だけでなく、周囲にもビンロウ椰子は植えられています。 今はビンロウ椰子の実は形式的な引き出物に利用されるだけ、若奥様はきっと召し上がらないはずです。 これだけは伝統どおりにはしなくてもよくなりました、こんな苦いものは食べないでよろしい。 いちばん近いチョー(ローカルマーケット=露店)まで10Km以上、HONDAカブもこのあたりではテレビと同じく必需品です。 50cc以下のバイクなら運転免許証の要らない国、もちろん年齢制限もありません。 ちゃんとココ椰子の木もあるんです、誤解のないように撮っておきました。 |
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椰子の使われ方も、今まで何度かにわたってお伝えしてきました。 今回は、椰子の葉を使った屋根葺き作業をご紹介します。 ちょっとした地方都市では、専門の商売をするお店を見かけるほど一般的だった椰子の葉で編まれた屋根材も、耐久性からトタンやスレートに取って代わられつつあります。 「5年から8年で取り替えないといけないし、10年も使うとちょっと大きな鳥が止まったら、そこから雨漏りがする」 と、これは義弟の弁。 これを造るのは椰子園農家の副業でもあります。 これが作られて間もない屋根材、芯には竹が使われています。 昔は義弟の家でもこの屋根材を作っていたそうで、子供頃の義弟は椰子の葉をきちんと並べる役だったとか。 「葉の青いうちに曲げたり編んだりしないといけないから、1日にたくさん出来ない」 「枯れると破れるから?」 「そう。それに、並べて編む時に紐を通す孔が大きく裂けてしまう」 「紐は、何を使う?」 「椰子の葉っぱの、芯」 すべて植物から作られる、天然素材の屋根材です。 「竹は、ベンチェーにもあるのかな?」 「お義兄さん、ベンチェーの意味を知ってる?」 「いいや…」 「ベンチェー(Ben Tre)は、『恥ずかしがり屋の(Ben:Shy)竹(Tre:Bamboo)』という意味。今は椰子で有名になったけど、まだまだ竹林はたくさん残ってるよ。オレの名前(Mang)はタケノコという意味だよ」 またひとつ、ベンチェー、いや、勉強になりました。 二日酔いの重い頭を抱えての散歩中に、どこかから私を呼ぶ声が聞こえました。 「ヘーイ!カモン!」の声は、屋根葺き作業中のお二人からです。 この顔…どこかで見たような…そうそう、昨日の『嫁取り式』で出会った人たちでした。 別に高いところは苦手じゃないけど、今は地球も回っているしまっすぐ歩く自信も皆無、安定した地上からの作業拝見でお許しをいただくことにします。 軒はスレート葺き、その上の本屋根の葺き替えの始まりでした。 屋根材はもちろん椰子の葉を編んだもの、これを腰の部分にぶら下がっている束で骨組みの竹にくくりつけていきます。 これほどじゅうぶん乾燥させると、虫も付かないそうだし雨もはじくそうです。 それに、何よりトタン葺きと違うのは、防音効果と断熱効果にずっと優れていることでしょう。 上ばかり見ているとやっぱり気分が優れない二日酔い、5分ほどでやっぱり散歩を継続することにしました。 ほぼ1時間後に戻ってくると片面が葺き終わり、反対側の作業に取りかかっておられます。 でも、この状態ではまだ完成ではありません。 このお宅のように裾を切り揃えて、水椰子の強い葉芯で押さえを付けると、ようやく出来上がりになります。 これで、少々の強風でもきっとだいじょうぶです。 別の建物になりますが、内側はこんな状態です。 スコールの大きな雨粒が打ち付けても、熱帯の強い陽射しが降り注いでも、これだけ密に敷き詰められたなら室内は快適に過ごせることでしょう。 「椰子の葉葺きの屋根は、とてもエコな気がする」
「欠点も、あるよ」 「どんな?」 「火に、弱いこと…」 |




