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大体皆さん、話の大筋はご存知でしょうが、「メアリー・セレスト号事件」のあらましは、こんな感じです。
 
 
1872年11月7日、メアリー・セレスト号はニューヨークからイタリアのジェノバへ向かう航海に出航。船にはベンジャミン・ブリッグス船長と妻子、船員8人の合計11人が乗り組んでいた。積荷は工業用アルコールだった。
 
12月4日、ポルトガル沖で漂流するメアリー・セレスト号を、同じくニューヨークから出航したデイ・グラチア号が発見した。同号の乗組員がメアリー・セレスト号に乗り移って調べた所、船には全く異常がないにもかかわらず、船内は無人だった。しかも、調べるにつれ、数々の不思議な事実が浮かび上がってきた。
 
まず、救命ボートは縄をほどいた跡もなく残されていた。船倉の積荷は荒らされた形跡も無く、水や食料も十分に残されていた。船長以下船員達の私物なども綺麗に整理されたまま、全くの手付かずだった。
船長室には、食べかけでまだ暖かい朝食(皿に盛られたベーコンやパン、半切りのゆで卵など)が残されており、コーヒーは湯気をたてていた。かたわらには、蓋を開けたままの咳止め薬のビンや、子供用のミルクビンが飲みかけのまま置かれていた。船員達の部屋にも食べかけのチキンやシチューが残されていた。また、調理室には火にかけられたままの鍋が煮立っており、洗面所にはつい今しがたまで髭を剃っていた様な形跡があった。船長の妻子が使っていた部屋には、子供が遊んでいたように玩具がちらかっており、航海士の部屋では、机の上に計算途中の用紙や、火がついたままのパイプが残されていたのだ。
 
つまり、ほんの一瞬前まで乗組員らがいた痕跡がありありと残っていたのだが、彼らの姿はどこにもないのだ。
 
船長室を調べると、ベッドの下には血の付いた刀剣が転がり、12/4付の航海日誌最後のページには
 「わが妻マリーが…」と、船長の走り書きが残されていた。
 
船長と妻子、そして8名の乗組員は何処に消えてしまったのか?
 
この事件は、今なお「海難史上最大の謎」とされている。
 


 
―と言う訳なんですが、簡単にオチを言ってしまうと、「暖かいままの朝食が残っていた」云々と言うのは後から
 
付いた尾ひれ(後述)で、デイ・グラチア号の船員達は後日に「そんな事実は無かった」と証言しております。
 
朝食どころか、デッキは水びたし、船倉は1m以上も浸水し、柱時計は動かず、羅針盤は壊れ、六分儀とクロノ
 
メーターは持ち去られ、救命ボートはなく…と、船は完全に「棄てられた」状態でした。
 
また、「血の付いた刀剣」というのは、単なる赤錆でした。
 
「わが妻マリーが…」と言うのも尾ひれの一つで、ブリッグス船長の奥さんの名はサラ(セーラ)さんです。
 
(↓)左から、サラ夫人、夫人とお子さん(ソフィア・マチルダちゃん)、ブリッグス船長。
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メアリー・セレスト号がデイ・グラチア号に曳航されてジブラルダルに入港した後、海事審判が行われたのです
 
が、「原因は不明だが良くある海難事故の一つ」として処理され、そこはかとなく忘れ去られて行ったのです。
 

 
では何故、忘れられていた筈の良くある海難事故が、今なお「最大の謎」なんて言われているのでしょか。
 
 
事件から10年ほど経った1884年に、あるイギリス人医師がメアリー・セレスト号をモチーフにした短編小説
 
「J・ハバクック・ジェフソンの証言」を書き、この事件は注目を浴びる様になりました。
 
以後この小説を基にして、尾ひれはひれがまとわり付いて行き、現代に伝わる「神話」が出来上がった
 
ようなのです。
 
(ちなみに、「朝食がまだ暖かかった」系の話は、この小説に描写されたフィクションです。)
 
 
ちなみに、この小説を書いたのは、あの、コナン・ドイルです。 
 
蛇足ですが、しばしば「メリー・セレスト号の謎」などと言う表記を目にしますが、これはドイルが小説の中で
 
記した船名(メリー・セレスト=Marie Celeste)と混同されたもので、正しくはメアリー・セレスト(Mary Celeste)
 
です。
 


 
この話にまつわる現代版尾ひれとしては、「UFOにさらわれた」とか、「バミューダー・トライアングルでの失踪事
 
件の代表的な例」だのと言うモノがあります。しかしUFO云々の明確な証拠は何も無く、バミューダ・トライアング
 
ルに至っては、メアリー・セレスト号はそんな所は通ってもない。 
 
 
(↓)UFO説。…こうして見ると、これはこれでトキメクものがあるが…。 イメージ 6
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
UFO説が通るなら、海底人にさらわれたでも、舟幽霊に引きずり込まれたでも、海坊主でも大タコ大イカでも
 
