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先週は、世界がリーダー不在の「Gゼロ」状態で混沌としていることを、改めて認識した機会でした。
ワシントンで11日まで開催されていたG20財相・中銀総裁合同会議では、驚くべきことに共同声明で米国議会が国際通貨基金(IMF)改革案を批准しないでいることに対して「深く失望」というこれ以上ないレベルの強いコメントが共同宣言に盛り込まれて採択されました。G20で米議会が名指しで批判されるのは、異例の出来事です。
2008年のリーマンショックを受けて、4年も前の2010年に、G20で世界経済の安定化には旧来の欧米主導型プレトンウッズ体制によるIMF運営ではもはや現実的ではないとして、BRICS5か国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に代表される新興国によるIMFへの出資比率を上げることを容認しました。同時に、出資比率に見合う正当な権利として発言権を認めることをG20では基本的に合意して、過去4年間に参加各国で批准手続きが進んでいました。
しかしながら、IMFの「筆頭株主」である米国では、議会がBRICSを始めとする新興国が急激に発言権を大きくすることを許容すると米国の利益が損なわれると恐れ、今まで批准を避けてきました。
米国の批准遅延は、大国のエゴだとずっと非難されてきましたが、ここに来て米国自体のマクロ経済が安定してきたことに基づき、FRBがリーマンショック後から継続してきた量的緩和(QE3)縮小を今秋にも終了し、来年前半には利上げに踏み切るのではないかというニュアンスの発言をイエレン議長が3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で示唆したことからも、ブラジルのマンテガ財相やインドのラジャン中銀総裁らが「米国は自国の金融政策が世界経済に与えるネガティブな影響を全く無視しており、無責任きわまりない」と強い批判を展開しています。
今回G20における議論でも、前IMF調査局長でシカゴ大学教授でもあったラジャン総裁を筆頭に、国際金融界の論客面々が強く発言を踏み込んだことが、異例の共同声明採択につながったようです。
時を同じくして、ワシントンのほぼ裏側にあたる中国海南省の博鰲(ボーアオ)にて4月8〜11日まで開催されていた「博鰲アジアフォーラム」にはアジアの政財界要人が3000人以上集まり、中国の李克強首相が基調講演を行いました。
博鰲では、3月の中国貿易統計も発表され、市場予想以上に輸出入が落ち込んでいることが世界中の市場にマイナスインパクトを与えました。日経平均株価も例にもれず、4月11日午前の場で300円以上下落し、大きく動揺しました。
「博鰲アジアフォーラム」は、中国の呼びかけで「世界経済フォーラム(WEF)のアジア版」を目指して2001年に始まったものであり、日本も福田元首相が全面的に協力するなどしていますが、WEFやG20と比較するにはまだまだレベルが段違いに異なります。
それでも、中国のトップが毎年メッセージを発する貴重な機会として市場関係者は注目しており、今年も前述の貿易統計落込みに加えて、李首相がTPPについて「中国はオープンな態度だ。公平で開放的な貿易環境につながるなら、TPPが成果を上げることは望ましい」と自由貿易に対する応援ともとられる発言をしたことが注目を集めました。
今月初め、習近平国家主席がドイツ訪問時の講演で「中国は他国の制度はまねしない」と述べて、経済改革は進めるものの、欧米型民主主義を念頭においた政治改革は真っ向から否定した事実を踏まえると、今回の李首相による「自由貿易歓迎」と習主席発言の「共産主義の堅持」が本当に持続的に両立していくのか、不安を覚えるのは当研究所だけではないはずです。
要すれば、米国も中国も、自国の政治経済体制における持続可能性に大きな不安を抱えていることがこれら一連の事象から改めて浮き彫りになっている、と言っても過言ではないと思います。
中国の場合、それでもまだ世界の中で際立った経済成長と米国債に代表される巨額の債権と外貨を保有しているので、自国の不安をかき消すためにとにかく新たな国際体制を構築することに力点を置く戦略に出ています。それは、中国が中心となってアジア各国のインフラ建設を支援する「アジアインフラ投資銀行」設立構想であり、世界銀行・IMF体制に代わる「BRICS開発銀行」設立構想であり、「博鰲アジアフォーラム」そのものでもあります。
