華人経済研究所

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日本と中国・韓国の関係に緊張感が続く中、中国の習近平国家主席が6月7-8日の2日間訪米し、オバマ米国大統領と2日間あわせて計6時間以上にわたる「ざっくばらんな」トップ協議を行いました。

新聞報道等では、米国が中国に対してサイバーテロ問題などで牽制しつつも、1兆USDを越す世界最大の米国債保有国として、ランチを挟んだだけであった日韓各国首脳との協議とは別格扱いで、中国の新しい国家主席を最高位のもてなしで歓待していることが報じられています。

しかしおそらく、現在の米中両国の立場、特にお互いの内政に対するスタンスを考えれば、おそらく予想を超える画期的な合意などがアウトプットとして生まれることはないと事前から予想され、そのとおりの結果となりました。

米国は、金融危機以降の景気回復にまだクエスチョンマークがついており、雇用統計も思ったより伸びておらず、棚上げになっている「財政の崖」もまだくすぶっています。ここ数週間の東京証券株式市場の下落も、米国の景気先行き見通しが悪化していることが主因であり、市場はFRBが金融緩和の出口をどう設定していくのかという最大の懸案に神経を尖らせています。

そのような世界を道連れにしてしまいかねない金融政策の先行きに胃を痛め続ける状況の中で、オバマ大統領は出来る限り不要な「雑音」を聞きたくないと考えているはずであり、日本の南端にある小さな島に関して「雑音」を出していたり、フィリピンやベトナムとの間でも海洋で摩擦を起こし続けたりと、自身の政権重要事項であるアジア太平洋地域への経済面における深化、すなわち環太平洋経済連携協定(TPP)を核とした米国のアジア覇権戦略に対して「雑音」を出し続ける中国には、はっきり言って「邪魔しないでほしい」と思っているに違いありません。

一方、習国家主席の最大の悩みは、自国の経済成長を中期的に安定化させ続けるという、胡錦濤前国家主席の時には「考えられなかった」課題であり、これに加えて内モンゴル自治区に代表されるように、年々高まる国内の少数民族からの「声」をどうコントロールするか、一党体制化で抑圧し続けてきた情報を本当に今後もコントロールし続けられるのか、等々の内政当地問題があります。尖閣問題などは最たるもので、「レーダー照射事件」に代表されるように、軍部の統制の綻びさえ最近は目立ってきています。

そういう意味では、オバマ大統領は習国家主席に対して「もっとしっかり自国をコントロールして、周辺国とも摩擦を起こすことなく、消費主導型の国家経済運営を成功させてほしい」と腹の中で唱え続けているでしょう。

一方の習国家主席はオバマ大統領に対して「中国の内政には口を出さないでほしい。米国に中国の難しさがわかる訳がない。TPPはあからさま過ぎる。中国を蹴落とそうとしているようにしか見えない。米国の金融政策は世界に影響を与えすぎる。アジアやアフリカの今後は中国に任せてほしい。米国債を中国が売り始めたら、大変なことになるぞ」という本音を持ち続けていると考えられます。

カリフォルニア州パームスプリングスの特別な別荘で、まさか上記のような批難の応酬がボクシングのようになされているとは考え難いですが、少なくとも上記の考えを根底にお互い持った上で、外交的な発言に終始していたことは容易に想像できます。

そんな中、習国家主席が訪米に旅立つ直前に、非常に興味深い発言が中国政府からなされています。

5月30日に中国商務省報道官が、TPP交渉への参加について「参加の利点とデメリット、可能性を分析する」と発言したのです。これにはさすがに、びっくりしました。翌31日にも、中国外務省の洪磊副報道局長も記者会見で「TPP交渉に関心を持ち続けている」とコメントしました。

メディアの分析によれば、習国家主席の訪米を目前に控えた中で、事前に融和ムードを演出したかったのではないか、との見方が過半でした。要は、前述したように本音では「TPPは中国外しだ」と憤慨している共産党幹部達も、せっかくの米中トップ会談の場でこれをあからさまに表現したり、米国側にそういう先入観で協議に入られると、今後日本も交渉に参加する予定のTPP交渉でますます中国に対する不利なルール設定が加速することを若干危惧して、中国もTPPには協力するぞといった外向きのメッセージを出したと考えられます。

しかし、本質的に何が興味深いかと言えば、やはりそこには「日中経済再逆転の可能性と中国包囲網」、そして「大中華経済圏構想への幻想」が共産党幹部たちの根底にあるのではないか、と思われる点です。
前者に関しては、極めて楽観的かつ確度の少ないシナリオではありますが、まことしやかに一部の市場関係者などでオプションとして語られ始めているものです。

