tngtng日記 --by dragon--

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dragonの短編ロマン

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温泉町の裸の踊り子

「温泉町の裸の踊り子」

私は昔から温泉が好きで温泉地へはよく行く。その中でも特に心に残るほろ苦い想いでがある。それは数十年という月日がたった今も消えることはない。

日本海に面したある温泉町、
温泉街は中央を細い川が流れ、その川を挟んで両方に道がありその道に面して旅館やみやげ物屋が並ぶ。私は川に沿って上流に歩く、町のほぼ中央にかかる橋を渡ると道は一つになり、川は片方の旅館街の裏へ消える。そしてここからは道の両側に木造の旅館や民家が並ぶ。
私は橋を渡ってすぐの木造の旅館に泊まることにした。旅はのんびりと同じ旅館に三泊四日の予定である。一泊だけの泊まりは騒々しい旅館の朝が嫌で、旅にでると同じ旅館に二泊以上することにしていた。
仲井さんに、
「掃除はいいですからそのままにしておいてください」
と言うことでなんとなく優雅な気分になる。
それは今でも変わることはない。

私はあまり観光地見学はしない。ここでも殆ど旅館の前にある喫茶店で過ごし、昼食は決まったようにナポリタンを注文、ナポリタンは当時の喫茶店では人気のメニューで、パスタをケチャップでいため、粉チーズをかけただけの素朴なものである。
だがその味はいまでも飽きることはない。コーヒーを飲んだり雑誌をみたり、店のママと話をしたりであるが、その店にはもう一人常連客らしい女性がいた。
二十代半ばの小柄な可愛い女性、到着した日は何も話さなかったが、二日目にはママを交えて少し話をした。
女性は夕方近くになると時間を気にしながら帰っていった。
二日目のその娘が帰った後、
「あの娘はね、すぐそこのヌード劇場で一人踊っているのよ行ってみたら」と、店のママが言った。
しかし、行きたい気持ちはあっても、さっきまで話をしていた女性の裸を観に行くことには抵抗があり、結局は行かなかった。
そして三日目、
昼前の時間、その日も喫茶店に行くとその娘がいた。
「おはよー」と笑顔で声をかけられ、
私も「おはよー」と挨拶をしてその娘の近くの席に行く。
私がポリタンを注文すると、その娘も「同じもの」と言ってナポリタンを注文した。そして二人は内容はなくても共通できる話題を探しながら話をしていた。

話の途中で、私が「明日には帰ります」と言うと、

その娘は突然真顔になって、
「私、最近新しいベッドを買ったの、試す人もいないし、貴方が好きになったので一度でいいから私のベッドで寝て」と言った。
当時、女性に興味がないという強がり(見栄)でバンカラを気取っていた私は、あまり女性に接した経験がなく言葉がでない。
女性に興味がないわけではないのだが、どう返事をして良いものかわからない。

しばらく無言でいる私の前で、その娘の目から大粒の涙がおちた。
「私は男に裸をみせているが、男の相手をしているわけではないよ」と大声、
「あなたは私を軽蔑しているのでしょう、私の身体は綺麗、普通の女の子より綺麗、身体は私のたった一つの財産、毎日しっかり気をつけている」
と泣きながら店を出ていった。
さらに、
呆然としている私に店のママが、
「あの娘はね、おばあさんと二人でヌード劇場をしているの、真面目でね、ヒモもいないし男もいない」
「あんなこと言ったのは貴方が初めてよ、女が決心して言ったのに貴方は男じゃないね」
と厳しい口調である。
私は何も言えずに店をでた。

その夜、小さな路地にある劇場の前まで行ったが、入る勇気もなく割り切れないまま帰途についた。
その数年後に行ってみたが劇場はなかった。
いまでもその温泉町に行くと、目を涙でいっぱいにした踊り子の顔が目に浮かぶ、小さな身体で泣きながら精一杯想いを言ってくれた温泉町の裸の踊り子、会うことができれば今ならしっかりと話せるのだが。
そして今、
その温泉町の中ほどにある橋をわたり、左に曲がって少し歩くとその路地がある。この温泉町に来ると必ずこの場所に来て懐かしくほろ苦い青春時代を偲ぶ。

「40年近くになるかなー」
dragon

海と夕日 ・・・完

「 海と夕日 」  dragon

この町の自慢は水平線に沈む夕日である。
特に波の穏やかな日、海に一直線に出来る夕日の道はたとえようもなく美しい、そうした夕暮れには決まったように海辺には陽子がいた。

