日々狂簡

細々とやっております

ケータイ専用

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グランドラインには、冬島と呼ばれる島がある。その島の気候は、一年中が冬という厳しい気候。
この物語の舞台であるドラム王国も、そんな冬島の一つにある。
 
このドラム王国には、医者が21人居る。
正規の医者は20人だが、全員がドラム王国の管理下に置かれ、一般人が治療を受けるには、多額の医療費と王国への服従が強いられる。
医者たちの名は、イッシー20(トゥエンティ)という。

もう一人の医者は、ギャスタという町の外れに住む、年老いた…いや、ピチピチ130代の女性で、傍らにはいつもトナカイが居た。
その女性の名は、Dr.くれはという。腕は確かだが、その治療費も尋常ではなかった。

このような事情もあり、ドラム王国では、そう簡単に怪我や病気になることは出来ない。
しかし、それでも何かあった場合は、高い治療費を払わねばならない。でなければ自然に治るのを待つか、それとも・・・。

そんな過酷な環境の国も、年末に向けて、それなりの賑わいを見せている。

 
「チョッパー、街へ行くよ。したくしな!」
梅酒のボトルをあおりながら、Dr.くれはが助手に声を掛ける。

「また飲みに行くの?ドクトリーヌ。今年も、もう二週間しか無いんだよ。」
そう答えたのは、トナカイのトニートニー・チョッパー。こう見えても、助手である。

「このへっぽこトナカイが、あたしに意見するなんざ、100年早いんだよ。」
くれはの投げた包丁が、チョッパーの顔をかすめて柱に突き刺さった。
それを見て。チョッパーは顔を青くしながら、ソリの準備を始める。

ところでこのトナカイには、ツノが片方しかない。もう一方のツノが折れているのだ。
そしてこの物語は、ヒトヒトの実を食べたトナカイ、トニートニー・チョッパーのツノを、治すまでの物語でもある。



「邪魔するよ。」
くれはは、ドアノブを回して扉を開けるような事はしない。その拳で、まさに扉を打ち破るのだ。
今は年末である。厳しい環境の国家とは言え、酒場はそれなりに繁盛している。
しかし、くれはの姿を見て、酒場の空気が少し変わった。どうやら、相当恐れられているようだ。

「ハッピーかい?ガキども。病人は居ないようだねぇ。」
そう言うと、カウンターの席に座り、梅酒を注文した。
傍らには、チョッパーがおとなしく立っている。

くれはが梅酒を飲み始めると、程なくして一人の男が酒場に駆け込んできた。
「Dr.くれはが来ているというのは、本当か?」


男は酒場を見回し、くれはの姿を見つけると、その側まで走りより土下座をしながら、こう言った。
「私は鍛冶屋のスミスです。お願いします。娘を、娘を助けて下さい!」

床に頭を付けたまま、微動だにしない男を一べつすると。くれははグラスに残った梅酒を飲み干し、
「お前さんの娘は病気かい?だったら案内しな。…それと、ここの払いは任せたよ。ヒッヒッヒ・・・」
と、笑った。

Dr.くれはの診察は気まぐれだ。いつも突然街へ降りてくるので、受けたい時に受けれるとは限らない。
イッシー20よりも治療費が非常に高いので、今回のように患者側からお願いに来るのは珍しい。

スミスの家は酒場のすぐ近くにあった。中に入ると、奥の部屋にあるベッドに女の子が寝ている。
その横で椅子に座っている女性は、おそらくこの子の母親だろう。

くれはは、チョッパーに診察器具を持ってこさせると、診察を始めた。脈を取り、聴診器を当て、顔色を見る。
採血をし、成分検査をしたところでくれはの表情が険しくなった。
「イッシー20にも診てもらったかい?」

くれはの突然の質問に、戸惑いながらもスミスは正直に答えた。
「診てもらいました。しかし・・・、もう助からないと言われました。」

「・・・やっぱりね。」
梅酒をあおりながら、くれはは言った。
「この病気は先天性の物だ。今の医学じゃ治らないね。あたしにも無理さね。」

くれはの言葉は、女の子の両親にとって、非常に残酷なものであった。
母親は声を上げて泣き、父親は必死で涙を堪えている。
チョッパーは、何も出来ずただ立ち尽くすだけだった。

