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さて、そろそろ飽きてきたネタですが、乗りかかった船です。最後まで書きます。 ちょっと長くなりますが、1952年7月26日、最初の目撃から1週間後の事態はこうでした。 7月26日の午後9時30分、ワシントン空港のレーダーが、一週間前に現れたものと同じ、いくつかのゆっくり動くUFOを捕捉した。 それらはワシントンを囲んでハードンからバージニア、アンドリュース空軍基地にかけて弧状に展開していた。 翌午前2時40分頃、要撃要請を受け、スコープに2機のF-94が現われたが、その途端、スコープからUFOが消え失せた。 要撃機たちは15分ほど空域を捜索したが何も発見できず、基地へ引き上げた。 ところが、F-94がスコープから消えた途端にまたもやレーダーにUFOが捕捉された。 再度、F-94はターゲットのあった空域を捜索したが、何も発見できないまま、基地に向けて帰投した。 数分後、南へ200km離れた、バージニア州ニューポート・ニューズ近郊のラングレイ空軍基地上空に、 回転しながらオレンジ色から緑、赤と色彩を変える光体が出現していた。 付近住民からの通報を受けて、基地管制官は近くを哨戒飛行中のF-94に連絡。UFOに向けて誘導した。 F-94はUFOを発見、接近を開始した。ところが、その途端、光体は消えてしまった。 F-94はそのまま上空を捜索し再びUFOを発見したので、パイロットはレーダー射撃管制装置で 1個のターゲットをロックオンすることに成功した。 しかし、UFOは数秒間で圏外に離脱、ロックオンは破られた。 この状況はもう一度繰り返され、UFOは完全に消えた。 またその数分後、ワシントン上空に再びUFO群がレーダー捕捉された。 再び2機のF-94がワシントン上空へ。 今度はF-94が空域に到達しても、ターゲットはスコープ上にとどまっていた。 管制官はF-94をUFO群の方へ誘導し、パイロットは目標に向かって接近を開始した。 すると、目標として視認された光体群は加速して飛び去った。 それはラングレイ基地の場合と同じであった。 F-94のパイロットの一人、ウィリアム・パターソン中尉は、その時の模様をこう語っている。 「レーダー管制官が誘導する方向にいくつかの光点が見えた。私は全速でそれらを追跡したが、まったく近づけないのだ。また、約2マイルまで近づくと消えてしまった。」 アルバート・チョップ(国防総省スポークスマン)の報告。 「今度は不明物体たちは、スコープ上から消えなかったので、我々は要撃機を正しい位置に誘導した。 2機をふた手に分け、1機は北へ、もう1機は南へ向かわせた。 最初のパイロットは『何も見えない』と連絡してきたが、彼の機はターゲットのすぐ傍まで来ているのが見えた。 レッド・ドッグ2(北へ向かったパイロット)が再び報告した。 『今度は見える。まっすぐ真ん中だ。でかい青白い光のように見える』 レーダーでは、彼らが非常に接近しているのが見てとれた。次いで2度目の報告がきた。 彼は少し興奮していたが無理もない。 『まわり中にいるぞ!』一瞬間をおいて『こっちへ迫ってくるように見える……』数瞬ののち、パイロットの言った最後の言葉は、ほとんど哀願に近い口調だったのを覚えている。『おれはどうしたらいいんだ?』 たしかに我々も、不明物体が彼の機を、輪のように取り巻いて迫るのを見た。我々は互いに顔を見合わせるだけだった。10秒から20秒後、彼は報告した。『やつらは去っていきます』 しばらくしてから彼は、これより帰投すると連絡してきた。」ものの見事に、空軍がUFOに翻弄されております。 さて、この様な現象が、「気温逆転層」で説明がつくのでしょうか? 実は、つくのです…。 技術開発評価センターが、UFO行動範囲と気象データを綿密に照らし合わせたところ、 UFOの行動範囲全てに気温逆転層が発生していた事が判明しました。 しかもF−94が誘導されたのは、いずれも混んでいるハイウエイや交差点の上空だったという事も 判明。 技術開発評価センターのリチャード・C・ボーデンとティレイ・K・ヴィッカーズは、 「気温逆転層の境界付近で『異なったスピードで移動する空気の塊』が渦を形成している」 と結論付けました。 これらの渦巻きによって、レンズのような作用をする『ふくらみ』を逆転層内部に形成し、レーダー波や 光を反射していたのです。 この『ふくらみ』は風に乗っ移動するので、物体が動いているように見えたのです。 この日のすべての目撃ケースで、UFOはやはり風向に沿って移動していた事も判りました。 レーダーのコンタクトと地上や空から目撃された光は、この『ふくらみ』によって、 混雑した交差点やハイウエイの光が空に映される蜃気楼現象だったのです。 前回の記事でも触れたとおり、この『ふくらみ』は消えたり現われたりを繰り返すので、それがあたかも 意思を持った飛行物体に見えたのです。 つまり、迎撃にあがった戦闘機は「空気の渦」による蜃気楼に取り囲まれたと、そう言う事です。 因みに、「気温逆転層」とはそんなに特殊な現象でもなく、割とよく起こるそうです。 一番身近なのは、日本でも各地で見られる蜃気楼。特に有明海の「不知火」が有名です。 蜃気楼が空中で起こると、「ワシントンのUFO」みたいになるのです。 蛇足ですが、ワシントンUFO事件が発生したのは、かの「ケネス・アーノルド事件(1947年)」の僅か 5年後。全米で、UFOと言う未知なる物への好奇心とアメリカが攻撃されるのでは?と言う恐怖が 盛り上がっていた頃。特に、その恐怖感は共産主義の浸透とあいまって、一般大衆の大きな社会不安に なっていました。 また、当時は朝鮮戦争にアメリカが介入を表明した直後で、核兵器の使用も取沙汰されており、 余計に不安を煽っていました。 そして、こんな「緊急事態」も…。 1950年、イギリスのアートリー首相の訪米時に、国防総省の早期警戒レーダー網が、 複数のソ連機をとらえると言う事態もありました。 機影は南東に向かっており、2、3時間後にワシントン上空に達する計算でした。 全軍が臨戦態勢に入る中、アートリー首相とディーン・アチソン国務長官がホワイトハウスに到着するまでに、機影はレーダーから消えました。 敵機のように見えたものは、雁の群れだったと国防総省は発表しました。 そして、1952年に封切られた米国SF映画の名作『地球の静止する日』は、「超高度な科学力を 持つ宇宙人」の具体的なイメージを国民に浸透させます。 こうして出来上がった「空から未知なる物が攻めてくる」という心理的な下地の上に、 ワシントンUFO事件は成り立っているのだなあと、そんな風に思います。
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