|
甲府盆地を見おろす巨大な前方後円墳の主人公は誰?
(資料『郷土史事典』山梨県 手塚寿男氏著 1978)
古墳時代
日本が統一国家形成にむかった三世紀末ころから、権力者たちは自分の力を誇示するため、大規模な高塚式の墳墓を築造するようにたり、それは七世紀ころまでつづいた。この時代を古墳時代という。古墳時代は一般に前期・中期・後期の三期に分けられている。
山梨県下の古墳は、ほとんどが甲府盆地とその周辺地域に分布していて、その数は失われたものもふくめると、およそ一〇〇〇以上あっただろうといわれる。現存しているものは前方後円墳が約一七基、方墳二基、円墳が約四〇〇基で、その分布は盆地の東南地域の笛吹川や、御坂の扇状地や、曾根丘陵に多く、ついで盆地の北西地域の竜王・登美台地、櫛形山麓台地や八ケ岳山麓の辺見台地などに多く分布している。
県下最大の規模をもつ中道町の銚子塚古墳は、すぐ近くにある丸山古墳とともに古い形態である。銚子塚古墳は前方後円墳で、周囲に堀の跡も確認され、古墳のまわりからは円筒埴輪の破片が発見されている。古墳の規模は長径一六七メートル、前方部の高さ六三メートル、後方部の高さ八五メートルという大規模なものである。後方部の頂上に堅穴式石室がある。
主な出土品には漢式鏡五面、石剣六本、鉄剣三本、車輪石五個、鉄鎌、管玉、勾玉、貝輪、鉄斧類など一五〇余を数える。漢式鏡については、漢鏡三面、?製鏡二面で、漢鏡は内行花紋鏡で「長宜子孫・寿如金石」などの字が読めるという。他の一つは神人四意虎鏡で、「陳氏作鏡□青圃上有仙人不知君宜高官保予宜孫長口」とある。さらにもう一つは、亀竜鏡で、全体が紫黒色の優秀品であるといわれている。また?製鏡の二面は、中国の魏晋鏡の模倣
とみられる国内製品であり、三神三獣鏡と四神四獣鏡である。
以上のような銚子塚古墳の規模の大きさや副葬品の質量のすばらしさから推定して、この古墳のつくられた時代は、権威のしるしとしての漢鏡や剣を所有することによって、地方支配が宗教的諸行事中心の支配から政治的支配へとすすんだことを象徴していると考えられる。
銚子塚は、当時の甲斐の支配者であった国造級の権力者の墳墓であろうと考えられている。大和朝廷の日本統一課程における地方への勢力の進展と、当時の杜会・文化の模様を推察することのできる貴重な遺跡である。
円墳では東日本最大といわれる姥塚(資料『郷土史事典』山梨県 手塚寿男氏著 1978)
天皇や豪族たちの墳墓である古墳は、はじめ瀬戸内海沿岸から畿内へかけて発達L、大和朝廷の支配範囲がひろまるにつれて地方へ伝播した。
山梨県における古墳分布はほぼ甲府盆地に集中しているが、とくに前期のものは、三珠町・豊當村・中道町をむすぶ曾根丘陵から、八代町・御坂町方面へかけて多くみられる。これはもっとも古い官道が、富士山麓から北西へ尾根伝いに通じていたことによるもので、中央権力は東海道からこのルートを通って浸透したと考えられる。したがって古代甲斐国の政治的中心は、笛吹川沿いにあったとみてよかろう。
後期古墳時代に入ると、古墳の分布は全県下にひろがり、群集墳の傾向をもっている。なかには、巨大な横穴式石室をもった円墳がつくられている。その代表的な古墳が、東日本最大の円墳といわれている御坂町の姥塚である。姥塚は御坂町井之上の南照院境内にあり、別名円通窟あるいは御馬塚といわれている古墳で、横穴式石室をもつ円墳である。塚の高さは一〇メートル、基底周井は一五七メートル。石室の内部は全長一五メートル、羨道(石棺にいたる道)入口の幅二・一メートル・高さ二、五メートル。玄室(棺をおさめる室)は幅三メートル・高さ二、八メートル、八個の巨石によって天井の部分がふさがれている。これは、羨道や玄室に砂をいっぱい入れて蓋石を設置し、その後に砂を全部とり出す方法がとられたものであるという。姥塚の広大な項丘とその内部構造の巨大さは、東日本随一のものである。玄室奥には現在、寄木造りの藤原時代の作と伝えられる観音像が祀られ、三月の初午の日には馬体安全・養蚕加護の観音祭りが行われている。
姥塚につぐ雄大な構造をもつ円墳加牟那塚は、甲府市千塚の金塚前にあり、甲府盆地北部の平坦地にある。千塚の地名は、この付近に無数の塚があったことからおこったといわれているが、加牟那塚の構造彩式は有段円墳で、葺石をめぐらせた跡や円筒埴輪の破片がまわりから発見され、また周囲にめぐらした堀の跡もあったという。円墳の高さは七・三メートル、基底部周囲一二ニメートルで、内部構造は商面に開口する横穴弐石室で全長は一六・七メートル、入口の幅一・五メートル、羨道部の長さ六・四メートル、玄室の奥行一〇・三メートル、幅三・三メートル、高さは二・六メートル、蓋石は七枚の巨石を用いている。奥壁は巨犬な一枚石でできており、みごとな構造をもつ古墳である。
|
全体表示
[ リスト ]