すなわち、アベノミクスで日本経済が奇跡の復活を遂げて少子化問題も好転するという楽観シナリオを想定する一方、中国は反対に輸出主導から消費主導への国内経済構造の転換に失敗して安定成長路線が崩壊し、その結果として日中の経済規模がGDPベースで再逆転する、というシナリオです。

これに加えて、昨今の中国による周辺海域での摩擦が、事実として浮き上がってきているASEAN各国から中国に対する「信頼への疑い」を加速させ、「成長の止まった中国に依存する必要はもうない」という逆風が吹いた場合に、いままでは中国がASEANを包囲していたのをASEANが逆に日本と協働して中国をじわじわと包囲していく、というアジア太平洋の経済秩序劇変可能性シナリオです。繰り返しますが、極めて楽観的かつ確度は今のところ低いシナリオです。しかし、根も葉もない話ではありません。

仮に中国共産党幹部が、このシナリオを1%でも想定しているのであれば、TPPに今から色気を出していくことは、極めて合理的な選択肢の一つだと考えられます。なぜなら、TPPとは別に中国やインドも参加する広域自由貿易協定(RCEP)で中国がリードを取れば良いと唱える人もいますが、以前に本欄でもお伝えしているとおり時間軸から考えればTPPで決まるルールがRCEPに与える影響は極めて大きく、要すればTPPで過半の勝負はついてしまうのでRCEP頼みのスタンスは全く合理的ではないのです。

後者については、もっと現実的かつ確度の高いシナリオだと考えていただいて結構だと思いますが、シンガポールのリー・クワンユー公共政策大学院長を務めているキショール・マブバニ氏が語るように、中国の新指導者である習国家主席や李克強首相が前指導部よりも大胆な改革を実行することが出来れば、中国が今後も8%台の経済成長を続けられるという見方は多くあります。彼は日本に対して「中国の実力を見誤ってはいけない」と警告さえしています。

その考え方に基づけば、領土・領海問題はさておき、中国が順調に今後も安定成長を達成しながら経済構造の転換に成功し、ASEAN各国とwin-winの関係を完成させることが出来た場合、そこで最も利を得るのは1500年超も前からアジア各国に渡り移りしっかりと土着してきたアジアに広がる華人資本家たちです。この華人資本家達がアメーバ的に形成してきた「華人経済圏」が、中国の巨大な国内市場と完全にシンクロナイズしたとき、「大中華経済圏」は世界最強の経済圏として君臨することになります。おそらく、世界のGDPの60%以上がこの経済圏から生まれることになるでしょう。

その布石として、TPPに対する関与は極めて合理的になされるものであり、仮に中国が直接的にTPPに参加しなかったとしても、交渉に関与することがあれば、「大中華経済圏」に含まれるTPP参加国の中で鍵を握るシンガポールやマレーシア、そしてベトナムなどに対して影響力を行使することができるのは、中国にとって極めて重要な手段です。

ベトナムやマレーシアが「大中華経済圏」の範疇に入るのか、という疑問をもたれる方もいらっしゃるかもしれませんが、今年5月に行われたマレーシアの下院選挙で浮き彫りになったのは同国における華人の社会的地位の向上であり、ベトナムでもASEANの華人系財閥が中国国営企業と共同で大規模な投資をドイモイ以来淡々と進めており、華人資本の経済浸透度は年々高くなっています。

このように、中国政府が習国家主席の訪米前に公表した「TPP交渉への関心」は、外交的な先制ジャブとしての口先介入でありつつも、その背景には今後のシナリオに備えた戦略的保険としての考えが見え隠れしています。

( tknaito 研究主幹 ) Copyright © tknaito 1999-2013

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あくまで共産党の一党独裁は、これが中国の一番ネックで国的に破綻が迫ってるいるように思えて仕方有りません。華僑の経済は、確かに凄いものが有るのかも知れませんが、これも世界経済を動かすユダヤには、及ばない気がするんですが・・・。

2013/6/11(火) 午後 1:35 きくちゃん

まいどきくちゃんさん、いつもコメント有難うございます。
共産党の一党独裁にいつ転換期が来るか、本当に大きなテーマですね。北京当局も、それだけは起こしてはならない最悪の事態と想定して、日々締め付け(適当な言葉ではないですが)に勤しまれているのだと理解します。しかし、そうでもしないと13億人の巨大国家は成立でき得ない、というジレンマにさいなまれているのでしょう。最終的には、ソ連崩壊と同じになるシナリオもあるのでしょうが、崩壊後のロシアを間近で見ているだけに、同じシナリオだけは踏襲したくない、ということなのでしょう。
華人経済とユダヤ経済、確かに大きく異なりますね。似て非なるもの、という感じでしょうか。またお立ち寄りください。

2013/6/11(火) 午後 8:33 [ tknaito ]


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