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久々の「自衛隊ネタ」です。 自衛隊に数ある職種の中で、最過酷の一つは、航空自衛隊のレーダーサイト勤務だと言われています。 戦後、日本各地にレーダーサイトが配置されましたが、ソ連機の領空侵犯に備えて、特に北海道や日本海 側には数多くのレーダーサイトが造られました。 レーダーサイトは、その性格上、海辺や山のてっぺん、果ては絶海の孤島など、所謂「辺境の地」に 建設される事が多くなります。何しろ、少しでも敵の近くに造らなくてはならないのですから。 また、レーダーサイトは日本を護る目であり耳である為、ひと時も気を緩める事が出来ません。 しかも、一朝有事ともなれば、真っ先に敵のミサイルが飛んでくるのが、レーダーサイト。 高度な専門知識を有し、厳しい訓練を受けた者だけが成り得るエリート職種ではありますが、 同時に不人気職種No.1だと言うのも頷けます。 某島にあるレーダーサイトも、その内の一つ。 島には高校も無い為、そこに勤務するのは、独身者か単身赴任者だけだそうです。 もちろん、碌な娯楽施設も無く、船便も月何回かと言う有様です。 冷戦時代のお話です。 Sさんが、その基地に配属となりました。 若かりしSさんはまだ独身。これで婚期が遅れると、げんなりしながらの赴任でした。 着任すると、前任者からの申し送りの中で、「〇号庁舎の夜間の見回りは、駆け足で行う事」と 言うのがありました。 不思議に思いましたが、それがここのしきたりかと、特に疑問を持ちませんでした。 ある晩、不寝番に立ったSさん。 本来、不寝番は二人一組なのですが、人手不足の自衛隊の中でも、最も人手の無い部署の事、 不寝番を一人で行うのが、この基地の常でした。 見回りの途中でSさんは、〇号庁舎に差し掛かりました。 申し送りにあった通り、駆け足で庁舎内を廻ります。そう広くはない建物で、駆け足だとほんの数分で ひと回り終わってしまいます。 しかし、〇号庁舎を出ようとしたSさんの耳に、庁舎の奥から、何か異様な音が聞こえてきました。 耳を澄ますと、くぐもった、男の嗚咽…啜り泣きの声が…。 (誰か、人目を避けて泣いているのか…?) 離島の勤務で、ノイローゼ気味になる人も中には居るので、たぶん、そうだろうと思いました。 万一、自殺などを図ると大変なので、今度は足音を忍ばせて、庁舎の中を再度見て廻る事にしました。 一部屋一部屋確かめますが、誰にも居ません。 しかし、どこからか、啜り泣く声は響いて来ます。 この〇号庁舎の中から聞こえているのは間違いありません。 遂にはトイレや倉庫も含めて、隈なく確認し終えたSさん。 何処にも人の気配は認められませんでした。 しかし、まだ、嗚咽の声は響いている…。 Sさんは、震える手で〇号庁舎のドアを閉じました。 残りの見回りもそこそこに、詰所に戻ったSさん。 そこには、直属の上官が待っていました。 「今日、貴様が初めて不寝番に立つから、心配して起きていたんだ。―何か、異常はあったか?」 〇号庁舎の事を報告し、念の為もう一度見てきた方が良いでしょうか、と具申するSさんに、 上官は言ったそうです。 「いや、もう良い。実はな。あの声は、ここに居る誰もが一度は聞いているんだ。日誌にも、書かんで いいぞ。」 はぁ?と首を傾げるSさん。 「実は何年か前、あそこで首を吊った隊員がいてな…。 それから、夜な夜な男の啜り泣きが聞こえるようになったんだ。 気のせいだと言っていた幹部連中もあの声を聞いて、慌てて供養もしたんだが、効き目は無い…。 どうしたものかと思うんだが…。 ―まあ、これでお前も、晴れてここの一員だ。ワッハッハ」 後から知った所では、隊規には抵触するが〇号庁舎の夜間の見回りはしない事が、暗黙の了解でした。 そして、新任者への「洗礼」として、一度はあの啜り泣きを聞かせるのが、ここの慣習だと。 そして、次に赴任してきた新人に、Sさんは言ったそうです。 「いいか、〇号庁舎の見回りは、駆け足でやれよ。―何故かって?やれば、判るよ…。」 (本で読んだお話を、アレンジしてみました…。単なる、噂ですよ、ウ・ワ・サ…。)
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