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6月15日に行われたC級2組順位戦の感想です。
全21局と数が多いので、今回は順位上位10人の対局を紹介します。
順位戦中継サイトはこちら → http://www.meijinsen.jp/(会員制・有料)
▲佐藤天彦五段−△石川陽生七段 → 佐藤勝ち(向い飛車)
石川の向飛車に佐藤がシンプルな舟囲いから積極果敢に反発。アマが見ても大変面白く参考になる将棋で佐藤快勝。 ▲糸谷哲郎五段−△神崎健二七段 → 糸谷勝ち(筋違い角)
角換わりから神埼のやや変則的な一手に対して、糸谷が筋違い角を決行。糸谷らしい、中盤の鋭い踏み込みで一気に優勢に。そこから神崎も粘ったが最後は糸谷が押し切った。 ▲澤田真吾四段−△横山泰明五段 → 澤田勝ち(ゴキゲン中飛車)
横山のゴキゲン中飛車に、澤田は丸山ワクチン。向飛車に振り直した後手に対して、澤田は玉頭位取りで対抗。後手が先に桂損したが、その代償として押さえこみに成功。そこから手数をかけて角を詰ませて後手優勢。そのまま綺麗に押しきった。横山のプロ的な高度な指し方が見どころ。 ▲増田裕司六段−△及川拓馬四段 → 増田勝ち(ゴキゲン中飛車) 増田の超速急戦に及川が4四銀型で対抗。後手が木村美濃に組み替える一瞬の隙をついて、先手が積極果敢に仕掛ける。複雑に駒交換が行われ難しい形勢から、一発大技が決まって増田快勝。 ▲大石直嗣四段−△中村亮介五段 → 中村勝ち(角換わり振り飛車)
中村の角換わり振り飛車に、大石が序盤で筋違い角を放ち、浮いている歩を取りに行く。その効果で桂得となり優勢になったが、そこから手が伸びず攻め手を失って逆転。以下落ち着いた指し回しでリードを広げた中村の大差勝ち。 ▲佐藤和俊五段−△上野裕和五段 → 佐藤勝ち(5筋位取り中飛車)
佐藤の先手中飛車に上野の穴熊。佐藤も穴熊で対抗し相穴熊となった。両者と金を作り合う展開も、先手のと金が一手早いのが大きく、そのまま押し切った。差が付くと逆転できない相穴熊の典型的パターン。 ▲村田顕弘四段−△村田智弘六段 → 村田智勝ち(ウソ矢倉)
村田対決は、後手のウソ矢倉。先手はあえて2筋の角交換を目指さず、じっくり指して古風な同型矢倉となった。先手が先行するも、やや指し過ぎで、後手がそれをうまく咎め、駒得から快勝。 ▲佐藤紳哉六段−△伊奈祐介六段 → 伊奈勝ち(角換わり)
伊奈は角換わり後手棒銀の形から端攻めにはいかず、7筋一歩交換後に銀を中央に巧みに繰り替える。途中飛車を見捨てて寄せにいった手が好手で後手が押し切った。伊奈の指し回しが見事な好局。 ▲中座真七段−△西川和宏四段 → 西川勝ち(三間飛車)
西川のノーマルな三間飛車に先手は米長玉で対抗。ガチガチの先手陣を着実に攻略しながら、薄かった自陣をうまくまとめて見事な堅城を築き上げた西川の指し回しが見事な快勝。ノーマルな振り飛車戦の棋譜はアマには貴重だ。 その他注目の結果は、順位戦初参加の瀬川が嬉しい初戦快勝、同じく今期から順位戦参加の若手は、永瀬、阿部、菅井の三人が白星スタート、牧野のみ敗れたが、稲葉相手によく粘り、次に期待がかかる。
全体的に順当なスタートの印象ですが、今期のC2は期待の若手が揃っており、対局が進むにつれて激戦は必至ですね。若い才能のぶつかりあいで、好局も多く、充実した1年になりそうです。
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観戦記
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第90手△3九銀が指されたとき、将棋ファンが集まるTwitter上に悲鳴が上がった。