陽子(ようこ)はいつも一人で夕日を見ている。
高一(たかひと)はそんな陽子が好きで、夕日を見ている陽子を少し後の離れた場所からながめていた。
陽子は都会で結婚し子供がいるとの噂を聞くが、半年前に一人この町に帰り小さなスーパーに勤めている。

高一はずっとこの港町での一人暮らし。

陽子は二つ年上で男まさりな活発な娘だったが、都会生活ですっかり女性(おんな)らしくなっていた。
そんなある日高一が買い物に行くと、
「高一さんも夕日が好きなのね」と陽子が話しかけてきた。
高一は夕日ではなく陽子を見ていたのだが、
「はい、海も好きですよ」 と、返事をした。
海と夕日が好きと言うのはまんざら嘘でもなく、この港町は高一の生まれ育った場所、綺麗な海と夕日は高一も自慢に思っていた。

それからは二人で夕日をみることが多くなった。
小さな港町のこと、その様子はすぐに噂となったが、
「高ちゃん、陽子ちゃんとはうまくいってるの」 だれもが同じ言葉で応援してくれていた。
「うん、なんとかね」 高一も決まった言葉で返事をする。

二人は夕日を見るときは無言で見ていることが多かった。潮風の匂いと甘酸っぱい陽子の香り、高一はゆっくりと流れる時を心地よく感じていたが、陽子は時々寂しそうな顔で夕日を見ている。
陽子の白く小さな手が夕日にそまっていた。高一がそっと手をかさねると、陽子は一瞬おどろいたがすぐに笑顔になった。
この日二人は夕日が沈んだ後もしばらく海をながめていた。

少しずつ会話も多くなり、
陽子は自分には子供が二人いてその子供を置いて離婚したこと、姑とのおりあいが悪かったことや都会では病気がちであったことなど自分の殆どを話した。
高一はそんな陽子をいとうしく感じ、
一緒に食事をしたり散歩をしたり、二人の時間は日を重ねるごとに長くなっていた。

共に暮らすようになるまでには時間はかからなかった。
風呂あがりの陽子は妖精のようにまぶしく、甘く香る石鹸の匂いもたまらなく好きで、高一は陽子とのこの時間が宝物のように大切に思えた。

突然、別れた夫と子供たちが陽子を訪ねてきた。
子供が陽子に会いたいときかないので連れて来たとのこと、高一はしばらく外に出て4人の時間をつくることにした。

「この生活もこれまでかなー」 などと考えながら一人夕日をながめていると、
「すみません」 と小走りに陽子が来た。
少し間をおいて陽子が口を開く、
前の夫が再婚し新しい母親との間に子供が生まれたこと、
子供たちが新しい母親になじまないこと、
子供を引き取ってほしい言われたことなど話の内容を告げた。

「やっぱり子供はかわいくて」 陽子が思いつめたような目で見ている。

「四人で暮らそう・・・」 高一が陽子に言えることはそれだけだった。

それまで気強く我慢していたのだろう陽子が崩れるように泣きだした。高一は嗚咽の止まらない陽子の肩に手をおいた。

「陽子は夕日の中に子供をみていたのか・・・」 高一には今ようやく陽子が理解できたように思えた。

その日の夕日はいつもより綺麗に見えた。

以上ありがとうございました。
dragon

山の灯り ・・・完

「 山の灯り 」 ・・・完 dragon

高一(たかひと)には久しぶりの故郷である。
駅につくとホームの階段をあがり、正面に出ると遠く右になつかしい山並みが見える。
「久しぶりだなー」、一瞬で青春時代から今日までの出来事がよみがえる。

「おはよー」髪の短い目の大きな色黒の少女、夏美(なつみ)である。
「おはよー」高一(たかひと)もこたえる。
高一(たかひと)も夏美も高校三年生、勉強が嫌いな高一、学校に来る楽しみも目的も夏美に会うことだけであった。

「あのあたりだったかなー」、懐かしく甘酸っぱい思い出がこみあげてくる。

山並みの中で一番手前の低い山、その中腹に夏美の家があり、
夜になればその場所に小さな灯りがともる。
灯りは高一の部屋からも見え、夜はその灯りが消えるまで眺めていた。

そんなある日、

「ねえ高一(たかひと)さん相談があるの」突然後から夏美の声、
高一は勉強嫌いで成績もよくない、優等生の夏美から声をかけられるなど思ってもみなかった。
戸惑っている高一をみて夏美が笑っていた。
夏美は色黒であるが、笑うと見える白い歯は印象的である。
「相談・・・!」
「ええ・・」すぐ傍に夏美の笑顔と白い歯、高一は喉がかわき声がかすれている。

