華人経済研究所

2014年も、毎週末更新です!

全体表示

[ リスト ]

インドネシア経済の先行きに関して、市場の見方が真っ二つに分かれ始めています。インドネシア経済は悪化していくのか、それとも復調するのか。

今年に入って米国景気は量的緩和の縮小が視野に入るほどに回復したと評価されており、欧州ユーロ圏景気も底打ち観測が広がっています。

一方、日本でも報じられているとおり中国景気は今年に入って失速感が否めなく、「影の銀行」問題も未解決な中で、中国の資源需要に多くを依存するオーストラリアやモンゴルなど一部の資源国やインドネシアを含む新興経済国の景気は、昨年までの好景気から一転して、月を追う毎に難しい外部環境になってきています。

FRBのバーナンキ議長が米国内の経済指標改善を受けて、5月22日に量的緩和縮小を示唆した直後から、「緩和マネー」が新興国から引き揚げて米国に向かうという方向性が強まり、インドネシア通貨(ルピア)やインド通貨(ルピー)を筆頭に、新興国の中でも経済的基礎条件(ファンダメンタルズ)が脆弱化してきていると見られている国における通貨に強い売り圧力がかかっています。

インドネシアルピアの対米ドルレートは、年初(9,685Rp./USD 中値)と比較すると11%強下落しています(10,848Rp./USD、8月23日終値)。これは、2009年4月以来の安値圏です。
ちなみにインドルピーはもっとシビアで、史上最安値の更新が続いて一時期「緊急事態」とも噂されました。他にも、対米ドルレートではこれまで比較的安定していたメキシコペソや韓国ウォン、タイ・バーツなどにも影響が出ています。

株式市場でも、インドネシアの総合株価指数は今年5月20日につけた史上最高値(5,214)から約3か月で25%下落しています(8月23日終値:4,169)。今週だけで8.7%も下げました。これは大変な下落です。
国債利回り(10年物)も2年5か月ぶりの高水準(債券価格は下落)に突入して、為替・株式・債券の「トリプル安」状況に陥ってしまっています。

新興国通貨への売り圧力を高める条件のひとつには、米国債の利回りがあります。

米国債(10年物)の利回りは5月初めに1.6%だったのが、8月22日時点では2.8%まで一本調子で上昇(債券価格は下落)しています。これは、投資家が債券を売ってリスク商品である株式に資金を振り替えていることを意味しています。

すなわち、5月までは米国経済の先行きに不安を抱えて国債の低金利で運用しつつ、インドネシアをはじめとする新興国の株式や為替を買ってポートフォリオを組んでいた先進国の投資家たちが、5月以降の米国経済指標の改善に「これは本物だ」と感じ始めて債券から株式に資金を移し始め、なおかつバーナンキの発言も後押しし、そしてこれらに加えて中国の景気減速が明確になった影響でインドネシアなど新興国の経済成長を不安視したことから、今まで振り向けていた資金を引き揚げ始めました。
要すれば、「米国経済の復調」と「中国経済の失速」によって、大きなマネーの流れが変わったことは間違いのない事実だ、ということです。

これらの外的要因によって、資本移動の大きな流れが変わり、インドネシアをはじめとする新興国は「割を食って」いるのです。もちろん、新興国それぞれの国内経済構造問題は様々問題も浮き上がってきていて、これらに嫌気を刺した投資家が離れて行っているという自己責任的要因もあります。
しかし、夏の市場というのは、先進国富裕層や機関投資家が長期の休暇(ヴァケーション)に入ることによって参加者が極端に減り、市場自体の流動性が著しく低下するという「不可抗力的季節要因」も加味して理解しなければなりません。9月になれば、流動性は少し改善する、とも言われています。

ただしここで重要なのは、それではインドネシアの「自己責任」、すなわち現在の経済的基礎条件(ファンダメンタルズ)と政府の対策がどこまで深刻なレベルで悪化しているのか、それとも悪化などしていないのか、という点をきちんと見ていくことです。

そんな中、インドネシア政府は昨日(8月23日)、海外からの投資を促進し、輸入を抑制し、通貨ルピアを支援する「緊急政策パッケージ」を公表しました。

ハッタ調整相(経済担当)は、「政策パッケージ」によって、今年第2四半期に98億ドルもの赤字を計上して過去最高水準近くまで拡大した経常収支の改善を目指すと表明しました。同相は、高級車や自家用機、ヨットなどの贅沢品の輸入関税を引き上げ、同時に石油輸入の抑制を狙った措置を実施し、鉱物資源や金属鉱石の輸出割当制度(クォータ制)を撤廃すると述べました。加えて、労働集約型産業に対しては税制優遇策を実施する、とも述べています。

ハッタ調整相は、「政府は鉱物資源と金属鉱石の輸出割当量を撤廃したが、輸出関税は20%で維持する」と述べました。同関税は、全ての未加工鉱物資源の輸出が禁止される予定の2014年まで維持されるとのことです。

