将棋記者八雲のノート

将棋中継記者です。モバイル中継と順位戦中継をしています。

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 昨日の中継【王座戦二次予選の4ブロック決勝・屋敷伸之九段-佐藤天彦五段戦】は、突然の大雪が降りしきる中、深夜の大激闘を屋敷九段が制しました。
 
 戦型は予想通り横歩取りに。両者とも横歩取りのスペシャリストで、プロ間では一目二目も置かれる存在。と、書いていてふと思ったのですが「一目置く」は元々囲碁用語ですね。強い相手に敬意を払って、石を置いてハンデをもらう意味なので、将棋棋士の場合は「香を引く」存在と言うべきでしょうか。閑話休題。
 
 工夫を見せたのは後手番の佐藤五段で「一手損横歩取り戦法」と私が勝手に呼んでいます。どういうことかと言うと、実戦例のある形にあえて手損して誘導し、同じ局面で相手に手番を渡し「指す手が難しいでしょう」という難題を突き付けるという指し方です。超高等戦術の「手渡し」の考え方「一手指させることで相手の最善形を崩す」狙いですね。
 
 その難題を突き付けられた屋敷九段は長考に沈みます。たどり着いた回答がまた凄い。およそ横歩取りの戦型では見たこともないような一手を繰り出します。その意味は簡単に言えば「手渡し返し」。とはいえ、簡単に手待ちが可能な局面なら佐藤五段もわざわざ一手損してまで相手に手を渡したりしません。屋敷九段の指した一手は、自分の攻撃力を犠牲にしてでも、相手に手を渡し返して仕掛けさせるという高度なものでした。
 
 局面的には、両者とも相手に手を渡さずとも、仕掛けてしまうことも可能だった思われます。それでおおよそは互角の進行。しかし、スペシャリストの二人はそれでは満足できないのでしょうね。ある局面に於ける指し手の可能性を極限まで追求したような指し方は、感動すら覚える戦いでした。
 
 そんな激闘もついに幕を閉じ、終局後に写真撮影で対局室に入ると、そこには驚きの光景が。パッと見て5〜6名ほどのプロ棋士や奨励会員達が感想戦を見守っていました。深夜の23時、外は大雪、帰れるかどうかも怪しい中のことです。
 
 感想戦を他の棋士が見に来るのはよくあることではありますが、月曜の23時過ぎにあれほどの人数が集まるのは珍しいです。A級順位戦や竜王戦1組、各種棋戦では、トーナメント本戦の準決勝以上などでしか見たことがありませんでした。それほどの注目を集める素晴らしい大激闘だったということですね。
 
 そんな感想戦の様子をたっぷり取材したいところでしたが、終電が迫り、さらに大雪ということで泣く泣く取材を断念して、写真撮影だけ済ませて対局室を後にしたのでした。なお、本局は観戦記がついていましたので、後日、日本経済新聞紙上に掲載されると思われます。感想戦の詳細な内容は観戦記でお楽しみください。
 
 さて、明日は竜王戦1組ランキング戦から、藤井−深浦戦を担当です。竜王戦将棋道場(携帯サイト)での中継となっています。日本将棋連盟モバイルでは棋王戦予選から田村−中村太戦が中継されます。こちらは早指しキングの田村六段ですから、うっかりするとあっという間に終わってしまいますので、お見逃しなく。
 
日本将棋連盟モバイル → http://www.shogi.or.jp/mobile/index.html 

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