「東京の大学に行こうかと考えているの」、6月の中ごろである。
「どこに行くの」と高一、言葉が続かない。
「高一さんは?」
「決めてないけど大学は無理、勉強苦手だし」、その日家に帰った高一は、会話した夏美の言葉を丁寧に思い出しながら山の灯りが消えるまで眺めていた。

「あの灯りの場所に夏美がいる」高一はそれだけで嬉しかった。

それから二人はよく話をするようになった。
好きな食べ物、好きな歌、好きな俳優など話題は何でも良い。放課後の短い時間、休憩時間の合間、夏美といる時間は高一(たかひと)には授業より何倍も大切な時間となった。

ある日、夏美(なつみ)から封筒をわたされた。

「帰ってから開けてね」と、夏美はてれくさそうに笑っている。
「うん」
高一(たかひと)は授業が終わるとすぐに家へと急ぎ、
自分の部屋に入るともどかしく封筒を開く、中にはノートが二冊入っていた。

夏美と書かれたのものと 高一と書かれたもの、
「えー・!」交換日記だろうか、
高一は字は下手だし文章も苦手、ではあるが夏美のからのノートはなにより嬉しい。

ノートを開くと6月からの出来事と、高一への思いが記されていた。
二人で話した内容や楽しかったこと、夏美の悩みや体調など高一の知らないことも、そこには夏美の全てが記されており、自分で夏美を独り占めした気分であった。
その夜は夏美の日記を何度もなんども繰り返し読み、山の灯りが消えるまで見つめていた。

早くも秋の終わり高校生活も残り少ない11月、夏美から目標とする大学の名前を聞いた。
「進学などしなくていいのに」と思ったが月日は過ぎていく、高一はまだ将来のことなど何も考えていない、このころの夏美は受験準備に忙しそうである。
高一はそんな夏美と付き合っている自分が誇らしく思えた。
しかし、自分と夏美は人生の夢や目的が違う、そのときの高一には二人の関係はどうにもならない運命のように思えていた。

夏美はいつも赤い自転車に乗っている。
きまったように少し後でチリりンとベルを鳴らし、
すぐ横で、
「さよなら」の声だけ残して通りすぎた。
高一も手をあげてこたえる。

いつのまにか交換日記も途絶え、
高一にはむなしい毎日であるが、自分なりに夏美の頑張りを応援していた。
そして高一も就職が決まり、夏美も大学に合格した。

卒業式を終えた高一はすぐに就職地へ向かうこととなり、旅立ちは今まで乗ったことがない夜行列車にした。出発は誰にも言わず一人駅に着くと、どこで聞いたのか駅には夏美がいた。

夜なのでバスで来たという。
二人は短い少しの時間をホームのベンチで過した。
やがて列車の到着を知らせるアナウンスが聞こえ、隣には大きな目を涙でいっぱいにした夏美がいた。二人は初めての短い口づけ(キス)をして高一は列車に乗った。

ホームで手を振る夏美、
顔は涙でくしゃくしゃになっていたが高一(たかひと)には輝くように綺麗にみえた。
その後、高一(たかひと)と夏美はしばらく手紙のやりとりをしていたが、やがてそれも途絶え二人は確実に別々な道を歩いていた。

「もう45年になるなー」、養子として結婚した高一(たかひと)も還暦(かんれき)を過ぎ、無性に故郷が懐かしく両親の墓参りを兼ねて帰ることにした。
高一には妻と二人の子供がいるが、このごろ妻の実家暮らしにも限界を感じていた。養子であるためか妻は乱暴な言葉も多い、家族とのおりあいも悪く今までもこの町に家族で帰ることはなかった。

しかし、高一の家はもうこの町にはない。
駅から今夜の宿(ホテル)まで、いつのまにか学校の横にある夏美との思い出の路を歩いていた。それは丁度下校の時間と重なり生徒の中にいた。

「チリリン」突然後から聞きなれた音がした。
高一(たかひと)のすぐ横で、
「さよなら」
小さな声で、髪の短い黒く日に焼けた少女が赤い自転車で通りすぎた。

それは瞬間の出来事であった。

ホテルには「あの山が見える部屋を」と予約していた。暗くなるのが待ち遠しく窓を開けると、そこにはまだ懐かしい灯りが見える。
「まだ灯りがついている、そうだ明日は訪ねてみよう」そう思いながら、高一は少し安心したように窓のカーテンをしめた。

