作詩・作曲:さだまさし
月末になると ゆうちゃんは薄い給料袋の封も切らずに
必ず横町の角にある郵便局へとび込んでゆくのだった
仲間はそんな彼をみてみんな貯金が趣味のしみったれた奴だと
飲んだ勢いで嘲笑っても ゆうちゃんはニコニコ笑うばかり
僕だけが知っているのだ 彼はここへ来る前にたった一度だけ
たった一度だけ哀しい誤ちを犯してしまったのだ
配達帰りの雨の夜 横断歩道の人影に
ブレーキが間にあわなかった 彼はその日とても疲れてた
人殺し あんたを許さないと 彼をののしった
被害者の奥さんの涙の足元で
彼はひたすら大声で泣き乍ら
ただ頭を床にこすりつけるだけだった
それから彼は人が変わった 何もかも
忘れて 働いて 働いて
償いきれるはずもないが せめてもと
毎月あの人に仕送りをしている
今日ゆうちゃんが僕の部屋へ 泣き乍ら走り込んで来た
しゃくりあげ乍ら 彼は一通の手紙を抱きしめていた
それは事件から数えてようやく七年目に初めて
あの奥さんから初めて彼宛に届いた便り
「ありがとう あなたの優しい気持ちは とてもよくわかりました
だから どうぞ送金はやめて下さい あなたの文字を見る度に
主人を思い出して辛いのです あなたの気持ちはわかるけど
それよりどうかもう あなたご自身の人生をもとに戻してあげて欲しい」
手紙の中身はどうでもよかった それよりも
償いきれるはずもない あの人から
返事が来たのが ありがたくて ありがたくて
ありがたくて ありがたくて ありがたくて
神様って 思わず僕は叫んでいた
彼は許されたと思っていいのですか
来月も郵便局へ通うはずの
やさしい人を許してくれて ありがとう
人間って哀しいね だってみんなやさしい
それが傷つけあって かばいあって
何だかもらい泣きの涙が とまらなくて
とまらなくて とまらなくて とまらなくて
2002年2月19日 三軒茶屋駅暴行致死事件 裁判
三軒茶屋駅暴行致死事件
2001年4月28日、ゴールデンウィーク初日の夜遅くの出来事。
東京都世田谷区の三軒茶屋駅のホームで、銀行員の男性が18歳の少年2人に殴り殺される事件が起きた。
きっかけは電車内のトラブル。三軒茶屋駅のホームに停車したとき、満員電車に乗車していた銀行員の男性と少年らがささいなことで口論になった。少年らは銀行員の男性につかみかかり、10分近くにわたって殴る蹴るの暴行を加えて逃走した。銀行員の男性は意識不明の重体で病院に運ばれたが5日後に死亡した。
<裁判>
翌年の2002年2月19日、東京地裁でその2人の少年に懲役2年以上5年以下の不定期刑という実刑判決が下された。
少年らと弁護士は「被害者の発言や行動にも犯罪を挑発する面があった」と主張していたが、主張は退けられた。少年2人は「一生をかけて償う」「私という人間を根本から変えていきたい」と遺族への謝罪の言葉を述べたが、少年らの言葉や表情から反省の色が薄いと感じたのか、山室恵裁判長は判決文を読み上げた直後にこう語った。
「唐突だが、君たちはさだまさしの『償い』という歌を聴いたことがあるだろうか?
歌詞だけでも読めば、君たちの反省の言葉がなぜ心を打たないのかわかるだろう」
法廷の説諭でポップスの歌詞が引用されたのは裁判史上初の出来事だった。
転載元: 緑のそよかぜ (ヘルパーの日常をちょっぴり)
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