第51期王位戦挑戦者決定戦、棋界最強の羽生善治名人に挑むのは、関東若手のホープ広瀬章人五段。 王位戦中継サイト → http://live.shogi.or.jp/oui/
穴熊王子と呼ばれる広瀬は、将棋のスケール、終盤力、粘りと精神力などにおいて高く評価され、関東の若手では、戸辺誠六段と共に将来を最も期待される、新進気鋭の棋士。今回の王位リーグでの活躍も驚きはされたろうが、もはや意外ではなく、いよいよ大舞台に登場してきたか、とその成長ぶりを眩しく受け入れられた。
しかしそれでも、この決定戦においては、まだ羽生には及ばないであろうと私は思っていた。同じく若手の期待の星である戸辺六段も、リーグ中盤で羽生を一度破りながらも、最後は追いつかれ、プレーオフでは貫禄を見せつけられる形で敗れた。
大舞台で羽生に勝つには、圧倒的に経験値が足りまい。ただでさえ、プレッシャーのかかる一番、特別対局室でこの1局だけ。向かい合う羽生のオーラに圧倒され、普段通りの実力を出すことすら至難の業。得意の穴熊も棋界最高の穴熊巧者である羽生には通用しないだろう。そう思っていたのだ。
羽生はオールラウンダーのため特に穴熊を得意にしている印象がない棋士だが、「鬼に金棒、羽生に穴熊」と形容されるほど、実は穴熊を得意にしている。後手番穴熊で勝率9割という数字からも明らかだ。そして今の羽生は8連勝中。タイトル戦を次々と勝利し鬼神のごとき勢いがある。
だが、そんな下馬評を総て跳ね返して広瀬は勝った。終局後のインタビュー、第一声はこうである。
「いつもの対局と同じように、緊張せずに指せました。」
なんという強心臓か。いや、強心臓の一言で済ませられるほど簡単なことではあるまい。広瀬が実力を出し切って勝ったのには、きっと何か理由があるはずだ。
思い当たったのは、王位リーグの最終戦。ここで広瀬は、渡辺明竜王という、もう一人の最強の敵と戦い、完勝している。それもやはり相穴熊戦だ。渡辺も言わずと知れた穴熊の申し子。それに勝った広瀬はただものではないのは確か。しかし私は本局の予想をするに当たって、羽生の穴熊にはまだ及ばないのではないかと見ていた。
渡辺の穴熊というのは、どちらかというと矢倉や角換わり振り飛車戦など、本来、必ずしも穴熊が有利とはいえない戦型において、序中盤の巧みな駆け引きから、さっと穴熊に組み替えるという、穴熊という囲いを様々な戦型に応用させる力に抜きんでているというイメージで、真っ向からの相穴熊勝負のようなものとは質が違うと見ていた。
だから渡辺には勝てても、羽生には勝てまいと見ていたのだが、しかし冷静に考えれば、これは渡辺の力を甘く見た考え方だった。そもそも穴熊を多用する居飛車党棋士が、相穴熊を避けていては話にならず、まず大前提として、相穴熊なら居飛車を持って絶対的な自信がある、という状態でなければ、穴熊など使えまい。穴熊をベースおいた戦いで竜王6連覇というのは伊達ではないのだ。
その渡辺に相穴熊で完璧に勝った。広瀬にとってこれは、挑決を迎えるにあたって、大変な自信になったことだろう。ただでさえ、成長期の真っただ中である。この一戦だけでもどれほど成長したかしれない、大きな一勝であったに違いない。
そしてもう一つ。王位リーグ最終戦の渡辺-広瀬戦は、特別対局室で羽生-丸山戦と並んで行われていたのだ。そのときの羽生は凄まじいオーラを発していた、と以前のレポートに書いた。当日敗れたため遠慮して書かなかったが、実は隣に並ぶ渡辺も、羽生にひけを取らないオーラを発していた。