翌日、高一(たかひと)はタクシーで夏美(なつみ)の家に向う、家には老いた夏美の母親が一人で暮らしていた。とまどう母親に突然の訪問をわび高校時代の思いでを話すと、母親は突然涙をうかべ夏美が亡くなったことを告げた。
「一人娘で・・・・親思いのいい子でした」

「高校時代のお友達ですか・・・」今では夏美をたずねる人もいないようで、母親にはたいそう喜んでいただいた。
しばらくして思い出したように、
「そう言えば高校を卒業したころ、最終バスで夜遅く帰り父親に怒られていましたが」・・・母親は高一を見ている。
高一が就職に出発した日のことを話すと、
「そうですか、夏美にはいつも誰か思う人がいるようでした・・・」ため息のような言葉であったが、納得したようで嬉しそうに見えた。
そして、
夏美は一度結婚したがすぐに離婚し、その後は一人この町で暮らしていたと言う。
最終のバスも夜行列車もいまはもうない。

「あの赤い自転車は・・・?」ふっと昨日の光景がうかぶ。

高一は、あらためて自分には夏美が大切な人であったことに気がついた。
「また来ます」と母親に伝え、その足で夏美の墓前に向かっていた。
勉強のできない少し変わりものである高一、一生懸命にもりたてようとしていた夏美の笑顔がうかぶ、夏美との思い出は懐かしく自分が臆病であったことを悔んだ。

「夏美はこの町で一人暮らしていたのか・・・」
高一の無我夢中で走った人生、ふり返ると自分も一人のように思えた。
「少し疲れたなー」とその場所に座る。

「墓であってもいい夏美の傍にいたい」 胸に熱いものがこみあげる。

「この町に帰って夏美の墓と、夏美の母を見守りながら暮らそう」

高一はそんなことを考えていた。

以上、
ありがとうございました。

dragon

光、永久に ・・・完

「光、永久に」    鳥村高一(とりむらたかひと)dragon

いつものように机に向かっていると、
「おい鳥村、本部まで行ってくれ」と命令された。
明治10年9月のこと、鳥村25歳であった。

その三日後、鳥村は清国(しんこく)行きの船上にいた。
命令は清国の様子を調べてこいと言うもの、つまりスパイの命令で中国語に堪能な鳥村に軍部が支持したものである。
船上でくつろぐ鳥村に、
「コンニチハ」たどたどしい日本語が聞こえた。
見れば8歳くらいの女の子と母親らしい女性が笑っていた。
「こんにちは」、
「ニホンノカタ? ワタシタチ、コレカラシャンハイニカエリマス」と母親、
「お二人でですか」
「フタリダケデス、シュジンハイマセン」そう答えられ鳥村は少し船旅が楽しくなった。

船が上海に着くと、
「タズネテクダサイ」と住所を書き残し女の子と母親は手を振って去った。

鳥村は上海の安宿に身をおき、
一日の殆どを情報収集についやしていたが、清国と日本の関係は日増しに悪化するばかり、
「もう調査も長くはできないなー、そうだあの親子にあって日本に帰ろう」

いつかは、と大切に保管していた紙きれ、
その住所を訪ねると、髪の長い目に特徴のある女の子がでてきた。
「コンニチハ」年のころは17歳前後、
すっかり大人になっていたが、あのときの少女であることは一目で理解できた。
そしてすぐにあの母親も、
「ドナタデスカ」
鳥村は日本からの船上の出来事を話すと、二人とも思い出したように笑顔で、
「オボエテイマス、モウハチネンニナリマス」
「そうですか8年にもなりましたか」その日は少しの時間話をして、近いうちに日本に帰ることも伝えた。

その後しばらく少女達の家に通っていた。すっかり鳥村になついた少女、鳥村も少女といる時間はおちつける気の休まるひと時であった。
少女たちも日本帰り、周囲からは差別を受けていた様子で鳥村が行くと大変嬉しそうであった。
ある日、
鳥村は二日後に日本に帰ると伝え、
「ソウデスカ」と寂しそうな二人に日本の住所を書き残した。

鳥村は日本へ帰るため荷物の整理など身支度を整えていた。
「オマエ、チョットコイ」清国の警察である。
無理やりに連行される鳥村、およそのことは察知できたが、
「今は何も逆らうまい」、気持ちを押し込めて言われるままに連行された。
そこにはあの親子がいた。
「オマエタチ、コノオトコシッテイルカ」
鳥村は「言うな」と合図したつもりだったが、
少女は「ハイ」と答え親子は別の場所に連行された。