これらに加えて、インドネシア中央銀行が通貨ルピアの下落対策として、銀行や輸出業者がドル流動性を十分に確保できるように規制緩和を行う、と発表しました。

この「緊急政策パッケージ」の発表に対して、市場はやや冷ややかな反応をしつつも、投資家の多くは「中期的には投資の促進や輸入の抑制に、一定の効果があり得る」とコメントしています。
しかし、インフレ懸念はまだ残っています。

消費者物価指数の前年比率が7月の8.61%だったのに加え、8月速報値は8.9%超に上昇していると発表され、この数値も市場には嫌がられた格好となりました。水準的には、2009年1月以来の高水準となる可能性があります。

加えて、GDP成長率見通しの下方修正もありました。

インドネシア政府は今年のGDP成長率見通しを6.3%から5.9〜6.0%に下方修正しました。これも小さくない下げです。

総じていえば、インドネシアのマクロ経済は、数年ぶりに「緊急事態」に陥っています。最も心配なのは、経常収支の赤字が続いていることです。

1997〜1998年に東南アジアを襲ったアジア通貨・経済危機でも、大きな被害を被ったのはタイ、インドネシア、マレーシア、韓国など、経常収支が赤字で通貨が割高だった国々です。この状況で、ヘッジファンドが各国通過を空売りして大暴落させ、資本収支(直接投資、証券(ポートフォリオ)投資、銀行投資などその他)が急激に悪化した「資本収支危機」になり、最終的に国家財政が破たんしてIMFの管理下(マレーシア除く)に甘んじた経緯があります。

当然の如く、インドネシアをはじめとするアジア通貨・経済危機経験国は、もう同じ轍は踏まないとばかりに、相当の準備と警戒を行っていることはいわずもがなです。

したがって、今回の「緊急政策パッケージ」で経常収支を改善することに重きを置いていることは、当然のことではありながらも、過去の教訓を生かしており評価に値すると思います。

経常収支は「貿易収支」「サービス収支」「所得収支」「経常移転収支」の4つから構成されています。これらはどれも短期的に改善を見るのはもちろん困難ですが、今回のパッケージで中期的に輸入を抑制して輸出を促す姿勢を明確に出したことは、インドネシア政府が「だらだらと貿易収支赤字を続けることで、結果的に経常収支赤字が累積して97年の二の舞になるようなことはしない」と強く意思表示したと受け止められ、評価できる政策です。

ただし、若干不満を言えば、今回の「政策パッケージ」における輸出促進策が「鉱物資源や金属鉱石」などに限定されていることで、相変わらず資源頼みの印象が残ってしまったことは、否めません。

もっと根本的に貿易赤字改善(=経常収支改善)を狙っていく場合、資源輸出のほかに製造加工品の輸出に対する優遇措置もとっていかないと、短期的にも中長期的にも海外からの投資は促されない危惧が残ります。

9月のFRB常任理事会において、米国の量的緩和が縮小されるのかどうか様子見の状況ですが、仮に縮小が先延ばしになったとしても、インドネシアの経常収支問題は短期的にはなかなか改善されないと思われるところ、「第二の矢」として製造業への優遇措置がなされることを切に願うところです。それが出来れば、インドネシアが他周辺アジア諸国との比較優位性を保つことはまだまだ可能であることからも、ファンダメンタルズの悪化は食い止められる、と考えています。

( tknaito 研究主幹 ) Copyright © tknaito 1999-2013

閉じる コメント(2)

顔アイコン

経済って本当に複雑で難しいものですね。私的に考えるのですが、国と国の経済戦争を繰り広げているわけですが、ここにヘッジファンドなる、凄腕の金の亡者が高速取引とか、売り浴びせて暴落を狙うとか、経済の世界でこの存在をもっとルール化出来ないのでしょうか?
株でも何でもかんでも彼らが操作する限り、一国インドネシアなんかの経済を揺さぶる大変な事態を引き起こしますね。
ルールを作ると又その裏を行くいたちごっこかも知れませんが、厳しいルールを作って欲しいものです。

2013/8/25(日) 午前 9:03 きくちゃん

まいどきくちゃんさん、コメント有難うございました。
ご指摘の通り、規制と市場プレーヤーの「キツネと狸の化かし合い」は終わりのない戦争のようですね。チェンマイイニシアチブや、ボルカールールなどで政府は少しでも規制を強めようとしますが、所詮市場は完全制圧され得ないものであります。しかし、いくら大手ヘッジファンドでも、10兆円を超える規模のGDPを持つ国を陥落させるためには、相当の戦略と資金量が必要であるので、ヘッジファンドが万能であるとも思えません。このあたりが、複雑さを増長させている所以でもあります。またお立ち寄りください。

2013/8/25(日) 午後 9:23 [ tknaito ]


よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!
コンタクトレンズで遠近両用?
「2WEEKメニコンプレミオ遠近両用」
無料モニター募集中!
いまならもらえる!ウィスパーうすさら
薄いしモレを防ぐ尿ケアパッド
話題の新製品を10,000名様にプレゼント
いまならもらえる!ウィスパーWガード
薄いしモレを防ぐパンティライナー
話題の新製品を10,000名様にプレゼント

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事