古生代のページ

奇怪な古代生物のページです。 一般には目にすることの少ない実物の化石を中心に紹介します。

バージェス型動物

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ネクトカリスとは?
ネクトカリス類(Nectocaridid)は、当方の知る限りネクトカリス、ベツストベルミス、ペタリリウムの3属が知られており、澄江とバージェス頁岩、エミュベイ頁岩(豪)で記録があります。それぞれは非常に類似した構造をしており、英語版wikipediaの記述(2015.8現在)によると実質的に属レベルでは同じで、ひょっとしたら種レベルでも同じではないのか?という認識もあるようです。確かに、化石を見比べてみても非常に類似しており違いがよく分かりません。
ネクトカリスもベツストベルミスも、古生物学者は極めて少ない標本を基に分類に頭を悩ませ、節足動物、刺胞動物、環形動物、軟体動物と動物門レベルでの行ったり来たりをしていたようですが、2010年のネクトカリスの研究によると、どうやら軟体動物(頭足類)として扱うのが適切であろう、との研究が為されています。

曰く、外殻はないにせよ、頭部最先端部に2本の器用そうな長い触手を持ち、漏斗をもち、漏斗を介して水を体の全域に及ぶ体腔に吸い込み、そして吐き出せる。化石化された標本を調査すると、漏斗の向きはランダムに向いており、この動物は漏斗の向きを自在に操れた可能性が高い。つまり史上初のジェット噴射という訳です。もしこの種が頭足類なら、これまで確認されていた頭足類の記録から3000万年さかのぼる事になるそうです。
また漏斗から体腔に水を案内することで呼吸を兼ねていたようです。なお初期のジェット機らしく噴射は弱弱しく、メインの推進力はコンベンショナルな鰭によるものであっただろう、コンピュータのシミュレーションにより推定されているそうです。

写真の標本は、おそらく腹側から見たものとなり、漏斗と思われる物体がハッキリ写っています。ひと昔前の澄江の図鑑には叶形虫として、このような謎の『頭部』をもった前方後円墳のような形状の記載がありますが、まさにこれの事です。まさか頭部ではなく漏斗だったとは…
ベツストベルミスは背中にイボイボを持つことが指摘されています。この標本は腹側からのものだと思うのですが、イボイボが見えます。ナゼでしょう????ちなみに腹側に肢を持つそうですが、私の標本では確認できませんでした。どれでしょう????謎多き標本です。

ネクトカリスは生命大躍進でも展示されているので、足を運べる方は是非科博まで見学されては如何でしょうか(本物のネクトカリスが日本で見られるのは次は何十年後になるやら…)。
本物は、写真のネクトカリスより数段綺麗に見えます。

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復元図はNatureより抜粋(著作権が原因で表示できない場合は↓を踏んでください
#99367

参考:
SMITH, M. AND J.-B. CARON. 2010. Primitive soft-bodied cephalopods from the Cambrian. Nature, 465: 469-472.
CHEN, J.-Y., D.-Y. HUANG AND D. J. BOTTJER. 2005. An Early Cambrian problematic fossil: Vetustovermis and its possible affinities. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 272(1576): 2003-2007.
英語版wikipediaの関連ページ(実によくまとまっています)
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コティレディオンとは?
ディノミスクスのような形態をした動物です。海底に固着するディスク状の固着部と、ストロー状の柄と、体本体であるガク部からなります。最大の特徴は、ガクと柄の部分を覆い尽くす骨片です。この骨片は立体的に化石化することが多く、生体鉱物であった可能性があります。また保存の良い化石から、ガクの上辺に30本以上の腕が等間隔にならんでおり、腕に囲まれた上面に口と肛門が仲良く並んでいます。口と肛門はU字系の消化器官によって接続され、ガクの内部に大きな胃があります。
以上のように、動物の形態としてはディノミスクスと非常に似ています。しかし決定的な違いがあり、ディノミスクスの花弁は硬質のようであったのに対し、コティレディオンの触手は伸縮性に富みどうやら引っ込めることも出来たこと、あとは捕食機関のフィルタ装置の構造も違うようです。