「悪いけど、あたしに出来る事は何もないね。診察料は要らないよ。チョッパー、帰る支度をしな。」
そう言いながら、くれはは持って来た医療道具を片付け始めた。

「その子は、かなり病状が悪化してるねぇ。残念だけど年は越せないね。持って後一週間てトコさ。」
更に残酷な現実を、この家族に突き付ける。

診察用のカバンを閉じ、玄関から出て行こうとする くれはの前で、両手を広げてチョッパーが立ちはだかった。
「技術があれば、病気は治るって言ったじゃないか。おれは何でも治せる医者になりたいんだ。」

くれはは何も言わず、チョッパーの横を通り過ぎる。
チョッパーは何とか引きとめようと、さらに くれはの前に立とうとする・・・しかし。

バキッ

くれはに蹴られたチョッパーは、ベッドの脇まで飛ばされた。


吹っ飛ばされて驚いた表情のチョッパーに、指を刺して言った。
「調子に乗るんじゃないよ、医者は神様じゃ無いんだ。どんな病気でも治せると思ったら、大間違いだよ!」

そう叫んだ後、振り返りながら言葉を続ける。
「あたしに何でも治せる医術があれば、あの馬鹿を死なせたりはしなかったさ・・・。外で待ってるよ、チョッパー。」
サングラスを直しながら、くれはは外へ出て行った。

チョッパーが呆然としていると、不意にベッドの上から声がした。女の子が起きたようだ。
「あなたは誰?」

「お、おれはチョッパーって言うんだ。トナカイさ。」
チョッパーは、しどろもどろになりながらも答える。

「トナカイ?帽子をかぶってるのに?…ふふ変なの。ツノが一本しか無いのね。」
女の子の笑顔にも、病魔の陰が見え、チョッパーは戸惑う。

「さあ、もう寝なさい。」
母親が、女の子に優しく声を掛けた。女の子はゆっくりと目を閉じ、
チョッパーは くれはの待つソリへと向かった。


あれから、一週間が過ぎた。

チョッパーは、あの女の子の事が気掛かりであったが、くれはの様子には、何の変化も無いように思える。
正確に言えば、普段よりも飲む梅酒の量が増えていたが、チョッパーには気付く事が出来なかった。

「おや、酒が切れちまったよ。チョッパー準備しな、買出しに行くよ。」
チョッパーはこの言葉を聞くと、急いでソリを用意した。
その表情には、何か決意のようなものが感じられる。

ソリに乗り込むとき、くれはは白い大きな袋を持っていた。
年末年始に向けて、たくさん物を買うつもりなのだろうが、チョッパーにとっては、そんな事はどうでも良かった。

チョッパーは、あの女の子の居る家へ走った。後でドクトリーヌに怒られても構わない。
どんな病気でも治せる医者になりたい。だから彼女を見捨てる事なんて出来ない。
そんな想いで、チョッパーはソリを走らせる。

「おいチョッパー、どこへ行くんだい?酒屋はそっちじゃないだろう。」
くれはの声にも耳を貸さず、チョッパーはソリごと、女の子が待つスミスの家へ突っ込んだ。

ガッシャァアアン!!ズズズゥゥン!!!

突然の来訪者に、スミス夫妻は声も出せないでいた。
そんな事もお構い無しに、チョッパーは女の子に目を配る。
病気がかなり悪化しているのだろう、苦しそうな表情で息を切らしている。

「やれやれ・・・。邪魔するよ。」
最初に声を発したのは、くれはだった。

くれはは、ベッド脇で座っている母親に近づくと、ビンに入っている薬を見せた。
「この薬は、病気を治すための物じゃ無い。眠ったまま、楽に天国へ行ける薬さね。」
母親の顔に、動揺の色が見える。チョッパーも、困惑した表情を浮かべる。