特別対局室の上座に並ぶ名人と竜王が、羽生は氷付くような薄水色の、渡辺は深淵のような濃緑のオーラをそれぞれ発し、二人の回りは一種異様な空気に包まれていた。その異様な空気を経験し、渡辺に勝ち、羽生の様子も一部始終見られたことも、広瀬にとっては、絶大な経験になったに違いない。そうして迎えた本局は、まるで将棋の神が広瀬のために整えた舞台であったとすら思えてくる。
広瀬が勝ったことで羽生の連勝は8で止まった。今期の連勝記録を見れば、羽生の8連勝は二位の記録。ただ一人、それを上回る9連勝を記録しているのは他ならぬ広瀬である。
第90手△3九銀が指され、広瀬の勝ちが決まった瞬間の将棋ファンの悲鳴は、羽生対深浦、この最高峰の勝負が見たかった、という気持ちの表れだろう。だが、竜王と名人を、その最も得意とする戦法で完璧に破り、今期の最多連勝記録保持者の称号を引っ提げ、たぐいまれな強心臓で竜王、名人のオーラを吸収した、タイトル初挑戦の若武者、というシチュエーションはそう滅多にあることではあるまい。
最強の若武者の挑戦を受ける深浦王位は、果たしてどんな戦いを見せてくれるのか。世代間争いという視点も加わり、今期の王位戦は実に楽しみなものとなったことは間違いないだろう。
※将棋の内容についての感想や検討は、相穴熊戦に大変不慣れなため今回は見送りました。
ブログ「将棋観戦記」さんでは、本局の大変詳細な感想が書かれていますので、お勧めいたします。
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5月16日(日)に行われた、大和証券杯 1回戦第3局
▲井上慶太八段 対 △渡辺明竜王の一戦は92手にて△渡辺明竜王が勝ちました。
棋譜中継はこちらから(簡単な無料登録で閲覧できます)。
渡辺竜王が早速自身のブログで昨夜の対局を振り返っていますので、こちらもご参照ください。
渡辺明ブログ(昨夜の対局について書かれたエントリーにリンクしています)
戦型は私の予想が見事り、相矢倉の森下システムとなりました。
もっとも、一手損角換わりや穴で横歩取りと後手の角換わり振り飛車まで予想に入れていたので、競馬でいったら、軸馬を絞り切れない多点買いで、当たってもトントンぐらいな感じ。やはりもう少し予想は絞らないと面白くないですね(笑)
矢倉という戦型は、いま最新の情勢では、少し前まで主流だった▲3七銀型からの4六銀3七桂戦法や加藤流が、後手の対策が進歩したため、先手が少し苦しい情勢になっている関係で、森下システムが再びよく使われるようになっています。
森下システムは、3七銀戦法が流行するより以前、もう20年ほど前にその優秀性から、矢倉戦の一大主流戦法として大流行しましたが、後手のスズメ刺し戦法という有力な対策によって、一時期は絶滅寸前にまで追い込まれます。その後、深浦康市王位によってスズメ刺しに対抗する手段が発見されて復活した戦法です。
復活した時点では、まだ3七銀戦法が先手の有力戦法として主流だったので、実戦例はそれほど見られませんでしたが、近年3七銀戦法が苦しくなってくるともに、森下システムを使う棋士が増えてきています。復活後の森下システムは、まだ定跡やセオリーが確立していない部分が多く、有力な棋士が試行錯誤している段階といった感じで、ある意味一番観戦していて面白い時期かもしれません。
さて、本局では、34手△6四角と出たあたり(図参照)が、一つの分岐点とみました。
過去の実戦例では、ここでは△5三銀として、後手も玉を囲いに行くことが多かったと思います。
この局面での△6四角は私の知る限りでは新手だと思うのですが、ちょっと自信はありません。機会があればいずれ調べてみたいと思っています。