コティレディオンは、かつては断片化石のみが見つかっており、ディノミスクスと同じく分類不明種(プロブレマティカ)のカテゴリに放り込まれていました。その後、数十個の標本を基にした研究が行われ、刺胞動物だとして扱われていたようです。で、2013年の研究(下記参考文献)の段階で、海口にて大量の標本が出土(おそらく固まって取れたのだと思いますが)し、400個の標本を詳細に検証した結果、内肛動物なるカテゴリに含めるのが妥当ではないかと考えられているようです。現存する内肛動物の写真を見ていただければ分かるように、確かに似ている…。
私も古い情報に基づいて「イソギンチャク」として1〜2個譲渡したような気もしますが、ご勘弁を。

参考文献では、冠輪動物を構成する多くの種に共通に骨格があるのだから、骨片はそれらの類縁関係を示している、というくだりは面白いと思いました。
例:腕足動物(ハルキエリアのこと?)、軟体動物(ウィワクシアなど)、環形動物(カナディアなど)、内肛動物(コティレディオン)

以上の情報はすべて参考文献の要約です。SSFの中身がこのような動物の可能性があるとは正直オドロキです。論文は「ディノミスクスもたぶん内肛動物に違いないんやで(根拠はないけど)」という空気を醸し出していました。

私が持っている標本もちょっと見ましたが、触手は見当たりません。自由に引っ込められるんじゃどうしようもないですね。ちなみにディノミスクスも私が観察した限りは可動式だと思いますが、花弁の付け根のアングルをかえるのみで確かに花弁それ自体は軟体性組織のようには見えません。写真の個体はガクの部分だけで3㎝弱とこの手の標本としては超大型の個体であるようで、左下のミニサイズのものと比較すれば巨大さがうかがえます。柄の部分も母岩を掘れば出てきそうな雰囲気で保存がよいのでラクにクリーニングできそうな気がします。
#137025

参考文献:
Zhang, Zhifei et al. (January 2013). "A sclerite-bearing stem group entoproct from the early Cambrian and its implications". Scientific Reports 3.   http://www.nature.com/srep/2013/130117/srep01066/full/srep01066.html (フルテキスト)

関連:
ディノミスクス(奇妙高足杯虫)
フロギテス(火炬虫)

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カンセロリアとは?
海底に固着し、星形の防御用骨片に守られた軟体部で、海中の栄養やプランクトンを濾しとって食べていたと見られています。消化器官など臓器らしきものは今のところ確認されていないようです。近縁種としてはユタ州の化石をよく見かけることができますが、標本によっては灰色の母色にカラフルな橙〜黄色でとても美しいです。

このカンセロリアはカンブリア紀の奇天烈動物のうちのさらにキワモノの一つ。カンセロリア類(Chanceloriid)は漢字だと開腔骨類と書きますが、カンセロリアを構成する星形の骨編の中が空洞であることから来ています。この構造は、ウィワクシア類やハルキエリア類と言った軟体動物的な動物の骨片の構造や材質に類似しており、海綿とは異なります。また骨片内側の軟体部の構造も海綿らしからぬより高等な動物のものが持っているような結合組織を持っているそうです(ただしウィワクシアの骨片については情報により中空・密と両方あり、どれが最新の情報かはよく分かりませんが)。
要するに、海綿状の原始的な動物のくせに高度な形質を持っていてけしからん!という事です。問題の解決には、両者をつなぐ生物の化石の発見が待たれます。

ウィワクシア、ハルキエリア、カンセロリアは完全体の姿ものの化石は特殊な条件下(Lagerstatten)でしか化石化せず、たいていは骨片のみがバラバラの状態で化石化します(いわゆるSSFの一類)。カンセロリアの星状骨片は、それ同士が骨格のように組み合わされているのではなく、伸縮性のある膜状の軟体性組織に付着する形で形を保っています。下記に掲載の文献に、軟体性組織について詳しく記載されているようです。
"The integument of Cambrian chancelloriids" by STEFAN BENGTSON and XIANGUANG HOU https://www.app.pan.pl/archive/published/app46/app46-001.pdf

写真の標本は、カンセロリアの一種、アロニアと思われます。かなり大型の個体です。カンセロリアは最上部に”口”のような開口部を持ちますが、その部分がきれいに残っています。星状の骨片の密度は少な目で、骨でない部分には軟組織が見事に保存されています。
部分化石ながら、強烈に美しい標本でした。
復元は『動物世界的黎明』より。