晴れた上海の夜、
一つずつ三回、光が天に上る光景が見えたと言う。

そして時代は大正9年(1920年)、
日本の鳥村家に男児が誕生した。両親は清国(しんこく)で行方不明となった叔父の高一(たかひと)を誇りとし、子供には同じ高一(たかひと)と命名した。

月日は駆け足のように早く、二十歳になった高一は医学の道を進んでいた。

丁度そのころ、
上海では小さな赤い光が地上に届きその光景が目撃され噂となっていた。
1940年(昭和15年)の春、あたりが緑に輝く季節である。
それは上海の町外れに一つの命が誕生した瞬間、
子供は女の子で李華(リカ)と呼ばれることとなった。

中国と日本はふたたび戦争へ突入し嵐の中をさまよう船ように、まったく先の見えない時代となっていた。そうした中でも活発な少女に成長した李華。

あるとき李華は棚の上に古い紙切れを見つけた。
そこには知らない日本の住所と名前が書いてあった。
なぜここに日本の住所があるのだろう?
すぐに捨てるように言われたが、李華は胸に高まりを感じひそかに紙を隠していた。

1950年(昭和25年)ようやく戦争が終り、中国も新しい道を歩き初めていた。
「どうにかして日本へ行こう」李華は日本への留学を目的に日本語の勉強をはじめた。
医学の道を歩むことを決意し大学に進学、幸い政府高官に知人がいて留学の準備も進み1960年どうにか日本への留学が決まった。

そのころの高一は40歳となり、子供はいないが病弱な妻と二人で暮らしていた。

突然

「コンニチワ」中国なまりの女性の声がした。
「ワタシ リカ トイイマスコレヲミテクダサイ」
差し出された変色した紙には、この家の住所と鳥村高一の名前が記されていた。
「これは父の叔父にあたる人で清国で亡くなりました」と高一、
「そうですか、あなたの家でしたか」じっと紙をみつめている。
懐かしむ高一のそばでは色白の女性が微笑んでいた。
「ワタシハ、ニホンノイダイニニュウガクシマス」まだ日本語は下手な李華である。

李華の目は懐かしそうに嬉しそうに、しっかりと高一を見つめていた。

「綺麗なかたね」高一の妻も気に入ったようである。
「どこに住むの」
「アサクサ」、
浅草はすぐ近く、どうやら李華はこの住所の近くを選んだらしい。

今は医大の準教授となっている高一、その忙しさは半端ではない。
李華は頻繁に高一の家を訪れ良くなる気配のない妻の看病を手伝う、高一もそんな李華は信頼できすっかり李華に甘える生活となっていた。

高一が55歳のとき、
妻が亡くなり呆然とした日々を過す高一を李華がはげます。
「高一(たかひと)さん元気ですかー」
高一も元気な李華の声がまちどうしい、このころ教授となった高一は李華に恋心があることを感じていた。さらに高一は、李華にはあった瞬間から自分の中にある懐かしい不思議な感情にも気がついていた。
しかし高一はすでに58歳、
「20歳もちがうからなー」思いを打ち消す日が続く。

李華も知識や技術はあっても、中国人であることの差別から大事な仕事を任されることもなかった。
李華にとって高一との時間は安らぎの時であったが、突然、
「私、中国に帰ろうかなー」李華が初めて弱気な言葉を言った。

本当はいつまでも一緒にいたいが高一はすでに60歳、身内の反対も予想され、
「結婚しよう」という言葉は最後まで口にできなかった。
李華が中国に帰る日、空港には高一(たかひと)の寂しそうな姿があった。

しばらくして上海の病院に勤務していると手紙がきた。
「いつか上海に行こう」そう思う高一だが多忙な生活にその時間はない。
時は過ぎて85歳となった高一に突然李華から知らせが届く。

それには,
「スグニ アイタイ」と記されていた。

高一は胸騒ぎを感じ、
身辺を全て整理し上海行きを決意した。
高齢となり心臓を患っている高一、周囲には無理だと止められたが決意は変わらなかった。
そして、上海についた高一の前に小さく痩せた李華がいた。

「ウレシイ・・・」、と精一杯の笑顔である。
もう余命わずかと言う、
高一は病院に医者であったことなどを伝え、かたときも離れることなく李華の看病を続ける。
二人の姿は病院内でも評判となり誰もが二人を見守っていた。

しかし、平行して高一の健康状態も悪化していった。

その数日後の晴れた上海の夜、

じゃれ合うように二つの光が天に上るのが見えた。

青と赤の光と・・・楽しそうな男と女の笑い声が噂となっていた。

以上
有難うございました。
dragon

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