文太郎の日記帳

筆者がその時々に経験したことや、世の中の出来事についての批評・感想を記します。

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 このところ金正恩朝鮮労働党第一書記(朝鮮人民軍最高司令官)指導下の北朝鮮による「戦争挑発」が懸念されるようになった。4月9日には北朝鮮の対外宣伝機関であるアジア太平洋平和委員会の報道官が談話を発表し、「朝鮮半島情勢は核戦争前夜」にあり、「戦争の導火線に火がつけば全面戦争となり、我が方の無慈悲な報復聖戦となる」と警告、「ソウルをはじめとする南朝鮮(韓国)の外国機関と企業、観光客ら全外国人が身辺安全のため、事前に退避、疎開の対策を立てるべきだと通告する」と述べた(讀賣その他、10日)。
 まさに開戦前夜の雰囲気だ。
 
 こうした北朝鮮の警告というより恫喝について、韓国政府当局者は「韓国社会の不安をあおる狙いだ」と見ており、「ソウルなどでは目立った混乱はなく、主要国も冷静に対応している」(同上)と伝えられる。しかし現実には、例えば韓国の株価指数は「2〜8日の5営業日で3.3%下落、…時価総額の約3割をもつ外国人投資家の売りが目立っており、…韓国の通貨ウォンも売られている」(日経、10日)ように、経済面で外国人の韓国撤退が始まっているのが実状だ。
 他方日本では、北朝鮮の目下の動きについては、差し迫っているとみられる中距離弾道ミサイルの発射や第4次核実験の我が国への脅威が主たる問題になっており、朝鮮半島で戦争が起こる可能性にはあまり関心が向いていないようである。
 
 だが、本当に朝鮮半島で軍事衝突は起きないのか。私はこの分野の専門家ではないが、一日本国民として隣国の情勢に神経をとがらさずにはいられない。そもそも北朝鮮の目的・意図は何であるのか。どうもこの点の理解で、多くの日本人の対「北」観は韓国国民のそれと基本的なずれがあるようで、そのことが日本での適切な朝鮮半島情勢の理解を妨げているように思える。
   日本では、北朝鮮は“国際社会の制止を無視して核武装を急ぐ軍事優先の共産主義的な独裁国家”であり、その点で日本及び他の民主主義国にとっても脅威であるという捉え方が普通だろう。これに対して、韓国にとっては、北朝鮮はなによりも朝鮮半島における二つの分裂国家の片方であり、隙があれば武力をもってしても南半分(韓国)を併合しようとしている敵対国家であるのだ。
 
 通俗的なたとえを使うと、南半分には自民党的な政治勢力が権力を握る国家があり、北半分には共産党的な勢力が支配する国家があって、互いに自らの指導下で全国(朝鮮半島の全体)を統一しようと相争っている、と考えればわかりやすいのではないか。あるいは、豊臣秀頼・石田三成が率いる西軍と徳川家康麾下の東軍が対峙して日本全体の覇権をめぐって争っている状況を思い浮かべてもいいかもしれない。
 そのような対抗関係の中で、「北」が核武装をしたらどうなるだろうか。それは、南北の力関係(すくなくとも軍事的な)を大きく北側に傾けることになるだろう。これは韓国にとっては極めて切迫した脅威である。
 
 それに対しては、“韓国は米国の「核の傘」で守られているから大丈夫ではないか”、との反論があるだろうが、韓国には次のような疑問がある。すなわち、「北朝鮮が韓国に核攻撃を実施した時も、米国は核報復しないのではないか」。「北朝鮮の大陸弾道弾ミサイルの発射成功で自国への核攻撃のリスクが高まった以上、米国もそれを避けたいだろう」と(「第2次朝鮮戦争は起きるのか」、鈴置高史、『日経ビジネス』ONLINE、3月28日)。
 そうした疑問を打ち消す狙いも込めて、米韓両軍は3月11日から21日まで合同軍事演習「キー・リゾルブ」を実施したが、北はこれに強く反発、11日から朝鮮戦争休戦協定を白紙にするとともに、南北不可侵合意の全面破棄を宣言するなど、次から次へと開戦体制を準備し、かつそれを対外的に宣伝してきた次第だ。
 
 米韓日の当局のこれに対する評価は「北朝鮮による戦争の挑発」ということであり、対応としては、万一の軍事攻撃には備えるが、戦争挑発には乗らずに、北朝鮮に対する制裁(非軍事的な)を強めて北朝鮮を翻意させようとする点にある。
 しかし、挑発とは「相手を刺激して事件などが起こるようにしかけること。そそのかすこと」(広辞苑第六版)であるから、実際にそうした挑発から偶発的な衝突が起こる危険は十分にあるし、そのことを機会により大きな戦争が引き起こされる危険がある。
 それに、北朝鮮の開戦準備は金正恩第一書記の号令の下で進められてきたものであり、金第一書記はまたそれによって自らの権力基盤を固める狙いであると思われるから、もし何ごともなしに終わるようなことになれば、自らの権力自体が危機に瀕する可能性が大きい。そうすると、自らの権力を維持するためにも、何ごとかを起こさなければならないのではないか。
 
 北朝鮮は3月21日には「南韓(韓国)を3日間で焦土化し、統一を完成する」内容の1分19秒の動画をネット上で公開し、「北朝鮮のロケット砲部隊が集中的に火力を駆使する場面や、戦車部隊が南進するさまを流した。ことに韓国人を刺激したのは、北のヘリ部隊が兵士をソウルの街に降下させるシーンで、多くの韓国メディアはこの写真を紙面に採用した」(「第2次朝鮮戦争は起きるのか」、上記)。
 北朝鮮はこうした宣伝で韓国国民の間に対北宥和論が起こることを期待しているのだと思われる。
 
  個人的には、私には朝鮮戦争(今日言われる第1次朝鮮戦争。ただしこれは仮に第2次戦争が始まった場合のことであるが)の勃発時(1950年6月25日)の鮮明な記憶がある。
 当時私は東大の学生(2年生)で、全日本学生自治会総連合(いわゆる第1次全学連)の傘下で学生運動にのめり込んでいた。当時は米ソを中心とする東西冷戦の真っただ中で(日本は連合軍の占領下)、朝鮮半島で何ごとかが起きるのではないかとの危惧があった。そういう時、6月中旬に米国のジョンソン国防長官、ブラッドレー統合参謀本部議長、ダレス国務長官顧問が連れだって朝鮮半島の38度線(朝鮮半島を横切る北緯38度線に引かれた米軍とソ連軍の分割占領ライン)を視察し、日本に立ち寄った。私たち学生はこの38度線視察を米国の戦争準備と直感して、「朝鮮戦争反対」を叫んだものだ 。そうしたら、そのわずか1週間後ぐらいに本当に戦争が起きたのだった(今日までの歴史研究では、この戦争は北朝鮮によって火ぶたが切られたことが明らかにされている)。
 
 あの時と同じこと、あるいは似たことが近く起きるとは必ずしも言えないが、似たようなきな臭さをいま感じていることは否定できない。(おわり)

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