参考:
陳均遠(2004) 『動物世界的黎明』 江蘇科学技術出版社

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フォーティフォーセプスとは?
文献『動物世界的黎明』『The Cambrian Fossils of Chengjiang, China』(朝倉書店より日本語版が出ています)に拠れば、『体長4㎝くらいの細長い体躯をした節足動物、柄付の目と1対の頑丈な大付属肢を備える。大付属肢は、捕食に使用していたに違いなくしたがって肉食の捕食動物と考えられる。頭部には円形状のヘッドシールドを備え、3対の二肢型付属肢がついている。尾部は扇状である。鰭脚の形状から見て、遊泳したと考えられるが、強力な歩肢が認められる。(バージェス頁岩型標本によく見られる)大付属肢を備える動物の仲間であろう。』の様なことが書かれてあります(かな〜り適当)。
復元図は、『The Cambrian Fossils of Chengjiang, China』より転載。というのも、両文献に掲載されている復元図はかなり異なっており、私が実標本を観察した結果こちらの方が大付属肢の形状が正解に近いのではないか?と思われるからです。ただし触覚があるのかは実際よくわかりません。

上記の文献にも記載されている通り、フォーティフォーセプスはカンブリア紀によく見られる巨大な大付属肢をもつ節足動物の一例であることはほぼ間違いありません。同様のデザインの動物としてはレアンコイリア、ヨホイア、ジアンフェンジア(尖峰虫)などがあり、節足動物と呼べるかどうかは議論の余地がありますがアノマロカリス類も関連がありそうです。

写真は、腹側から見た標本となります。おそらくフォーティフォーセプスのこのアングルの標本としては世界最高のものだと思います。体は太かったのか堅かったのかは分かりませんが、明瞭に境界を鰭と区別できます。この標本の特筆すべき点はいろいろありますが、異様に細長い歩肢が明瞭に見て取れるところではないでしょうか。ここら辺がアノマロカリスとの大きな違いになるでしょうか。またこの標本では目は左右対称にきれいに収まっているためよくわかりませんが、目はある程度自由に動かせたと見え、標本によっていろいろな方向を向いています。
カンブリア紀、中国雲南省産、大きさは大付属肢先端から尾部先端まで3㎝くらい(尾部はカウンタパートにあります)

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参考:
陳均遠(2004) 『動物世界的黎明』 江蘇科学技術出版社
Hou, Xian-Guang; Aldridge, Richard J., Bengstrom, Jan; Siveter, David J. ;Feng, Xiang-Hong 2004; The Cambrian Fossils of Chengjang, China, Blackwell Science Ltd.

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関山(ガンシャン)とは?
中国雲南省近辺には、澄江以外にも特異的に保存状態の良いカンブリア紀の化石産地(Largerstatten)があります。関山はそのなかの一つで、澄江より僅かに新しく、凱里よりも古いもので、澄江とは出土する種が異なります。澄江では比較的少ない古虫類や三葉虫が多く産出し、ガンウェイカリス(具刺広衛蝦)などのようにここでしか採れないものもあります。
関山化石は一時工事があったのか出回りましたが、めっきり見なくなりました。一説によると高速道路ができたのだとか…。とてつもなく巨大なレドリキアなど、ここの三葉虫化石は素晴らしかっただけに残念です。

さて関山からもアノマロカリスが産出します。アノマロカリス・サーロンとして扱われることが多いのですが、異論もあるようです。たとえば下記の文献。この文献では、関山アノマロカリス2種、Anomalocaris kunmingensisとParanomalocaris multisegmentalisが紹介されています。ちなみに中国語ではどちらもサーロンと同じ奇蝦のようです。
A. kunmingensisについては読む限りは正直A. saronとの違いは微妙すぎてはっきり言って怪しいですが。P. multisegmentalisは確かに素人目にも違いはありそうです。A. saronとの違いは、節の数がより、かつ腕の外側に飛び出している刺状突起の数も多い、また全体的にスレンダーで、腕の内側の刺状突起を構成する小突起の数も多い。実際そんな感じがしなくもないです。

さて写真も関山のアノマロカリスです。が、不完全のため記載の特徴は確認のしようがありません。目を皿にすれば分かるかもしれませんがその気力もありません。ただ全体的なプロポーションは、文献に掲載されているP. multisegmentalisに近いでしょうか?標本大きさはカーブにそって大体3㎝くらい。

文献:
YuanYuan Wang, DiYing Huang, ShiXue Hu. (2013) New anomalocardid frontal appendages from the Guanshan biota, eastern Yunnan. Chinese Science Bulletin 58, 3937-3942.


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