米国はと言えば、オバマ大統領は国内ではレームダック(死に体)化しているという認識がほぼ一般化しつつあり、国際政治学者のイアン・ブレマーが予言したとおり「Gゼロ」の状況を作り出した戦犯とも言われています。それは、昨年のシリア攻撃の議会却下、そして今年のクリミア半島問題を巡るロシアのプーチン大統領に対して有効な手立てが打てていない実情が如実に表しています。
G20と博鰲アジアフォーラムは、G2と言われるべき米中それぞれの国で同時期に開催され、本来であれば世界経済のトップ2である両国が大きくスポットライトを浴びる晴れ舞台であるはずであったのに、今年は両国にとって全く意に反して「米中は大丈夫なのか」と世界中が改めて意識したイベントとなってしまいました。
このような中で、インドネシアでも4月9日にジャカルタ市場の総合株価指数が3%超下落して唖然となりましたが、この背景には全く別の理由がありました。
それは、9日に投開票されたインドネシア総選挙で、当初予想では25%程度は得票できるのではないかと考えられていた最大野党・闘争民主党の得票率が、単独で大統領候補を擁立できる水準には届かない19%にとどまったという報道がなされたことに由来します。この「予想外の展開」に市場関係者からは、7月9日に予定される大統領選は決選投票までもつれこむ可能性が高くなり、政治的に不透明な期間が長くなるという連想が働き、インドネシア株や通貨ルピアが急落しました。
インドネシア国内事情としての選挙の行方は、予断を許さない状況が続くのは確かですが、大統領候補として最有力と言われている人気政治家のジョコ・ウィドド氏(現ジャカルタ特別州知事)が所属する闘争民主党が第一党に返り咲いたことはとりあえず想定通りの結果であることから、最悪の事態は回避できているのは事実です。したがって、確かに大統領選が少し混乱する可能性があったり、仮にジョコウィ氏が大統領にすんなり当選できても議会で野党が連携して政策を邪魔することで混乱が起こる可能性はまだまだ有り得ますが、少しずつ前に進んでいると言えるのではないでしょうか。状況はよくモニターしなければなりませんが。
G20と博鰲アジアフォーラムに代表される米中2大パワーの影響力低下は、一時的かもしれませんが、世界にとっては大きなリスクです。こういう事態が続く中で、投資ポートフォリオをどう構築していくのかは、至難の業です。
一方、インドネシア市場も国内政治事情で一時的に混乱しているように見えますが、おそらく華人資本家達はこの現象をしたたかに見ており、最悪の事態(闘争民主党が第一党を取れないこと)は回避できているのだから株価や為替が大きく下落したのは一時的な動揺であり、今後の状況次第で反発は十分に期待できるであろうことから、逆に現在は今後の大きなリターンを狙える底値の投資機会だ、と捉えていると考えられます。
マクロをとらえ、機会を緻密にうかがう。これが、典型的な華人資本家的発想です。
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今経済は、混沌としていますね、私も少しは株を運用しているものとしては、日本株の乱高下は、困った現象です、世界の混乱を良いことに、機関投資家は、少しオーバーにアクションを起こしているように、思えて仕方有りませ、株の高速取引は、禁止しないと、個人株主は、この市場から退出しざるえなくなると思います、もう彼らのやっていることは、F1マシンで、我々自転車で走っている者を2周くらい先をまわって
ゴールしてるに等しい状態です、これは、後だしジャンケンしているに等しいです、そして、それが彼らの利益の源泉に個人株主が成っているとなると、もう経済のルールを変えないと、いけ無いと思います、アメリカは、今注視してますね。
アジアの経済も今後世界に開かれて行こうとしてますが、このような、ハゲタカにやられてしまわないか心配です。
2014/4/14(月) 午前 7:19
まいどきくちゃんさん、コメント有難うございました。コメントバックが大変遅くなり申し訳ございませんm(__)m
F1マシンと自転車とは、面白い例えですね。しかし、高速取引マシンは本当にF1でしょうから、確かに一般投資家のネット取引は自転車レベルかもしれませんね。
御懸念の通り、アジアが欧米のハゲタカにどう対応できるのか、真価が問われる時代になりそうです。またお立ち寄りください。
2014/5/18(日) 午後 11:34 [ tknaito ]