「言っとくけど、この薬は毒薬じゃないよ、人を死なせるのはアタシの性に合わないからねぇ。鎮痛剤みたいなモンさね、この子は、もう十分に苦しい思いをしたんだろう。せめて、最期くらい楽にしてやりたいなら、その薬を飲ませてやるんだね。」
そう言いながら、薬を差し出した。

母親は、震える手でそのビンを受け取る。
ずっと迷いの表情を浮かべていたが、苦しむ娘の表情を見て、決心をつけたようだ。父親の方を向くと、彼もゆっくりと肯いた。

母親は、棚から吸い飲みを持ってくると、そこに薬を注ぎ、女の子に飲ませる。
チョッパーは、自分の無力さを感じながら、ただ立って居る事しか出来なかった。

薬を飲み終えると、女の子の表情が穏やかになった。
母親は、その小さな手をしっかりと握り締める。
父親もベッドの側により、娘の額をそっと撫でた。

「パパ・・・ママ・・・。」
女の子が、目を覚ました。両親は、目に涙を一杯に浮かべながら、微笑む。

「今日は、ずっと気分が楽なの、どうしたのかな?」
女の子は体を起こそうとするが、母親がそれを制する。

「あ、変なトナカイさんが居る。…私の気分が楽なのは、もしかしてあなたのおかげなの?」
そう言われたチョッパーは、慌ててドアの向こうに顔だけ隠す。

その姿が可笑しくて、女の子は大きな声で笑った。
「一杯笑ったら、…眠くなっちゃった。…ありがとう…、トナカイさん…。」

「…パパ、…トナカイさんの…、ツノを、治して…あげ、て…。」
女の子は、そう言って深い眠りへついた。
母親が握った手から、急激に体温が下がっていくのが判る。


部屋中に、重たい空気が流れる。両親はただ涙を流すだけで、チョッパーは自分の無力さに打ちひしがられていた。

そんな中、くれはがゆっくりと話し始めた。

「チョッパー、人はいつ死ぬか判るかい?」
質問の真意が読めず、チョッパーは首をかしげる。

「例えば、…心臓を銃で撃ち抜かれても、人は死なない。…不治の病に冒されたとしても、人は死なない。…猛毒キノコのスープを飲んだって、人は死なないのさ、チョッパー。」
猛毒キノコ…。チョッパーは、ヒルルクの顔を思い出し、表情が強張る。

「いいかいチョッパー。人は、人に忘れられた時に、死ぬんだよ。」

人に忘れられた時…。この言葉に、チョッパーも、両親も、胸に大きな衝撃を受けた。

「…1人の馬鹿なヤブ医者が、最期に遺した言葉だそうだ。」

ゆっくりと息を吐いて、さらに言葉を続ける。
「いいねチョッパー、その子の病気(ハッピー)…けして忘れるんじゃないよ。」

くれははそう言うと、ソリから持って来た袋の口を開け、その中から一本の角を取り出した。
「スミスとか言ったねぇ、あの子の最期の願いさね。このトナカイに、ツノをつけてやっておくれ。」

父親は真剣な表情で頷くと、ツノを受け取りチョッパーを工房へ案内する。
チョッパーは振り向いて、くれはに尋ねる。
「ドクトリーヌ、どうしておれのツノを?」

くれはは少し微笑みながら、その質問に答えた。
「今日は12月の25日さね。…誕生日おめでとう、チョッパー」

外はもう、空が白み始めていた。今日もこの国には雪が降っている。
そして、この国に本当の夜明けが来るのは、もう少し先の話である。

閉じる コメント(4)

〜〜〜〜楽しみが…1つ出来ましたよ! ポチ!

2010/12/24(金) 午後 11:54 アーちゃん

(@◇@;) ウ・・・
泣きそう・・・
ヒルルクは不死だね、チョッパーがいる限り^^

2010/12/24(金) 午後 11:57 ryukishi



言葉が出ないね

2010/12/25(土) 午前 7:05 [ - ]

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くすん ( ノω-、) ありがとう。ポチ。

2010/12/25(土) 午後 0:17 三日月@久遠


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