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10/5(WED)曇

天気はあまり良くないが、とりあえずスキー。オーストラリアからの「スキーの先生」達と一緒に行く事になった。レンタルのスキー用品を借り、ロープウェイで登る。途中一度乗り換えて、そのへんまではなかなかの天気だった。ロープウェイに乗っている俺ら以外のスキーヤーは、皆完全フル装備だ。ジーパン姿でスキー板を担ぐ俺らを見て不思議そうな顔をしているが、大丈夫だろうか?だんだん不安になって来た。

頂上のクラインマッターホルンに着くと、あたり一面ガスっている。上から下まで真っ白けな世界だ。晴れていれば目の前に見えるはずのマッターホルンの頂も、どこにいるのか、ガスの中。とんでもない所に来てしまったと思いつつも、「スキーの先生」に手取り足取り教えられて、板を履き、生まれて初めてのスキーに出発!!みんなに助けられながら、何度もすっ転びつつ、ようやくゲレンデにたどり着いた。しかし、コケて起きあがる度に息が上がる。標高が富士山頂より高いのだから、しょうがないが。

ゲレンデのリフトは、Tバー型で、鉄の棒に腰を下ろして、足のスキーは地面に着いたまま乗ると言うタイプ。何度も乗る時にコケ、それでも必死に喰らいついて、5度目くらいでリフトに座れると、リフト待ちの列から、拍手かっさい口笛がわきあがった。みんな見守ってくれていたらしい。手を挙げて応えると、隣に座ったオバサンが「そんなのいいから、しっかり掴まってなさい!!」みたいな事を言った。オバサンは、地元の人らしい。ジーパン姿の俺を見て、「あなた、スキーした事あるの?」と訊くので、「1st time in my life!!」と答えると、ため息混じりに「クレイジー」とつぶやいて首を振っていた。

ゲレンデを滑るまわりの外人たちは皆ビシっと装備も良く、上手い。下界と変わらない服装の俺らを横目で見ては目線をそらしている。

何度もコケてる内に、俺も何とか滑れるようになって来た。しかし、霧で10m先も見えない。結構な急角度のゲレンデは、白く奈落の底まで続いている様だ。「スキーの先生」達は、いつの間にか姿が見えない。見捨てられたか。ちくしょう。本気で、帰れないんじゃないかと言う気がしてくる。

そんな特、奇跡的にホンの30秒ほどガスが晴れ、紺碧の成層圏を背にしたマッターホルンがドドーンと姿を見せてくれた。おおおおお〜と感動していると、すぐにガスがかかってしまった。後はまた真っ白。

いい加減、コケ疲れと極寒で、グダってきたが、こんなところでグダったら、凍死する。水島とバンさんがそばに着いていてくれて、さっき乗り換えた駅まで行こうと氷河の上のコースを滑り出す。幸いひと気が無く、広いゲレンデを独占して滑れるのはいいが、そのかわりそこにはリフトも何も無く、あるのは氷と雪と岩だけ。相変わらずガスっていて、景色なんか見えやしない。氷河の上に薄く積もった雪のすぐ下は氷なので、コケたら痛い。コケると、−10何度の痛い空気がのどに突き刺さる。吸いたくないが、肺が勝手にゼイゼイあえいで吸えるだけの寒気を吸おうとするのをとめられない。しかも、コースの両端に張られたロープのすぐ先には、クレバスが青白い口をいくつも開けている。ロープ脇でコケてもがいていると、体はだんだんロープの外に出て行って、だんだんクレバスに近づいていく。「これにつかまれ!!」とバンさんが伸ばしてくれたストックにすがりついて、九死に一生を得た。

それから先は、曲がるとコケるので、もうやけくその開き直りで、ゲレンデをガンガン直滑降する。横を滑るバンさんが「真っ直ぐ滑れ〜!!止まったら死ぬど〜!!イケ〜!!イケー!!」と励ましてくれる。水島も後ろにいてくれる。

途中で、どうしようもなく腹が痛くなったので、ゲレンデ脇の岩陰で、BIGな気分。
バンさんが「こんなトコで野グソするやつ初めてやわ」とあきれていた。


ようやく、ロープウェイ乗り場に滑りこむ。助かった。
体も尻も凍り、熱いコーヒーも手が震えて持てない。30分もかけて暖房とコーヒーで体を解凍し、そこでついでに昼飯を食って、ロープウェイで下る。スキーを借りたレンタル屋でオーストラリア夫妻が心配顔で待っていてくれた。

YHに戻り、シャワーを浴びて生き返った。水島とバンさんに感謝感謝だ。お礼を言うとバンさんが「何言うてんねん。こんなおもろいスキーもなかったで」と言ってくれた。そのバンさんは2日券を買っていたので、みんなを誘いまくっていた。夕方になると、また新たに日本人が集り、バンさんスキーツアーのメンバーも揃った様だ。消灯時間までみんなで話し込み、情報交換。楽しい一時を過ごした。

明日はここを発ってベルンへ。みんなともさよならだ。それにしても今日は地獄を見てしまったが、下りてしまえば、いい体験だった。


―今でも、あのう〇こは、凍てついたまま、あそこにあるのでしょうか。

「アイス・マン」みたいに、5000年後に発見されたら嫌だなぁ・・・。

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