先手の3七銀は次に▲3五歩から一歩を交換して銀の進む道を作り、好形に構えるのが狙い。渡辺竜王はそれをあっさり実現させるのは面白くないと見て、▲3五歩をけん制したように見えます。
一方、互いの玉形を見ると、先手はしっかりと囲っており、後手はまだ矢倉城の外にいる状態。
セオリーでいえば、先手は今戦いになるのは歓迎、後手は避けたい、ということになります。しかし、△6四角と出てけん制すると、先手も理想の動きを阻害されたことに対して反発してくるでしょうから、後手はこのままの玉形で戦いになることも覚悟しなければいけません。従ってこの局面は、まだ駒が一つもぶつかってはいませんが、緊迫度はかなり増している局面だと思います。
簡単に言えば、34手△6四角の局面は、渡辺竜王が少し冒険した手、先手はそれをとがめることが出来るかどうか、という局面で、とがめることが難しいとなれば、今後この手が後手の定跡となるか、または先手がこの局面を避けるようになって、今後のプロの対局から消えていくことになるかもしれません。
後手の渡辺竜王はその後、先手の▲4六銀に対して、△4五歩の反発から左の銀を盛り上がって4筋の位を確保し、先手が反発してくる前に、飛車を5筋に展開して、中央からの攻めを狙いました。これは玉を堅く囲うことは放棄し、代わりに先に攻めることで、有利にしようという構想です。
解説の高橋九段は、飛車を回るところで、自分なら△5一飛は怖くて指さないだろう、代わりに△5二玉として、6二の銀を守備に働かせることを考えたい、という意味のことをおっしゃっていました。渡辺竜王は、それよりも積極的な手を選んだようです。
井上八段は、後手の積極的な動きに対して、強く対応して激しい戦いにもちこむ順もあったようですが、自重していったん受ける作戦。ある程度受け止めてから端を攻める形になれば、玉形の違いが生きて有利になる、という構想だったようですが、結果的にはこれが少し消極的で、まずい構想だったと局後に感想を述べていました。
ただし、本譜の進行でも先手が受け切れる可能性がまったくない、ということではないようで、今後も先手をもってこの形に進めるプロ棋士がいないというわけでもなさそうです。途中で先手が激しい順を選んだ場合もどうなるのかわからないので、34手△6四角の成否については、まだまだ今後の研究や実戦を経てみないとわからない、といった感じでしょうか。
実戦のほうはその後、渡辺竜王の鋭い攻めがさく裂し、薄い自玉には反撃の機会を与えることなく、そのまま寄せ切っての押し切り勝ちとなりました。
局後の感想戦もこの棋戦の一つの見どころなのですが、先週が解説に先崎八段で、ずいぶんと盛り上がった感想戦だったのに比べると、今回は少し大人しかった印象でしょうか。しかし、明るくひょうきんな性格の井上八段が、竜王の攻めにたいして「なんとかならんかったのかな」とボヤくと、高橋九段が「なんともなりませんでしたね」と返して、さらに井上八段が「なんともならんかったか。厳しいです。」と返すなど、思わず笑ってしまうところもありました。
高橋九段と井上八段は世代も近いので、きっと普段から仲が良く、このように気軽に言い合えるのでしょうね。
最後のまとめコメントでは、
井上「やっぱり、竜王の攻めは厳しいですわ。」
高橋「やっぱりね。」
と、楽しい雰囲気で中継が終了となりました。
矢倉党の私には、大変見応えのある内容でしたが、みなさんはいかがでしたか?
途中の指し手の解説は、棋力の乏しい私の個人的見解なので、いろいろ間違っているところもあるかもしれませんが、ご容赦ください。また、ご意見、ご指摘等ありましたら、お気軽にお寄せください。
それではまた。
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