何でもOKになってしまいます。
 
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(←)大タコ説。こっちの方が、もっとトキメク。
 
 
また、メアリー・セレスト号が発見されたのは、いわゆる
 
バミューダ海域からは3,000㌔以上離れた海域で、当時の
 
帆船の速度から言って、出航から1ヶ月弱でニューヨーク
 
からバミューダ経由でポルトガル沖に達するのは不可
 
能ですし、航海日誌にそんな記述もないし、揮発しやすい
 
アルコールを積んでイタリアに向かった船が、何で
 
わざわざバミューダまで遠回りしなければいけないのか、
 
バミューダ説を唱える人達は何の説明もしてくれません。(まあ、いつもの事ですが。)
 
 
(↓)メアリー・セレスト号とデイ・グラチア号の航路。バミューダなんて、かすってもないです…。
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さて、与太はこっちに置いといて。
 
メアリー・セレスト号の乗員が姿を消した真相は、今もって究明はされてはおりません。
 
 
船員の反乱によって船長一家が殺害され、船員達は救命ボートで逃げた」と言う説もありますが、ブリッグス
 
船長は宗教心に篤い高潔な人格者として知られ、アルバート・C・リチャードソン一等航海士以下の船員達も
 
すこぶる評判の良い人物が揃っており、反乱・暴動の線はまず考えらないそうです。
 
 
(↓)反乱説。可能性は低い。絵柄がパルプフィクション(下らない話)っぽさ満点!!
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(←)アルバート・C・リチャードソン
 
一等航海士。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
海賊に襲われた…と言う説もありますが、当時は大西洋の海賊の黄金期はとっくの昔に過ぎ去っていた事や、
 
船体や積荷がそのまま残っている事(積荷の工業用アルコールは当時の価格で総額8万ドル相当だったらしい。
 
また、船長一家や乗組員の荷物の中には現金・貴金属・宝石類なども多くあった)、乗組員を人質にして身代金
 
を要求された事実もない事からすると、あまりありそうにないハナシ。
 
 
保険金詐欺…と言う説もありますが、これは、以下の二つの話がごっちゃになって伝わっているようです。
 
まず、メアリー・セレスト号のブリッグス船長とデイ・グラチア号のモアハウス船長は親友で、出航前に食事を
 
共にしていました。その為、保険金や難破船救助の報奨金を山分けしようとしていたのではないかとの疑いが
 
もちあがり、「証明は出来ないが不正行為があった可能性がある」とされ、せっかく苦労してメアリー・セレスト
 
号を曳航してきたモアハウス船長らの報奨金は大幅に減額された…と言う話。(この点で、裁判を担当し疑う
 
イギリスと、自国民を擁護するアメリカとの間で侃侃諤諤の議論があったようです。)
 
そして、メアリー・セレスト号がこの事件後何度も転売された挙句、1885年にパーカーと言う船長が、保険金
 
をせしめるために沈めようとしたが失敗、ハイチのロシュロワ・リーフで座礁、遺棄されたと言う話。
 
この、二つの事実が混同されているようです。
 
(先述の「バミューダ・トライアングル云々」と言う話が出たのも、メアリー・セレスト号最後の海がハイチだった
 
からなのかもしれません。)
 
(↓)ちなみに、メアリー・セレスト号の残骸は2001年に発見されております。
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また、「メアリー・セレスト号の密航者が残した手記(フォスダイク文書)」なるものが、随分あとになって(1913年)
 
から世に出ましたが、書かれている内容と事実がかなり食い違っており、あまり信憑性はなさそうです。
 
(ちなみにそれは、服を着たまま泳げるかどうか皆でふざけて試していたら、サメに襲われて次々と…なんて
 
おハナシです。) ―伝染病説や、菌に犯され発狂説など他にも色々ありますが、信憑性は五十歩百歩。
 

 
今のとこ、最も信憑性が高い説は、「積荷のアルコールが気化して靄と臭気が噴出した為に、船が爆発
 
する危険性があると考えた船長が救命ボートに移る様に命令し、船を離れた」と言う物です。
 
この説では、ロープで救命ボートを船に繋いでおくつもりだったが、暴風雨などでロープが解けるか切れるか
 
して漂流してしまったと考えられています。
 
現に、発見された時、船からは1本の先のほつれたロープが海へ垂れ下がっていました。また、ジェノヴァに
 
回航されたメアリー・セレスト号の船倉に積まれていたアルコール1,700樽のうち、9樽はカラだったそうです。
 
 
2005年、随分最近ですが、この説に基づいて、縮小模型を使った実験がロンドン大学で行われたそうです。
 
その結果、揮発したアルコールが金具が擦れた火花などで容易に発火し得た事や、発火したとしても燃焼
 
温度はさほど高くなく、積荷や船体に焦げ跡すらつかなかったが、(そのような「危険物」を運送した経験がなか
 
った)船長始め乗組員に対しては、ボートでの脱出を決意させるほどの恐怖感は与えただろう事が判りました。
 
 
そして、メアリー・セレスト号で最後に記された航海日誌(12/4ではなく、11/24付が正当。アゾレス諸島西方
 
100マイルの海上にいるとの記述)の後、当該海域を暴風雨が襲ったとの記録が残っております。
 

 
つまりは、こんないきさつだったのでは?(以下、TOの妄想につき)
 
