華人経済研究所

2014年も、毎週末更新です!

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先週も日本は円安株高が継続し、日に々々アベノミクスに対する評価、特に金融政策に対する評価はポジティブサイドに収束しつつあります。一方で、世界全体に目をやると、経済成長を牽引し続けているのは、世界全体のGDPにおいて約3割のシェアを持つアジアです。

4月9日、アジア開発銀行(ADB)はアジア地域の2013年のGDP成長率が前年比0.5%上昇して6.6%になるとの見通しを発表しました。加えて、2014年も6.7%の高い成長率になる、と予想しています。

注目の中国は、1999年以来の低水準だった2012年に比べて、2013年のGDP成長率は0.4%上昇(8.2%)すると予測されています。内需が引き続き堅調で、欧州危機で落ち込んだ輸出も利バランスして回復する、と見ているようです。

その他の国に目をやると、労働力人口が増加している「人口ボーナス期」を謳歌しているインドネシアやフィリピンは相変わらず安定成長(インドネシア:2013年6.4%、2014年6.6%)(フィリピン:2013年6.0%、2014年5.9%)が予測され、中国の高成長をさらに後押しする地域の牽引役として重要な役割を務め続けると考えられています。

ADBが毎期発表しているアジア地域の経済成長予測は、精緻な経済指標調査と専門家によるリスク分析を総合して計算された値として非常に客観性の高いものであり、世界中のマクロ経済専門家が活用しています。

しかしながら、予測はあくまで予測なので、期の途中で修正も当然あり得ますし、結果として期末には「予測が大きく外れた」ということもあり得ます。

そういう意味で、ADBのような格の高い国際開発金融機関が世界に発信する予測をどう解釈するのか、そして世の中に数多在る関連する事象とどのように結びつけて総合的な理解を確立するのか、という作業は近年益々重要性を増してきていると言えます。

例えば、アジア経済研究者が特に近年、常に気にしているのは「中国を含む新興国経済は、今後どう推移していくのか」という点です。上述したように、アジア経済は今や世界経済全体の行く末さえ左右するような大きな影響力を持っており、この行く末を様々なシナリオのもとに想定していくことが、あらゆる計画を立案していく上で年々重要になってきています。したがって、ADBによるGDP推移予測だけを見て「アジアはおしなべて安泰」と単眼的に理解することは、あらゆる意味で非常にリスキーです。
では、他の事象をどのように複合的に捉えれば、アジアの今後をより立体的に見ることが出来るのでしょうか。

例えば、毎年初に話題になる、イアン・ブレマー率いる米ユーラシア・グループによる「世界10大リスク予測」では、2013年の最大のリスクを「新興市場の成長減速と、拡大した中間層による政府への圧力の高まり」としています。

「新興市場」を正確に定義するのは困難ですが、中国を含むBRICsの他にもアジアの成長市場、すなわちシンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピンなども、広義的には「新興市場」に含まれると考えるべきでしょう。

確かに、「新興市場の成長減速」という点で言えば、特にBRICsの中のブラジル、インド、ロシアは2010年代に入ってからエンジンの火力が落ちたかのように、減速モード著しいです。一方アジアでは、主に欧州債務危機の影響による中国やシンガポールの減速は2012年からまだ余韻を引きずっていると言えますが、その他の新興市場であるインドネシアやマレーシア、フィリピン、タイなどは拡大する中間層によって支え続けられている堅調な内需が引き続き成長エンジンを吹かし続けています。そう考えると、ユーラシア・グループは単にBRICsを中心に「新興市場の成長減速」を捉えているのではないか、もしくは中国の減速をより急進的に仮定していてそれがアジアの周辺国にも急速に影響を及ぼすことを仮定しているのではないか、と考えることが出来るでしょう。

ただし、ADBの成長予測に話を戻せば、中国経済は2012年に経験した急減速から若干盛り返す、というシナリオをADBが想定しているので、ADBとユーラシア・グループの考え方には仮説の立て方がそもそも異なるのではなかろうか、という論点に行き着くことでしょう。

行き着く先は、「中国がどうなるのか」という大きな点に絞られるともいえますが、この論題については「アベノミクス論争」と似て非なるように先行き楽観論と悲観論が乱立している昨今です。

楽観論の代表格の一人であり、モルガン・スタンレーの著名エコノミストだったスティーブン・ローチ氏(現エール大学シニア・フェロー)は、「中国では近く大幅な構造転換が起こり、中所得国の罠を避けられるとの確信を深めている」と明言しています。ADBの中国担当チームが、ローチのいう「3点の根拠」にどこまで賛同しているかは不明ですが、短期的な経済成長に関する楽観のレベルは酷似しています。

一方、悲観論のひとつとして、例えば米連邦準備理事会(FRB)は中国経済に対する中期予測の最悪シナリオとして、2030年にはGDP成長率が0.9%にまで低下する、という驚くべき算出もしています。主な根拠は、いわゆる「老いる中国」、すなわち急速な労働力減少による国際競争力の低下です。「一人っ子政策」の影響による少子高齢化問題が解消されなければ、近未来の中国にとっては決して有り得ない話ではないところが、怖ろしさを感じさせます。

そう考えると、中国以外の国に関しては、中国との貿易依存度が高ければ高いほど、ハイケース・ローケースの差が大きくなってくることから、カントリーリスクが高くなるという「チャイナ・リスク銘柄」となっていってしまいます。

