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以前の会社の上司から聞いた話です。 彼の故郷の町に、御主人から二人の息子達まで職業軍人を生業とする家があったそうです。 しかし、不幸にも戦争で御主人も息子さん達も皆亡くなり、戦後は没落の一途。家屋も人手に渡る事に。 そしてその家屋を手に入れたのが、上司の伯父一家だったそうです。 居を移してから暫くしたある日、伯母が掃除中に人の気配を感じ、縁側を振り返りました。 すると、縁側の先の庭に旧軍の将校が立っており、何か言いたげな顔でこちらを見つめています。 伯母は腰を抜かし悲鳴を上げると、その男は音も無く消えました。 後に落着いてよく考えると、その男は前のこの家の御主人に間違いありません。 その夜、伯父にその話をしても「思い込みが強くて、幻でも見たのだろう。」と取り合わない。 しかし、後日その伯父が庭の手入れをしていると、やはり眼前に将校が現れました。 流石に気丈な伯父は、驚きつつも「貴方は、何か思い残す事があるのですか。」と、問いました。 しかし、将校は物言いたげな表情のまま、消えてしまいました。 将校の立っていた所には軍靴の踏み跡が残っている。これは幻では無い、と伯父も確信しました。 伯父夫婦は、如何した物かと思案に暮れます。相手は幽霊と言えど立派な将校。知らぬ人でもない。 坊さんでも呼んでお払いを、言うのも気が引けます。 そうこうしている内にも、将校は度々家人の前に姿を現します。何故か、現れるのは決まって昼前。 よく庭の隅に立っている事から、あの辺りに何かあるのではないか、と家人が言い出しました。 では試しに、と庭を調べて見ると、土の下に1m四方の鉄板が見つかりました。 取手があることから、穴を塞ぐ蓋の様です。恐る恐る開いて見ると、地面の下に壕がありました。 防空壕として掘られたのでしょうか、入って見ると、3〜4人は入れる広さです。 ランプの灯りを翳すと、片隅に葛篭が置いてあります。 葛篭を持ち出し、中身を改めると、沢山の手紙が入っていました。 出征した御主人や息子さん達から、家族に宛てた手紙です。 「こんな大事な物が…。」 驚いた伯父夫婦は、家を買った伝手を辿り、前の一家の転居先を調べました。 捜し当てた住所に葛篭を送ると、程なく先方の奥さんからの礼状が届いたそうです。 そこには厚く感謝する旨と、空襲に備え壕に入れておいたが、引越しのどさくさで失念しており、 後悔していた、と書かれておりました。 返書で、伯父は将校の霊の件に触れ、そのお蔭で葛篭を見つける事が出来た、と伝えました。 すると、先方から、出来る事ならお邪魔して一目主人に逢いたい、と申し出があり、快諾しました。 約束の日に、奥さんが娘さん2人を伴って訪れて来ました。 かつて住んでいた家を懐かしみながら庭に通された3人は、縁側に座り御主人が現れるのを待ちます。 気を利かせた伯父夫婦はその場を外しました。 一刻程の後、奥さん方は伯父夫婦に厚く礼を述べると、泣き腫らした目で帰って行きました。 逢えたかは敢て聞きはしませんでしたが、庭に出て見ると、軍靴の足跡が3人分残っていたそうです。
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