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「せんちょ〜船長、せぇんちょ〜!! たったた、大変でっせ!!」
「何やねん、どないしたちゅうねん!?」
「積荷のアルコールが、漏れて、気化して、60分前から船倉
に充満しておまんがな」
「な、何やて!? 笑って笑って60分!?」
「どんな耳してまんねん。漏れて気化して60分でんがな」
「わ、そら、ヤバイんちゃうんけ?ちょ、見に行こかいな」
 
様子を見に行った途端に発火!! Pong!!
 
「うわ!! びっくりそっくり、くりふたつやわ!!」
「せんちょ、ギャグいうとる場合ちゃいまっせ。そのうち、
この樽全部ドガンといてまうんやないでっしゃろか!?」
「そやなぁ、念の為やけど、船から離れて、様子見よか」
 
―と言う訳で、みんなで救命ボートへ。
 
「みんな乗ったか?乗ったな?おおよしよしマチルダたん。泣くなよい子よ、よい子よ泣くな。ほらこうして船と
ロープでつないとくから、心配ないねんで」
「せんちょ、何や雲行きアヤシおまっせ…」
「ホンマや、荒れてきよったなぁ。―と言うてる間に、暴風雨になってもた!!」
「なんとまあ早い展開!! まるで吉本新喜劇やがな。…あ、せんちょ、ロープほどけてまんがな…」
「船は出て行く、煙は残る。残る煙がしゃくの種。ままになるならあなたと二人、 せめて一夜のあだ枕…やなぁ」
「せんちょ、何呑気な事いうてまんねん。帆船やから煙はでてへんし。あ、何やおかみはんがえらい怖い目して睨んでまっせ」
「あんた!!今の、なんやねん!? もしかして、港港で他の女と!! キィ〜ッ」
「こらお前。ゆするな、ゆするな、襲い掛かるな!!転覆してまう!! あ〜れ〜」
 
サブーン…
 
♪チャンチャン。
 

 
 
【2013.8 大幅加筆しました。】

閉じる コメント(12)

さすがドイルせんせ!
謎は謎のままでもおもしろいんですけどね^^
ところで『乗りかかった船』ってどういうことですか?

2010/6/6(日) 午後 6:40 悟 返信する

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まぁ船は何かしらの要因で浸水しない限りは、ずっと浮いてられますからね〜。
フライング・ダッチマンも話に尾ひれがついてできたただの伝説ですし。
でも、海事に関わりのある事件で実際に原因がよく分からない事件とかあるから、海はまだ謎だらけですよね。

怪事でもなんでもないけど軍艦好きとしては解体のために回航中、大西洋で荒天の中忽然と消えたブラジルのド級戦艦、サン・パウロがほんとのところどうなったのか気になってたり。
ただ単にボロ故に沈んだだけなのか、それとも今だ大西洋を(無人という意味において)幽霊船として漂っているのか……。
ベイチモ号のような目撃例がないから、ただ単に沈んだだけなんだろうけどね。第一次世界大戦期に建造されたボロ船だし。

2010/6/6(日) 午後 8:26 [ リットリオ ] 返信する

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えっ!そうだったんですか。
てっきり、UFOにさらわれたのか、と思ってました。

2010/6/6(日) 午後 8:44 kokona 返信する

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漂流したくなってきました!!ポチ!!by旦那

2010/6/6(日) 午後 9:45 おかっち 返信する

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悟さん、リクエストにお応えして、と言う感じです。

2010/6/7(月) 午前 9:16 TO7002 返信する

あれ?!
この話昨日読んだようなぁ・・・。
あいあーい

2010/6/7(月) 午前 9:31 [ クリリン ] 返信する

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リットリオさん、グーグル・アースで探してみると、サンパウロがうろうろしているのが見つかるかもしれません。

聞く所によると、戦艦武蔵も海中を漂流しているとか…。

2010/6/7(月) 午前 10:17 TO7002 返信する

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KoKonaさん、宇宙人も朝めし位食わしてからさらえばいいのに…と思います。

2010/6/7(月) 午前 10:18 TO7002 返信する

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旦那さん、人生は漂流みたいなものです。(意味不明)

2010/6/7(月) 午前 10:19 TO7002 返信する

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クリリンさん、デジャヴですか?

2010/6/7(月) 午前 10:19 TO7002 返信する

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なるほど、ドイルさんならしょうがない
ジョセフィーノ様と同格ですもの

2010/6/19(土) 午後 4:25 [ ま〜くん♪ ] 返信する

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まーくんさん、信じやすい人って、とことん信じちゃうみたいですね。シャーロック・ホームズの観察眼はお持ちでない様です。

2010/6/19(土) 午後 5:26 TO7002 返信する

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