|
「私は若い頃は山が好きでね。そりゃもう、休みとなれば必ず山を歩いていたし、盆暮れの長い休みは必ず山行
でね。特に暮れからは必ず忘年山行に出かけて、日本中のあちこちの山から初日の出のご来光を拝んだもの
ですよ」と、その居酒屋のマスターは話し始めました。
何度目かでした。その小さな居酒屋で飲んだのは。ここに来るときは何故かいつも独りで、マスターの目の前の
カウンターに座って飲むのが定番でした。私鉄の、各停しか停まらない駅の、駅前から外れた、場末と言って良
い立地の店ですが、そこそこ繁盛していて、いつ行っても大抵何組かの客が入っています。独りで飲んでいると
店の特徴が良く判るもので、その店は何故かいつも生ビールが飛ぶように売れています。客が店に来るなり、こ
んな事を言う場面に何回も出くわしました。
「あー、何かここ来ると、急に喉が渇くよなぁ…。マスター、生ちょうだい、生!!」
それから皆、生ビールばかり頼んでいる。旨い旨いといいながら。確かに、その店生ビールはとても旨いので
す。何杯飲んでも、最初の一杯目の感動があると言うか…。何か特別な注ぎ方かをしてるのかとマスターに訊い
た事もありますが、マスターは、別に普通ですよと笑うだけでした。
その日も、カウンターに腰を据えてもう何時間にもなる私が、何か怖い話知らない?と訊いたのです。
すると、ああ、その手の話なら、とっておきのがありますよ…と。そうして、マスターがこの話を語りだしたのです。
「もう、何年前になるかなぁ…。私はまだ30前の独身でね。夏の山行で、山仲間と二人で〇〇(特に名を秘す)
に登ったんですよ。縦走コースでね。4〜5日かけて歩く予定だったんですよ。ところが、2日目くらいから仲間の
体調がおかしくなりまして。ええ、やたらと喉が渇いて水をむさぼるように飲み続けるようになったんです。本人も
おかしいおかしいと言うんですが、喉が渇く以外は別に普段と変わらないんですよ。水場があるうちはまだ良か
ったんですが、稜線に出ると、途中途中の山小屋でしか水が汲めない。山では水は貴重品ですからねぇ。せっ
かく水を補給しても、30分も歩かないうちに水筒を空にしてしますんです。当然、予備の水は持って歩いてるんで
すが、それもすぐ飲み乾してしまう。この調子じゃあとても縦走なんて無理だという事になって、途中で下山する
事にしたんです。下山のルートは、メインルートではなくてあまり人の歩かない道だったんですが、まあ、途中に
水場も幾つかある事だし、登山口まで下りれば旅館があるそうだからと」
ほうほう。その途中で何かあったんですか???
「いえいえ。行程は順調でしてね。朝、稜線の小屋を出て、夕方には登山口に着きました。そこから林道を何時
間も歩かなくてはいけないので、ともかく今日ここに一泊しようと言う事になって、旅館―と言っても山小屋に毛
が生えた程度のものだったんですが、そこに入ったんです。ほんとに、山奥の一軒宿でね。登山客くらいしか来
ないんですが、それでも渓流沿いにあってなかなか雰囲気が良いんです。しかも、温泉だったんですよ」
で、そこで出たと…
「まあ、そうなんです。ああいった宿は別に予約をしていなくても、部屋さえあれば泊めてくれます。幸い客は少な
く…と言うか私達二人だけでね。まあ、このルートから山に入る人は余りいないので空いていたんでしょうが。二
階の一番奥の、上等な部屋をあてがってくれたんです。不思議に、その頃には仲間の喉の渇きもなおってしま
い、これなら下山する事もなかった、申し訳ないと謝るんですが、たまにはこんな所でのんびりするのもいいか
なと思いましてね。日程は余裕があるから、何なら2泊位してゆっくりしようかなんて言っていたんです」
で、で、で???
「はは。まあ、あせらないで。その旅館は、もう築何十年かって古い建物だったんですが、中は良く手入れされて
ましてね。居心地のいい宿に感じました。じいさんとばあさん、それに、恐らく近くの集落から来てるんでしょう、仲
居さんと言うか、手伝いのオバチャンが2〜3人でやってましたね。部屋はまあ10かそこらの小さな宿ですから、
そんなもんで十分なんでしょう。部屋の戸は、ふすま一枚でねぇ。鍵もかからない。今からすると信じられないか
もしれませんがね、昔の山の宿って言うのはそんなもんだったんですよ。そしてまた温泉も良くってね。5人も入
れば一杯の小さな湯船でしたが、立派な石造りで。仲間と二人しかいないものだから、湯船に浸かりながら酒盛
りしたりね。食事も簡素なものですが、全て丹精こめた手作りで、これがまた旨い。前の川でとれた大きな岩魚
を囲炉裏で焼いて出してくれたり、山で獲れた山菜も旨くてねぇ…。変に、マグロの刺身とかを出さないのがいい
んですよ。食材は全て近くでとれたもの。あと、味噌が旨くて。訊くと、自家製だと言うんですよ。それを新鮮な野
菜にのせたサラダがあったんですが、これがもう絶品で。味噌汁も、あんなに旨かったのは後にも先にも…」
マスター、マスター、怖い話じゃなくて、いい度夢気分みたくなってますよ。
「ああ、失礼。では本題に…」
おお、来た来た!!な、何があったんです???
「―ええ、その晩の事ですがね…」
マスターは、ごくりと唾を飲み込んで話し始めました。
(文字制限に引っかかったため、続く)
|
大自然の怪
[ リスト ]









あああ・・・・・。。。( ̄△ ̄;)
早く続きを。。。
2011/2/24(木) 午前 0:53
なにー!?
まさかの『続く』パターンですか
これは読むしかないです
2011/2/24(木) 午前 2:07
おー!呼ばれちゃってますねぇ(@_@)。
。
続きが楽しみです。
山小屋の幽霊にはちとうるさい女ですからー
私的に今日はなんか疲れてたんですが、とぅーさんの記事を読んで久々笑っちゃいましたー。
怖いはずなのになぜかオワシス?
2011/2/24(木) 午後 7:26 [ クリリン ]
かっちゃんさん、余り期待しないで…。
たぶんあんまり怖くないと思いますので。
2011/2/24(木) 午後 10:10
悟さん、久々の続くネタです。文章がヘタでだらだら長くなっているだけですが…。
2011/2/24(木) 午後 10:12
クリリンさん、怖くない怖い話が当ブログの売りですから!!
2011/2/24(木) 午後 10:13