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2014年は、世界はどのような年として位置づけられるべきなのでしょうか?
任期満了に伴う大統領選挙がアフガニスタン(4月)、スロバキア(同)、インドネシア(7月)などで予定され、総選挙がバングラデシュ(1月:終了済み)、インドネシア(4月)、ベルギー(5月)、フランス(9月)、スウェーデン(同)などで予定されています。
これに加えて、米国では中間選挙が11月に予定され、そして国内事情の混乱に伴う解散総選挙がタイ(2月)などで実施されました。
このように、2014年は現代世界において重要な役割を担う国々で大きな選挙が開催されるひとつの節目の年であり、国際政治面では不安定要因を抱える年とも言えます。
さらに、スポーツでは世界的イベントとしてソチ五輪(2月)が開催され、サッカー・ワールドカップ(6月)も間近に迫り、これらの開催国はイベントの成功に国家の威信をかけて国威発揚を促します。
一方、国際経済面ではどのような節目があるでしょうか。
環太平洋パートナーシップ(TPP)協定は、本来であれば昨年末までに関税引き下げの大筋に参加国が合意することを目指していましたが、日米間の厳しい交渉は引き続き行われており、2014年は結論を出さなければならない年となっています。
これに加えて、世界の成長エンジンとしての期待度が世界中から高まり続けている東南アジアでは、来年(2015年)にASEAN経済共同体(AEC)の開始までのカウントダウン状態に入りつつあり、今年はASEAN各国がその調整と合同ルールにかかる最終合意・妥協をこなさねばならず、一部でピリピリとした局面が続くことも予想されています。
すなわち、国際政治・経済の両面でグローバル化が叫ばれて久しいですが、今年はこのグローバル化の流れに対して必ずしも簡単ではない各国内の調整局面が多く発生せざるを得ない、大きな節目の年ということです。
特に、TPPやAECによって大きな転換点を迎えるアジア各国にとっては、通常の年に増して自国の政治や治安の安定を何よりも優先度を高くして取り組まないことには、TPPやAECやらのスタートラインにすら辿り着くことが出来なくなる、そんな焦燥感を抱えざるを得ない厳しい年と言えます。
たとえば、ASEANの中でも1997年のアジア通貨危機でドン底に落とされてから、見事に復活した優等生国のタイ。2011年11月の大洪水危機による成長減速もなんとか乗り越え2012年にはV字回復し、さぁTPPやAECでもASEANの中で好位置を維持したいと意気込み、さらなる成長加速を目指していた段階で、色気が出てタクシン元首相の恩赦帰国などを数のパワーで乗り切ろうとしたところ、ご承知済みの通り大きな混乱を招いてしまいました。
これは明らかに、インラック首相が世界の潮流の中においてタイが取るべきポジショニングを見間違えていたことが原因です。身内(タクシン)の名誉挽回と彼の助言によるさらなる短期的な経済成長戦略を優先したばかりに、逆に経済成長も世界からの信頼も一気に失ってしまいました。戦略ミスです。
タイの失政により、漁夫の利を得た国があるとすれば、それはインドネシアです。
本欄でも解説してきておりますとおり、インドネシアのマクロ経済成長は2013年5月22日のバーナンキFRB議長(当時)による金融緩和終結宣言発言までは、世界でも中国に次ぐほどの高い経済成長を2004年以来安定的に維持してきていました。
しかしながら、バーナンキ発言以降の市場の動揺、すなわち世界的な金融緩和によってインドネシアをはじめとした新興経済成長国へ大量流入していた市場からのダブつき資金が流出超過に転じ、インドネシアにとって2013年6月以降は本当に厳しいマクロ経済状況が続きました。
ここで、タイ・インラック首相の失政により、2013年11月からバンコクが反政府派勢力による大規模デモで機能がマヒし始め、日系企業を含む多くの外資系企業が一時的に生産機能や国際会議・見本市・トレーニングなどの機会を、政治的に安定して気候も類似し、日本からの距離的にも大きな差がないインドネシア首都のジャカルタに移し始めました。
この一時的機能代替は、ジャカルタ(=インドネシア)にとっては、「棚から牡丹餅」的な特需を生む好機になりました。
今年2月5日にインドネシア統計局が発表した2013年の国内総生産(GDP)伸び率は、5.78%と4年ぶりの低成長となったとのころですが、昨年10月に国際通貨基金(IMF)が予想値を出した際には5.3%だったことを考えれば、11月以降の「バンコクからの逃避特需」がインドネシアGDPを押し上げた要因のひとつであることは明らかです。
そのインドネシアでは、前述の通り4月に総選挙、そして7月に大統領選挙を迎えます。
5年に一度の大きな節目の年であり、世界第4位の人口大国を今後、最長10年間(5年x2期)引っ張っていくリーダーが誰になるのか、今や世界中が注目すべき重要選挙です。
その重要選挙において、大統領候補に、現時点で最も支持率の高いジャカルタ特別州知事のジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)が、元大統領であるメガワティ率いる闘争民主党(PDIP)から正式な公認候補として出馬することが、最近明らかになりました。
ジョコウィの出馬については、日本国内では昨日(3月15日)に日本経済新聞などが報道しましたが、インドネシア国内では3月5日付日本語地元紙「じゃかるた新聞」1面に立命館大学の本名純教授が既にその出馬可能性はPDIP内で決定された旨、記事を寄せられていました。
大統領候補として現時点で最も支持率が高いジョコウィが、もしも本当に大統領になった場合、インドネシア国内に対して、そして国際政治・経済面に対してはどのような影響が起こり得るのか。
インドネシア国内では、もちろん現時点でも支持率が高いことを考えれば、現大統領のユドヨノが進めてきたいわゆる「改革路線」を、さらに国民に近い目線で進めていくことが基本的に可能になると考えられます。しかしながら、議会で彼の支持派がどれほどの議席を4月の総選挙で確保できるかも重要であり、単純に「ジョコウィ大統領=何でもできる」と考えるのは早計でしょう。
一方、国際社会から観れば、特に日本から見た場合、首都ジャカルタの現職知事であるジョコウィが大統領に格上げされることは、実は大きなメリットにつながる可能性を秘めています。
その理由は、日本の官民連携支援で進められている首都ジャカルタの地下鉄やモノレールに代表される大都市圏インフラ事業がさらにやりやすくなること、またジャカルタでの成功モデル(まだ成否はこれからですが)を他都市にも進めていくことなどの展開提案を、国のトップである大統領に直言できる機会を持てる可能性が出てくるため、投資促進につながっていきます。
日本以外の国際社会にとっても、クリーンな政治家と言われるジョコウィは、与し易い重要新興大国のパートナーとして、多くから歓迎されることが想定されます。
ポイントは、新大統領の下で、中国とインドネシアの関係がどのように展開されていくかです。
現職大統領のユドヨノは、中国との距離を微妙に調整し、投資の誘致にも成功してきました。その陰で、自身の出身政党である民主党(PDI)幹部が中国案件がらみの汚職で摘発されるなど、チャイナ・マネーとユドヨノの関係はオモテウラの両面で不透明でもありました。
ジョコウィの場合、出身政党(PDIP)が華人ビジネス界と遠くない結びつきを保っているだけに、間接的にはチャイナ・マネーとの付き合い方も大きく変わらないと考えられますが、前述の通り国会でジョコウィを支持する議員がどのような構成になってくるのかで、「ジョコウィ大統領」の対中政策も微妙な舵取りを求められることが予想されます。
2014年は、世界にとって政治経済面で大きな節目です。この中で、インドネシアのトップが誰になるのか、明るいニュースが待ち遠しいところです。
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