したがって、今後のアジアの経済成長を考える場合に、最も確度が高いシナリオはどれかと問われた際には、この「チャイナ・リスク」の影響を受けにくい国については最も予想を立てやすくなる、ということになります。逆説的には、「チャイナ・リスク」が高い国に対する経済成長予測は、それだけ予測の確度も低く考えるべきである、ということなのでしょう。

たとえば、インドネシア。

外務省資料によれば、2011年の輸出先相手国トップ3は日本(16.6%)、中国(11.3%)、シンガポール(9.1%)で、輸入先相手国は中国(14.8%)、シンガポール(14.6%)、日本(11.0%)となっています。

同様に、フィリピン。

2011年の輸出先相手国トップ5は日本(18.4%)、米国(14.7%)、中国(12.9%)、シンガポール(8.9%)、香港(7.7%)で、輸入先相手国は日本(10.8%)、米国(10.8%)、中国(10.1%)、シンガポール(8.1%)、韓国(7.3%)となっています。

この統計事実だけを見つめれば、インドネシア、フィリピン共に、「チャイナ・リスク」は低くなく存在している、と理解すべきでしょう。

しかしながら、インドネシアの場合は中国への輸入品目は原材料、鉱物性燃料(石炭)、植物油(パーム油)がインドネシアからの輸出の約8割を占めています。一方、輸入は約9割が工業製品です。インドネシアの場合、国としての高い競争力の源泉でもある豊富な自然資源の輸出先は、仮に中国経済が減速したとしても世界のほかの成長国に対して代替輸出先がいくらでもあることが、「チャイナ・リスク」を押し下げます。輸入にしても、現在は中国から安価な工業製品を輸入して国内の活発な内需がこれを購入消費していますが、中国で少子高齢化が進めば人件費が上昇するので、そもそも中国製品は割高になってくることより、他の国からの代替輸入、すなわちベトナムや他アジアの国で「ポスト・チャイナ」と言われる国からの将来的な輸入は十分考えられるわけです。そうだとすれば、輸入に関しても「チャイナ・リスク」は中期的には深刻ではないかもしれない、と考えられます。

したがって、インドネシアの経済成長はADBの予測さながら、仮に中期的に「チャイナ・リスク」がネガティブ側に発生しようとも、内容によってはバランシング可能な範囲に収まることも大いに考えられる、というのが楽観論の根拠のひとつになり得るでしょう。

これに加え、インドネシアは少子高齢化社会の到達がまだまだ先の話であること(高齢化は進めども少子化は進んでいない)、対GDP比対外債務が1997年には63.1%だったものが2011年には26.7%まで着実に下落していること、外貨準備高が1100億ドル超にも蓄えられていること、等々の良質なマクロ経済要因が成立している「黄金期」を迎えています。このような良質なマクロ経済状態は、高度成長を謳歌した1980-1990年代のスハルト政権時代にもなかったほどです。

これらが、当研究所がインドネシアの経済成長について、暫くは確信を持っている根拠です。

1990年代に「アジアの世紀」が謳われて、1997-1998年のアジア通貨危機・経済危機によって「アジアの経済成長は幻だった」とさげすまれ、2000年代中盤になって再び「アジアの世紀、再び」と言われるようになりました。

その中で、東南アジア域内最大人口を抱えるインドネシアの経済成長予測は、今後のアジア経済のみならず、今後の世界経済全体へも大きな影響を与え続けるであろうことは、希望的観測から確信へと変わって来ています。一方、インドネシアが抱えるリスクは実は「チャイナ・リスク」ではなく、自らが含有する内政リスクであることも、忘れてはならない重要な点です。その意味では、2014年の次期大統領選挙の行方は、本当に要注意です。

( tknaito 研究主幹 ) Copyright © tknaito 1999-2013

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中国の経済が、減速してきてましたね、この構図から読み取れるのは、中国さんよ、貴方がもっと平和的態度を取って、共産党一党独裁国家から方向転換しないと、東南アジアを含む世界の有数国家は、今の美味しいパイを他に回してしまいますよ!と言わんばかりの構図ですね・・・あの習さんの鷹揚な態度、わしとこが今世界では、一番や〜と言う態度、疲れているのか演技しているのか、分からない態度・・・あれでは、あまり国内の事や世界の潮流が読めて居るようでは、無いですね・・・むしろ私の方が、世界の流れを知っているかも知れません(チョットオーバーですが)と!言うことは、2030年GDP0.9%と言うのもあながちあり得る想定ですね・・・いや尖閣や、南沙や云々言っている間に経済は、崩壊に向かいかけているようですね。
すでに先日も機中のお隣さんの話、染色関係の方でしたが、「おたく中国の従業員今何人ですか?」「昨年まで600名居ましたが、今は20名ほどです」「ゆくゆくは、事務所だけ残してアジアの他に行こうと思ってます」なんて会話をしていました・・・
小企業でもこんな具合に撤退していってる見たいです。

2013/4/15(月) 午後 4:48 きくちゃん

まいどきくちゃんさん、コメント有難うございました!
中国のマクロ経済に対する見方は、本当に二分していますね。直近の数字は確かに減速したことを明示していますが、それでも内容的には悪い数字ではないという意見も市場関係者には少なくなかったり、基本的には7%台を保っていれば安定成長という見方もあったりします。
一方、政治的には共産党内でも欧米自由主義肯定の右派と、これを否定する左派に完全に分かれて対立する軸があるようで、これらをどうまとめながら経済成長を確保できるのか、習国家主席は前任者よりも難しいポジションにいると思われます。またお立ち寄りください。

2013/4/21(日) 午後 10:27 [ tknaito ]

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